森林土壌における水溶性塩基のバランスはインプットとしての林内雨からの付加,Ao層および鉱質土壌層からの放出(コロイドとの交換による溶出と有機物の分解)と,アウトプットとしての林木による吸収と下層土への溶脱によって保たれる。その動態を量的に把握するために,イオン交換樹脂バッグおよびイオン交換樹脂コアを複合させ,18年生のスギ林の表層土壌中の水溶性塩基の移動量を測定した。試験地の林内雨とイオン交換樹脂近くの土壌水も採取した。K,Ca,Mgともに,林内雨からの付加,Ao層および土壌からの放出量は大きく異なった。インプットに占めるそれらの割合はそれぞれKで54%,12%,34%,Caで15%,36%,49%,Mgで22%,36%,42%であった。一方,アウトプットに占める林木による利用と下層土への溶脱の割合は,それぞれKで66%,34%,Caで42%,58%,Mgで45%,55%であった。森林の表層土壌におけるKの植物による利用効率はCaとMgより高かった。土壌中の水溶性塩基の動態を明らかにするのに複合されたイオン交換樹脂法の有効性が指摘された。
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