森林立地
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47 巻, 2 号
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  • 伊藤 祥子, 星 理恵, 藤井 哲次郎, 谷本 丈夫
    原稿種別: 論文
    2005 年 47 巻 2 号 p. 65-75
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
    福島県駒止湿原周辺の森林を再生させる方策を検討するため,湿原周辺の耕作跡地における群落構造を明らかにし,代表的な群落型の土壌断面を掘って,その土壌の特徴を把握し,さらに群落型と土壌の硬度・透水性との関係を調べた。耕作跡地を除く湿原周辺はブナの二次林で,耕作跡地には林縁および沢や湿原に接する場所にクマイザサやクマイチゴなどの低木型,湿原に隣接し湧水の認められる場所にヨシ型,平坦地に牧草型,斜面にススキ型が分布し,ブナ林を含めて計5型に区分できた。さらにススキ型は斜面上部の生育不良(草丈<2.0m)と斜面下部の生育良好(草丈≧2.0m)の2亜型に区分できた。特にススキ生育不良亜型は農道に接していた。ブナ林の土壌型は適潤性褐色森林土(偏乾亜型)B_D(d)であった。一方,耕作跡地の土壌表面はブナ林よりも30〜40cm低くなっており,土壌断面はにぶい黄褐色を呈し,粒状構造の埴土の耕耘層と黄褐色でカベ状構造の埴土のB層から成っていた。しかし,ススキ生育良好亜型や牧草型ではススキ不良亜型よりも耕耘層が厚く,根系が多く認められ,腐植の浸透も深かった。土壌硬度は牧草型とススキ生育良好亜型がススキ生育不良亜型よりも軟らかい土壌の割合が多く,ブナ林についで軟らかかった。また土壌透水性も表層から深さ40cmでは,牧草型とススキ生育良好亜型がススキ生育不良亜型よりも優れていた。以上のことから,駒止湿原周辺の耕作跡地で群落型に違いが認められた要因の1つは,表層土壌が失われた程度の違いによると推察した。表層土壌が失われた程度が異なることに付随して,腐植の浸透した深さ,土壌硬度,土壌透水性の違いに表れたと考えられた。このように各群落の立地特性を把握したうえで,耕作跡地に森林を再生させるために,ブナの植林が可能な立地環境を指標する植物群落型を明らかにし,再生の過程と方策の一案を示した。
  • 深田 英久, 渡辺 直史, 梶原 規弘, 塚本 次郎
    原稿種別: 論文
    2005 年 47 巻 2 号 p. 77-84
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
    ヒノキ人工林の土壌保全を目的とする下層植生管理に資するために,温量指数傾度上で下層植生の温度域区分を行い,植生管理への応用を検討した。高知県全域にわたる多数のヒノキ人工林で下層植生の種ごとの植被率(%)を6段階評価し,これを指数化した(被度指数)。針葉樹,常緑木本,落葉木本,草本・地表植物,ウラジロ・コシダ,ササの6生活型を設け,各々に属する種の被度指数の和(被度指数小計)を算出した。温量指数の傾度上で,常緑木本とウラジロ・コシダの被度指数小計の散布状態に変化の見られた点(それぞれ,寒さの指数-10と暖かさの指数105〜110)を境界とし,常緑木本類の繁茂できない落葉樹域,常緑木本類は繁茂できるが,ウラジロ・コシダの繁茂できないカシ域,常緑木本類とウラジロ・コシダが共に繁茂できるウラジロ・コシダ域の3域を区分した。ウラジロ・コシダ域では,土壌侵食抑制効果の高い植生夕イプである草本・地表植物型の出現頻度が他の2域に比べて低かった。土壌侵食抑制効果の低い貧植生型の相対頻度は,ウラジロ・コシダ域<カシ域<落葉樹域の順に上昇した。これらの事実に基づいて,ヒノキ人工林における土壌保全を目的とした下層植生管理には温度域ごとに異なる方法が必要であることを指摘した。収量比数と植生タイプとの関係が温度域間で異なることを明らかにし,林分密度管理による下層植生管理を行う場合は,温度域ごとに別個の管理モデルが必要であることを指摘した。
  • 荒木 眞之, 程 云湘
    原稿種別: 論文
    2005 年 47 巻 2 号 p. 85-94
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
    中国内蒙古自治区周辺の降水蒸発散能比(P/PET_t)を,Thornthwaite式・気温と降水量月別平年値等から計算し,1951〜'80年・1961〜'90年・1971〜2000年の3期の乾燥度区分図を描いた。各期の図について,乾燥度で区分された各地域の東端の経度・中心位置の経度・面積を比較することにより,第1〜3期における乾燥化が確認できた。自治区内外に11地点を選定し,乾燥化の原因を解析した。その結果,年平均気温(5年移動平均値)の46年(1953〜'98)間の経時変化傾向が地点間で極めて良く近似すること,第1〜3期の20年間の気温上昇を約0.8℃と見て良いこと,この値は1971〜'88年の年平均気温の上昇速度0.349℃/yearから求めた値と概ね一致しYatagai and Yasunari (1994)の結果とも良く近似することが分った。気温・降水量とも5年移動平均値から計算したP/PET_tの経時変化には一定傾向が見出せないが,5地点で値の減少(乾燥化)が明らかになった。第1期の各地点・各月の月平均値に0.698℃を加えた値によって第3期のP/PET_t値を推定したところ,良く一致した。すなわち,20年間に約半数の地点で起こったP/PET_t値の減少は気温上昇に起因すると見て良い。以上から,内蒙古自治区において地球温暖化による気温の逐次的上昇に起因する各草原の分布地移動が起こっている可能性が極めて強く示唆される。
  • 宮國 淳, N. M. Heriyanto, Ika Heriansyah, Rinaldi Imanuddin, 清野 嘉之
    原稿種別: 論文
    2005 年 47 巻 2 号 p. 95-104
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
    メルクシマツ植林地におけるバイオマス量推測を目的とする汎用性の高い係数・パラメータについて検討した。インドネシア・西ジャワ州で5,11,19,24年生の林分にプロットを設置,毎木調査の後55本を破壊調査した。(1)毎木調査データを利用したバイオマス量推定に用いられるアロメトリー式を算出した。樹高を考慮に入れた[Yn=a・(DBH^2・height)^b]の相対成長式の場合,各係数に林齢による有意差が見られなかった。(2)木材積からのバイオマス量推定に用いられる材積密度,拡大係数,根-地上部比率を算出した。その結果,既存のIPCCのLULUCF-GPGのデフォルト値と一部異なる結果が得られ,デフォルト値はさらなる検討が必要と思われた。(3)インドネシア国内20ケ所のメルクシマツ植林地の毎木調査のモニタリングデータに本研究のアロメトリー式を適用し,林分バイオマスの時系列変化を推定した。21年生時の林分バイオマスは161.75〜456.34 t ha^<-1>の範囲内にあり,重回帰分析によれば立木密度や地位指数によって有意に変化した。
  • 佐藤 保, 齊藤 哲, 江藤 幸二, 加藤 省三
    原稿種別: 論文
    2005 年 47 巻 2 号 p. 105-112
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
    宮崎県高岡町の林木遺伝資源保存林内に設置した1.Ohaの試験地において1998年と2001年に毎木調査を行い,その個体群構造と動態の解析を行った。1998年から2001年の3年間における枯死率は,1.54%year^<-1>であり,同時期の新規加入率である1.32% year^<-1>を上回っていた。DBHサイズおよび階層別に枯死率を比較すると,亜高木層に属する小径木(DBH15cm未満)で最も高い値を示した。優占度指数の最も高いイスノキは,安定した個体群構造を示し,今後も本試験地の優占種として維持されるものと考えられた。イスノキに次ぐ優占種であるウラジロガシは,小径木個体(DBH15cm未満)が林冠ギャップを中心に生育しており,その個体群構造は過去の撹乱履歴を反映しているものと推察された。試験地から約18kmほど離れた成熟林分との比較から,欠落(マテバシイ)もしくは優占度の低下(ホソバタブやバリバリノキ)を示す種があり,種組成の面でも過去の撹乱の影響を受けていることが考えられた。生育する各樹種の最大DBHサイズや種構成などから,調査林分は過去に人為撹乱を受けた老齢二次林であると推察された。
  • 米田 令仁, 松本 陽介, 田中 憲蔵, Mohamad Azani Alias, Nik Muhamad Majid
    原稿種別: 論文
    2005 年 47 巻 2 号 p. 113-118
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
    寒冷紗を用いて作られた人工遮光物が,全天条件下における植栽直後のDyera costulata (Miq.) Hook. f.(キョウチクトウ科)苗に与える影響を葉の光合成反応から評価した。人工遮光物を植生被覆のない裸地環境とイネ科草原環境に設置し,平均苗高約54cmのD,costulata苗を遮光物内と外に植栽した。植栽前の苗畑と植栽2週間後に,葉の光飽和光合成速度(Pn_<max>)と夜明け前のFv/Fmを測定した。Pn_<max>は,午前と午後に測定した。植栽後のPn_<max>は,植栽前に比べ全処理区で低下傾向にあった。植栽2週間後では,午前中のPn_<max>が処理区間で明瞭な差がなかったが,午後に全天区で大きく低下した。光合成速度の低下は,高い葉-大気水蒸気圧差(VPD_<leaf>)による気孔開度の低下が原因であると考えられた。Fv/Fmの値は,遮光物下では0.7前後と高かったが,全天区では0.5以下の値を示し,乾燥や強光によって葉の光合成系IIが慢性的な光阻害を受けていることが明らかになった。以上の結果から,遮光物には全天条件下における植栽初期の光合成低下と慢性的な光阻害の緩和効果があることが明らかになった。
  • 米田 令仁, 松本 陽介, 田中 憲蔵, Mohamad Azani Alias, Nik Muhamad Majid
    原稿種別: 報告
    2005 年 47 巻 2 号 p. 119-123
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
    熱帯荒廃地の修復をおこなう際,植栽される苗は高温,強光,乾燥に曝されるため,生育が困難である。本研究では植生被覆のない荒廃裸地において遮光物を作製し,植栽した苗が受ける各種ストレスを軽減させることができるか,遮光物内外の微気象を測定することで調べた。その結果,遮光物の外に比べ,遮光物内では,光強度,温度,水蒸気圧飽差とも低い値を示した。遮光物内に直達光が当たる時間帯では光強度の値が外部とほぼ同じ値を示したが,温度,水蒸気圧飽差の値は外部ほど急激に上昇しなかった。遮光物内の温度,水蒸気圧飽差の値は苗の生育に最適な値ではなかったが,外部の生育に厳しい気象条件より緩和されていることから,荒廃地植栽への導入効果が期待できると考えられた。
  • 武田 宏
    原稿種別: 報告
    2005 年 47 巻 2 号 p. 125-129
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
    耕作放棄水田における林地化の試みとして,1994年春に新潟県内の3調査地にハンノキとスギを植栽し,2001年まで経過を調査した。ハンノキは2調査地で1999年と2000年までに全て死亡し,残りの1調査地でも2001年には13%に低下していた。一方,スギは最低でも55%の生残率だった。ハンノキの死亡要因では,コウモリガ被害,誤伐,雪害が多かったが,その比率は3調査地で異なっていた。一方,スギの死亡要因では3調査地とも誤伐が最も多いことで共通していた。いずれの調査地もハンノキよりスギの成長が上回っていた。ハンノキは過湿な土壌環境で成育が期待できたが,耕作放棄後の時間が経過すると草本植物の繁茂によりコウモリガ被害が増加するため,草本植物が繁茂しないうちに植栽する必要があると考えられた。
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