森林立地
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65 巻, 1 号
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特集「海岸林再生における広葉樹導入の可能性」
緒言(特集)
論文(特集)
  • 大谷 達也
    原稿種別: 論文
    2023 年 65 巻 1 号 p. 3-12
    発行日: 2023/06/25
    公開日: 2023/07/07
    ジャーナル 認証あり

    海岸林への導入候補となる広葉樹を耐塩性によって分類するため,西日本の海岸林でみられる20種の苗を使って海水浸漬後の反応を観察した。2020年9月末に各樹種7本のポット苗の土壌部分(園芸培養土の充填された10.5 cmポット)を海水に15時間漬けた後,3本ずつの無処理苗とともに50日間にわたって各苗3枚ずつの葉のFv/Fm値および苗ごとの落葉枚数を記録し,ポット底からの流出水の導電率を測定した。その後7ヶ月間,苗を育成し枯死や新葉展開を観察した。Fv/Fm値,落葉の時期,および翌年の苗木の状態についての変数をもとに,クラスター分析によって各樹種を分類した。その結果,海水浸漬によってなんら変化が認められないクロマツから,浸漬後6日目までに全個体が枯死したムクノキまで,樹種ごとに反応が大きく異なった。クロマツに次いで海水浸漬に強いとされたのはハマヒサカキ,マサキ,およびシャリンバイの低木種3種,浸漬に弱いとされたのはスダジイ,ハゼノキ,およびアカマツといった6種となり,クスノキ,カゴノキ,ホルトノキといった常緑の高木性広葉樹を含む10種は中間的な反応を示した。実験の終了時でも流出水の導電率は浸漬前の値を越えていたため,実験期間を通じて苗木に塩分ストレスがかかったと推察された。クロマツの代替として高木性の広葉樹を導入する際には,海岸林の内陸側や標高の高い場所といった高潮による海水浸漬リスクが小さい地点を選ぶ配慮が必要だと考えられる。

解説(特集)
論文
  • 太田 敬之, 須崎 智応, 安藤 博之, 仲田 昭一, 鈴木 和次郎
    原稿種別: 論文
    2023 年 65 巻 1 号 p. 19-27
    発行日: 2023/06/25
    公開日: 2023/07/07
    ジャーナル 認証あり

    林齢100年近いサワラ人工林はスギ,ヒノキ林に比べて希少であり,管理手法について不明な点が多い。密度の大きく異なるサワラ人工林3林分で8年間の成長,生存について解析を行った。調査地は茨城県常陸大宮市の尺丈山1区,尺丈山2区,石岡市の月の折区である。いずれの調査地でも間伐の記録がないが月の折区では伐根が見られたことから,過去に密度管理が行われていたと考えられる。調査開始時のサワラの密度は尺丈山1,2区,月の折区で586本ha-1,1,067本ha-1,450本ha-1,サワラの平均胸高直径は35.5 cm,30.4 cm,47.8 cmであり,サワラの胸高断面積比はそれぞれ84%.95%.77%であった。尺丈山2区では調査開始時に200本ha-1が枯死していた。最も低い品等の「低」の本数率が尺丈山1,2区では35%,47%だが,月の折区では18%であり,サワラの密度から考えて過去に劣勢木の除去が行われたと考えられた。サワラの8年間の枯死は本数率で2.4~4.5%で,「低」の品等にのみ見られた。尺丈山1,2区では69.5%,48.7%のサワラに溝腐れが見られたが,月の折区では4.2%であった。サワラ高齢林の育成にあたり,間伐は平均直径を増加させ,溝腐れ被害を防ぐ可能性があることが推察された。

  • 田中 憲蔵, 大曽根 陽子, 橋本 昌司
    原稿種別: 論文
    2023 年 65 巻 1 号 p. 29-37
    発行日: 2023/06/25
    公開日: 2023/07/07
    ジャーナル 認証あり

    本研究は,スギ・ヒノキの生理生態機能に関する過去70年の文献を解析し,文献数や内容の変遷と社会・環境的な背景を明らかにすることを目的とした。まず研究テーマをバイオマス,光合成・呼吸,樹体内の養分,水分生理関係,材形質,その他に分けた。次に文献数を1950年から5年ごとに集計した。文献数は1975~1979年をピークに1980~1985年まで一度低下したが,1985~1989年にふたたび増加し,2020年まで緩やかに低下した。最初のピークの背景には拡大造林の終焉が関係していた。特に,林地肥培試験に伴う樹体内の養分に関する研究は1980年代以降ほとんどなくなった。また1965年から1974年に国際生物学事業で行われた森林生産力の研究の影響で,バイオマスに関する研究が1970年代をピークに収束した。1985年以降に文献数が増加するが,テーマは光合成・呼吸と水分生理へシフトした。これは測定機器の発展に加え,酸性雨や気候変動の評価と対策に樹木の生理的なパラメータが不可欠だった背景がある。英文で書かれた文献数は2000年代以降増加し,国際発信力が大きくなった。また,研究が行われた地域に偏りがあり主要な研究グループと関係があった。以上から,文献数やテーマは,拡大造林や気候変動など社会的・環境的要因で変遷したことが明らかになった。

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