観光研究
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32 巻, 2 号
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論文
  • 小橋 優志, 十代田 朗, 津々見 崇
    2021 年 32 巻 2 号 p. 5-16
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では、ヘルスツーリズム大賞を受賞した 5 地域を対象に、ヒアリング調査を行うことで、ヘルスツーリズムに関する開発プロセスとその後の展開を明らかにした。開発段階における取り組みには、組織作り、資金調達、人材確保、空間整備に加え、ヘルスツーリズム特有の取り組みとして健康食の開発、医科学的根拠の明示、長期滞在者支援制度の構築が見られた。その後の展開としては開発段階での取り組みの継続と新たな取り組みとして地域の健康づくりと地域外との組織連携が見られた。すべての地域に共通する取り組みは見られず、優良事例においてもヘルスツーリズムの発展の余地があることが推察された。
  • Hideyuki NAKAGAWA, Mako TANAKA
    2021 年 32 巻 2 号 p. 17-27
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/01
    ジャーナル オープンアクセス
    Past studies on the designation of historic districts for preservation purposes have shown mixed results, possibly due to the variability of restrictiveness in the regulations and the degree of financial support as well as the varieties of specifications in the hedonic pricing model, possibly with an endogeneity problem. Using property data with geographic information in a historic district with two different preservation policies in place, we provide insights into the two mentioned points. We observed a negative impact of restrictive historic district designations on rental prices after extracting the external effect of the designation, but no significant impacts in the district with less restrictive regulation. Estimation results using the samples located around the boundaries of designated areas do not alter this tendency, although the magnitude is sensitive to the size of bandwidth from the boundaries.
  • ―訪日中国人大学生への参与観察から―
    金 海景, 佐藤 大祐, 杜 国慶
    2021 年 32 巻 2 号 p. 29-42
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿は観光者の情報取得意思とアプリ内情報とが結びついて観光行動に表出されるスマートツーリズムのメカニズムを解明した。動因のみから始まる場合、旅行記やクチコミなどの主観情報を無批判に受け入れてアプリによる提案先へ行動するものと、主観情報に頼っても複数のアプリを駆使して情報を精査し、行動意図を固めようとするものとがあった。一方、動因・誘因ともに明確な状態から始まる場合、情報探索には固有名詞を用いることとなり、観光者は地図や乗換などの客観情報に基づく選択肢から合理的に選択した。たとえ不明確な誘因から始まる場合であっても、客観情報を中心に構成されるアプリを利用すると合理的な判断がなされた。
  • ―宮島での実証実験結果より―
    川村 竜之介, 塩谷 英生
    2021 年 32 巻 2 号 p. 43-51
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では、調査が容易でかつ安価に開発することが可能である「Wi-Fi パケットセンサー」を用いることで、観光統計のひとつである「共通基準による観光入込客統計」への活用可能性を検証した。広島県廿日市市宮島での実証実験による Wi-Fi パケットセンサーによるデータと、実測データ(宮島ロープウェー利用者数、宮島の来島者数)との突合から、Wi-Fi パケットセンサーによるデータから訪問者数を推定可能であることを示した。また、適切なデータ抽出(過去の観測有無による住民・従業者データの除去や、最初と最後の観測地点によるデータの絞り込み)を行うことで、宿泊・日帰り別の人数が推定可能であることを示した。
  • ―観光との接点を有する住民を対象として―
    西川 亮
    2021 年 32 巻 2 号 p. 53-66
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では、オーバーツーリズム(OT)が問題とされてきた京都市、鎌倉市、川越市、金沢市の住民を対象に、OT 期の観光振興に対する意識や観光による正負の影響、新型コロナウイルス感染症の流行に伴う緊急事態宣言中の生活や観光に対する意識、新型コロナウイルス収束後の望ましい観光を分析した。その結果、OT期から観光振興に肯定的であったり、観光によって良い影響を受けていたほど新型コロナウイルス収束後の観光振興にも肯定的だが、中には緊急事態宣言を契機に観光振興に肯定的な意識を持つようになる層も確認された。
  • ―ウッズランド Mio の事例―
    磯野 巧, 小林 弘汰, 濵口 友希, 織田 拓
    2021 年 32 巻 2 号 p. 67-80
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿では美杉町に立地する「ウッズランド Mio」の継続的発展に向けた条件を探り、それが美杉町の地域創生に果たしうる役割を検討した。ウッズランド Mio は大都市に近接しながらも自然豊かで静寂な環境が保たれたキャンプ場であり、その環境の維持管理や森林資源を活かした独自の体験コンテンツの創出ないし更新はリピーター確保において重要であった。ウッズランド Mio はそれ自体が特殊性や訴求力の高い観光資源としての性格をもち、そこを拠点とする美杉町観光のゲートウェイとして機能していた。こうした美杉町の魅力を「発見」することができる当該施設の強みは、ツーリズムによる地域創生を図るうえで有用と示唆された。
  • ―媒介・仲介機能と COVID-19 の影響の分析―
    山川 拓也, 中尾 公一
    2021 年 32 巻 2 号 p. 81-93
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/01
    ジャーナル オープンアクセス
    ゲストハウス(GH)は、従来の低廉宿泊施設から、宿泊者同士の交流拠点、さらには生活体験も提供できる、地域住民との交流拠点への機能変化がみられるが、外国人宿泊客と地域住民との交流をもたらす機能について十分に明らかにされていない。また新型コロナウィルスが GH の経営に与えた影響も深刻である。本論では、全国の GH 経営者への質問票調査(N=231、回収率:約 28.8%)を行った結果、GH がその内外で地域住民と外国人宿泊客とを結びつけてきたことを確認した。また新型コロナウィルスは非常に深刻な影響を GHに与えた一方、自らの経営を見直し、新たな商機を見出す契機となったことも確認できた。
論説
  • ―ポストコロナ時代のオンライン文化観光整備のためのルール形成―
    渡部 友一郎
    2021 年 32 巻 2 号 p. 95-100
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/01
    ジャーナル オープンアクセス
    文化観光拠点施設を中核とした地域における文化観光の推進に関する法律(令和 2 年法律第 18 号)は、訪日外国人旅行者の「モノ消費」から、日本文化等を体験する「コト消費」のニーズを充足する切り札であった。文化観光は、観光による交流を一回限りの異文化との出会いに終わらせることなく、継続的な来日を促す効用が期待されている。それは、日本の誇る歴史や伝統に対する知的好奇心を充足し、一層の関心を深く長く喚起できるからである。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大は、訪日外国人を 99.9%以上減少させ、コロナ前に法律が想定したオフライン来訪者を起点とした地域経済の発展は、必然的にコロナ沈静化後に先送りされた。そこで、本稿は、近時隆盛するオンライン体験を念頭に、法第 2 条第 2 項の主務省令を活用し、オンラインを通じた文化資源の解説・紹介を推進し、コロナ沈静化後にオフライン来訪者となる「ファン」の拡大可能性を論じる。
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