日本病院総合診療医学会雑誌
Online ISSN : 2758-7878
Print ISSN : 2185-8136
16 巻, 2 号
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原著
  • 鳥飼 圭人, 土田 知也, 廣瀬 雅宣, 内藤 純行, 家 研也, 中川 禎介, 松田 隆秀
    2020 年 16 巻 2 号 p. 56-61
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2024/01/12
    ジャーナル フリー
    目的:大学病院に設置された総合診療内科初診外来において,入院となる危険因子の検討を目的とする。 方法:対象は聖マリアンナ医科大学総合診療内科において 2018 年 1 年間の初診外来患者 683 名で,後ろ向き研究を行った。初診日から 1 週間以内の入院と,先行研究を参考に臨床的に重要と考えた因子との関連について検討した。 結果:初診日から 1 週間以内の入院は 683 名中 60 名(8.8%)であった。多変量解析(ロジスティック回帰分析)で入院となった有意な因子は,年齢 65 歳以上(OR 2.871,95CI 1.512-5.451),紹介状を持参して受診(OR 2.456,95CI 1.214-4.965),主訴が発熱(OR 2.206,95CI 1.174-4.143)であった。 結論:大学病院総合診療内科初診外来において,年齢 65 歳以上,紹介状を持参して受診,主訴が発熱であることが入院となる危険因子である。
症例報告
  • 鳥飼 圭人, 内藤 純行, 伊藤 絵理, 土田 知也, 中川 禎介, 松田 隆秀
    2020 年 16 巻 2 号 p. 62-66
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2024/01/12
    ジャーナル フリー
    88 歳の男性,39 ℃の発熱を主訴に来院した。外来で尿路感染症が考えられ,尿培養,血液培養を採取後,ST合剤が処方され帰宅となった。第 4 病日に血液培養が陽性となり,グラム陽性連鎖球菌が見られたため入院となった。血液培養からStreptococcus constellatusが同定された。呼吸器系,消化器系,心内膜等の検索では,感染巣を示唆する所見はなく,いずれも否定的であった。口腔内の観察では,右下第 1,2 臼歯が破折していた。歯科受診の結果,菌血症の原因として矛盾せず抜歯の適応であった。アンピシリン / スルバクタム点滴静注を開始し,抜歯を行い,アンピリシン点滴静注へ変更し,合計 14 日間の抗菌薬治療で軽快した。Streptococcus constellatusはStreptococcus milleri groupの一つであり,口腔内に常在し,呼吸器,消化器,口腔内感染症,感染性心内膜炎などの起因菌である。高齢者の発熱の原因として歯性感染症の可能性を考え,口腔内の観察を行うことが重要である。
  • ゴルべヴ 美菜子, 兒玉 達樹, 竹永 清人, 愛須 紀子, 梶谷 雅子, 南 次郎, 鈴木 恵一郎, 南 信明, 山川 泰, 松下 尚憲
    2020 年 16 巻 2 号 p. 67-71
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2024/01/12
    ジャーナル フリー
    日本における髄膜炎菌肺炎の報告は数少ない3)4)5)8)。しかしながら健康保菌者は人口の 0.4 %程度であると考えられ11),飛沫感染で接触者への肺炎感染が成立しうる5)。今回,保菌者とみられる独居高齢者が不衛生な環境に数日間単独で閉じ込められた後に髄膜炎菌肺炎を発症した 1 例を経験した。市中肺炎の喀痰グラム染色でグラム陰性双球菌をみた場合,髄膜炎菌が起炎菌である可能性も念頭におくべきである。
  • 増井 健太朗, 片山 順平, 唐澤 隆明, 侯 金成, 松田 陽介, 綿貫 真理愛, 今福 俊夫
    2020 年 16 巻 2 号 p. 72-76
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2024/01/12
    ジャーナル フリー
    症例は 71 歳女性で,うつ状態による自傷後に,精神科に入院していた。発熱を主訴に当院を受診した。血液検査では白血球増多とCRP上昇を認め,尿沈渣では白血球が検出された。頸部~骨盤部造影CT検査を施行したところ,両側腎臓に楔状~巣状の造影不良域を認め,急性巣状細菌性腎炎(acute focal bacterial nephritis:AFBN)と診断した。82 日間の点滴および内服による抗菌薬投与にて治癒した。
  • 山之上 弘樹, 三鬼 慶太, 鈴木 尚亨, 中塚 詔子, 嘉手納 滿雄, 相澤 信行
    2020 年 16 巻 2 号 p. 77-80
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2024/01/12
    ジャーナル フリー
    症例は 61 歳男性,糖尿病性腎症で維持透析を行っていた。X 年 5 月○日血尿と発熱出現,血液検査でWBC 9400/μL,CRP 2.03 mg/dL,尿検査上膿尿を認めた。腹部CTで膀胱と前立腺に気体を認め,前立腺には膿瘍を認めた。また,前立腺膿瘍と膀胱は交通していた。CT所見より気腫性前立腺炎と膀胱穿通,それに伴う気腫性膀胱炎と診断し 4 週間の抗菌薬治療で改善した。気腫性前立腺炎は前立腺内に膿瘍とガスが貯留する極めてまれな疾患であるが,死亡率 25 %とされる重篤な疾患である。抗菌薬と膿瘍ドレナージでの加療が一般的である。本症例は膀胱に穿通することによりドレナージがなされ外科的侵襲を加えることなく治癒できた,希少な例と考え報告する。
短報
総説
  • 松村 俊二, 槙坪 良時, 法西 美果, 辻 直樹, 松田 賢介, 重信 友宇也, 山岡 直樹, 田妻 進, 伊藤 公訓
    2020 年 16 巻 2 号 p. 98-106
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2024/01/12
    ジャーナル フリー
    プライマリ・ケアの現場において,超音波検査(Ultrasonography,以下 US)は欠かすことのできない画像診断法であり,急性腹症の診療ガイドラインにおいても,USは初期対応に必要な診療スキルの一つとして認識されている。近年では,様々な疾患においてトリアージを目的としたpoint-of-care ultrasound(以下POCUS)という概念が浸透しつつあるが,消化管領域においてはまだ充分に活用されているとは言えない。POCUSは診断推論から導き出された鑑別診断に基づいて重要と判断されたものだけを中心に評価するため,限られた時間の中で多彩な疾患をみることの多い病院総合診療医にとって非常に有用である。急性腹症を含む消 化管疾患においても,早急に介入すべき病態かどうかを判断出来れば,患者の予後が改善出来るため,是非とも身につけておきたい診療スキルと言える。
特別寄稿
  • 林 純, 小柳 左門, 原 寛
    2020 年 16 巻 2 号 p. 107-111
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2024/01/12
    ジャーナル フリー
    高齢者の増加に伴い,認知症および寝たきりの患者が増加しており,その栄養管理についてはどこまでするべきか医療者としては考えさせられる。今回,著者らが勤務するケアミックス型病院において,医師,看護師,コメディカル(薬剤師,検査技師,レントゲン検査技師,理学療法士),事務 54 名の総計 543 名に対して,自分が 75 歳以上で認知症があり寝たきりとなり経口摂取が不可能になった場合,どこまでの栄養管理を希望するかを質問票で調査した。311 名(57.2%)から回答を得た。その結果,何もせず,自然に任せるが 68.8 %で最も多く,次いで末梢血管栄養はするが,それ以上はしないが 34.1 % で,胃瘻栄養まで希望するは 1. 3 %で あった。性別,年齢別,職種別による差はみられなかった。特に医師,看護師の殆どが,何もせず自然に任せるとの回答であったことは,一考の価値があると思われる。
  • 甲斐沼 孟, 三井 秀紀
    2020 年 16 巻 2 号 p. 112-117
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2024/01/12
    ジャーナル フリー
    背景:当院では針刺し事故発生時に汚染源不明の場合は救急医が院内マニュアルに沿って対応している。 目的:当院の針刺し事故の現状と対策を報告する。 対象・方法:2016 年 4 月~2019 年 3 月迄の平日日勤帯に認めた汚染源不明針刺し事故例を調査する。 結果:対象は 4 例,年齢は 20 歳代から 70 歳代で全例女性であった。事故者職種は看護師 2 例,看護助手 1 例,事務員 1 例で,汚染器具はインスリン注射針 2 例,留置針 1 例,メス刀 1 例で各々薬剤袋内や廊下,ハザードボックス内,膿盆内に存在した。汚染部位は手指部 3 例,左下腿部 1 例であった。事故後対応の処置内容は十分な水洗 4 例,縫合処置 1 例で,HB免疫グロブリン投与 2 例,HBワクチン投与 2 例,抗HIV薬予防内服 1 例であった。事故後のこれまでの観察において新規感染を認めていない。 考察:本研究では汚染器具の悪い廃棄環境が主だった針刺し事故の要因であった。今後も注射針等専用廃棄容器の適正配置や針刺し防止に配慮した安全機材活用など組織的啓蒙が期待される。 結語:当院の汚染源不明の針刺し事故例の現状と対策を報告した。
  • 森川 暢, 志水 太郎
    2020 年 16 巻 2 号 p. 118-121
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2024/01/12
    ジャーナル フリー
    診断エラーは予防可能という点で,現代の医学において改善すべき重要な課題である。診断エラーは通常複数の認知バイアスが関与することが多い。本稿では分析的プロセス(システム 2 )の一種であり,システム 2 の欠点である迅速性を克服した臨床推論の方法として,フレームワークを用いた臨床推論(以下フレーム法)を提案する。フレーム法は主訴別に最適なフレームワークをあらかじめ設定して,それに基づいて臨床推論を行う方法である。フレーム法は経験が乏しい初学者でも使用可能である。さらに主訴別にフレームワークを覚えることで,主訴別の問診や身体診察のポイントやアプローチ法を効率的に学ぶことが可能となり教育への応用も期待される。また,経験を積んだ熟練者においても直観的にどのフレームかを判断することで,迅速性を損なわずに網羅的に考えることが可能になり,診断エラーの予防につながる可能性が期待できる。
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