日本病院総合診療医学会雑誌
Online ISSN : 2758-7878
Print ISSN : 2185-8136
11 巻, 2 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
原著
  • 庭野 元孝, 村田 升
    2016 年 11 巻 2 号 p. 1-8
    発行日: 2016/12/31
    公開日: 2024/01/19
    ジャーナル フリー
    急性期病院内科に入院した高齢者患者の栄養サポート前後すなわち栄養サポートチーム (NST)介入開始時と終了時における摂食嚥下状態を藤島スケールで検討して,サポート終了時の栄養法を調べた。 対象は 2013 年 4 月から 3 年間,NST介入患者 690 例中,65 歳以上の 670 例で,全体 の77 %を占める内科患者を対象に,肺炎群と非肺炎群に分け,性別・年齢で比較検討した。 介入終了時にGr. 6 以上の全患者( 3 食の嚥下調整食の経ロ摂取可能) 177 例中 11 例が原病悪化で在院死したが,他は全員経ロで退院したので,介入終了時にGr. 5以下の患者に着目した。 Gr. 5 以下の肺炎男性患者では,4 例中 1 例強が在院死,3 例中 1 例が経ロ退院,残りはAHN (人工的水分・栄養補給法)が必要で,肺炎女性患者,男女非肺炎患者では,2 例中 1 例が経ロ退院,5 例中 1 例弱が在院死,残りの 3 例中 1 例弱にAHNが必要だった。なお,経ロ退院の患者・家族は,AHNを選択せずに自然な形の経過観察を望んだ患者であった。
  • 浅田 眞弓, 内藤 俊夫, 小林 弘幸
    2016 年 11 巻 2 号 p. 9-20
    発行日: 2016/12/31
    公開日: 2024/01/19
    ジャーナル フリー
  • 廣瀬 雅宜, 中川 禎介, 西迫 尚, 鳥飼 圭人, 内藤 純行, 萩原 卓, 大坪 毅人, 中島 康雄, 松田 隆秀
    2016 年 11 巻 2 号 p. 21-27
    発行日: 2016/12/31
    公開日: 2024/01/19
    ジャーナル フリー
    目的:分枝型膵管内乳頭粘液性腫瘍(Intraductal Papillary Mucinous Neoplasm ; IPMN) の自然経過を調査検討する。 方法:2 年間に当院の画像検査にて分枝型IPMNと診断され,1 年間以上の経過観察をされていた 325 例を対象に後方視的に観察し,嚢胞径の経時変化を調査した。また,増大群と非増大群の 2 群に分け,観察開始時の嚢胞径,背景因子の差を比較した。 結果:観察開始時の嚢胞径は 5 mmから 102 mmで,観察期間は 1 年間から 12 年間であった。増大群は 147 例( 45 % ) ,非増大群は 178 例( 55 % ) であり,2 群間で観察開始時の嚢胞径に差はなかったが,年齢は増大群で有意に高値であった。増大群のみに注目し,嚢胞径と径の変化を調査すると有意な関係が認められ,15 mm以上と 15111111 未満の病変を比較すると 15 mm以上では単位年あたりの嚢胞径の増大速度が大きかった。 結論:増大する分枝型IPMNは嚢胞径が大きいほど増大する速度が大きく,特に高齢者は慎重な経過観察が必要である。
  • 内藤 純行, 廣瀬 雅宜, 荻原 卓, 中川 禎介, 吉田 美貴, 川口 智也, 池田 昌隆, 石川 ベンジャミン光一, 辻 哲夫, 松田 ...
    2016 年 11 巻 2 号 p. 28-40
    発行日: 2016/12/31
    公開日: 2024/01/19
    ジャーナル フリー
    大都市圏型人口推移を示す神奈川県において,「地域医療構想」で求められる医療機能の必要量を含めた将来を見据えた地域の医療・介護の需要を,各指標を設けて検討した。そして,結果を地理情報システムGeographic Information System (GIS)ソフトを用い,医療・介護の需給バランス,過不足を評価すると共に可視化を行った。その結果,神奈川県においては75歳以上人口の増加に伴い2040年に向けて医療・介護の各資源が不足すること,また地域による不足の程度,ばらっきが大きいことが示された。訪問看護ステーション,介護施設,居住系の指標では,ほば県下全域で不足傾向が示され,その充足には在宅と施設との枠組みの抜本的な見直しも含め,地域を再構築する必要性が示唆された。GISによる可視化は多職種間の話し合いや課題の確認等の際に有用と考えられた。
症例報告
  • 大串 昭彦, 山元 美季, 大石 透, 工並 直子, 藤原 元嗣, 山下 秀一
    2016 年 11 巻 2 号 p. 41-45
    発行日: 2016/12/31
    公開日: 2024/01/19
    ジャーナル フリー
    胸水貯留は,原因により治療方針が異なり,その鑑別は重要である。今回,著者らは高齢男性の右片側性胸水貯留患者で胸水の試験穿刺を行い,Lightの診断基準では滲出性胸水に分類されたが,胸水NT-pro-BNP値から心不全による胸水と診断し得た貴重な 1 例を経験した。症例は 82 歳,男性。3 ー 4 日程前より咳嗽・呼吸困難感を自覚し,胸部単純写真で右片側性胸水貯留を認めた。胸水の試験穿刺を施行したところ,Lightの診断基準では滲出性胸水に分類されたが,胸水NT-pro-BNPは1396Pg/mlであり,血WNT-pro-BNPと同様に上昇していたことから,心不全による胸水と診断した。総合診療医はLightの診断基準では,滲出性胸水を確定診断できない場合があること,胸水NT-pro-BNPは心不全による胸水の診断に有用であることを知っておく必要がある。
短報
総説
  • 多胡 雅毅, 古川 尚子, 松永 知世, 山下 駿, 佐藤 奈緒, 内藤 優香, 相原 秀俊, 工並 直子, 山下 秀一
    2016 年 11 巻 2 号 p. 48-52
    発行日: 2016/12/31
    公開日: 2024/01/19
    ジャーナル フリー
    平成 28 年熊本地震で,機能不全に陥った被災地病院からの入院患者の同時多数転院搬送受入れを経験した。佐賀大学医学部附属病院では 13 名の患者受入れを総合診療部で行った。13 名のうち 3 名は重傷であったため当院へ入院とし, 10 名は他の医療機関へ転送した。本件では被災地や転送元病院,佐賀県DMAT調整本部などからの情報の不足・錯綜とそれによる現場の混乱が課題として挙げられた。また実際に現場対応を行うことで,総合診療部医師の災害医療に対する習熟度の低さを実感した。大学病院のような高次医療機関で総合診療部が主体となって 2 次救急患者の診療を行い救急部門やその他の専門診療部門の負担を減らすことは,それらの部門が本来果たすべき役割である 3 次救急医療や専門診療に専念するために非常に重要なことであると思われる。病院総合診療医は災害医療での自分の役割を十分に認識し,訓練を行うことが重要であると考えられた。
  • 土橋 卓也
    2016 年 11 巻 2 号 p. 53-57
    発行日: 2016/12/31
    公開日: 2024/01/19
    ジャーナル フリー
    高血圧の診断は,診察室血圧N 140/90 mmHg,家庭血圧N 135/85 mmHgでなされるが,両者の診断が乖離する場合は,家庭血圧を優先する。診察室血圧は管理良好でも家庭血圧,特に早朝血圧が高い仮面高血圧は心血管リスクの高い病態であり,適切な治療が必要である。生活習慣修正のなかでも減塩 6 g /日未満が,もっとも重要であり,食事内容の評価(入口調査)と尿中食塩排泄量の測定(出口調査)の両者を併用して指導することが有効である。降圧治療の第一選択薬としてはCa拮抗薬,アンジオテンシン Ⅱ受容体拮抗薬(ARB) ,利尿薬が使用され,併用療法を行う際には,配合剤を有効利用してアドヒアランスの維持を図りながら降圧を強化することが望ましい。ガイドラインが提示する年齢,合併症,臓器障害に応じた降圧目標の達成を目指して緩徐かつ安定したな降圧を心がけることが重要である。
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