日本病院総合診療医学会雑誌
Online ISSN : 2758-7878
Print ISSN : 2185-8136
4 巻, 1 号
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総説
原著
  • 渡邉 秀之, 平瀬 伸尚, 合田 英明, 河野 晴奈, 西川 寛, 迎 久美子, 有田 好之, 生山 祥一郎
    2013 年 4 巻 1 号 p. 26-32
    発行日: 2013/03/31
    公開日: 2024/01/24
    ジャーナル フリー
    関節リウマチ(RA)は骨・関節を炎症の主座とする全身性自己免疫疾患である。 炎症状態が持続すると骨破壊や身体活動性低下をきたすが,その病態形成にはInterleukin-6 (IL-6)の過剰産生が関わっている。トシリズマブはIL - 6 の作用を特異的に阻害するヒト化抗IL- 6 受容体抗体であり,そのRA治療における有用性は広く認められている。 当院において2009 年 5 月〜 2012 年 3 月までの間にトシリズマブ治療を導入した関節リウマチ症例に関して臨床的検討を行った。 症例は 14 例で男性 5 例,女性 9 例,平均年齢は 54.2 歳であった。 疾患活動性を表すSimplified Disease Activity Index(SDAI)の平均値は,37.7 であり高疾患活動性であった。疾患活動性は 3 年間の観察期間で平均SDAIが 37.7 から 12.5 へと低下し,改善を認めた。 観察期間中の中止例は 2 例で,中止理由は血小板減少症の増悪および悪性腫瘍の発見であった。 他の 1 例では経過中に重篤な感染症(下顎部蜂窩織炎および重症肺炎)を発症したが,回復後にトシリズマブを再投与し,その後は低疾患活動性を維持している。 当院でトシリズマブを導入したRA症例は病期の進行例が多く,高疾患活動性であったが,有意な治療効果を認めており,忍容性は高いと考えられた。 RAの生物学的製剤による治療が普及するにつれ,今後,総合診療医が治療に直接関与したり,治療中の患者を診療したりする機会も多くなると予測される。 本報告ではトシリズマブによるRA治療の有用性やリスクついて自験成績を検討し,総合診療医の今後の臨床に役立つと考えられる知見をまとめた。
  • 坂本 梨乃, 内藤 俊夫, 岡 芙久子, 齋田 瑞恵, 乾 啓洋, 上原 由紀, 三橋 和則, 磯沼 弘
    2013 年 4 巻 1 号 p. 33-39
    発行日: 2013/03/31
    公開日: 2024/01/24
    ジャーナル フリー
    【目的】 非HIV専門医がHIV感染を疑うべき患者を診た際に,その存在を想起したか,またHIV抗体スクリーニング検査を行ったか,について意識調査を実施し,非HIV専門医への啓発に繋げる。 【方法】 順天堂医院に勤務する医師 1,024 名と一般開業医 110 名を対象に無記名アンケートを行い,HIV抗体スクリーニング検査の実施状況を調査 【結果】 「原因不明の肺炎」,「梅毒」,「原因不明の伝染性単核症」など,背景にHIV感染を疑うべき疾患を診療しても,非HIV専門医ではHIV専門医に比しHIV抗体スクリーニング検査実施率が極めて低かった。 【結論】 HIV専門医では当然HIVの存在を疑うべき疾患であっても,非HIV専門医では大学病院の医師でさえも,抗体検査の実施率が低いことがわかった。HIV感染の早期発見のためには,HIV専門医以外の啓発活動を進める必要性があるが,非専門医はHIV患者の診療に携わる機会も少なく,いかに知識を共有できるかが課題となる。
症例報告
  • 宇根 一暢, 門前 裕子, 中川 五男, 田妻 進
    2013 年 4 巻 1 号 p. 40-45
    発行日: 2013/03/31
    公開日: 2024/01/24
    ジャーナル フリー
    意識障害を主訴に来院した気腫性腎盂腎炎の 2 救命例を経験した。 【症例1】63 歳女性。発熱と意識障害を主訴に救急搬送され,未治療の糖尿病に合併した急性腎盂腎炎の診断で入院した。 第 2 病日,腹部CT検査で左気腫性腎盂腎炎と診断し,経皮的ドレナージ術を施行した。 その後も状態の改善はなく,第 6 病日に左腎臓摘出術施行した。 その後は徐々に状態改善し,第 48 病日に退院となった。 【症例2】65 歳男性。糖尿病加療中,発熱に加え意識障害が出現し,救急搬送された。 腹部CT検査で右気腫性腎盂腎炎と診断,同日経皮的ドレナージ施行するも炎症反応の改善なく,右腎臓摘出術施行。術後,持続血液ろ過透析とエンドトキシン吸着療法を施行し,その後症状は改善,第 35 病日に退院した。気腫性腎盂腎炎は予後が非常に悪く,保存的加療に反応が乏しい場合には,経皮的ドレナージ術,さらには腎摘出術といった外科的治療が救命への鍵となると考えられた。
  • 加藤 禎史, 古庄 憲浩, 小川 栄一, 光本 富士子, 谷合 啓明, 豊田 一弘, 永楽 訓三, 林 純
    2013 年 4 巻 1 号 p. 46-49
    発行日: 2013/03/31
    公開日: 2024/01/24
    ジャーナル フリー
    症例は 47 歳,男性。毎年会社の検診で腹部超音波検査を受けていたが異常を指摘されたことはなかった。 X年 5 月検診の腹部超音波検査で膵の占拠病変を指摘され,腹部造影CT検査では膵体尾部に低吸収域が認められ,膵癌が疑われた。 しかし,内視鏡的逆行性膵管胆管造影では体尾部にかけて主膵管の狭細像が認められ,血清IgG4 の高値が認められたため,自己免疫性膵炎と診断された。 プレドニゾロンの投与にて,膵のびまん性腫大は縮小し,治療が著効した症例である。
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