栃木県那須岳において,過去15年間(1998〜2012年)のハイマツの年枝長と過去10年間(2002〜2011年)の球果痕を調べ,シュート成長と球果生産の年変動について明らかにした。また,シュート成長と気温の関係,およびシュート成長と着果の関係について検討した。過去15年間のシュート成長は横ばい傾向にあった。シュート成長と気温の相関解析を行った結果,当年のシュート成長は前年7月の気温と高い正の相関(r=0.77, p<0.001)があり,既往の研究結果同様に,ハイマツの伸長成長は前年夏季の気温によって規定されていると考えられた。過去10年間の球果痕を調べた結果,豊作は1回,凶作は3回であった。着果幹率は既往の本州中部山岳の値と比較して高かった。これは,本調査地のハイマツの生育標高が本州中部山岳と比較して低いため,厳しい気候条件が緩和され,ハイマツは種子繁殖により多くの資源を投資するためと推察された。球果生産を枝レベルでみると,着果は前年のシュート成長がよいほど促進される傾向にあった。一方,幹サイズに着目すると,ハイマツの球果生産能力は地際直径に対して一山型分布をしており,樹齢と関係している可能性が示唆された。
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