森林立地
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特集「海岸林再生における広葉樹導入の可能性」
論文(特集)
  • 佐野 哲也
    原稿種別: 論文
    2023 年 65 巻 2 号 p. 57-67
    発行日: 2023/12/25
    公開日: 2024/01/16
    ジャーナル 認証あり

    東日本大震災以降,津波防災用の避難丘や盛土道路など人工地盤への植栽が広範囲に実施された。人工地盤の特性は盛土材料や造成方法により多様であるため,その違いを反映した植栽木成長状況の差異が発生することが予想される。本研究では,植栽木の成長に影響を与える主要な地盤特性の影響を明らかにするため,宮城県岩沼市の津波防災用避難丘と盛土道路の法面に植栽された広葉樹を対象に成長状況と植栽基盤特性の関係を検討した。造成および植栽時期の異なる盛土植栽地5箇所を対象に植栽木の成長経過を数年間追跡し,植栽基盤の硬さおよび粒径組成,養分含有量,pHなど盛土材特性との対応関係を比較検討した。植栽地間に見られる成長状況の差異は,植栽地盤の硬さの違いよりも盛土材特性の違いを良く反映しており,粘土含有量,有機物含量,交換性塩基量が少ない酸性ないしアルカリ性に片寄った盛土造成土においてタブ,シラカシ,ウラジロガシ,アラカシ,アカガシ,ヤブツバキ,モチノキなど常緑広葉樹の成長が緩慢になる傾向が認められた。一方,同じ盛土材で造成された同一盛土内に認められる局所的な成長不良は,極端に硬いか膨潤な地盤上で発生する傾向が認められ,植栽地盤の硬度の違いを反映していることが示唆された。

  • 大谷 達也
    原稿種別: 論文
    2023 年 65 巻 2 号 p. 69-79
    発行日: 2023/12/25
    公開日: 2024/01/16
    ジャーナル 認証あり

    台風の高潮被害によって無立木化しニホンジカが出現する徳島県海陽町「大里松原」海岸林の再生に向けて広葉樹植栽の方法を探るため,常緑の低木・亜高木・高木種を含む12樹種で2年間の植栽試験をおこなった。苗木の成長量やシカによる被害をもとに,植栽時の樹種の組み合わせやシカ対策を検討した。苗木成長やシカ被害についての変数によるクラスター分析では,シカ被害の軽微な7種と激しい5種に二大別された。シカ被害の軽微な樹種では亜高木種のヤマモモとヒメユズリハ,激害を受けた樹種では低木種のトベラが旺盛な樹高成長を示した。高木性樹種のクスノキ・ヤブニッケイ・タブノキ・ホルトノキではいずれも,葉の白斑や褐変,退色といった強光阻害の兆候がみられた。大里松原の植栽試験地周辺では,内陸の山地との間に小規模な森林や放棄農地が点在しており,シカが出現しやすい環境が整っていると考えられた。このような海岸林が無立木になった場合,小区画ごとに防護柵を設置したうえで,保護樹としてのヤマモモ・ヒメユズリハ・トベラに高木性樹種を組み合わせて植栽することを提案した。

短報
  • 溝口 拓朗, 伊藤 哲, 光田 靖, 平田 令子, 山岸 極
    原稿種別: 短報
    2023 年 65 巻 2 号 p. 81-89
    発行日: 2023/12/25
    公開日: 2024/01/16
    ジャーナル 認証あり

    スギ人工林主伐後における土砂移動の空間不均一性とその要因を定量的に把握する目的で,100年生スギ人工林において,伐採区と対照区を設定して伐採実験を行い,その後約6か月間の土砂移動レートの変動係数(CV)を比較した。伐採区の土砂移動レートのCVは対照区よりも大きく,土砂移動レートの極端に高い地点が観察された。これは,伐採木の搬出の地表撹乱によって表面流の集中する箇所(いわゆる「水みち」)が形成されたためと推察された。次に,伐採区および対照区の土砂移動レートを,その全体の平均値より大きな値をとった場合(偏差が正)と平均値より小さな値をとった場合(偏差が負)の2つのカテゴリに分類し,カテゴリ間で残材または枝条等リターによる林床被覆率,リター移動レートおよび斜面傾斜を比較した。その結果,残材による林床被覆は土砂移動を抑制する効果があることが示唆された。さらに,土砂移動の不均一性を形成する要因を明らかにするために,目的変数を土砂移動レートの偏差カテゴリ(正・負)として,説明変数を斜面傾斜,残材または枝条等リターの林床被覆率およびリター移動レートとして決定木解析を行ったところ,伐採区では残材による林床被覆率が45.5%を上回ると,偏差カテゴリが負となる結果が得られた。以上の結果から,伐採地における土砂移動の空間不均一性には,伐出による水みちの形成および散在する林地残材による土砂移動の抑制が影響していることが示唆された。

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