日本病院総合診療医学会雑誌
Online ISSN : 2758-7878
Print ISSN : 2185-8136
17 巻, 6 号
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
原著
  • 岡田 宏基, 坂東 修二, 舛形 尚, コルビンヒュー 俊佑, 高口 浩一, 松元 かおり, 釋 文雄
    2021 年 17 巻 6 号 p. 594-601
    発行日: 2021/11/30
    公開日: 2024/01/12
    ジャーナル フリー
    香川県を中心とした診療所,小規模病院および大規模病院において初診時に医学的に説明できない愁訴についての調査を行った。頻度が解析できた 1382名のうち,医学的に説明できない愁訴を有する患者は 346名(25.0%)であり,診療所は 9.1%,小規模病院は 18.7%および大規模病院は 41.5%であった。愁訴数は医学的に説明できない愁訴を有する患者の平均 2.54個に対してそうでない患者は 2.19個であり,前者が有意に多かった。愁訴が解析できたのは3406 であり,このうち医学的に説明できなかった愁訴は 864 であった(25.4%)。愁訴の分類では,高い頻度順に,仏痛,倦怠感,しびれ,発熱,めまい,ふらつき,呼吸の問題,頭痛,吐気・嘔吐および食思不振などとなっており,臨床的印象と一致した。医学的に説明できない愁訴は大規模病院に集中していることから今後これらの医療機関での対応方法が必要であると思われる。
  • 相原 秀俊, 多胡 雅毅, 香月 尚子, 山下 駿, 徳島 緑, 徳島 圭宜, 藤原 元嗣, 織田 良正, 西山 雅則, 山下 秀一
    2021 年 17 巻 6 号 p. 602-607
    発行日: 2021/11/30
    公開日: 2024/01/12
    ジャーナル フリー
    【背景・目的】著者らの先行研究では,病院総合診療医は専門医不在の疾患と時間外の救急患者を多く診療していた。本研究では近年の病院総合診療医の役割と変化について検討する。 【方法】2019 年度に祐愛会織田病院内科で診療した患者を病院総合診療医(H群)と領域別内科医(S群)に分けて解析した。 【結果】入院患者では,H群で専門医不在の疾患の患者の割合(59.8% vs. 27.3%)が高く,先行研究よりも高かった。外来診療では,H群で時間外(6.8% vs. 2.9%),救急外来(11.8% vs. 4.3%),救急車(1.5% vs. 0.7%),CPA(0.12% vs. 0.05%)の患者の割合が高かった。 【結論】病院総合診療医の役割は先行研究とほぼ同じであった。病院総合診療医には,複雑な高齢患者を診療する領域別内科医のサポートや専門医不在の疾患の診療などで,より横断的な役割が求められている。
  • 萩谷 英大, 三好 智子, 西村 義人, 徳増 一樹, 本多 寛之, 長谷川 功, 小比賀 美香子, 頼藤 貴志, 大塚 ...
    2021 年 17 巻 6 号 p. 608-616
    発行日: 2021/11/30
    公開日: 2024/01/12
    ジャーナル フリー
    新型コロナウイルス感染症対策の一環として,「新型コロナウイルス感染症対応従事者慰労金交付事業」が実施されたが,その影響・有効性に関するデータは乏しい。2021年4月26 日~5 月 31 日に,岡山県・香川県・広島県の医療機関に勤務する職員を対象にウェブ・アンケートによる横断調査を実施した。1001 名からの回答において,慰労金受給率は 95.8%であり,59.5%は本事業に満足したと回答した。職種別満足度は,医師(60.8%),メディカルスタッフ(63.9%)に比べて看護職(46.3%)で低かった( p < 0.001)。医療機関内職員のみならず,救急隊員,保健所職員,高齢者介護施設の職員も慰労金が支払われるべき業種として高率に理解を得た。慰労金交付事業は,医療従事者等の外的モチベーションとして概ね機能したと考えられるが,給付金額や対象者の選定に関しては検討の余地がある。
症例報告
  • 本間 りりの, 峠岡 康幸, 稲田 順也, 折田 裕一, 伊藤 洋行, 三重野 寛
    2021 年 17 巻 6 号 p. 617-623
    発行日: 2021/11/30
    公開日: 2024/01/12
    ジャーナル フリー
    レムデシビルはアデノシンヌクレオシドのプロドラッグであり,SARS-CoV-2 の複製に必要な RNA依存性 RNAポリメラーゼを阻害する。日本で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対して承認されている唯一の抗ウイルス薬であり,COVID-19治療の要となっているが,特例承認から日が浅く,引き続き知見を積み重ねる必要がある。今回著者らは COVID-19肺炎患者でレムデシビル投与後に洞不全症候群様の徐脈を呈した症例を複数経験した。症例 1 ではレムデシビル投与 3 日目から心拍数 50 回台の徐脈が出現し,5 日間のレムデシビル投与終了後徐々に回復した。症例 2 ではレムデシビル投与 1 日目から夜間に心拍数 40~50台の徐脈が出現し,プロカテロール吸入により速やかな改善を得ることができた。経験症例と文献の考察を併せ,洞不全症候群様徐脈を呈した場合の治療薬候補,レムデシビル投与継続の要否の基準について論じた。
  • 村田 三郎, 宮下 鉱二, 米澤 竹一, 吉岡 祥文, 有馬 利治, 新井 勲, 若狭 朋子
    2021 年 17 巻 6 号 p. 624-631
    発行日: 2021/11/30
    公開日: 2024/01/12
    ジャーナル フリー
    広島,長崎での原爆投下から既に 75 年を経過した。被爆者健康手帳を所持する原爆被爆者は,1980 年時点で 37 万 2264 人であったが,2020 年 3 月時点で,13 万 6682 人と減少しており,平均年齢は 83 歳である。原爆被爆者は,発癌,白血病などの悪性疾患にとどまらず,原爆放射線による様々な健康障害を来すことが明らかになっているため,被爆者援護法により 1 年に 2 回の定期健康診断と 1 年に 1 回のがん検診を受けることができる。今回,定期健康診断で貧血を指摘され,精密検査で胃癌が発見された広島近距離高線量原爆被爆者の一例を経験した。この一例の検討を通じて,原爆投下から 75 年以上経過した現在の原爆被爆者の健康状態の現況と近距離高線量被爆者の発癌の特徴について検討したので,報告する。
  • 瀬角 裕一, 寺田 康
    2021 年 17 巻 6 号 p. 632-637
    発行日: 2021/11/30
    公開日: 2024/01/12
    ジャーナル フリー
    高齢者が経口摂取量低下のため家族や施設職員に連れられて受診した場合,年齢や要介護度,認知機能によっては,積極的な検査をどこまでするか苦慮することがある。今回,症状の訴えがない高齢者に対して上部消化管内視鏡検査(Esophagogastroduodenoscopy;EGD)を行ったことで,経口摂取量低下の原因となりうる疾 患がみつかり,その治療により経口摂取量が改善し得た 2 例を経験した。症例 1 ,89 歳女性。2 週間前から経口摂取量が普段の 2 割程度にまで低下していた。EGD で逆流性食道炎を指摘され,プロトンポンプ阻害薬の内服を開始したことで経口摂取量が改善した。症例 2 ,83 歳女性。1 か月前から経口摂取量が低下していた。EGD でカンジダ性食道炎と診断され,抗真菌薬の内服を開始し経口摂取量は改善した。高齢者の経口摂取量低下では,症状の訴えがない場合であっても EGD を検討するべきである。
短報
LETTERS TO THE EDITOR
総合診療のキー画像
特別寄稿
  • 後藤 研人, 森 博威, 横川 博英, 張 耀明, 内藤 俊夫
    2021 年 17 巻 6 号 p. 644-649
    発行日: 2021/11/30
    公開日: 2024/01/12
    ジャーナル フリー
    【背景】総合診療専門研修プログラム整備基準には「へき地・離島,被災地,医療資源の乏しい地域での 1 年以上の研修が望ましい」とある。 【目的】離島診療で経験した症例を解析した。離島勤務に必要と思われる知識・手技を検討し,今後の専攻医の派遣前研修に反映する。 【方法】2017 年 4 月 1 日から 2019 年 3 月 31 日の期間に著者の外来及び時間外に受診した全ての患者を対象とし,年齢別,月別の受診者数,処置の有無,外来受診患者の主訴を評価した。医科診療報酬点数表第 9 部処置,第 10 部手術,第 11 部麻酔に該当するものを処置と した。 【結果】受診目的は幅広い愁訴により,処置では筋骨格系が半数以上を占めた。外来受診者数は月別の差を認めなかったが,時間外受診では夏・冬の受診が多かった。 【考察】離島やへき地での診療の質を保つために,各診療科の初療医としての能力を得るための体系的な研修が求められると考える。
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