日本病院総合診療医学会雑誌
Online ISSN : 2758-7878
Print ISSN : 2185-8136
15 巻, 5 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
症例報告
  • 鈴木 慶彦, 鈴木 貞博, 後藤 博久, 安村 匡弘, 児玉 亮, 鈴木 尚徳, 山川 淳一
    2019 年 15 巻 5 号 p. 434-441
    発行日: 2019/09/30
    公開日: 2024/01/12
    ジャーナル フリー
    報告する 2 症例は全身性強皮症(Systemic Sclerosis:SSc)の確定診断がつき,病期は萎縮期で吸収不良症候群と腸管麻痺のため入退院を繰り返していた。両症例とも手術歴があり全身性強皮症が腸管麻痺の 1 次的原因となったとは判断が困難である。臨床症状の改善に難渋し漢方治療を希望され紹介となった。症例 1 はすでに多くの漢方薬を投与されていたが効果不十分として中止されていた。強い冷えに注目し,真武湯証と診断した。症例 2 は初めて漢方薬の投与を受けた。著明なるい痩と不安焦燥感が強い状態に注目し,茯苓四逆湯証と 診断した。両症例とも器質的な疾患の改善は認めないが臨床症状は著明に改善した。今回使用した真武湯及び茯苓四逆湯について考察したので報告する。個人差を重視する漢方医学にもとづく診断を行うことにより臨床症状の改善がみられた。総合診療を実践するためには漢方医学的なアプローチも有効である。
  • 前田 光德, 沼尾 利郎, 志水 太郎
    2019 年 15 巻 5 号 p. 442-446
    発行日: 2019/09/30
    公開日: 2024/01/12
    ジャーナル フリー
    症例は 41 歳男性。Helicobacter pylori に対する 2 次除菌療法施行中に下痢,腹痛,下血がみられ入院となった。腹部CT検査では上行結腸から横行結腸に高度の浮腫状壁肥厚を認めた。入院後,絶食補液による保存的治療で対処したところ,入院 4 日目に症状は消失し,8 日目の下部消化管内視鏡検査では軽度の粘膜発赤と治癒傾向であり,翌日の 9 日目に軽快退院した。薬剤リンパ球刺激試験は,除菌薬のすべてが陽性であった。2 次除菌による出血性大腸炎の報告は稀とされているが,念頭におくべき疾患と考えられた。
  • 山下 諒, 泉 祐介, 高根 啓輔, 井村 峻暢, 村瀬 樹太郎, 山田 高広, 中田 浩二, 平本 淳
    2019 年 15 巻 5 号 p. 447-450
    発行日: 2019/09/30
    公開日: 2024/01/12
    ジャーナル フリー
    血球貪食性リンパ組織球症は免疫細胞の過剰な活性化により様々な症状を呈する疾患である。成人ではウイルス感染症,悪性リンパ腫,自己免疫疾患に伴うものが代表的である。ワクチン接種に起因する血球貪食性リンパ組織球症の報告は少なく,BCG接種後や麻疹ワクチン接種後の例などが報告されているのみである。今回我々はインフルエンザウイルスワクチン接種後に発症した血球貪食性リンパ組織球症の一例を経験した。インフルエンザウイルスワクチン接種後に早ければ 7 時間ほどでIFN-γをはじめとするサイトカインが上昇することが知ら れており,これにより血球貪食性リンパ組織球症が誘起された可能性が考えられた.インフルエンザウイルスワクチン接種後に血球貪食性リンパ組織球症が発症することは極めて稀であり,文献的考察を加えて報告する。
  • 井之上 杏奈, 森 健太, 村前 直和, 森 寛行, 乙井 一典, 坂口 一彦
    2019 年 15 巻 5 号 p. 451-455
    発行日: 2019/09/30
    公開日: 2024/01/12
    ジャーナル フリー
    症例は 77 歳,男性。過去に腸閉塞に対して外科手術を受けたことがあった。5 ヶ月前から下痢,腹部膨満感,食欲不振が出現し徐々に症状悪化した。2 ヶ月前から近医に入退院を繰り返したが,改善せず,胸腹水と下肢浮腫が出現し,当院へ転院した。腹部単純CT検査では小腸優位に広範囲の著明な腸管拡張を認めたが,上下部内視鏡検査では内腔に有意な所見がなく,経過から慢性偽性腸閉塞症(Chronic Intestinal Pseudo-Obstruction:CIPO)と考えられた。中心静脈栄養療法を行っていたが,カテーテル関連血流感染症を併発し,経腸栄養療法へ変更した。経腸栄養開始後 8 日目(第 32 病日)に比較的多量の下痢を認め,9 日目(第33 病日)に血便,その翌日(第 34 病日)に血圧低下を来たした。造影CTで門脈内ガスと消化管壁内気腫を認め,非閉塞性腸管虚血(NonOcclusive Mesenteric Ischemia:NOMI)と考えられた。同日死亡した。本症例より,CIPOにおける経腸栄養療投与速度や増量スピードは,NOMI合併のリスクと示唆された。
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