平成 28 年熊本地震で,機能不全に陥った被災地病院からの入院患者の同時多数転院搬送受入れを経験した。佐賀大学医学部附属病院では 13 名の患者受入れを総合診療部で行った。13 名のうち 3 名は重傷であったため当院へ入院とし, 10 名は他の医療機関へ転送した。本件では被災地や転送元病院,佐賀県DMAT調整本部などからの情報の不足・錯綜とそれによる現場の混乱が課題として挙げられた。また実際に現場対応を行うことで,総合診療部医師の災害医療に対する習熟度の低さを実感した。大学病院のような高次医療機関で総合診療部が主体となって 2 次救急患者の診療を行い救急部門やその他の専門診療部門の負担を減らすことは,それらの部門が本来果たすべき役割である 3 次救急医療や専門診療に専念するために非常に重要なことであると思われる。病院総合診療医は災害医療での自分の役割を十分に認識し,訓練を行うことが重要であると考えられた。
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