日本病院総合診療医学会雑誌
Online ISSN : 2758-7878
Print ISSN : 2185-8136
4 巻, 2 号
選択された号の論文の13件中1~13を表示しています
総説
  • 石塚 達夫, 森田 浩之, 梶田 和男, 森 一郎, 藤岡 圭
    2013 年 4 巻 2 号 p. 1-9
    発行日: 2013/06/30
    公開日: 2024/01/24
    ジャーナル フリー
    病棟診療の中で発熱患者の診断と治療,そして,リウマチ膠原病患者の診療,生活習慣病の中でも特に糖尿病診療と研究の一端を紹介する。 当科入院患者の 38 度以上の発熱疾患では約半数が感染症であり,約 20 %がリウマチ膠原病患者であり,残りは腫瘍熱,薬剤熱で 10 - 20 %が入院 3 日目でも原因を特定できない不明熱患者である。 問診では発症からの期間,随伴症状(関節痛,筋肉痛など),体重減少,そして感染機会,手術歴,抜歯歴,健診でのデータ,服薬内容,開始時期がポイントとなる。 身体所見では発疹(性状,圧痛の有無),粘膜診,関節腫脹,浮腫,扁桃・リンパ節・涙腺・顎下腺の腫脹,心・血管雑音,肺野のcrackle,腹部圧痛,肝脾腫,腎・骨叩打痛,意識レベル,髄膜刺激徴候などが必要であり,診断に検尿,白血球,CRP,タンパク分画,肝機能,腎機能,PCT,尿血液培養が有用である。 その後画像検査として胸腹部XP,US,CTが必要となる。 しばしば,PET-CT,シンチグラフィーが有用となる。 この中で,リウマチ,膠原病が疑われるなら,さらなる抗体検査が必要となる。 特に関節リウマチは身近な疾患であり,早期診断,早期治療への導入が患者の予後を決定すると考え,この疾患の特徴を十分に理解すべきである。 臨床研究に関しては,グルココルチコイド投与後の食後高血糖に対するインスリン治療が必要となる因子,そしてROC曲線の解析よりcut off値を検討した。 HbA1c 6.1 %(JDS),空腹時血糖 99 mg/dl,グルココルチコイド開始量 0. 74 mg/kg以上であればインスリン治療と成る可能性が示唆された。 今日,大学病院,基幹病院における総合内科のあり方が診療,教育,研究などに関して問われている。 病院総合診療医はこれらの充実にむけて,自らその指針を示さなければならない。
  • 塩見 利明, 内田(旧姓・前久保) 亜希子
    2013 年 4 巻 2 号 p. 10-14
    発行日: 2013/06/30
    公開日: 2024/01/24
    ジャーナル フリー
    ストレス社会の現代では,快適な睡眠,すなわち「快眠」をとることが人間性を回復させるためにとても大切である。 睡眠障害は,日常の勉学や仕事の能率低下,さらにヒューマンエラーという人災の背後に潜むので,その悪影響については総合診療医も周知すべきである。 医療の分野でも遂に,生活習慣(ライフスタイル)改善の三本柱の一つとして 1.栄養療法や 2.運動療法と同様に, 3.睡眠療法を重視すべき時代が到来してきた。 本格的な睡眠医療の普及は,高血圧や糖尿病という生活習慣病の予防・治療にまで有益であることが多数の研究報告により徐々に明らかにされている。 睡眠医療の最前線の立場(睡眠科)から,今回は総合診療医に向けた近年の睡眠関連の話題を紹介する。
  • 能登 洋
    2013 年 4 巻 2 号 p. 15-19
    発行日: 2013/06/30
    公開日: 2024/01/24
    ジャーナル フリー
    EBMは工ビデンス(実証)の妥当性と信頼性を評価したうえで臨床判断の基準とするアクションである。 この普遍的・総合的なアプローチにより,未知の臨床問題に出会ってもそれぞれの症例で最善の検査・治療法を客観的に選択して患者中心の医療の実践を目指す。 EBMという呼称は人口に膾炙するようになってきたが,その実践法は必ずしも正しく理解されていない。 そもそも医療はartとscienceからなり,そして臨床の中心はあくまで患者である。 この立場から従来の判断根拠の置き方を振り返ると,必ずしも患者の臨床的便益を考えてなかったり検査偏重主義になってしまったり,時には危険な治療さえ行ったりしていることに気づく。 すなわち病態生理学には限界がある。また,医師個人の知識・経験は限られているし,偏っている。 いみじくもヒボクラテスの言葉に「First, do no harm.」,「経験は欺く。故に判断は難しい。」とある。 EBMの根源はここにある。 さらに,工ビデンスを適確に評価できないと工ビデンスに使われてしまうことすらある。個々の患者への適用に関してはその患者の安全性と効用・合併症・予後なども十分に検討し,ヒューマン・ファクターを加算しなければならない。EBMは患者に始まり,患者に帰着する。
  • 代田 浩之, 吉原 琢磨
    2013 年 4 巻 2 号 p. 20-24
    発行日: 2013/06/30
    公開日: 2024/01/24
    ジャーナル フリー
    我が国では,動脈硬化性疾患が死因の 27 %を占めると報告されており,この割合は悪性腫瘍による割合とほば同等である。 多くの疫学研究,臨床研究,介入試験に基づいて,1988 年に米国でNational Cholesterol Education Program(NCEP)がコレステロール低下療法の系統的ガイドラインとして発表された。 その後,NCEPは最新の工ヒデンスも基づき,1993 年(NCEP-ATPIl),2001 年(NCEP-ATPIII),2004 年と改訂された。 我が国では, 1997 年に初めて「高脂血症診療ガイドライン」が作成され,その後の久山町研究やJapan Lipid Intervention Trial(J-LIT)に基づいて,2002 年に「動脈硬化性疾患診療ガイドライン」が発表された。 その後,NIPPON DATA80 という疫学調査研究やMEGA試験,JELISに代表される介入試験の工ビデンスが加わり,2007 年にガイドラインの改訂が行われてきた。 今回の「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2012 年版」では,主な改訂点としては, ①診断基準境界域の設置, ②絶対リスク評価による患者の層別化, ③動脈硬化性疾患の包括的管理, ④高リスク病態の明示, ⑤non HDLコレステロール(non HDL-C)の導入があげられる。 今回の改訂では,リスクの高い症例に対して,より積極的な治療を行っていくことを原則として作成されている。特に,糖尿病,メタボリックシンドローム,慢性腎臓病(CKD),急性冠症候群,脳血管障害・末梢動脈疾患(PAD),そして喫煙を二次予防における高リスク因子として規定している。 今回のガイドラインには,これらのリスク因子を有する症例やリスク重積例についてはよりリスクが高いとして,より積極的な治療を検討すべきというメッセージが付されている。
  • 加計 正文
    2013 年 4 巻 2 号 p. 25-28
    発行日: 2013/06/30
    公開日: 2024/01/24
    ジャーナル フリー
    糖尿病の治療の目的は健康な人と変わらない日常生活の質と寿命の確保である。 これは長期予後の改善を目的とするものであるが,一方ではストレス時の短期予後改善も重要である。 例えば急性心筋梗塞で入院した患者の短期予後として病院滞在期間や冠動脈バイパス手術等の緊急手術の割合等は来院時の血糖値と関連するといわれている。 そのような急性期の治療としての血糖管理も短期予後の決定因子として注目されなくてはいけないとすれば,糖尿病の管理は短期予後と長期予後の改善を目的として治療計画を立てる必要がある。 本学会録ではこのような視点から糖尿病の短期的長期的予後改善に向けてプライマリケア領域の医療者に役立つ血糖管理法についてまとめてみたい。
原著
  • 中谷 信一, 鳥飼 圭人, 廣瀬 雅宣, 酒井 翼, 山﨑 行敬, 稲村 祥代, 根本 隆章, 小林 秀俊, 西迫 尚, 川田 剛裕, 中川 ...
    2013 年 4 巻 2 号 p. 29-35
    発行日: 2013/06/30
    公開日: 2024/01/24
    ジャーナル フリー
    今後のリンパ節腫脹例の診療に役立てるために,リンパ節生検施行例を再検討した。 対象は総合診療内科で 3 年間にリンパ節生検を実施した 16 例である。 内訳は悪性リンパ腫 10 例,adult T-cell leukemia/lymphoma 1 例,癌リンパ節転移 2 例,Still病 1 例,菊池病 2 例であった。 リンパ節腫脹 4 領域以上の 8 例はすべて悪性,うち 5 例が死亡例であった。 4 領域以上のリンパ節腫脹は予後不良因子といえる。 摘出リンパ節の容積平均は 1678. 8mm3,うち診断困難であった 3 例はいずれも 400 mm3未満で,Hodgkinリンパ腫,angioimmunoblastic T-cell lymphomaが含まれた。 リンパ節内で腫瘍細胞が散在し部分的に増生することがあるため,生検材料の大きさは重要で,病理診断には生検材料400mm3以上の大きさが望ましいと考えた。 工コーを施行された 12 例での正診率は 91.7 %であった。 良性・悪性の鑑別にリンパ節工コーが有用であった。
症例報告
  • 西村 光滋, 田中 祐貴, 世戸 博之, 浅川 俊, 服部 素子, 豊国 剛大, 三好 園子, 久保川 修, 森 寛行, 安田 尚史, 金澤 ...
    2013 年 4 巻 2 号 p. 36-40
    発行日: 2013/06/30
    公開日: 2024/01/24
    ジャーナル フリー
    症例は既往にクローン病があり前医で抗ヒトTNFαモノクローナル抗体製剤(インフリキシマブ)を使用され臨床的寛解が得られていた 25 歳女性。 発熱,咽頭痛にて加療中,皮疹と意識障害が出現したため原因精査加療目的で当院へ転院となった。 抗ヒトTNFαモノクローナル抗体製剤使用中であり細胞性免疫抑制状態と考えられたため,細菌性,ウイルス性,結核性の髄膜炎を念頭に治療開始。 意識状態は改善を認めるも発熱,咽頭痛,皮疹が持続し,自己免疫性の機序が考えられた。 皮膚の病理検査にてneutrophilic dermatitisと診断され,スイート病の診断基準に合致,コルヒチンを投与したところ症状は速やかに改善を認め退院となった。 クローン病とスイート病の合併を示す報告は複数あり,自己炎症性疾患との関連が疑われた。 クローン病の既往がある患者に発熱,皮疹,咽頭痛が出現した場合,感染,クローン病の増悪と共にスイート病の併発も鑑別として挙げる必要があると考えられた。
  • 武田 倫子, 大西 八郎, 澤山 泰典
    2013 年 4 巻 2 号 p. 41-44
    発行日: 2013/06/30
    公開日: 2024/01/24
    ジャーナル フリー
    症例は 71 歳男性。前立腺癌の治療中に糖尿病の悪化,嚥下・開口障害を認め入院となった。 低K血症があり,内分泌学的検索を行ったところAdrenocorticotropic hormone(ACTH) ,Cortisol共に高値であり,精査にて異所性ACTH症候群の診断となった。 前立腺癌治療中に発症し,他の悪性腫瘍を認めなかったため前立腺癌が原疾患と考えられた。 また,ステロイド合成阻害薬であるメチラポンが著効したか,長期にわたる高Cortisol血症により精神症状や重症感染症を合併し予後は不良であった。
  • 加藤 禎史, 古庄 憲浩, 村田 昌之, 小川 栄一, 光本 富士子, 熊手 絵璃, 谷合 啓明, 豊田 一弘, 林 純
    2013 年 4 巻 2 号 p. 45-49
    発行日: 2013/06/30
    公開日: 2024/01/24
    ジャーナル フリー
    症例は 25 歳,男性。10 歳代より飲食業に従事し,同性間および外国人女性との不特定多数の性交渉があった。X年 11 月,発熱,突然の吸気時の左胸痛および呼吸苦を自覚し,胸部X線で肺炎,左気胸を指摘された。 胸腔ドレナージが施行され,肺炎に対し抗菌薬の静脈内投与が開始されたが改善なかった。 血清β-Dグルカン値やLDH値の上昇,さらに気管支肺胞洗浄にてPneumocystis jirovecii DNA陽性(PCR法) が認められ,ニューモシスチス肺炎と診断された。 HIV抗原抗体陽性,血清HIV RNA量 81 万コピー/uL,CD4 数 21 /uLと後天性免疫不全症候群であった。 ST合剤,ステロイドパルス,酸素投与,胸腔ドレナージなどにより救命し得た。
  • 畑島 梓, 古庄 憲浩, 光本 富士子, 小川 栄一, 豊田 一弘, 谷合 啓明, 貝沼 茂三郎, 岡田 享子, 村田 昌之, 林 純
    2013 年 4 巻 2 号 p. 50-54
    発行日: 2013/06/30
    公開日: 2024/01/24
    ジャーナル フリー
    症例は,75 歳男性,X- 3 年より両手指腫脹と頸部痛が出現し,近医で関節リウマチと診断されprednisolone (PSL)とmethotrexateの内服が開始された。 その後,増悪軽快を繰り返す胸水貯留,発熱,汎血球減少が認められ,X年 4 月,最終的に高齢発症のSLEと診断された。 PSLの増量にて症状や異常所見は消失した。 PSLを漸減中に両下肢脱力が出現し,X年 9 月,ステロイドミオパチーと診断された。 PSLの減量にて下肢脱力は消失した。X + 1 年 7 月に真菌感染症,心室細動を合併し永眠した。 SLEは若年女性に多いが,高齢者においても鑑別に挙げる必要があり,免疫抑制剤投与による合併症が問題点である。
  • 山嵜 奨, 古庄 憲浩, 小川 栄一, 酒見 倫子, 熊手 絵璃, 豊田 一弘, 谷合 啓明, 岡田 享子, 貝沼 茂三郎, 村田 昌之, ...
    2013 年 4 巻 2 号 p. 55-59
    発行日: 2013/06/30
    公開日: 2024/01/24
    ジャーナル フリー
    症例は 62 歳,男性。 発熱・呼吸困難・全身浮腫を呈し,FDG-PETで腫大した頸部・両腋窩・腹腔内リンパ節に多数の高集積部位が認められた。 頸部リンパ節の生検より硝子血管型Castleman病と診断された。 同リンパ節摘出後,症状の改善及びすべてのリンパ節腫大の自然縮小が認められ,頸部リンパ節が本症の様々な全身所見を引き起こしていたものと考えられた。
症例短報
ワークショップ報告
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