森林立地
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53 巻, 2 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
  • 谷 明洋, 伊藤 江利子, 辻野 昌広, 荒木 誠, 神崎 護
    原稿種別: 論文
    2011 年 53 巻 2 号 p. 41-52
    発行日: 2011/12/25
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
    全天空写真は林分の葉面積指数(LAI)を簡便に推定する方法として広く使われている。撮影時の露出と画像を二階調化時する際の閾値の決定はLAIの推定に決定的な影響を及ぼす。この問題を緩和するため,全天条件基準法(the Open-sky Reference Method,略称ORM)を考案した。全天条件基準法は全天条件(林外で遮蔽物が無い条件)での測光を基準に,全天条件下より1大きい(明るい)露出値に固定して林分内の全天空写真を撮影し,全天条件で撮影した写真を基準に二階調化時の闘値を決定する手法である。二階調化では全天条件で撮影した天空部の最低輝度を探索し,その値を白に割り当てる最小値とする。この手法は閾値を目視によって決定するにも関わらず,解析者に依存する値の変動が小さい特長を有する。最適露出値からの変位がLAI推定に及ぼす影響を手法間で比較するため,京都市内の14林分で全天空写真撮影を行い,全天条件基準法を含む10種類の手法でLAIを推定した。全天条件基準法は最適露出値からの変位に関して頑健であった。
  • 渋谷 正人, 浦田 格, 鳥田 宏行, 飯島 勇人
    原稿種別: 論文
    2011 年 53 巻 2 号 p. 53-59
    発行日: 2011/12/25
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
    本研究では,樹木あるいは林分の風倒抵抗性に対する樹形の効果について検討するため,北海道中央部で2004年に風倒被害のあった地域の針葉樹人工林で,被害の発生と樹形の関係について調査した。カラマツ,トドマツ,エゾマツ人工林を対象に,風倒後2〜4年後に,被害林と無被害林で調査し,形状比,樹冠長率(樹冠長と樹高の比),相対風心高(風心高と樹高の比)について検討した。カラマツ人工林とトドマツ人工林では,平均形状比は被害林分と無被害林分で分離し,無被害林分で小さかった。樹冠長率と相対風心高の結果から,カラマツ人工林とトドマツ人工林の無被害林分では,被害林分よりも樹冠が大きい傾向が明らかだった。エゾマツ人工林でも,形状比,樹冠長率,相対風心高については類似した傾向が認められた。これらの結果は,樹形と風倒抵抗性には明確な関係があることを示し,形状比が小さく樹冠の大きい樹木がより風倒抵抗性が高いといえる。また風倒被害の発生と樹形の関係は,ある閾値を境に被害確率が急激に変化する関係と考えられた。風倒確率を低減させるためには,林分管理が必要であり,樹形は林分密度に強く影響されるので,人工林の風害リスク管理には密度管理が重要である。
  • 盧 暁強, 戸田 浩人, 丁 訪軍, 崔 東壽, 方 昇佐
    原稿種別: 論文
    2011 年 53 巻 2 号 p. 61-71
    発行日: 2011/12/25
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
    中国の南西部茂蘭のカルスト地域において,林外雨,林内雨,樹幹流及び渓流水を採取し,降水の樹冠通過前後の化学組成の変化を明らかにするとともに,主なイオンの収支を把握した。本調査地は,人為的攪乱のない亜熱帯常緑・落葉広葉樹が混交した天然林である。水循環におけるCa^<2+>とMg^<2+>の移動量が多く,カルストの炭酸塩岩の影響が示唆された。中国国内の他の地域に比べ,降雨のイオン濃度が低く,pHが高いという特徴は,人為的な影響よりもカルストの自然条件が大きいと考えられる。また,主なイオンの収支はCaとMgでマイナスとなり,K^+,Na^+,Cl^-,SO_4^<2->-S及び溶存無機態窒素(DIN)はプラスとなった。樹冠収支モデル(Na^+トレーサー)を用い,林内雨中の乾性沈着とイオンの樹冠交換割合を推定した。年間乾性沈着量はCa^<2+>が最も多く,ついでSO_4^<2->,NH_4^+であった。森林に流入したDINは年間12.3kgha^<-1>で,そのうち86%は,植生-土壌生態系への保持が推察され,植生と土壌微生物に効果的に利用されていた。
  • 清野 達之
    原稿種別: 論文
    2011 年 53 巻 2 号 p. 73-78
    発行日: 2011/12/25
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
    北海道の温帯混交林でハリギリ個体群の成長段階の発達による空間分布のシフト過程を調査した。稚樹は同種成木から離れたところに小さなコホートを形成して集中分布していた。ハリギリ同種成木からの距離とハリギリ稚樹の成長特性の間に特別な関係はみられなかった。ハリギリ稚樹の成長は他種成木の込み合い度とも特別な関係はみられなかった。ハリギリ稚樹は,更新の初期過程では同種の成熟個体付近に分布していたが,成長段階が進むにつれて,同種の成熟個体から離れた場所に空間分布がシフトしていった。ハリギリ稚樹の定着は更新初期過程で決まり,林冠ギャップのような環境が好転するまで生存していることが示唆された。
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