日本病院総合診療医学会雑誌
Online ISSN : 2758-7878
Print ISSN : 2185-8136
18 巻, 6 号
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原著
  • 尾関 伸司, 土屋 洋道, 菅原 崇
    2022 年 18 巻 6 号 p. 395-398
    発行日: 2022/11/30
    公開日: 2023/10/28
    ジャーナル フリー
    予後推定栄養指数(Onodera-prognostic nu- tritional Index;O-PNI)低値群と高値群とにわ けて,経皮内視鏡的胃瘻造設術(Percutaneous Endoscopic Gastrostomy;PEG)後の合併症,予後について検討した。対象者は 2018年4月から2021年3月までに当院で PEG を行った患者51人とした。栄養評価はO-PNIで行った。また術前栄養状態と術後合併症,術後死亡率の関係を調べるために,以下のような群わけを行って検討した。A群;PEG前のO-PNIが35未満,B群;PEG 前のO-PNIが35以上とした。結果は A 群の方が合併症数,死亡数ともに有意に多かった。O-PNIで術前栄養リスク評価を行う事は胃瘻造設後の合併症の低減と予後改善に有用である。
  • 島田 恵, 後藤 英里子, 小澤 秀樹
    2022 年 18 巻 6 号 p. 399-406
    発行日: 2022/11/30
    公開日: 2023/10/28
    ジャーナル フリー
    【背景,目的】超音波検査は機器の小型化が進み,救急医療や集中治療,在宅医療などで Point-of Care Ultrasound(POCUS)が活用されている。 本研究では総合診療の外来における POCUS活用実態を明らかにする事を目的とした。 【方法,結果】対象は総合内科外来を受診して POCUS を施行した99例である。検査施行目的は,心機能評価が72,腹部臓器評価 14,感染源精査9,大動脈評価3,血栓評価2 例,などであった。評価項目は,心血管系は左室収縮機能や重大な弁膜症の有無,感染性心内膜炎の評価など,それ以外では腎結石や水腎症,胆嚢,虫垂炎の評価などで,全99例中31例(31.3%) が緊急入院となった。なお,他の画像検査を追 加施行したのは検査室エコーが20,CT46,MRI5例であった。【結論】POCUS は,外来診療で通常の身体診察 の延長として即座に施行でき,簡便に全身評価が可能である点で有用性が高く,総合診療での活用を拡げていく必要があると結論した。
症例報告
  • 鈴木 聖也, 西口 翔
    2022 年 18 巻 6 号 p. 407-411
    発行日: 2022/11/30
    公開日: 2023/10/28
    ジャーナル フリー
    成人成長ホルモン分泌不全症(adult growth hormone deficiency:AGHD)の 治療は組み換えヒト成長ホルモン(recombinant-human growth hormone:rhGH)製剤によるホルモン補充療法が行われるが,糖尿病が悪化する可能性から日本では糖尿病のある患者への投与は保険診療として承認されていなかった。 2020年に承認されたソマプシタンは初めての長時間作用型 rhGH 製剤であり,日本で初めて糖尿病合併AGHD への投与が承認された rhGH 製剤であるため報告が少ない。 2型糖尿病を合併するAGHDに対してソマプシタンによるホルモン補充療法を行い,ソマプシタンを使用した成長ホルモン補充療法による糖代謝への影響に関して検討した。
  • 金澤 建, 石田 竜之, 白井 まどか, 松橋 一彦, 阿部 祥英
    2022 年 18 巻 6 号 p. 412-416
    発行日: 2022/11/30
    公開日: 2023/10/28
    ジャーナル フリー
    症例は日齢13の新生児である。発熱し,B 群溶血性連鎖球菌(Streptococcus agalactiae,Group B Streptococcus;GBS)敗血症と診断され, 抗菌薬治療で合併症なく退院した。母体の膣培 養検査でGBSは陰性だったが,児の発熱直前から乳腺炎があった。遅発型のうち,経母乳感 染例の報告はあるが,乳汁培養検査の実施,母乳栄養の継続・中止については相反する意見がある。本症例ではこれらの情報を母に説明し, 乳汁培養検査を実施した。児の血液と母の乳汁から分離されたGBSの抗菌薬感受性は同一で, 血清型はいずれもIII型であり,経母乳感染が疑われた。母と相談し,母乳栄養を中止し,除菌を行ったが,最終的に母乳栄養は再開しなかった。感染経路の推定に乳汁培養検査は有用であると考えられるが,GBS 陽性であった場合は, 母の心理面を考慮し,母乳栄養継続,中止の判断は症例ごとの対応が必要である。
  • 吉村 文孝, 久保﨑 順子, 國友 耕太郎, 辻 隆宏
    2022 年 18 巻 6 号 p. 417-421
    発行日: 2022/11/30
    公開日: 2023/10/28
    ジャーナル フリー
    持続性知覚性姿勢誘発めまい(persistent postural perceptual dizziness ; PPPD)は Barany SocietyのStaabら1)が 2017年に概念を発表しためまい症である。PPPDの2例を経験したので報告する。症例1は78歳女性で約1年続く浮動性めまいを主訴に受診した。症例2は75歳女性で約2年続く浮動性めまいのため受診した。2例ともめまいは立位や体動に よって増悪していた。エスシタロプラム5 mgの内服を開始し2例とも1 ~ 2週間でめまいは改善した。PPPD は慢性めまいの原因として 頻度が高く,選択的セロトニン再取り込み阻害 剤,セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み 阻害薬が有効である。今回の2例は,いずれも 耳鼻咽喉科を受診したが PPPD の診断には至ら なかった。PPPD は耳鼻咽喉科でも十分認知されておらず,総合診療医は慢性めまいの鑑別してPPPDを留意しておく必要がある。
  • 中山 大, 藤原 学, 中山 晴夫, 中山 文枝, 渡邉 聡子, 石井 敦
    2022 年 18 巻 6 号 p. 422-427
    発行日: 2022/11/30
    公開日: 2023/10/28
    ジャーナル フリー
    新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に伴う肺病変は,比較的特徴的な所見を示し,通常数週~数か月以内に消失する症例が多いが, 重症化症例の中には肺病変が器質化し,呼吸器症状が遷延する症例も散見される。今回我々は急性期から一定期間経過後に新たな肺病変を認めた症例を経験した。いずれの症例も急性期は比較的典型的な画像所見を認めたが,退院後および退院直前に新たな間質性肺炎像を認め遷延した。重症COVID-19から回復した患者の特徴として持続的な生理的障害を伴う線維化が過去に報告されているが,調べ得た範囲では,中等症の症例で,急性期から亜急性期にかけて再燃ないし新たな間質性肺炎所見を呈した報告はなく,示唆に富む症例と考えられたので,若干の文献的考察を加え報告する。
  • 甲藤 大智, 小林 弘, 青木 昭子, 阿部 晋衛, 藤森 浩司, 大高 純, 中津川 宗秀
    2022 年 18 巻 6 号 p. 428-434
    発行日: 2022/11/30
    公開日: 2023/10/28
    ジャーナル フリー
    原発性子宮リンパ腫を発症した75歳の関節リウマチ(RA)患者を報告する。17年前にRA と診断,少量メトトレキサート(MTX)を処方されていた。5カ月前から少量の不正性器出血あり。貧血の進行を指摘され,約1カ月前に当院受診した。下腹部に腫瘤を触知し,CT 検査 で子宮と外腸骨リンパ節の腫大,軽度脾腫を認めた。2 週間前から発熱と全身の痛あり入院となった。小球性貧血,リンパ球と血小板減少, 血清 LDH,補正 Ca 高値,CRP と可溶性 IL-2 受 容体は高値であった。入院後,MTX を中止し たが子宮の腫大は進行した。CT 下外腸骨リンパ節生検でびまん性大細胞型B細胞リンパ腫と診断した。化学療法を施行,腫大した子宮と リンパ節の縮小を認めたが,肺炎を合併し第51病日死亡となった。RA患者におけるリンパ腫発症の危険因子として高齢とMTXが報告されている。原発性子宮リンパ腫は稀であるが, MTX 治療中のRA患者で子宮の腫瘤性病変が見られた場合は鑑別診断として念頭に置くことが必要であると考えた。
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