要 旨
背景:日本は保険診療による禁煙治療を受けることができる。保険診療で禁煙治療は可能となったが禁煙治療が必要な状態にも関わらず治療を受けない者が存在する。これらの要因として個人の禁煙に対するレディネス(禁煙する意思がない、いずれは禁煙する意思がある、すぐに禁煙する意思があるかなど)が備わっていない可能性が考えられる。この禁煙のレディネスには喫煙に関する Pros(喫煙することのメリット)と Cons(喫煙することのデメリット)といった意思決定のバランスが大きく影響するが日本においては喫煙に関する意思決定のバランスを測定する尺度が存在しない。そこで我々は Velicer の The Decisional Balance Scale1)の日本語版(以下、日本語版喫煙意思決定バランス尺度と略す)を作成し、その信頼性と妥当性を検討した。
方法:本研究は 807 名を対象に Web 調査を実施した。研究Ⅰは作成した日本語版喫煙意思決定バランス尺度の項目分析をおこなった。研究Ⅱ・Ⅲは日本語版喫煙意思決定バランス尺度の因子構造を明らかにし、信頼性と妥当性を検証した。質問は日本語版喫煙意思決定バランス尺度と行動変容ステージ分類項目等から構成した。
結果:研究Ⅰの項目分析の結果、日本語版喫煙意思決定バランス尺度の各項目において天井・床効果は認められなかった。研究Ⅱの日本語版喫煙意思決定バランス尺度の因子分析では原文と同様の喫煙の Pros と Cons の 2 因子が抽出された。各因子の内的整合性(α=.865 ~.900) は高い値を示した。また、行動変容ステージの移行に従って、喫煙の Pros とCons のスコアはステージにともない系統的に変化していた。この結果は先行研究と一致し、日本語版喫煙意思決定バランス尺度の構成概念妥当性が確認された。
結論:日本語版喫煙意思決定バランス尺度は高い信頼性と妥当性を有していることが本研究より明らかになった。
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