日本病院総合診療医学会雑誌
Online ISSN : 2758-7878
Print ISSN : 2185-8136
16 巻, 1 号
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原著
  • 藤島 清太郎
    2020 年16 巻1 号 p. 1-6
    発行日: 2020/01/31
    公開日: 2024/01/12
    ジャーナル フリー
    急性期病院では,重症患者への対応力強化と収益改善のため,集中治療室(ICU)やハイケアユニッ(HCU)運用の効率化が求められている。当院は高度急性期病院であり,2013 年にHCU を増床し,2014 年から増設 HCU の管理を総合診療医・内科医・看護師のチームが担うようになり,後にメディカルスタッフと救急医も参画した。毎朝カンファレンスを行い,入室依頼には医師が直接対応する体制を取り,限られた病床の有効活用に努めた。今回,2017 年 1 月~ 2019 年 6 月までの期間の病床の運用状況を後ろ向きに解析した結果,HCU病床の運用効率は経時的に改善していることが確認された。また,緊急入院やステップダウン患者のみならず,ハイリスクの予定手術・インターベンション治療後の短期管理というニーズにも十分応えられていた。以上より,急性期病院におけるHCU病床管理への医師の参画は,運用の効率化に有用であり,病院総合診療医の役割にもなり得ると考えられた。
  • 金﨑 美代子, 金﨑 浩之, 小林 弘幸
    2020 年16 巻1 号 p. 7-14
    発行日: 2020/01/31
    公開日: 2024/01/12
    ジャーナル フリー
    肺癌は悪性新生物を原因とする死亡原因の上位に位置し,肺癌に関する医療紛争も多く存在すると考えられる。本研究では,判例検索データベースを用いて過去 20 年間の原発性肺癌に関する裁判例を解析した。検索し得た 34 事例のうち 16 件で患者側の請求が認容(一部認容を含む),18 件で棄却されていた。争点は,肺癌の発見や確定診断の遅れに関するものが多く,当該過失が認められる傾向も高かった。説明義務違反については 12 件で主張され争点化されやすい傾向にあったが,そのうち裁判所が認めたのは 4 件にとどまっていた。認容額は,死亡との因果関係が認められた事例では 2200 万円以上,死亡との因果関係は否定され延命利益が認められた事例では 550 万円から 880 万円,生存例では 450 万円から 550 万円が認められていた。肺癌発見までの診療過程に注力することが,医療紛争を予防する上で特に重要になると考えられる。
症例報告
  • 鈴木 諭, 周佐 峻佑, 大野 克也, 加藤 円, 飯島 研史, 佐久川 さつき, 徳田 安春
    2020 年16 巻1 号 p. 15-20
    発行日: 2020/01/31
    公開日: 2024/01/12
    ジャーナル フリー
    症例は 34 歳の女性。手足のしびれ,皮膚掻痒感,眼前暗黒感,嘔気,食欲低下,口腔内の異常感覚で内陸県の総合病院である当院総合診療科を受診し,経過観察目的に X 日入院となる。問診で X - 4 日に石垣島で購入した魚を喫食したことが判明した。本症例では殆ど筋肉が食べつくされており,骨や皮の残りを沖縄環境衛生研究所に送付し,液体クロマトグラフィータンデム質量分析法(liquid chromatography tandem mass spectrometry:LC-MS/MS 法)によりシガテラ毒素(ciguatera fish toxins:CTXs)が検出され,シガテラ魚類食中毒(ci- guatera fish poisoning, 以下 CFP)の確定診断に至った。症状は対症療法で改善傾向となり,入院 3 日目に退院とした。CFPは熱帯・亜熱帯の海産魚類による食中毒でCTXsにより引き起こされる。消化器症状,循環器症状,温度感覚異常,掻痒,筋肉痛,関節痛など様々な症状を呈するが,中でもドライアイスセンセーションが特徴的である。CFPは本邦では殆どが沖縄県からの報告だが,本症例のように南海魚を持ち込むことで内陸でも発症し得る。
  • 埴岡 裕介, 山上 啓子, 清水 克修, 中村 遼太, 中村 友之, 山田 明子, 関 香織, 後藤 仁志
    2020 年16 巻1 号 p. 21-27
    発行日: 2020/01/31
    公開日: 2024/01/12
    ジャーナル フリー
    体重減少を理由に 42 歳女性が当科外来を初診した。BMI 12.0 の著明なやせを認め,神経性食思不振症を強く疑った。精査目的に入院とし,除外診断のため下部消化管内視鏡検査を行ったがその夜より低血糖,低血圧を来し,たこつぼ型心筋症を発症した。たこつぼ型心筋症は様々なストレス因子により発症すると考えられているが,一般的に閉経後の女性に多い。これは女性ホルモンに心血管保護作用があり,閉経後はエストロゲンが低下するためと考えられている。本症例においては低血糖によるストレスが契機と考えるが,神経性食思不振症によるエストロゲンの枯渇もあったため,比較的若年でも発症したものと考えられた。神経性食思不振症は診断の際に器質的疾患,特に炎症性腸疾患や悪性疾患の除外を求められる。しかし,BMI 低値例に下部消化管内視鏡を施行したところ,低血糖を認める事が多いとの報告もあるため,適応は慎重に考える必要がある。
短報
特別寄稿
  • 甲斐沼 孟, 三井 秀紀
    2020 年16 巻1 号 p. 43-50
    発行日: 2020/01/31
    公開日: 2024/01/12
    ジャーナル フリー
    背景:初期臨床研修制度では,救急研修は必須習得になっているが,現実的には施設毎にその研修内容には差がある。 目的:当院の救急研修制度の現況を報告する。 内容:当院の救急診療体制は主に平日日勤帯で全救急患者の初期診療を救急専従医と各科救急当番医師が共同で行い,救急科研修中の初期臨床研修医は救急専従医指導下に様々な重症度の救急患者に対応する。救急外来での研修期間は基本的に 2 か月で,診察後に入院が必要な患者を原則担当科に振り分ける。各症例で鑑別診断を考慮し必要な検査を指示し,確実な診断を行い,各専門診療科へのコンサルテーション能力を鍛え,専門的治療を迅速に行う等の救急対応能力を養う事を目標としている。 考察:当院の初期研修医は確実な診断に必要な検査の判断や各専門科への迅速なトリアージ能力を養い,上級医の直接指導下で適切な治療方針の決定を習得できる。 結語:当院の救急研修現況を報告した。
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