日本病院総合診療医学会雑誌
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最新号
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原著
  • 庭野 元孝, 中谷 速男
    2024 年 20 巻 2 号 p. 81-86
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/04/28
    ジャーナル フリー
    【目的】療養型病院で院内死亡の転帰をとった高齢患者の寝たきり度と栄養療法を検討して,終末期高齢患者に対する適切な栄養管理の方針を探った。 【方法】2018年から5年間に院内死亡した高齢患者573人を対象に入院時の主傷病名,寝たきり度,入退院 1 ヶ月以内の血清アルブミン値,末梢血総リンパ球数,ヘモグロビン値を用いたCONUT変法で栄養不良レベルを検討。経口摂取,経腸栄養,末梢および中心静脈栄養の各生存期間を分析。 【結果】男性293人と女性280人の平均年齢・ 在院日数で,性差を認めた。入院時にC2の寝返りをうてない患者が66.5%,中~高度栄養不良の患者が73.8%を占めた。 栄養投与法別生存期間は, 経口摂取(117人) 12.4 ± 3.2, 経鼻胃管(159人)および胃瘻(94人)は16.0 ± 3.6,24.9 ± 7.2, 末梢(75人) および中心静脈栄養(128人)は2.5 ± 0.6, 6.8 ± 1.9ヶ月であった。 【結論】入院時にC2患者が2/3, 中~高度栄養不良患者が3/4を占めた。胃瘻患者の生存期間は24.9 ± 7.2ヶ月と長かった。
症例報告
  • 村山 佳那恵, 岩中 悠真, 永原 敬子, 渡邉 修一郎, 阿部 祥英
    2024 年 20 巻 2 号 p. 87-91
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/04/28
    ジャーナル フリー
    シスチン尿症は尿細管でのシスチン再吸収障害により尿路結石が形成される遺伝性疾患で,腰背部痛,血尿,サンゴ状結石などを呈する。今回, それらの症状なく, 姉の尿検査を契機に診断された姉妹例を報告する。症例1(姉)は9歳の女児である。溶連菌感染症に罹患後, 前医の尿検査でシスチン結晶が認められ, 当院を紹介された。尿中アミノ酸分析でシスチン濃度は 3868.9μmol/g·Crで,CT検査では両側に腎結石を認めた。症例 2(妹)は6歳の女児である。姉がシスチン尿症と診断され,尿検査を施行された。尿沈渣中にシスチン結晶を認め, 尿中シスチン濃度は2087.6μmol/g·Crであった。尿路結石は高血圧や慢性腎臓病のリスクがあり, 一般的に泌尿器科医の対象疾患である。しかし, シスチン尿症は遺伝性疾患で無症状でも小児期に早期発見できるため, 小児科医も総合診療医も日常診療において念頭に置くべき疾患である。
  • 川原 順子, 中田 祐輔, 仙田 聡子
    2024 年 20 巻 2 号 p. 92-97
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は43歳女性, シェーグレン症候群(Sjs)で膠原病内科通院中, 6年前(37歳)より低リン血症を認めた。Sjs によるFanconi症候群(FCS)と診断され, 経口リン製剤と活性化ビタミンDで治療されていた。補充にもかかわらず高度の低リン血症が継続していた。3年前(40歳),FGF23が32.7pg/mlでFGF23関連疾患のカットオフ値 30pg/mlを越えていたが,基準値から軽度の逸脱と判断された。リン補充量が次第に増加し,両足関節の疼痛が出現した。1年前(42歳)のFGF23値が53.7 pg/ml と異常高値を呈し,FGF23関連疾患と診断した。後天性発症からFGF23関連疾患のひとつである腫瘍性骨軟化症(TIO)を疑ったが, 腫瘍を同定できていない。筋骨格症状とリン利尿を伴う低リン血症の評価においてFGF23測定は必須である。TIOを含むFGF23 関連疾患は複数の診断障壁を内包することを念頭に置くべきである。
  • 中村 重徳, 小牧 卓司
    2024 年 20 巻 2 号 p. 98-102
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/04/28
    ジャーナル フリー
    約3年間, 甲状腺ホルモン高値, TSH低値を継続した46歳男性を経験した。甲状腺は推定重量52gと肥大していたが, TRAb, TSAb, TgAb, およびTPOAbはいずれも陰性であった。I-123甲状腺摂取率は高値で, シンチグラフィーではびまん性の甲状腺肥大を示した。TSHR(TSH receptor)遺伝子の検討では, Exon10のcodon523においてATC(Ile)からTTC(Phe)へのアミノ酸置換をヘテロに認めるバリアントが同定された。母, 姉も甲状腺機能亢進症を示し, TRAb, TSAb, TPOAbは陰性であった。ご家族の同意が得られず, 母と姉のTSHR遺伝子の検索はなされていないが, 今回の例では家族性の非自己免疫性甲状腺機能亢進症の存在が疑われた。現在, 本例の甲状腺機能はチアマゾールで良好にコントロールされているが, 非自己免疫性甲状腺機能亢進症では抗甲状腺剤により寛解導入はできず, 今後も慎重に経過を観察したい。
症例短報
総説
  • 木村 琢磨, 新村 健, 橋本 正良
    2024 年 20 巻 2 号 p. 111-117
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/04/28
    ジャーナル フリー
    我が国において増加しているMultimorbidity高齢者は,QOL低下, 入院の増加などと関連があり, 対策が急務である。入院診療は再評価と介入を開始する絶好の機会であり, 病院総合診療医が様々な専門職と協働して Multimorbidity高齢者の診療に関わる意義は大きい。入院中の臨床課題として, 1)誰(何科)が主治医になる (べき)か, 2)意思決定支援(Advance Care Planning), 3)退院支援, がある。念頭におくべき患者アウトカムへの対応として, 1)入院中の合併症予防, 2)ポリファーマシー対策, 3)うつスクリーニング, 4)不必要な救急受診の予防, 5)再入院の予防, 6)適切な在宅復帰・ケア移行, を意識する。これらを行う上で, 1)高齢者総合的機能評価(Comprehensive Geriatric Assessment:CGA), 2)フレイル評価, 3)治療負担の評価, が必須である。
特別寄稿
  • 白木 里織, 永松 裕一, 山根 隆志, 西澤 昭彦, 角谷 誠, 金澤 健司
    2024 年 20 巻 2 号 p. 118-124
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/04/28
    ジャーナル フリー
    反射性失神は失神の原因の中で多くの割合を占める。ヘッドアップティルト試験(head up tilt test;HUT)は反射性失神の診断のみならず, その病型診断により, 心抑制型失神におけるペースメーカ治療の有効性を予測する重要な検査であるが, 手技の煩雑さや再現性の問題から敬遠されがちである。 当院ではプロトコールの工夫により安定して実施可能となり, 検査件数も増加し診断に寄与している。原因不明失神の診断においてHUT1stとすることで,植込み型ループレコー ダーやペースメーカ植込みを回避できた症例も見られた。一方で, 既に植込み型心臓電気デバ イス留置中にもかかわらず失神を来す症例において反射性失神と確定診断し, 生活指導により改善が見られた。検査陽性患者では生活指導への意欲が高く, 失神回数の減少傾向がみられた。 当院での経験を紹介し, より多くの施設でHUTが実施されることを期待する。
  • 丹羽 文俊
    2024 年 20 巻 2 号 p. 125-128
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/04/28
    ジャーナル フリー
    臨床症状はどれくらい続くものなのか, 直感的な予測を説明すべく, 筆者は宇宙物理学者ゴットが提唱した「事象の地平線」理論の適応を試みた。この理論はある事象がどのくらいの期間続くかを確率的に予測するもので, 症状が発症してからの経過時間に基づき, その症状がその後どの程度の期間続くかを確率的に推定する。臨床症状は多様な要因に影響されるため, この理論の限界と可能性を理解した上で慎重に用いる必要があるが, 診療の方針決定や精査の必要性の判断における一助となることが期待できる。
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