森林立地
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46 巻, 2 号
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  • 豊田 貴樹, 宮崎 宣光, 加藤 和久, 遠宮 広喜
    原稿種別: 論文
    2004 年 46 巻 2 号 p. 59-67
    発行日: 2004/12/25
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
    マングローブの帯状分布に影響を与える環境因子のひとつとして海水および汽水の滞水時間が挙げられる。フィリピンのパラワン島ウルガン湾の人為的な影響が少ない良好なマングローブ林においてマングローブの帯状分布と滞水時間の関係について調査を行った。3本のトランスセクトを設置して海側から陸までのマングローブの帯状分布変化と地盤高変化を測量した。出現したマングローブ樹種の分布は海から陸に向かう順に,Rhizophora mucronata (Rm)<Bruguiera gymnorrhiza (Bg)=Rhizophora apicurata (Ra)=Xylocarpus granatum (Xg)<Aegiceras floridum (Af)=Bruguiera sexangula (Bs)=Heritiera Littoralis (Hl) であった。また,測量の結果,地盤高は起点からの距離に応じて陸に向かい漸次高くなっていくことが明らかになったため,水平的なマングローブの帯状分布は各樹種の生育地盤高範囲の違いが現れたものであると考えられた。生育地盤高を滞水時間に置き換えるために,1本のトランセクト(UL3)に沿って主な調査木の最高潮位と同日の潮位変化からそれぞれのマングローブ樹種の滞水時間を推定した。この結果,Rmのうち最も海側に分布する個体が小潮の時に24時間滞水する以外は,出現した全てのマングローブは1日のうちに短時間でも海面から地表面が現れる場所に分布していること,Bs,Hlのうち最も陸側に分布する個体は,6月の大潮の時でも滞水しない場所まで分布域を広げていること等,各樹種の滞水時間範囲の違いが示された。
  • 平井 敬三
    原稿種別: 論文
    2004 年 46 巻 2 号 p. 69-75
    発行日: 2004/12/25
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
    スダジイ二次林における斜面位置の違いや伐採にともなう窒素無機化特性を検討するため,非破壊土壌試料による洗滌培養法を用いた反応速度論的解析から検討した。反応速度論的解析で得た各種パラメータと地温観測データを利用して,これら土壌の年間無機化量を推定した。また,同時に破壊土壌試料によるびん培養法を行い,表層土壌の窒素無機化におよぼす土壌攪乱の影響を検討した。可分解性の窒素量(N_0)は斜面上部の土壌で多かったが,尾根では無機加速度を示す速度定数(k)が大きく,見かけの活性化エネルギー(Ea)は小さく無機化されやすかった。深さ5cmまでの単位面積あたりの年間窒素無機化量は13.5〜38.5kg ha^<-1>yr^<-1>であり,尾根の無機化量が大きかった。伐採地では速度定数が小さく,活性化エネルギーが同じ尾根にある林内の非伐採地の土壌に比べて大きくなったことから,無機化量(N)は小さくなった。さらに無機化プールに対する年間窒素無機化量の割合を示す無機化率(N/N_0)が非伐採の林内尾根や斜面上部より小さく,回転速度が遅くなった。一方,硝化率が非伐採地に比べて高く,硝化活性が伐採により高まった。土壌の攪乱を伴う破壊土壌を用いたびん培養法よる無機化量は非破壊土壌から求めた洗滌培養法の2.5〜3倍あり,無機化率は洗滌培養法で1.0〜3.1%,びん培養法で5.4〜7.5%とびん培養法で高かった。
  • 伊藤 江利子, 小野 賢二, 今矢 明宏, 鹿又 秀聡
    原稿種別: 論文
    2004 年 46 巻 2 号 p. 77-84
    発行日: 2004/12/25
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
    森林の窒素流出ポテンシャルを広域に評価する試みとして,矢作川流域の森林域134,000haを対象とし,森林土壌における窒素動態に関係する3つの指標を,GISを用いて推定した。GISデータとして既存のデータ(数値地図50mメッシュ(標高)・数値地図・国土数値情報・環境庁植生図)を利用した。解析範囲の森林を植生と土壌の乾湿状態を基準として,7つの森林タイプに分類した。各森林タイプの代表地点において現地調査を行い,深さ1mまでの土壌窒素貯留量を算出した。また,土壌表層0-5cmの窒素無機化率および硝化率をビン培養法によって測定した。得られた値を用いて,流域内の森林土壌における窒素貯留量・日最大窒素無機化量・日最大硝酸態窒素生成量を推定し,各々の流域内分布図を作成した。矢作川流域の森林域における土壌窒素貯留量は約1,130,000t N,日最大窒素無機化量は400t N day^<-1>,日最大硝酸態窒素生成量は200t N day^<-1>であった。
  • 張 建軍, 清水 晃
    原稿種別: 論文
    2004 年 46 巻 2 号 p. 85-92
    発行日: 2004/12/25
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
    黄土高原における水土保全林地の土壌水分変化特性を明らかにするため,黄土高原地域で高く評価された植林地帯(年間降水量が400〜600mm)を選んでその土壌水分を測定した。測定結果から黄土高原の土壌水分動態は消耗期,増加期,減少期,安定期に分けられた。年間を通じて雑草地と灌木林地の土壌水分は林地より20mm以上多かった。各プロットの月平均土壌水分量が圃場容水量の60%以下の時期は,南向き林地と北向き混交林地で4〜10月,北向きの灌木林地・林地及び雑草地では6〜7月であった。谷底の土壌水分は一年中圃場容水量の60%以上になっていた。年間を通じて土壌水分量が圃場容水量の60%以上の土層は南向き林地で0〜20cm,北向き林地で0〜40cm,混交林地で0〜20cm,灌木林地と雑草地・谷底で0〜100cmであった。土壌水分量が圃場容水量の60%以下になる発生率が最も高いのは80〜100cmの土層であった。その発生率はアブラマツ林地88〜94%,ニセアカシア林地78〜95%,灌木林地50〜58%,雑草地23〜41%,混交林地96%となっていた。この結果から,黄土高原地域に植林する場合には,谷間への植栽が成林可能性において有利と思われた。また,樹種については土壌水分に対する要求度の低い植生を選定する必要があると考えられた。特にフデンズのように樹高が低く,天然更新可能な灌木林を形成すれば,水土流出を防止すると同時に土壌水分の消費も少ない林分が形成可能と推察された。
  • 松井 哲哉, 中谷 友樹, 八木橋 勉, 垰田 宏, 田中 伸行
    原稿種別: 論文
    2004 年 46 巻 2 号 p. 93-102
    発行日: 2004/12/25
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
    ブナ林の分布予測モデル3種を気候値を説明変量として作成し,モデルの適合度を比較した。ブナ林の分布データは環境庁の3次メッシュ植生データからその有無を抽出し目的変量とした。気候データは気象庁の3次メッシュ気候値から抽出した月別気温・降水量データを基に最寒月最低気温(TMC),暖かさの指数(WI),夏期降水量(PRS)及び冬期降水量(PRW)の4気候値を計算して用いた。分布予測モデルは,植物分布解析でしばしば用いられる一般化線形モデル(GLMs),一般化加法モデル(GAMs),及びツリーモデル(TMs)の3種類のモデルを用いた。さらに,GLMsでは4気候変量のみを用いて作成した単純なモデルと(GLM-Simple),4気候変量にそれぞれの2乗項と2変数間の交互作用項を加えた複雑なモデル(GLM-Complex)を作成した。モデル精度の比較には,AIC(赤池情報量規準),尤離度,及び分布予測モデル研究でしばしば用いられるKappa統計量などの予測精度指標値を用いた。これらの指標値を比較した結果,TMsの適合度が高いことが判明した。TMsに続いてGAMs,GLM-Complex,GLM-Simpleの順に適合度は高かった。TMsの適合度が高いのは,データをそれ以上分割しても無意味になるまで,かつ均質になるように2分割を続けていくことで,説明変数間の複雑な交互作用をモデル化できるTMsの特性が関係していると考えられた。すなわちTMsは,空間的に不均質な気候下の日本に広く分布するブナ林の分布をうまく説明できるモデルである。以上のことから,日本に広く分布する森林タイプや植物種の分布予測を行う場合の最適なモデルはTMsであるという結論に達した。
  • 荒木 眞之, 川田 清和
    原稿種別: 論文
    2004 年 46 巻 2 号 p. 103-109
    発行日: 2004/12/25
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
    中国内蒙古の草原衰退に関し,温暖化による気温上昇が成育草本種の交代を起こした可能性が高いので,乾燥度区分図を年代別に描き各区分地の移動と草本種の交代の関係を把握したい。本報告はその方法を確立するもので,まず345地点の1961〜1990年の月別平均気温と降水量の平年値を用い,Thornthwaite(1948)の式から求めた年蒸発散能で年降水量を除して降水蒸発散能比(P/PETt)を求め,ユーラシア大陸規模の乾燥度区分図を描いた。Thornthwaite式は,多数要因から蒸発散能を求めるPenman(1948)の式より理論的に劣るものの,データが限られる地域における気候からの植生区分において,なお有効な方法である。上記作図の結果,P/PETtによる乾燥度区分図の一般的傾向が,既存の雨量因子(Lang,1920)・乾燥度指数(Martonne,1926)による乾燥度区分図と近似することを確認した。次に,上図のデータを用いて内蒙古地域を対象として等値線間隔0.1の詳細な乾燥度区分図を描き直し,この図が中国についてPenman式から求めた蒸発散を用いて描かれた図(Qion and Line,1965)と近似することを確認した。そして,内蒙古大学が作成した(Li,1991)最も大縮尺で詳細な草場類型図と比較して,草原種型毎のP/PETtの乾燥側限界値を以下のように決めた。すなわち,森林0.9,森林草原0.6,典型草原0.4,荒漠草原0.3,草原化荒漠0.2,荒漠0.2以下,である。
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