日本病院総合診療医学会雑誌
Online ISSN : 2758-7878
Print ISSN : 2185-8136
5 巻, 2 号
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
総説
  • 田妻 進
    2013 年 5 巻 2 号 p. 1-4
    発行日: 2013/12/31
    公開日: 2024/01/24
    ジャーナル フリー
    我が国は今やガイドライン花盛りで,診療現場におけるガイドライン遵守と実践が常に意識される時代に入っている。ガイドラインには臓器専門医による活用を意図したものから,プライマリケア医と臓器専門医の役割分担を考慮したものまで様々である。ただ,その効率よい活用により実地臨床の場に安全で安心な診療を提供されることが期待できる。 第 7 回日本病院総合診療医学会学術総会では,『Guideline時代に進化する"病院総合診療医" 〜臓器専門医VS 総合診療専門医〜』と題して会長講演を企画したが進行の遅れに伴い十分な情報提供ができなかった事から本誌面を借りて要旨を概説する。
  • 鍋島 茂樹
    2013 年 5 巻 2 号 p. 5-9
    発行日: 2013/12/31
    公開日: 2024/01/24
    ジャーナル フリー
    20 世紀末にノイラミニダーゼ阻害薬が開発され,インフルエンザの治療成績は飛躍的に向上した。 2009 年のインフルエンザパンデミックの際も,ノイラミニダーゼ阻害薬を病初期から積極的に使用した日本は,インフルエンザによる死亡率が全世界で突出して少なかった。 ノイラミニダーゼ阻害薬は安全面においても信頼性が高いといえるが,異常行動との関連,高価格, 将来の耐性株出現,発展途上国への普及,といった面で懸念が無いわけではない。 一方,漢方薬が広く受け入れられている日本では,最近になり麻黄湯のインフルエンザに対する有効性がマスコミやインターネットにしばしば取り上げられるようになった。 一般臨床医としては,はたして本当に漢方薬がインフルエンザに効果があるのか,ノイラミニダーゼ阻害薬と比較して有効性はどうなのか,抗ウイルス作用があるのか,など気になるところである。 この稿では麻黄湯を中心に,漢方薬のインフルエンザに対する有効性とその作用機序,使用方法について述べる。
  • 寺坂 友博, 木村 耕介, 萩谷 英大, 早稲田 公一, 筑木 隆雄, 花山 宜久, 近藤 英生, 大塚 文男
    2013 年 5 巻 2 号 p. 10-13
    発行日: 2013/12/31
    公開日: 2024/01/24
    ジャーナル フリー
    浮腫・腰痛・歩行困難という複数の主訴で来院した高齢男性例から,興味深い病態診断に至った症例を紹介する。 病歴の聴取では,極端な偏食という生活歴が特徴的であった。 本例の浮腫は熱感・発赤を伴った両下腿浮腫であったがPETや生検でも血管炎の存在を認めず,MRIで両下腿静脈内に血栓を検出した。 凝固線溶系の精査から,プロトロンビン時間の延長とプロティンCの低下を認めた。 低栄養を背景に,ビタミンKの低下とさらにビタミンK依存性のプロティンC低下により凝固線溶系に異常をきたし,深部静脈血栓症を発症したと考えられた。 同時に四肢末端の知覚異常を認めたが脊髄画像所見に異常なく,ビタンB12 欠乏によるニューロバチーと考えられた。さらに,骨代謝関連検査では低カルシウム・低リン血症と副甲状腺ホルモンの上昇を認め,血中ビタミンD3 低値と骨粗鬆症の存在から,ビタミンD欠乏による骨軟化症に関連する腰痛症と考えられた。 メコバラミンとアルファカルシドールの投与にて,四肢知覚異常の軽快と骨代謝異常の改善を認めたが,静脈血栓に対してはワーファリン開始にて下腿発赤は消失したものの浮腫は残存し,静脈還流障害の影響が示唆された。総合的に病態を考慮すると,過度の偏食による種々のビタミン・栄養素の低下を惹起し,本例の多彩な主訴を呈したものと考えられた。
  • 森 徳郎, 佐藤 香菜子, 高橋 宏彰, 松下 尚憲, 三浦 溥太郎, 沼田 裕一
    2013 年 5 巻 2 号 p. 14-19
    発行日: 2013/12/31
    公開日: 2024/01/24
    ジャーナル フリー
    遺伝性血管性浮腫は,主に常染色体優性遺伝疾患で,有病率は 5 万人に 1 人,Clインヒビターの欠損もしくは活性低下により,プラジキニンが過剰に産生され血管透過性が亢進し,血管性浮腫をきたす疾患である。 遺伝性血管性浮腫の急性浮腫発作は,精神的・肉体的ストレス,妊娠,月経,薬物などにより発作的に誘発され,24 時間でピークとなり概ね 72 時間で治まる。 浮腫はあらゆる年齢で起きる。血管性浮腫は蕁麻疹とは異なり,真皮下層や皮下または粘膜下組織の浮腫であるため,痒みを伴わす境界不明瞭な非圧痕性の浮腫である。 顔面や四肢の浮腫,腸管の粘膜浮腫による腹痛,嘔気,嘔吐,下痢などの消化器症状,ロ腔内浮腫や喉頭浮腫による窒息などの症状を呈する。 HAEの発作にはClインヒビター製剤(べリナート®️ : Berinert®️ )の投与が最も有効かつ確実な治療法である。特に,喉頭浮腫は適切に治療されないと致命的になりうる。そのため,顔面の浮腫が出現した時点で,迅速にClインヒビター製剤の投与を行い,気道確保を念頭に厳重な観察と治療を行うべきである。 我が国では 2010 年に補体研究会によりガイドラインが作成され,現在これに則った診断と治療が行われている。しかし 2012 年に発表された世界アレルギー機構によるガイドラインでは,CIインヒビター製剤以外に,我が国ではまだ認可されていないカリクレイン阻害薬とプラジキニンB2 受容体拮抗薬などの使用も推奨されている。両者とも発作時に患者がその場で皮下に自己注射できるメリットがあり,我が国でも導入が期待されている。
  • 大澤 勲, 本田 大介, 長町 誠嗣, 久田 温子, 島本 真実子, 井下 博之, 眞野 訓, 堀越 哲, 富野 康日己
    2013 年 5 巻 2 号 p. 20-25
    発行日: 2013/12/31
    公開日: 2024/01/24
    ジャーナル フリー
    遺伝性血管性浮腫(Hereditary angioedema ; HAE)は,皮膚や粘膜に浮腫の出現・消退をくり返す疾患である。 消化管浮腫によるイレウスは重篤な症状の一つであり,HAEの診断がついていない場合には,無用の開腹手術を受けてしまうことがある。 今回我々は,HAE患者の腹痛発作時に医師が外科的治療の必要性を想起する理由について考察することを目的として検討した。 対象は当院に通院中のHAE患者 19 名( 42.5 士 16.3 歳,男性 7 名,女性 12 名)で, 25 カ月の観察期間中に浮腫の発作で受診した際の血液検査結果や治療経過について,消化管浮腫を伴う場合(G+)と消化管浮腫を伴わず他の部位の浮腫の場合(G-)に分け,非発作時のデータとともに比較検討した。 計 47 回の救急外来受診があり,G+は 24 回あった。G+時の白血球数( 10 ,933 士 2,900/uL ) はG-時( 7,362 士 1,933/uL )と非発作時( 6,394 士 2,267/uL)に比べて有意に高く(p < 0.01 ) ,G+時の好中球分画( 75.1 士 12.5 % )は非発作時(63.2 士 12.0 % )と比べて有意に増加していた(p < 0.01 )。 G+時の赤血球数とへマトクリット値( 520 士 44 万/uL,45.6 士 2.7 g/dL)は,非発作時( 459 士 38万uL,41.5 士 2.8 g/dL)に比し有意に高かった(p < 0.01 )。治療ではC1-INH製剤をG+時に 22 回,G-時に 20 回投与し,いずれの発作も改善した。 G+の際の血液検査は重篤な腸閉塞や急性の消化管穿孔などと類似しており,外科的アプローチの必要性を想起させると考えられた。
  • 松村 俊ニ, 浅本 泰正, 山岡 直樹, 奥道 恒夫
    2013 年 5 巻 2 号 p. 26-30
    発行日: 2013/12/31
    公開日: 2024/01/24
    ジャーナル フリー
    数多ある画像診断法の中で,超音波検査ほど空間分解能に優れリアルタイム性に富んだ検査法はない。 さらに,日常臨床の場においては, 1)基本操作が簡便でべッドサイドでも検査が出来る。 2)非侵襲的で患者への身体的負担が少なく,聴診器代わりに使用出来るという他のモダリティーにはないメリットを有している。 一方でいくら有用であるといっても,消化管工コー検査の場合,他の臓器同様に骨や腸管ガスの存在により死角が生じたり超音波の減衰のため画質が劣化するため,「適切な手技で走査がなされ,論理的に解析され」なければ的確な診断には至らない。 これが,「検査の質が検者の技量に大きく依存する」といったエコー検査のデメリットが生じる原因である。 したがって,スクリーニング検査として超音波診断を行う場合,漠然と走査した際には病変の検出率は著しく低くなるが,解剖学的な臓器の特徴を良く理解したうえで系統的な走査を行えば,こうしたデメリットを最小限にすることが出来る。 さらには,問診・触診といった日常診療における最も基本的な技術を駆使し,そこから得られる情報をしつかりと検査内にフィードバックする事で,より的確な診断へと近づけるであろう。
  • 上田 剛士
    2013 年 5 巻 2 号 p. 31-36
    発行日: 2013/12/31
    公開日: 2024/01/24
    ジャーナル フリー
    胸部症状を訴える患者に対して心工コーは頻繁に施行されているが,肺工コーは有用であるにも関わらず十分に活用されていない。 肺工コーの有用性として,まず仰臥位レントゲン写真よりも肋骨骨折や気胸に対して感度が高いことが分かっている。 臓側胸膜が呼吸性に動くのが確認できない場合(lung slidingの消失)は気胸と考える。 肺実質に 7 mm間隔の縦ライン(B7 line)が見えれば小葉間隔壁肥厚を,3 mm間隔の縦ライン(B3 line) が見えれば胸膜直下のすりガラス陰影を,実質臓器様に描出すれば肺硬化像が存在すると考える。 これらの病変の分布を探ることで肺炎,心不全,ARDSの診断・鑑別が可能である。 肺工コー検査は迅速性と簡便性から救急外来,集中治療領域,往診にと診療背景を問わす有用な検査である。
  • 佐仲 雅樹, 瓜田 純久, 中西 員茂, 中嶋 均
    2013 年 5 巻 2 号 p. 37-43
    発行日: 2013/12/31
    公開日: 2024/01/24
    ジャーナル フリー
    医療者(医師,看護師)は,当たり前のように,「顔」を通して患者の全身状態を直感的に把握していると思われる。 本稿で提唱する「顔」の相互反応モデルは,全身状態に関する直感的判断を,「顔」を介した非言語的コミュニケーションの在り方に関連付けて説明するものである。 全身状態は体液のホメオスタシスを反映している。 重症疾患がもたらす急激な体液環境の変化は中枢神経系に直接影響し,容易に注意機能を阻害する。 結果として,医療者と患者間の「顔」を通した非言語的コミュニケーションのリズムとテンポに乱れが生じる。この「乱れ」に対して医療者が抱く違和感が,患者の全身状態悪化を知らせるアラームとなる。 ただし,この直感的アラームは,後に生じる理性的判断によって補正されることもある。 以上が,「顔」の相互反応モデルの概要である。 患者の「顔」から生じる「違和感」は,全身状態悪化に伴う軽い意識障害を感知している可能性がある。
原著
  • 鳥飼 圭人, 中谷 信一, 増井 健太郎, 廣瀬 雅宣, 山﨑 行敬, 根本 隆章, 西迫 尚, 國島 広之, 中川 禎介, 松田 隆秀
    2013 年 5 巻 2 号 p. 44-48
    発行日: 2013/12/31
    公開日: 2024/01/24
    ジャーナル フリー
    聖マリアンナ医科大学総合診療内科(以下,当科)において入院中に死亡した 65 歳以上の高齢者患者における臨床像の特徴と急変時における延命治療についての事前意思確認を明らかにすることを目的とした。 2 年間に当科へ入院となった 65 歳以上の高齢者 216 名(うち死亡退院 22 名)を対象とした。 死亡群では近隣の医療機関からの紹介が 77.2 %を占め,非死亡群 44.3 % と比較し多かった。 入院の原因となった疾患 (以下,入院疾患)による死亡は 68.2 %で,内訳は肺炎が 46.7 %と最も多く,肺炎の診療は重症度を問わず主に当科で担っているためと考えられた。 急変時における治療方針については 95.5 %がDNAR (do not attempt resuscitation)であり,者本人の事前意思が確認できたのは 9.1 %であった。可能な限り本人の意思を尊重し多種職の医療チームとして対応することが必要と考えられた。
  • 酒見 倫子, 溝岡 雅文, 小林 知貴, 岸川 暢介, 横林 賢一, 菅野 啓司, 串畑 重行, 田妻 進
    2013 年 5 巻 2 号 p. 49-55
    発行日: 2013/12/31
    公開日: 2024/01/24
    ジャーナル フリー
    不明熱の原因疾患は様々であり,確定診断に至らない症例も少なくない。近年,悪性腫瘍のみならず,感染症や自己免疫疾患の炎症巣の検索にもPET (Positron Emission Tomography)が有用であることが多く報告されており,不明熱診断への応用も期待されている。 今回,当科で経験した不明熱症例を後向きに調査し,不明熱診療におけるPET/CTの有用性について検討した。 平成 22 年 1 月 1 日から平成 25 年 3 月 31 日までの期間に,当科(外来/入院)で診療を行った不明熱患者 46 例のうち, PET/CTを行った 15 例(男性 9 例,女性 6 例,平均年齢 57.5 歳)を対象とした。 そのうち従来の画像検査で診断がつかずPET/CTが診断確定もしくは治療選択に大きく寄与した症例は 5 例であった。 大腸癌に伴う傍腫瘍症候群や高安動脈炎,肝膿瘍,リンパ腫様肉芽腫症など疾患は多彩であり,PET/CTが不明熱患者の診断や治療方針決定に大きく寄与する症例も存在する。
症例報告
  • 田中 佑樹, 古庄 憲浩, 永楽 訓三, 豊田 一弘, 小川 栄一, 村田 昌之, 林 純
    2013 年 5 巻 2 号 p. 56-61
    発行日: 2013/12/31
    公開日: 2024/01/24
    ジャーナル フリー
    症例は 70 歳代,女性。約 2 ヶ月間の腰痛,両下肢の疼痛,痺れ感で歩行困難となったため精査入院となった。 経過中,発熱,盗汗,体重減少は認められなかった。 血清LDHおよび血清可溶性インターロイキン 2 レセプターも基準範囲内であったが,MRIで第 4 腰椎に, PETで頭蓋内斜台に腫瘤性病変が認められた。 腰椎の針生検でCD20 陽性悪性リンパ腫(Diffuse large B cell lymphoma)と診断された。 Rituximab,Pirarubicin,Cyclophosphamide,Vincristine, Prednisoloneを併用したRT-COP療法により腰椎の腫瘤は部分寛解し,腰痛などの症状も速やかに改善した。
  • Takako Sakurai, Yukiko Watanabe, Akihiro Inui, Hiroko Oshima, Hiro ...
    2013 年 5 巻 2 号 p. 62-66
    発行日: 2013/12/31
    公開日: 2024/01/24
    ジャーナル フリー
    The liver fluke Fasciola hepatica that causes fascioliasis is a rare cause of hepatobiliary system infections. Human fascioliasis occurs after ingestion of the metacercaria on aquatic plants. We recently encountered a patient taking watercress with right lateral abdominal pain. Laboratory examinations showed eosinophilia. Abdominal CT revealed hypodense lesions in the liver. Microplate enzyme -linked immunosorbent assay (ELISA) for F. hepatica showed positive at a high titer, and diagnosis of fascioliasis was given. Triclabendazole was administered and progress was followed. After 5 months, eosinophil count had decreased and hypodense lesions in the liver on abdominal CT had reduced in size. Value of antibody against F. hepatica antigen was also decreased, showing that fascioliasis can be treated using triclabendazole.
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