日本病院総合診療医学会雑誌
Online ISSN : 2758-7878
Print ISSN : 2185-8136
13 巻, 2 号
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原著
  • 高橋 雄介, 長谷川 修, 鈴木 義夫, 長谷川 行健, 真壁 武一, 高山 研一, 石原 健司, 皆川 輝彦, 松本 悠, 加賀美 星子, ...
    2017 年 13 巻 2 号 p. 1-7
    発行日: 2017/09/30
    公開日: 2024/01/19
    ジャーナル フリー
    胃捻転は稀な疾患であるが,血流障害を介して胃の壊死や穿孔を来し,致命的な病態となりうる。著者らの 3 例の経験から,①急性に腹痛・腹部膨満,嘔吐を呈し,胃の拡張を伴う場合は,胃捻転を鑑別に挙げ,CTで精査を行う必要があること,②症状の軽い食道裂孔ヘルニアであっても胃捻転のリスクを抱えており,注意深く経過を観察し,必要に応じて待機的な手術を考慮すること,の 2 点が重要と考えられた。 症例 1 では胃の拡張が指摘されながら精査されず,状態が悪化して再受診後に緊急手術となった。症例 2 は内視鏡的に捻転解除に成功した症例である。症例 3 は高度の食道裂孔ヘルニアに伴う胃捻転で,いわゆる upside down stomachという状態であった。慢性状態の経過中,突然の胸痛と発熱が出現し,絞扼による胃穿孔が疑われて緊急手術となった。
  • 佐藤 郷子, 永田 博明, 田代 綾子, 千住 由美子, 安藤 則行, 田中 眞紀
    2017 年 13 巻 2 号 p. 8-15
    発行日: 2017/09/30
    公開日: 2024/01/19
    ジャーナル フリー
    [背景]高齢化社会を背景に,病院や施設では,認知症の対応に苦渋し,その重要性が見直されている。 医療と福祉が一体化した中間施設としての介護老人保健施設(老健)においては,認知症周辺症状(behavioral and psychological symptoms of dementia:BPSD)への対応は,医療介護従事者の過剰な負担や在宅での家族の介護困難を招き,認知症患者自身の意にそぐわない結末となることが多いのが現状である。 [目的]BPSDの軽減を図る多様な対応を試み,入所者の ADL を改善し,介護の軽減と在宅復帰率を上げることを目的とした。 [方法と結果]施設独自の在宅復帰サポートパスを導入し,問題点を可視化した。脳活性化リハビリテーションにより改訂長谷川式簡易知能評価スケー ル(Hasegawa Dementia ScaleRevised:HDS-R)の上昇と認知症行動傷害尺度(Dementia Behavior Disturbance Scale:DBD)の減少を認めた。精神科連携による睡眠導入剤の見直しで昼夜逆転が改善された。以上より,在宅復帰率は 36.8%から 52.3%と上昇した。 [結語]BPSDへの取り組みは質の高い医療と福祉を提供することにつながると考える。
症例報告
  • 川岸 直樹, 原田 猛, 楯 秀貞
    2017 年 13 巻 2 号 p. 16-20
    発行日: 2017/09/30
    公開日: 2024/01/19
    ジャーナル フリー
    直腸のgastrointestinal stromal tumor(GIST)術後で,Trousseau症候群による歩行困難のため当院に救急搬送された症例を経験したので報告する。 症例は 69 歳男性。約 3 年前にMileʼs手術が施行され,術後,頭痛精査の為に撮影した脳MRIで多発小脳伷塞巣が認められ,Trousseau症候群と診断された。同時に多発肝転移も指摘された。その後,自宅から 120 km の距離を通院していたが,突然歩行困難となったため,当院へ救急搬送された。当院へは,数年間通院歴が無かった。当院入院後は,緩和医療に主眼をおき,約 2 ヶ月後死亡となった。癌の再発転移による末期症状に対する緩和医療は重要である。北海道の遠隔地では,他の医療機関で治療されていた末期癌患者が突然状態が悪化し,紹介状を持たずに地元の小規模病院へ救急搬送されることもある。緩和医療は,居住地の遠隔地病院でも可能であることを本人家族によく説明し,患者ニーズに合った医療を提供することが肝要である。へき地の小規模病院の総合診療医は,緩和医療の実践が必要と考えられる。
  • 森 和美, 朝長 元輔, 工並 直子, 大串 昭彦, 百武 正樹, 古川 尚子, 多胡 雅毅, 山下 秀一
    2017 年 13 巻 2 号 p. 21-24
    発行日: 2017/09/30
    公開日: 2024/01/19
    ジャーナル フリー
    腎盂腎炎と鑑別が困難な症状を呈し,造影CT検査で腎臓の辺縁不明瞭な腫瘤状の造影不良域を認め,急性巣状細菌性腎炎(acute focal bacterial nephritis;AFBN)と診断した若年女性の 2 症例を経験した。症例 1 は 20 歳女性,発熱と腰痛以外に頭痛と嘔気を伴い,症例 2 は 18 歳女性,発熱,右下腹部痛,排尿時痛以外に 頭痛と嘔吐を伴った。2 症例ともに造影CT検査でAFBNに典型的な画像所見を認め,抗菌薬を 3 週間投与し改善した。 AFBNは急性腎盂腎炎と腎膿瘍の中間に位置する疾患概念であり,発熱,腰背部痛に加えて,頭痛,腹痛,嘔吐などの全身症状が目立つ点において,急性腎盂腎炎と鑑別が困難な場合がある。AFBNは 3 週間程度の十分な期間の抗菌薬投与を行わなければ再発や腎杯変形などの後遺症をきたしうる。総合診療医は AFBNの病態と特徴,リスク因子を知り,適切な診断と治療を行う必要がある。
短報
臨床経験
  • 川岸 直樹, 原田 猛, 楯 秀貞
    2017 年 13 巻 2 号 p. 29-33
    発行日: 2017/09/30
    公開日: 2024/01/19
    ジャーナル フリー
    北海道の遠隔地である道南地区に存在する今金町国保病院において 2013 年 4 月から 2017 年 3 月までの救急搬送を調査した。当院における年間の救急搬入患者は 150 例程で,地域人口の減少にも関わらず,ほぼ横ばいであった。症例の 2/3 以上が 70 歳以上であり,1/3 が主として函館の 2 次救急以上の病院への転送を要した。 2015 年 2 月,函館にドクターヘリが導入され,迅速に 2 次以上の救急医療機関へ搬送可能と なった。その結果,生命を脅かされる脳卒中,心筋伷塞,急性腎不全など 15 例が迅速に搬送され,全例生存となった。日中の高度医療機関への転送は,ドクターヘリの運用開始で格段に時間短縮,人的保証がなされた。しかし,夜間や悪天候時の搬送,パラメデイカルも含めた人材運用には,まだ課題が残る。
総説(テキスト用)
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