日本病院総合診療医学会雑誌
Online ISSN : 2758-7878
Print ISSN : 2185-8136
8 巻, 1 号
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原著
  • 生田 卓也, 小林 知貴, 菊地 由花, 木村 一紀, 河原 章浩, 岩本 修一, 岸川 暢介, 横林 賢一, 菅野 啓司, 溝岡 雅文, ...
    2015 年 8 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 2015/03/31
    公開日: 2024/01/21
    ジャーナル フリー
    背景:広島西医療センターの様な地域中核病院の総合診療科の入院診療状況を把握し入院長期化に関連する要因を明らかにすることは重要である。 方法:2012 年 4 月から 2014 年 3 月までの入院患者について後ろ向きに調査検討を行った。 結果:入院患者のうち,75 歳以上の後期高齢者の割合が 7 割を超え,自宅以外からの入院が約 3 割,入院時のADL不良が約 6 割,肺炎を主とする呼吸器疾患が約 4 割を占めていた。 入院日数の中央値は 15.5 日で,入院日数短期入院群( 14 日以下)は 97 名,長期入院群( 15 日以上)は 117 名であった。 入院長期化に関連する因子について統計学的分析を行った所,単変量解析で,年齢 75 歳以上,ALB 3.5 g/dl未満,BMI 18.5 kg/m2未満,入院時ADL不良,自宅以外からの入院,呼吸器疾患が検出された。 多変量解析では入院時ADL不良,ALB 3.5 g/dl未満,BMI 18.5 kg/m2未満が有意な関連を示した。 結論:今回の検討で,ADL不良,低栄養状態が入院日数長期化に関連していることが示された。
症例報告
  • 坂中 博昭, 崎原 永志, 福田 佑, 長澤 佳郎, 鯵坂 和彦, 武岡 宏明, 鍋島 茂樹
    2015 年 8 巻 1 号 p. 8-12
    発行日: 2015/03/31
    公開日: 2024/01/21
    ジャーナル フリー
    66 歳女性。1 型糖尿病で維持透析を行っていた。 X年 1 月に整形外科で右足底骨性隆起切除術を施行後,創部感染を起こしたが治療により治癒した。 しかしその後も不明熱が持続するためX年 3 月 17 日に精査加療目的に当科紹介入院となった。 造影CTにて緊満した膀胱と左腎盂の著明な拡張を認めた。 無尿とのことだったが尿道カテーテルを挿入すると悪臭を伴う膿尿を大重に認めたため,cefepime,metronidazole,続いてmeropenemを投与した。 しかし改善ないため経皮的腎瘻を造設し洗浄を行ったところ速やかに解熱した。 膿腎症は水腎症に細菌感染が合併し腎実質の破壊と機能が廃絶した腎重症感染症である。 内科的治療単独では治癒不能で,外科的介入を検討する必要があるが,本症例では発熱の原因がわからす介入が遅れた。 不明熱患者では,たとえ無尿であったとしても,尿路感染の可能性も疑うことが大切であり,本症例のように膿腎症の場合は積極的に泌尿器科と協働すべきであると考えられた。
  • 宇根 一暢, 横崎 典哉, 田妻 進
    2015 年 8 巻 1 号 p. 13-17
    発行日: 2015/03/31
    公開日: 2024/01/21
    ジャーナル フリー
    24 歳女性,両下腿浮腫を主訴に来院。 20XX 年 11 月,来院 10 日前から両下腿に著明な浮腫か出現,両膝に軽度ではあるが疼痛も認めた。 来院前日,近医での血液検査で末梢血液中の白血球増多,好酸球増多を認めたため,翌日当科に紹介受診となった。診断に苦慮したものの,再診時にも継続して見られた好酸球の上昇と臨床症状が軽快傾向であった事から,好酸球性血管性浮腫の可能性を考え,皮膚生検を施行した。 病理所見では皮下脂肪組織内にごく軽度ではあるが好酸球の浸潤を認め好酸球性血管性浮腫と診断した。 治療としてトシル酸スプラタスト投与行ったところ,約 2 ヶ月の経過にて下腿の浮腫は改善し,再発はみられなかった。 外来診療の場で浮腫という比較的多い主訴に対しては,頻度が高く,治療の必要性の高い心・腎・肝疾患や甲状腺機能異常をはじめ多くの鑑別疾患が存在するが,本疾患も特徴的な臨床症状から診断できる重要な疾患であると思われる。
  • Motoo Kikuchi, Wakita Atsushi , Kyoji Senoo, Akira Kinoshita
    2015 年 8 巻 1 号 p. 18-23
    発行日: 2015/03/31
    公開日: 2024/01/21
    ジャーナル フリー
    Headache is a common symptom, and migraine in young women is a common condition correlating with periodical gonadal activity. A 34-year-old woman visited our ambulatory care with severe nuchal and right frontotemporal pain and nausea. Prior to her visit to our clinic, this patient was diagnosed with migraine and prescribed 2.5mg naratriptan hydrochloride tablets. Although her headache had worsened, no overt neurological functional deficits of the pyramidal tract, extrapyramidal tract, or cranial nerves were observed. A right temporal subdural hematoma (SDH) that spread to the frontal subdural space and surrounded the right cerebellar hemisphere was found on computed tomography and magnetic resonance imaging. In addition, a magnetic resonance angiography revealed an aneurysm at the C3 portion of the left internal carotid artery. The patient was prescribed oral drugs for hemostasis and her clinical course was followed; the lesions disappeared after 7 weeks. SDH is rare in young women, and unfavorable associations between triptans and serious vascular events, including ischemic cerebrovascular strokes, aneurysms, and artery dissections, have been reported in the Food and Drug Administration Adverse Event Reporting System database. Given the severity of potential complications, this case study suggests that triptans should be used with strict caution in migraineurs.
短報
  • 林田 仁至, 奈良 典子, 長谷川 修
    2015 年 8 巻 1 号 p. 24-27
    発行日: 2015/03/31
    公開日: 2024/01/21
    ジャーナル フリー
    2013 年 3 月からの 1 年間に,大学附属病院総合診療科を初診した 1,207 名のうち 134 名( 11 %)が発熱を主訴とした。 感冒様経過( 50 名)を含む広義の感染症 76 名,生理的体温と考えられた 38 名の 2 項目で発熱の 85 %を占めた。 その中には感染性心内膜炎 4 名を含んだ。感冒様経過と生理的体温の 88 名( 66 %)は,特定の医療的介入を必要としなかった。 生理的体温 38 名のうち 23 名( 61 %)に精神科的背景を認めた。 紹介状なしでの受診は 24 名あったが,医療的介入を要したのは 2 名(8.3 %)のみで,紹介状ありの 110 名中 44 名( 40 %)より低率であった(p<0.01)。発熱患者には,感冒と生理的体温が多い一方で,感染性心内膜炎などの重篤な疾患の比率も高いと考えられた。 紹介状持参を原則とする状況下で,患者の希望による受診の多くは身体的医療処置を必要としない点が数値化された。
  • 岩田 史歩子, 奈良 典子, 長谷川 修
    2015 年 8 巻 1 号 p. 28-30
    発行日: 2015/03/31
    公開日: 2024/01/21
    ジャーナル フリー
    大学附属病院総合診療科で 1 年間に院内他科から併診され終診に至った 155 名につき調査した。 78 名( 50 %)は主訴出現から 1 回の紹介元受診後速やかに当科に併診依頼されていた。 最終診断が紹介元科関連疾患であったのは 20 %のみで,80 %は紹介元科と関連のない最終診断に至った。 その多くは,当科介入により迅速に方針提示が出来たと考えられた。 併診目的は大きく次の 3 つに分けられた。 ①定期診療中に関連無い主訴が出現し併診に至ったもの, ②診断かついていない他科/他院からの紹介患者を自科疾患除外後併診に至ったもの, ③診断のための意見を求めての併診。 紹介元科によってそれぞれの割合が大きく異なり,診療科ごとに総合診療科に対して異なるニーズがあると考えられた。
  • 太組 由貴, 奈良 典子, 長谷川 修
    2015 年 8 巻 1 号 p. 31-34
    発行日: 2015/03/31
    公開日: 2024/01/21
    ジャーナル フリー
    当女性外来初診患者 140 名中,自らを更年期障害と疑って診断を求めた 40 歳から 55 歳までの 36 名を調査した。患者は,月経変化( 20 名,56 %),血管運動神経症状( 15 名,42 %),精神面の症状( 15 名,42 %)などを自覚した。 FSHを用いて卵巣機能を評価した結果,17 名( 47 %)はFSH 10 IU/mL未満と卵巣機能が保持されていた。 この 17 名は,診断の結果 12 名に精神の失調を認め,そのうち 8 名に精神科医療を要した。 月経周期が正常にも関わらす更年期障害を疑った 11 名のうち 8 名は卵巣機能が保持されていた。 この 8 名中 6 名( 75 %)は,精神面の症状自覚がない場合を含めて,精神の失調を持っと診断された。 43 歳以下で規則的な月経周期であることは,更年期を除外する上で有用な背景であった。 更年期と考えにくい女性が自ら更年期障害を疑って受診する場合,精神面の診断が重要と考えられた。
症例短報
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