日本病院総合診療医学会雑誌
Online ISSN : 2758-7878
Print ISSN : 2185-8136
19 巻, 6 号
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原著
  • 中村 重徳
    2023 年 19 巻 6 号 p. 390-398
    発行日: 2023/11/30
    公開日: 2023/12/08
    ジャーナル フリー
    未治療バセドウ病62例(およびコントロール群41例)で腎機能 [特に治療前 estimated glomerular filtration rate(eGFR)と治療によるeGFRの変化量と, 治療前年齢や甲状腺機能の関係を中心に] を検討した。その結果,バセドウ病の血清クレアチニン(s-Cr)はコントロール群と比較し有意に低値,eGFRとblood urea nitrogen(BUN)/s-Crは有意に高値であったが, BUNは差を認めなかった。単回帰分析ではeGFRは年齢と負の関係を示したが,freeT3とfreeT4は正の関係であった。freeT3 と freeT4間に多重共線性があり, freeT4を除いた重回帰分析でもeGFRに対し年齢とfree3は有意の影響を認めた。62例中49例ではfreeT3とfreeT4が正常化した後との比較も行った。治療後,s-Crは有意に増加し, BUN, BUN/s-CrおよびeGFR は有意に低下した。治療前には認めなかったが, 治療後は2例がeGFR < 60 ml/min/m2を示し,慢性腎臓病(CKD)の状態を示した。単回帰分析ではΔeGFR(治療後eGFR-治療前eGFR)は治療前年齢と正の関係を, 一方, 治療前のfreeT3と freeT4また治療前eGFRとは負の関係を示した。多重共線性がありfreeT4を除いた重回帰分析ではΔeGFRに対し, 年齢の影響は有意では無かった。これらの検討から, バセドウ病の腎機能は甲状腺ホルモン高値や年齢の影響を受けており, 腎機能の解釈に当たっては甲状腺機能が正常化した時点で検討すべきであると考えられた。
研究短報
  • 森脇 義弘, 春日 聡, 奥田 淳三, 成田 公昌, 大谷 順, 太田 龍一
    2023 年 19 巻 6 号 p. 399-402
    発行日: 2023/11/30
    公開日: 2023/12/08
    ジャーナル フリー
    高齢者で軽症中等症の経口摂取・喀痰排泄困難例の退院後受け皿となる高齢者生活施設でも,通常生活外の支援を要する胃瘻, 輸液, 頻回喀痰吸引, 自己注射, 気管切開, 看取りケアなど(特殊状態・病態)があると受入れ困難ともなる。非都市部辺縁地域人口非密集地(医 療過疎地)の当圏域内 8 施設の特殊状態・病態受入れ能力の推移を検証した。受入れ可能施設は 2014 年から 2019 年に増加した。気管切開や自己注射例の受入は困難なままであった。当院で実施した院外介護・福祉関係者や組織, 施設やその職員との連携,啓発,情報共有活動は,2013 年までは年 3 件程度が, 2014 年以降出前講座や非公式勉強会, 会合兼意見交換会など積極的に活動を拡大展開し, 互いの役割や立場,能力や限界の理解を図った。器具や資機材, 管理法の進歩に加え, 連携活動の充実,知識の向上や過剰な懸念の払拭により, 施設の受け入れ能力が向上する一事例を示せた。
症例報告
  • 米田 真也, 久木元 隆, 石田 雅宣, 忠地 一輝, 下田 次郎, 佐藤 岳久, 菅野 恵也, 柳谷 綾子, 小野瀬 剛生, 森 信芳, ...
    2023 年 19 巻 6 号 p. 403-408
    発行日: 2023/11/30
    公開日: 2023/12/08
    ジャーナル フリー
    症例は85歳男性。右側背部痛を主訴に当科紹介。腹部超音波検査, CTで右水腎症があり尿管腫瘍が疑われた。尿細胞診では悪性所見なく, 尿管鏡検査で腫瘍部位はほぼ閉塞していた。生検で尿管間質にアミロイド沈着を認め, アミロイドーシスが疑われた。関節リウマチを疑う症状があり,メトトレキサート2mg/week投与で右水腎症は徐々に軽快し, 約1年後にほぼ消失した。5年経過後の現在も再発はなく, 腎機能も保たれている。尿路に限局したアミロイドーシスで尿路通過障害をきたした報告は稀である。外科的手術が行われている症例が多いが, 本症例では保存的治療で尿管狭窄が解除された。臨床経過,病理結果から関節リウマチに起因するAAアミロイドーシスではなく, AL型限局性結節性アミロイドーシスが自然軽快した可能性が高い。耐術能の低い患者の尿管腫瘍性病変に対しては病理診断のうえ, 可能な限り低侵襲な治療を目指すべきである。
  • 野﨑 哲, 稲葉 基高
    2023 年 19 巻 6 号 p. 409-413
    発行日: 2023/11/30
    公開日: 2023/12/08
    ジャーナル フリー
    症例は70代男性。来院3年前, 右冠動脈病変, 左前下行枝病変に対し経皮的冠動脈ステント留置を施行された。ムカデ咬症後, 全身の紅斑と掻痒及び呼吸困難感を自覚し救急搬送された。ムカデ咬症によるアナフィラキシーと診断された。アドレナリン投与後も呼吸困難感持続し, モニター心電図上 II 誘導でST上昇認めた。12誘導心電図で II,III,aVf のST上昇を認め急性冠症候群を疑った。緊急冠動脈造影直前に心停止となったが心肺蘇生術で心拍再開した。冠動脈造影で右冠動脈の完全閉塞を認めた。以前に留置されたステント部に透亮像を認め,ステント留置処置を行った。本症例は虫咬症,アレルギー反応を契機にステント内血栓,いわゆるKounis症候群Type3を発症したと考えられた。虫咬症という比較的頻度の高い傷病でも,アレルギーからアナフィラキシー,急性冠症群を合併する可能性を十分に念頭に置き診療することが肝要である。
  • 金澤 実, 若竹 春明, 永富 彰仁, 栗栖 美由紀, 堤 健, 斎藤 浩輝, 北野 夕佳, 小島 宏司, 桝井 良裕, 森澤 健一郎, 藤 ...
    2023 年 19 巻 6 号 p. 414-420
    発行日: 2023/11/30
    公開日: 2023/12/08
    ジャーナル フリー
    化膿性脊椎炎から膿胸を併発したと考えられる症例を経験した。 50歳代の健康な男性が腰痛の自覚と感染徴候を示し, 化膿性脊椎炎疑いで近医へ入院した。セファゾリン,クリンダマイシンで治療されたが, 化膿性脊椎炎に膿胸を併発したため当院へ転院した。当院ではセファゾリンの継続投与に加えて両側胸腔ドレナージを行い, 胸水と血液からメチシリン感受性黄色ブドウ球菌が検出されたため胸腔洗浄と抗菌薬長期投与を行い, 軽快退院した。 化膿性脊椎炎の発症機序, および化膿性脊椎炎と膿胸の関連について血流を介した感染拡大が強調され, また脊椎系に特有なBatson静脈叢が注目されている。自験例もこの関与が示唆される。 化膿性脊椎炎の治療は感染創の浄化と抗菌薬の早期からの, かつ長期間の投与が重要である。
  • 姉川 剛, 西田 良介, 園田 英人
    2023 年 19 巻 6 号 p. 421-425
    発行日: 2023/11/30
    公開日: 2023/12/08
    ジャーナル フリー
    胃癌の癌性髄膜炎は稀な病態であり, その頻度は 0.16%~0.69%との報告がある。今回我々は, cT4aN1M0,cStageIIIの診断にて手術待機中に, 進行するふらつきにて癌性髄膜炎の診断を得た症例を経験した。症例は 80 歳,男性。2 週間続くふらつきを主訴に同院脳神経外科紹介受診。単純MRIにてラクナ梗塞を指摘された。症状改善なく, 内科紹介受診。胃角部小弯に約半周性の 3 型進行胃癌を認め, 手術目的に当科紹介となった。術前検査にて非切除因子は認めなかったが, CEA:118, CA19-9: 1149と腫瘍マーカーは異常高値であった。当科初診 3 週後の手術予定とするも, ふらつきの改善なく当科緊急入院。頭部造影MRIにて癌性髄膜炎の診断に至り, 2 週後に死亡した。説明のつかない脳神経症状, 腫瘍マーカー高値を認める際には, 癌性髄膜炎を念頭におき積極的に頭部造影MRI検査などを実施する必要があると考えられた。
  • 中山 翔太, 山田 隆弘
    2023 年 19 巻 6 号 p. 426-430
    発行日: 2023/11/30
    公開日: 2023/12/08
    ジャーナル フリー
    患者は 18 歳男性, 近医で扁桃炎と診断され抗菌薬, 去痰薬, 解熱鎮痛薬を処方された。4 日後に全身に掻痒感を伴う皮疹が出現したため当院紹介受診, 両側頸部リンパ節腫脹, 全身の播種状紅斑, 丘疹を認めた。また, 異型リンパ球を認め伝染性単核球症を疑い精査加療目的で入院とした。EBウイルス抗体価の上昇および, 腹部超音波検査で脾腫を認めた。伝染性単核球症の診断基準において, 扁桃炎, 頸部リンパ節腫脹, 脾腫の 3 項目を満たし, リンパ球数 ≧ 5000 かつ異型リンパ球の出現,EBウイルス抗体価の上昇より伝染性単核球症と診断した。入院時に施行したSARS-CoV-2 PCR検査が陽性であった。以上の所見から伝染性単核球症と新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の併発例と診断した。総合診療医はたとえEBV感染症やその他のウイルス性疾患と判断されたとしてもSARS-CoV-2が重複感染し得ることを知っておくべきである。
症例短報
LETTERS TO THE EDITOR
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