75歳男性が,労作時の息切れを主訴に来院した。血液検査では,軽度貧血と血清アミラー ゼ軽度上昇を認めた。胸部X線で右大量胸水を認め,胸腔穿刺の結果,血性胸水であった。 造影CT検査では,膵仮性嚢胞を認めたが,影剤の血管外漏出は認めなかった。局所麻酔下胸腔鏡検査で,腫瘍と活動性出血は認めなかった。胸腔鏡検査後の造影CT再検査で,空気を含む膵仮性嚢胞を認められた。これら所見より,この嚢胞は縦隔を介して胸腔内に交通していると考えられた。胸水アミラーゼ値は, 17,710 IU/L と著明に高値を示した。以上より,本症例は,慢性アルコール性膵炎と縦隔内膵仮性嚢胞の胸腔内穿破に伴う右胸腔内出血と診断した。急性膵炎に準じた保存的治療にて水の再貯留は認められなかった。胸水や胸腔内出血を伴う縦隔内膵仮性嚢胞は,稀ではあるが,慢性膵炎に伴う重要な合併症の一つである。
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