観光研究
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33 巻, 1 号
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論文
  • ―2 ルート理論を再検討する―
    孫 涛, 伊藤 直哉, 張 璇
    2021 年 33 巻 1 号 p. 5-18
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は精緻化見込モデル(ELM)を活用しながら、中国人観光客のオンライン・クチコミ情報の受容プロセスについて実証調査を行った。その結果、「議論の質」は「知覚情報有用性」に正に影響するが、「情報源信頼性」の「知覚情報有用性」に対する影響力は確認できなかった。同じ結果は能力や動機の高低によるグループ分けの検証においても実証された。以上の結果に基づき、ELM が提唱してきた 2 ルート理論が修正され、1 ルート理論という新たな情報処理モードの可能性が構造方程式モデリング(SEM)によって提出された。そこにおいては「情報源信頼性」が「議論の質」を媒介し、間接的に「知覚情報有用性」に影響を与えていることが分かった。
  • 野原 克仁
    2021 年 33 巻 1 号 p. 19-30
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル オープンアクセス
    北海道は旅行先として高い人気があるが、地域によって濃淡がある。そこで、全国を対象としたインターネット調査を通じ得られたデータから、AHP を用いて道内 4 地域の重要度を来訪経験者・来訪未経験者別に導出し、ハフモデルに応用することで各地域の吸引率を推計した。その結果、地域循環共生圏の維持に必要とされる農林水産業が盛んな地域ほど、観光地として吸引率が低いことが明らかとなり、地域固有の自然資源をいかに観光資源へと繋げるかが課題として浮き彫りになった。
  • 池知 貴大, 山田 雄一
    2021 年 33 巻 1 号 p. 31-39
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル オープンアクセス
    宿泊税は、観光政策の展開に必要な原資を確保する方策と注目されているが、観光客数の減少を招く可能性も指摘されている。本研究では、様々な独立変数と支払い意思との関係を検証すると共に、それらを「公平性の認識(公平感)」が媒介するか否かについて検証を行った。その結果、ロイヤルティや過去の宿泊税納税経験が、公平感を介して支払い意思に統計的に有意な間接的効果を与える可能性があることがわかった一方で、「使途の明示」と「正当化」については、有意な結果とはならなかった。
  • ―着地型観光商品の開発を事例として―
    佐藤 千洋
    2021 年 33 巻 1 号 p. 41-48
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル オープンアクセス
    旅行業は、国内市場の縮小、インターネットの普及、国内顧客の行動変化などの影響を受け、従来のマスツーリズム向けのビジネスからの脱却が求められている。この変化を受け、旅行商品も従来の「発地」を軸とした開発から、「着地」を軸とした開発へと変化しつつあり、このような開発主体の変化は、旅行会社のビジネスにも何かしらの影響をもたらすものと考えられる。そこで本稿では、このような市場環境の大きな変化を受けている旅行業が、どのように地域主導の着地型商品の開発プロセスに関与し、どのようにして収益を得ようとしているのか、株式会社 JTB の事例分析から明らかにする。
  • ―近江八幡における川端五兵衞氏の観光に関する言説を通じて―
    後藤 健太郎
    2021 年 33 巻 1 号 p. 49-62
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では、近江八幡のまちづくりにおいて中心的役割を果たした川端五兵衞氏の観光に関する言説を通じて、彼の観光に対する思想の解釈を行った。観光を否定する理由としては、流行性ニーズに基づくまちづくりを行うこと、町が物見の対象として扱われること、手段である観光が目的化することを回避するためであった。また、望ましい観光及びまちづくりと観光との関係に関しては、観光の対象とまちづくりの対象の一致、まちづくりの目標に基づく観光の定義づけ、住民と観光客の視点から標榜する町の対象範囲や施策の優先順位の明確化、そして、まちづくりの目標、目的と観光客像の整合を図ろうとしていたことが明らかになった。
  • ―東日本大震災における松島町・女川町の観光予算による経済波及効果から―
    山﨑 庸右
    2021 年 33 巻 1 号 p. 63-74
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル オープンアクセス
    国・自治体の震災復興のための観光政策予算が、被災地における被災者等の住民の収入源の確保として効果的に機能しているのかについて、東日本大震災の被災地のうち、松島町及び女川町における震災復興のための観光政策予算が被災者等の住民の収入にどれだけ影響しているのか、経済波及効果額を計算することによって検証し、定量的に把握した。そこから、観光政策予算は、松島町のような観光施設の被害が軽微な地域では、一定程度被災者等の住民に効果的であったことがわかった。その一方で女川町のような被害が甚大なところでは、一定程度復興するまでは、被災者等の住民に効果が小さいことがわかった。
  • ―法人カードの有用性に基づく一考察―
    藤原 久嗣
    2021 年 33 巻 1 号 p. 75-88
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、旅行目的の 1 つである出張旅行に焦点をあて、出張旅行に付随して生ずる精算方式の課題を明らかにするとともに、今後の方向性を明らかにすることを目的とする。出張旅行を巡る課題は、法制度のみならず、業務を行うための管理システムとも密接に関連しており、双方の視点から検討する必要がある。本稿では、宿泊費と交通費の費目を事例に取り上げ、出張者へのアンケート調査を実施することで、費目別の精算方式の課題を明らかにした。こうした課題への取組みとして、普及が進んでいるキャッシュレス化に着目し、法人カードを活用した出張管理システムについて考察を行う。
  • ―西国三十三所巡礼バスツアー参加者への質問紙調査を基に―
    南地 伸昭
    2021 年 33 巻 1 号 p. 89-105
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では、消費者行動研究の分野で発展してきた「経験価値モデル」に基づき、西国三十三所巡礼バスツアーの参加者を対象とする質問紙調査を行い、巡礼ツーリズムの中に現代の巡礼者が見出している多様な経験価値を捕捉するための尺度の開発を行った。その結果、経験価値の構成概念については、「脱日常的価値」および「真正性の価値」、「審美的および娯楽的価値」、「教育的価値」、「経済的価値」、「社会的価値」の計 6 因子、22 項目が抽出された。とりわけ、オリジナル性やリアル性、誠実さといった真正性を構成する重要な要素が抽出され、各々が真正性の探求を基底とする巡礼とツーリズムが融合した巡礼ツーリズムの特徴が確認された。
  • ―マレーシアのホテルで働く日本人女性スタッフを事例に―
    高橋 加織
    2021 年 33 巻 1 号 p. 107-119
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル オープンアクセス
    近年、インターネット上における「顧客の声」が、ホテルの経営において重要視されている。本研究では接客サービス労働過程の 3 極関係を参照しながら、マレーシアのホテルにおける日本人女性スタッフの労働関係において、「顧客の声」がどのように作用しているのかを実証的に議論する。手法としては計量テキスト分析を通じてホテルレビューの傾向を明らかにした上で、日本人女性スタッフに対する半構造化インタビューの結果から、接客サービス労働において管理者・顧客・労働者の 3 極関係がどのように表れているのかを考察した。その結果、「顧客の声」を通じた労働強化の実態が明らかとなった。
研究ノート
  • ―価格訴求型旅行促進政策 Go To トラベルを事例に―
    本間 准
    2021 年 33 巻 1 号 p. 121-127
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル オープンアクセス
    「旅行会社は本業による社会的貢献にどのように取り組むべきか」という問いに接近することを目的とし、価格訴求型旅行促進政策 Go To トラベルを事例に有識者三者へのインタビュー調査を実施した。調査の結果、観光地域の災害からの回復に即効性があるのが、その地域への送客を通じての消費であり、このことから旅行会社の本業を通じた社会的貢献の機会が増えていること。旅行会社が政府の助成金を旅行代金に反映することで顧客が高付加価値の旅行商品を廉価で購入できる機会を、宿泊施設が付加価値を高め単価を上げるためのきっかけとすべきであること。政策の割引率を週末と平日で変動させ、旅行会社が旅行代金に反映することにより、観光地域が繁忙期と閑散期の需要の平準化を図る機会とすべきであることが示された。三者に共通した理念として、取り組みによる効果を持続的なものとすることを目指すべきであるという考えが確認された。
  • ―新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響―
    石井 洋二
    2021 年 33 巻 1 号 p. 129-134
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル オープンアクセス
    新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、世界各国で深刻な影響をもたらしている。国連世界観光機関(UNWTO)によると、COVID-19 の影響を最初に受けた地域でもあるアジア太平洋地域では、2020 年上半期( 1 月~ 6 月)にインバウンド観光客数が前年同期比で 72%減少し 1)、ニュージーランドも例外なくこの影響の中に含まれている。本論では、コロナ禍前のニュージーランドの観光概況を整理した後、コロナ禍の影響を受けている同国の観光産業の状況とその行方を考察した。同国は、受け入れ可能な近隣国から徐々にインバウンド観光を回復させていく一方、国内観光市場を堅実に伸ばしていくことが示唆された。
調査報告
  • ―温泉利用に加えエコツアーを体験することが心身に対して与える効果の測定―
    西村 公一, 海津 ゆりえ, 瀧 康洋, 松村 優也
    2021 年 33 巻 1 号 p. 135-142
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル オープンアクセス
    日本三名泉の一つであり、近年エコツーリズムの考え方に基づく地域づくりを推進している下呂温泉において、温泉利用やエコツアーによる効果の科学的な検証を目的として、温泉施設滞在者とエコツアー参加者を対象にアンケート調査を実施した。その結果、温泉利用による心身の改善効果、エコツアー参加による地域の自然、歴史、文化に対する理解向上、エコツアー参加者の高いリピート意向等が確認された。さらに、温泉だけを利用する滞在者よりも、温泉に加えてエコツアーを体験する人の方が、より心身に対して改善効果が見られるという効果が確認された。
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