観光研究
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31 巻, 1 号
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論文
  • 磯野 巧
    2019 年 31 巻 1 号 p. 5-18
    発行日: 2019/09/30
    公開日: 2020/04/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿では渋谷で展開するインバウンド向けナイトツアーの特徴を明らかにした。渋谷では街歩きを基軸とす るインバウンド向けナイトツアーが観光協会主導により企画運営されていた。こうしたオフィシャルな取り 組みは外国人旅行者が安全安心に夜の街歩きを楽しむ機会を創出していた。また、必ずしも飲酒を伴うわけ ではないため、ファミリー層が気兼ねなく参加できる夜間コンテンツとなっている。さらに、インバウンド 向けナイトツアーはナイトタイムエコノミー振興を図るうえで空白時間となりがちなイブニングタイムのコ ンテンツを充実させる点で効果的であった。
  • ―京都府与謝野町「よさのうみ福祉会」の障害者雇用・就労支援事業を通じて―
    一井 崇
    2019 年 31 巻 1 号 p. 19-32
    発行日: 2019/09/30
    公開日: 2020/04/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿では、京都府与謝郡与謝野町にある社会福祉法人よさのうみ福祉会の障害者就労支援事業の観光事業に着目し、その実践から、障害の有無、年齢、性別、人種等にかかわらず誰もが気兼ねなく参加できる旅行と定義されるユニバーサルツーリズムの新たなモデルを提示する。同事業は、障害者の生活自立だけでなく同町の観光振興を担い、関連する事業者の利益拡大に貢献し、観光を通じて地域の持続性を高めている。それを可能にしているのは、障害者の主体性を尊重し、地域形成の担い手として位置づける同法人の理念にある。 障害に対する意識の転換が、観光を通じた包摂的な社会形成につながることを明らかにする。
  • ―熊野古道の語り部を事例として―
    寺田 憲弘
    2019 年 31 巻 1 号 p. 33-44
    発行日: 2019/09/30
    公開日: 2020/04/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、世界遺産「紀伊山地の霊場とその参詣道」の一部である熊野古道の語り部と呼ばれるガイドを事例として、観光現象におけるガイドの役割と機能を明らかにすることを目的とする。情報化された現代社会では、ガイド自身を観光客が事前にメディアを通して知ることができる。このような状況におけるガイドの役割を分析するために、語り部にインタビュー調査を行い、語り部に関するメディア報道や観光情報を収集し、分析を行った。その結果、熊野古道のガイドは文化的景観を作り上げた地域社会の文化や伝統の伝承者と表象されており、地域観光の構成要素となっていることが明らかとなった。
  • ―再訪観光者を獲得するための効果的な情報発信方法のあり方の確立を目指して―
    泉澤 圭亮, 中鉢 令兒
    2019 年 31 巻 1 号 p. 45-56
    発行日: 2019/09/30
    公開日: 2020/04/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿は、観光地の持続的発展のために欠かせない再訪観光者の獲得に寄与し得る観光情報の効果的な発信方法について知見を得ることを目的にした。観光経験を通じた観光者の観光地に対する理解の構造の変化について、石川県の観光を対象に、前観光経験と有意味な経験の2つのテキストをテキストマイニングの手法を活用して解析し、構造化した。ネットワーク分析によるコミュニティ検出の結果、前観光経験と有意味な経験において「伝統と文化」が中心的意味を構成していた。さらに、有意味な経験では観光者の能動性が関与できる経験として「現代アート」の表出が確認された。
  • ―固定資産管理を事例として―
    藤原 久嗣
    2019 年 31 巻 1 号 p. 57-66
    発行日: 2019/09/30
    公開日: 2020/04/01
    ジャーナル オープンアクセス
    宿泊業の固定資産の管理を行う上において実態に則した減価償却計算が求められるが、実務の現場におけるその方法は税務上の規定に準拠している場合が多く経営実態と乖離している場合がある。償却計算や帳簿組織の作成は情報技術を活用しているのが一般的であるが、その方法論についての研究は少なく、宿泊業の経営資源として大きな役割を持つ固定資産を事例として、その経営情報基盤の課題と方向性を明らかにした。
  • ―全国データ分析からの示唆―
    中尾 公一, 西出 優子
    2019 年 31 巻 1 号 p. 67-74
    発行日: 2019/09/30
    公開日: 2020/04/01
    ジャーナル オープンアクセス
    近年、観光NPOへの注目と期待が集まっているが、その活動内容や能力は全国規模では十分に明らかにされていない。本研究では内閣府NPOのデータベースを利用し402の観光NPO法人の事業報告書を分析した。その結果、観光 NPO法人の活動は「まちづくり」、「学術・文化・芸術・スポーツ振興」、「社会教育」、「子どもの健全育成」等の分野と密接に相互に関連し、収益増加に伴い事業報告書の分量が増えること、また、小規模法人は会費や寄付に依存する一方、事業収入や委託金の増加に伴い、収益や事業規模が拡大されることが判明した。
  • ―日本の宿泊予約サイトを中心に―
    張 燽赫
    2019 年 31 巻 1 号 p. 75-84
    発行日: 2019/09/30
    公開日: 2020/04/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、国内で最も利用率の高い宿泊予約サイトである「じゃらん net」を対象に、レスポンスデータを収集・分析することで、顧客レビューに対するレスポンス管理の現状を明らかにするとともに、その効果を確認するものである。具体的には、社団法人日本ホテル協会に登録されている 233 軒のホテルから、顧客レビュー16,738 件とレスポンス 14,113 件を収集し分析している。分析結果、顧客レビュー対するホテルのレスポンス率は約 8 割を超えていること、レスポンス件数が多くなれば、レビュー件数も増加し評点も改善され ることなどが明らかにされた。
  • ―たくみの里の新ガイドマップの検証を事例として―
    塙 泉
    2019 年 31 巻 1 号 p. 85-98
    発行日: 2019/09/30
    公開日: 2020/04/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では、価値共創による現地情報サービスの考え方に依拠し、実践的な理論構築に向けた実証研究を行った。現地情報サービスの中でも紙媒体のガイドマップに焦点を当て、比較調査から利用者に与える影響を検証した。その結果、新ガイドマップは実際の観光行動で利用者の時間的肉体的精神的労力のコストを軽減し、また、観光経験を演出し経験価値を高める潜在的可能性が示唆された。これは、利用者を単なる情報の受け手ではなく、価値共創者として資源に位置づけることでマップが利用者の能力、すなわち価値を引き出す可能性を示し、価値共創概念による現地情報サービスの一定の効果と重要性を示唆する結果である。
研究ノート
  • ―受入れ企業の実態と参加者のキャリア形成への影響について双方の視点から―
    高橋 加織
    2019 年 31 巻 1 号 p. 99-106
    発行日: 2019/09/30
    公開日: 2020/04/01
    ジャーナル オープンアクセス
    2007年観光立国推進基本法の施行以来、訪日外客数は増加の一途をたどり、2018年度は、過去最高を記録した。観光立国を目指す日本にとって、文化や習慣、言語の異なる国々から来日する観光客の対応を担う、グローバル人材の育成は急務である。そこで本研究では、マレーシアのホテルで2000年から20年間継続している、日本人インターンシップ受入れの概要を把握し、参加者のキャリア形成への影響について、企業および参加者の視点から考察する。インターンシップ前は不透明であった将来の職業選択への展望が、職業経験を積むことにより具体的に可視化されることが明らかとなった。
  • ―10 広域圏における比較分析―
    青木 卓志
    2019 年 31 巻 1 号 p. 107-114
    発行日: 2019/09/30
    公開日: 2020/04/01
    ジャーナル オープンアクセス
    訪日外国人旅行者は、近年、急激な増加を示している一方で、今後のインバウンド戦略としては、量的(人数的)拡大に加え、質的向上も重要になる。経済的な側面や国際理解からの向上等の観点も踏まえ、今後の政策検討のためには、各地域(広域圏)での外国人受入れに関する現状を把握することがまず重要になる。こうした分析は、個々の(観光)施設や産業分析というよりも、(地域)マクロ的視点からのアプローチが重要になる。 本稿では、10の広域圏での広域分析を行ったものである。結果として、日本の広域圏は現在、大きく分けて3区分に分けることができ、また、訪日外客数だけではなく経済効果も、広域圏で拡大傾向にあることがわかり、今後のインバウンド政策における広域圏ごとの特徴に基づくアプローチが重要であるとの結論を得た。
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