要 旨
目的:本研究では、たばこの不適切投棄対策に行動コミュニティ心理学の観点を応用し、データ付きポスターによる
フィードバックがたばこの不適切投棄に与える影響を検討することを目的とした。
対象および方法:近畿圏の私立大学キャンパス内の喫煙所利用者を対象に、大学キャンパス内の喫煙所2か所(喫煙所
Ⅰ・Ⅱ)にて不適切投棄された吸い殻の数を測定した。実験デザインは、ベースライン期と介入期から構成されるABデザ
イン(A = ベースライン期;B = 介入期)を用いた。ベースライン期では、データ付きポスターが存在しない状態で、た
ばこの不適切投棄の本数を調べた。介入期では、それぞれの喫煙所において過去3週間分に測定されたたばこの不適切投
棄の実測値を示したデータ付きポスターを導入し、たばこの不適切投棄の本数を調べた。
結果:喫煙所Ⅰ・Ⅱともにベースライン期のトレンド(データの上昇傾向・下降傾向などの変化)は有意ではなかった。
一方, 介入期では不適切投棄の数が減少することを示すトレンドが、喫煙所Ⅰ・Ⅱそれぞれにおいて有意であった。ベー
スライン期と介入期を比較すると、介入期では喫煙所A・Bともに不適切投棄数が有意に減少していた。
結論:本研究の結果、喫煙所2地点において、データ付きポスターの掲示によるたばこの不適切投棄数の減少が認められ
た。統計的検定においても、ベースライン期から介入期にかけて不適切投棄数の有意な減少がみられた。以上の結果か
ら、たばこの不適切投棄に対してデータ付きポスターの有効性が示唆された。たばこの不適切投棄防止を目的としたポス
ターへの具体的な改善策を提案できる点で、本研究の意義は大きいといえる。
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