森林立地
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45 巻, 2 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 佐藤 顕信, 谷本 丈夫
    原稿種別: 論文
    2003 年 45 巻 2 号 p. 55-63
    発行日: 2003/12/25
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
    奥日光山地においてウラジロモミ林の分布特性を把握するとともに,年輪解析によってウラジロモミ林における更新の時期とその後の成長経過を明らかにし,更新様式を提示した。空中写真判読と踏査による現地調査結果から,ウラジロモミが広範囲に高密度で純林状となる場所,および単木あるいは局所的に小集団で生育している場所の2つに区分した。男体山南斜面にはウラジロモミが最も広く純林状に分布していた。一方,傾斜が急になるにしたがってウラジロモミの本数密度は増加するが,個体サイズは減少していた。ウラジロモミがパッチ状に生育していた場所は,湖畔やその周辺の氾濫原の自然堤防上など特徴敵な立地条件であった。年輪解析の結果、ウラジロモミの発芽,定着時期や直径成長の傾向が3タイプ(定着後良好な成長,一定期間の被圧後の成長,定着後の長期にわたる被圧状態)に区分できた。ウラジロモミの発芽,定着や成長促進が起きた時期は,いずれの場合にも台風の襲来時期と一致していた。とりわけ1800年代半ば,1900年代初め,1900年代半ばの更新および世代交代が著しく,それ以前に発生した樹齢を持つ個体は確認できなかった。1959年の伊勢湾台風による林冠の衰退と疎開は,林内においてウラジロモミの稚幼樹群が発芽,定着できる条件をもたらしたことが確認できた。なお,現在樹齢130〜160年に達している奥日光山地のウラジロモミ林は,世代交代の時期を迎えており,稚樹が準備されるべき時期であると考えられる。ウラジロモミの衰退による林冠の疎開、それにともなった稚樹の準備,その後の交代契機となる大規模な林冠欠如,およびそれをもたらす台風の襲来との関係はウラジロモミの更新様式として整理でき,奥日光に成立しているウラジロモミ林の更新パターンを明らかにした。なお,最近,奥日光山地では,シカの樹皮剥ぎによるウラジロモミの枯損などの問題が顕在化しており,これらの更新に与える影響を早急に検討する必要がある。
  • 豊田 貴樹, Pedro Orig Balagas, 峰松 浩彦
    原稿種別: 論文
    2003 年 45 巻 2 号 p. 65-74
    発行日: 2003/12/25
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
    マングローブは熱帯・亜熱帯地域の海岸線や河口域に分布し,その分布構造は滞水時間や塩分濃度,土壌の基質等の環境因子によって決定される。塩分濃度は分布を決定する重要な因子の一つで,感潮河川では塩分濃度の影響によるマングローブ植生の変化を観察することができる。フィリピンにある河川延長が50km以下の3河川,リナオ川,カブヨ川,カビビハン川において,河川水の塩分濃度の変化とその河川に連続的に出現するマングローブ構成種の変化との関係を調査し,河岸に生育するマングローブ構成種の塩分濃度耐性について考察した。各河川の塩分濃度は上流に溯るに従って低下し,それに伴いマングローブ構成種の構成にも変化が見られた。出現したマングローブ構成種28種のうち,0mgL^<-1>から29mgL^<-1>まで分布域を持っている構成種はNypa fruticansのみであった。その他の構成種は高低どちらかに偏った分布を示していた。また主要なマングローブ構成種>副次的な構成種>付随的な構成種の順で出現範囲が狭まり,かつ低塩分濃度方向に適応していた。しかし,各構成種の塩分濃度に対する適応性には幅があり,また出現割合と塩分濃度には関係がなかったことから,塩分濃度条件のみではマングローブ帯状構造のような狭い範囲で構成種が変化をしていくような林分の成立原因を説明できないことが示された。
  • 小澤 徹三, 小林 達明
    原稿種別: 論文
    2003 年 45 巻 2 号 p. 75-80
    発行日: 2003/12/25
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
    緑化における工事・管理の中心となる樹木生育評価には従来から科学技術庁資源調査会によるランク評価法が用いられてきた。しかし,この活力度評価法は個人差等が生じ易く経年性や地域性等に問題があった。そこで,客観的な数値として表現できる新しい活力度が必要となり,蒸散活動に伴い樹幹を流れる樹液が樹幹外部の温熱環境からの影響を受け温度が変化する度合いにより活力度評価を行う樹幹温変化率を既報(小澤・小林,1999)により提案した。本研究では,生育良好木・不良木の樹幹における純放射,樹幹内部の温度変化を測定し,それらから樹液流量等を推定した。その結果,気温等の温熱環境が等しく蒸散活動が活発な時期であれば,樹幹温度から算定される樹幹温変化率によって,蒸散作用により示標される樹木活力度がほぼ判定でき,また,樹幹温変化率の生理的な意味が明らかとなった。
  • 市川 貴大, 山口 倫之, 高橋 輝昌, 浅野 義人
    原稿種別: 論文
    2003 年 45 巻 2 号 p. 81-87
    発行日: 2003/12/25
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
    本研究目的は,ヒノキおよびスギ人工林化による土壌の全炭素(C)量の変化の原因を明らかにすることにある。調査地は落葉広葉樹天然林伐採後に人工造林されたヒノキおよびスギ林(針葉樹林)と,天然更新した広葉樹林が同一斜面上に成立した森林である。針葉樹林の斜面上部にはヒノキが(ヒノキ林),斜面下部にはスギが(スギ林)それぞれ植栽されている。本研究では,斜面位置ごとにC動態を広葉樹林と針葉樹林の間で比較した。土壌深0-30cmにおける全C量は斜面上部のヒノキ林では広葉樹林の約0.6倍,斜面下部のスギ林では広葉樹林とほぼ同じであった。土壌中のバイオマスC量,土壌呼吸速度,微生物の加水分解酵素活性,セルロース分解能,窒素無機化量は斜面上部のヒノキ林では広葉樹林の0.3〜0.5倍,斜面下部のスギ林では広葉樹林の0.6〜1.3倍であった。これらの傾向は概ね土壌の全C量を反映していた。落葉のC無機化速度は斜面上部ではヒノキ落葉で広葉樹落葉の約1.2倍,斜面下部ではスギ落葉で広葉樹落葉の約0.8倍であった。このことから,ヒノキ落葉は斜面上部の広葉樹落葉より無機化されやすく,土壌中に有機物を蓄積されにくいこと,スギ落葉は斜面下部の広葉樹落葉より無機化されにくく,土壌中に有機物を蓄積されやすいことが考えられた。
  • 山瀬 敬太郎, 田中 義則
    原稿種別: 報告
    2003 年 45 巻 2 号 p. 89-92
    発行日: 2003/12/25
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
  • 酒井 寿夫, 稲垣 昌宏, 高橋 正通, 野口 享太郎, 田中 格
    原稿種別: 報告
    2003 年 45 巻 2 号 p. 93-98
    発行日: 2003/12/25
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
    新規植林に伴う土壌炭素・窒素蓄積増加を明らかにするため,苗畑において若い林分を含む4林分から土壌と堆積有機物を採取し,A_0層を含めた土壌有機物の蓄積速度を求めた。各林分の土壌0-5cmの炭素・窒素蓄積増加速度はスギ幼齢林(2年生)では60.3gCm^<-2>yr^<-1>,4.66gNm^<-2>yr^<-1>,広葉樹混交林(6年生)では47.3gCm^<-2>yr^<-1>,2.57gNm^<-2>yr^<-1>,ヒメコマツ林(18年生)では14.0gCm^<-2>yr^<-1>,0.70gNm^<-2>yr^<-1>,スギ林(33年生)では19.0gCm^<-2>yr^<-1>,1.01gNm^<-2>yr^<-1>で,若い林分で蓄積増加速度が速い傾向にあった。A_0層中の炭素・窒素蓄積増加量は,林齢との相関が見られなかったが,土壌0-5cmの蓄積量は炭素,窒素ともに植栽年数とともに増加した。炭素と窒素の平均的な蓄積増加速度はそれぞれ18.7gCm^<-2>yr^<-1>と0.99gNm^<-2>yr^<-1>であった。土壌における蓄積速度の推定については土壌深5-10cmにおける炭素・窒素密度を植栽初期の値と仮定して計算したため,林齢の高い林分で蓄積増加量を低めに見積もった可能性があったが,新規植林後は林齢の増加とともに土壌中の有機物は明らかに増加していた。
  • 小林 元, 田代 直明
    原稿種別: 報告
    2003 年 45 巻 2 号 p. 99-102
    発行日: 2003/12/25
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
    スギの葉の窒素含量の季節変動を葉齢別に調べた。面積あたりの窒素含量は,当年葉においては6月から10月に増加し,その後,低下した。1年葉においては月を経るにつれて緩やかに低下したが,2,3年葉においては明瞭な季節変動は見られなかった。窒素含量は,葉齢別では齢の古い葉ほど低い値を示した。葉の寿命は3年で,落葉時における窒素の回収率は49%であった。窒素含量から既報の文献を用いて光合成速度を推定し,さらに葉の寿命と窒素の回収率を用いて窒素利用効率を計算した。得られた窒素利用効率は,これまでに報告されている常緑針葉樹のなかでも中程度の値であった。葉の寿命が短く,窒素の回収率もそれほど高くないスギは,窒素量あたりの光合成速度を高めることで窒素利用効率を高めているといえた。
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