観光研究
Online ISSN : 2189-7530
Print ISSN : 1342-0208
ISSN-L : 1342-0208
最新号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
論文
  • ―故郷概念の変遷と真正性―
    鈴木 里奈
    2023 年 35 巻 1 号 p. 5-15
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/04/01
    ジャーナル オープンアクセス

    本稿の目的は、観光目的地としての故郷の変遷に着目し、観光者による真正性の探求という観点から分析することで、「故郷を目的地とする観光」の性質を明らかにすることである。近年、故郷は地域活性化を目的とした政策に活用されているが、故郷を訪れる行為は、観光学において明確に位置づけられてこなかった。そこで本稿は、先祖の故地を訪れる「先祖観光」と、古きよき日本のイメージに基づく「ふるさと観光」、そして関係性の枠組みの三点から、故郷概念を整理した。そして、先祖観光とふるさと観光が重なる現象として、「故郷観光」と位置づけた。故郷観光は、観光者自身と故郷との新たな繋がりを創出する行為である。

  • ―体験型観光「高岡クラフツーリズモ」を事例として―
    山岸 紫
    2023 年 35 巻 1 号 p. 17-33
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/04/01
    ジャーナル オープンアクセス

    本稿の目的は、工芸文化の商品化のプロセスにおける体験と人的交流の商品化が、工芸文化にもたらす影響を論じることだ。工芸文化は、生産と消費の循環によって形作られてきた。近年、有形の工芸品を消費せずとも工芸文化を堪能できる、体験・交流型の観光が登場している。本稿では、富山県高岡市における「高岡クラフツーリズモ」を事例に、消費社会論の再魔術化という分析枠組みを用い、ものづくりの現場、「伝統の技」のプロセス、担い手が新たに商品化されていると論じる。消費者(観光客)が体験・交流型観光に満足する一方で、産地の担い手は工芸品の売上に依存しているという構造的なズレが生じていると結論づける。

  • ―野生生物観光の観点から―
    水谷 知生, 平 侑子
    2023 年 35 巻 1 号 p. 35-52
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/04/01
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究では、野生生物観光を対象の保全に資する持続可能なものと整理し、シカと人との近接関係が野生生物観光として成立する背景の整理を試みるため、近世以降の宮島のシカと住民や来訪者との関係性を明らかにしつつ、野生生物観光が成立している奈良のシカの状況と比較を行った。近世、明治期以降戦前まで、戦後のいずれの時期においても宮島のシカと人との関係が野生生物観光として成立していなかったことが確認された。その背景として、野生生物観光の成立には、シカと人が同じ空間を共有し近接関係を維持すべきとする地域の意志が必要で、奈良では宗教的な背景があったが、宮島には同様の背景はなかったためと結論づけた。

  • 松田 法子
    2023 年 35 巻 1 号 p. 53-64
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/04/01
    ジャーナル オープンアクセス

    芸者町は全国に多数存在したが、それらの成立経緯や空間的・建築的特徴、社会構造等に踏み込んだ研究は手薄である。本研究では、京都府宮津市の新浜を対象に事例的検討を行う。宮津は、近世の城下町及び港町を母体に、織物の生産・供給地の中核都市として発展し、かつまた名所・天橋立を擁するゆえに観光業で支えられてきたまちである。このような特徴をもつ地方都市における芸者町の空間史と建築について、地籍図、土地台帳、古写真、建築の実測調査、関係者への聞き取り等から総合的に検証し、明らかにする。その過程では同時に、新浜の前史である近代の貸座敷(娼妓)営業地及び近世の廓としての具体像も考察する。

  • ―Web調査による基本要素の抽出―
    鈴木 涼太郎, 花井 友美, 金 振晩
    2023 年 35 巻 1 号 p. 65-78
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/04/01
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究では、観光客がおみやげに何を求めているのかについて、幅広い世代の男女700名を対象にしたWEB調査をもとに、その基本要素の抽出を試みた。国内外のスーベニア/おみやげをめぐる研究を整理しながら質問項目を設定し、因子分析を行った。その結果、食品みやげでは「確実性」、「ギフト性」、「ネタ・ユニークさ」、「地域性」、「経験・思い出」、「有名性」の6因子、非食品においては「確実性」、「地域性」、「経験・思い出」、「ギフト性」、「ネタ・ユニークさ」の5因子が抽出された。

研究ノート
  • ―オーストリアにおける聞き取り調査をもとに―
    五艘 みどり, 國井 大輔, 平形 和世, 山田 耕生
    2023 年 35 巻 1 号 p. 79-86
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/04/01
    ジャーナル オープンアクセス

    日本におけるルーラルツーリズムは、事業性と収益性の低さから、次世代への継承が困難となっている地域がある。また、Covid-19によって観光活動が低迷したことをきっかけに、高齢なルーラルツーリズムの担い手の一部は運営への意欲を失っている。これらの背景から、ルーラルツーリズムを地域に定着させ持続的に運営させるには、担い手を支援し観光客とのマッチングを図るような組織が不可欠である。一方、ルーラルツーリズムが定着するオーストリアでは、農業者が質の高いサービスを提供し十分な収益を得ることができるよう支援する組織が存在し、多様な組織と連携することでその取り組みを持続的にしている。そこで本研究では、オーストリアの事例を対象に、ルーラルツーリズムの推進組織の活用内容と組織間連携を明らかにすることを目的としている。

論説
  • ―感染防止対策協力要請に正当な理由なく応じない宿泊者の宿泊拒否規定創設―
    渡部 友一郎
    2023 年 35 巻 1 号 p. 87-93
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/04/01
    ジャーナル オープンアクセス

    「新型コロナウイルス感染症等の影響による情勢の変化に対応して生活衛生関係営業等の事業活動の継続に資する環境の整備を図るための旅館業法等の一部を改正する法律案」は、新型コロナウイルス感染症及び宿泊サービスの両者を研究する上で、今後、観光学及び法学のいずれにおいても重要な基礎情報となる。2020年以降の新型コロナウイルス感染症のまん延において、旅館業は、自宅等で過ごす国民が必要最低限の生活を送るために不可欠なサービスとして事業継続が要請される一方、旅館業法第5条が厳格に規定する(刑事罰を伴う)宿泊拒否の禁止を背景に、優越的な立場を利用する一部の宿泊者の感染防止対策への非協力とまん延防止の両立に苦慮してきた。本稿は、行政文書開示決定により開示された厚生労働省の同法に係る立案担当者資料を綿密に分析し、同法の構造さらに宿泊拒否規定創設の是非を論じるものである。

feedback
Top