林齢100年近いサワラ人工林はスギ,ヒノキ林に比べて希少であり,管理手法について不明な点が多い。密度の大きく異なるサワラ人工林3林分で8年間の成長,生存について解析を行った。調査地は茨城県常陸大宮市の尺丈山1区,尺丈山2区,石岡市の月の折区である。いずれの調査地でも間伐の記録がないが月の折区では伐根が見られたことから,過去に密度管理が行われていたと考えられる。調査開始時のサワラの密度は尺丈山1,2区,月の折区で586本ha-1,1,067本ha-1,450本ha-1,サワラの平均胸高直径は35.5 cm,30.4 cm,47.8 cmであり,サワラの胸高断面積比はそれぞれ84%.95%.77%であった。尺丈山2区では調査開始時に200本ha-1が枯死していた。最も低い品等の「低」の本数率が尺丈山1,2区では35%,47%だが,月の折区では18%であり,サワラの密度から考えて過去に劣勢木の除去が行われたと考えられた。サワラの8年間の枯死は本数率で2.4~4.5%で,「低」の品等にのみ見られた。尺丈山1,2区では69.5%,48.7%のサワラに溝腐れが見られたが,月の折区では4.2%であった。サワラ高齢林の育成にあたり,間伐は平均直径を増加させ,溝腐れ被害を防ぐ可能性があることが推察された。
抄録全体を表示