日本病院総合診療医学会雑誌
Online ISSN : 2758-7878
Print ISSN : 2185-8136
10 巻, 1 号
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原著
  • 櫻井 正智, 松田 隆秀
    2016 年 10 巻 1 号 p. 1-3
    発行日: 2016/03/31
    公開日: 2024/01/21
    ジャーナル フリー
    1989 年に小柴胡湯の副作用が発表されて以来,漢方薬による副作用が注目されているが,漢方の副作用に関する臨床研究は十分ではない。そこで漢方専門外来で漢方の処方を受けていた患者を対象に,副作用に関する後ろ向き調査を行った。対象とした 157 例では副作用は 9 例 ( 5.7 % )に認められていた。 内訳は胃腸障害 5 例,皮疹 2 例,肝障害 1 例,偽アルドステロン症 1 例で,副作用の発生率は過去の調査とほば同じであった。 このことから漢方薬の副作用は必す発生するという事実を前提に,漫然とした長期処方は避けるべきであると考えられた。 副作用早期発見にも役立つ漢方適正使用に関するガイドラインの作成が必要であると思われた。
総説
  • 長谷川 修
    2016 年 10 巻 1 号 p. 4-6
    発行日: 2016/03/31
    公開日: 2024/01/21
    ジャーナル フリー
    患者は,自分の症状に合う専門診療科があればそこを受診したがる。 なければ総合診療科 (内科)を受診する。総合診療はneeds-based medicineとも言え,マンパワーの制約の中で取り敢えずすべてを診療する立場にある。 診療の範囲は,専門診療科へのアクセスの良さにかかる。総合診療医は,神経症状および神経疾患のいずれをも診る必要かある。 どこまで診るかという観点よりも,逆に専門家に任せた方が良いものをセレクトする能力が必要と考える。 とくに,criticalな病態はできるだけ速やかに専門家に声をかけた方が良い。 Commonあるいはcurableな病態は,基本的に総合診療医が対応し,必要に応じて専門医にコンサルトする。これに該当しない変性疾患等は,二人主治医制が望まれる。 総合診療医のminimum requirementとして,必要に応じて相談できる能力か求められる。 地域ニーズがあり,担う部署のない分野は,絶好の臨床研究対象となる。
  • 瓜田 純久, 斎藤 隆弘, 鈴木 健志, 山田 篤史, 小松 史哉, 河越 尚幸, 貴島 祥, 田中 英樹, 佐々木 陽典, 城戸 秀倫, ...
    2016 年 10 巻 1 号 p. 7-11
    発行日: 2016/03/31
    公開日: 2024/01/21
    ジャーナル フリー
    医学では未だにパーツに分ける還元論的手法が隆盛を極め,臓器還元論,疾病還元論が大学病院の診療科構成の基本となっている。医師が学ぶべき内容が膨大となり,医師の能力を超えてしまうこと,また,患者の権利意識の高まりから,無用なトラブルを避ける意識もはたらき,得意な疾患のみを診療する「過度な専門医志向」が目立ってきている。 そのため,臓器側から患者にアプローチすることが多く,症候を系統的に解釈する思考回路が使われないことが多い。特に画像診断,検査結果を重視する医療となり,形態異常の拾い上げは十分であるが,機能性疾患の対応は極めて不十分となっている。 生体反応の中心はフィードバック機構であるが,そのため,病態は周期的に変化する。 生体を分割せずに考えていくと,各臓器に生じる疾患にも共通点を見出すことができる。 とくに現在の状態から,将来の状態を予想するロジスティック写像を用いて解釈すると,急性疾患,慢性疾患,変性疾患,悪性疾患など,各臓器の疾患も,同じ固有値の変化として表現できる。 還元論から脱却し,異なる臓器に共通する単純な法則から解釈できる医療が,我々の目指すところである。 医学部を目指したころの志を思い出し,原点に帰ることが,総合診療医育成のポイントと考えている。
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