森林立地
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50 巻, 1 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 伊藤 江利子, 小野 賢二, 荒木 誠
    原稿種別: 総説
    2008 年50 巻1 号 p. 1-8
    発行日: 2008/06/25
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
    森林土壌における硝化活性を広域的にかつ簡易に予測できれば森林管理計画の立案に大きく寄与しうる。本稿では硝化活性の地域的なばらつきを測定が容易な理化学的土壌特性や既往の地理情報から予測した既往の研究をレビューした。予測変数である硝化活性の変動幅が大きいほど,多くの場合は対象域が広いほど,多変量回帰モデルの有効性は高かった。名義変数を用いた地理情報,例えば,土壌型,優占樹種,母材では連続変数である理化学的土壌特性に比べて硝化活性の予測精度は低かった。しかし,1,000km^2程度の流域スケールにおける硝化活性の変動であれば,地理情報だけでも予測できた。地理情報は硝化活性に連関する立地環境条件を良く表現するものの,利用可能なデータの空間的解像度は必ずしも十分ではない。しかしながら,有力な予測変数である土壌型や優占樹種は地形と強い関わりがあるため,地理情報の不十分な地域に関しては,デジタル標高データ(DEM)を用いた地理解析的アプローチを適用することで地理情報データの欠損を補完できる可能性がある。
  • 近藤 大介, 加藤 正吾, 小見山 章
    原稿種別: 論文
    2008 年50 巻1 号 p. 9-16
    発行日: 2008/06/25
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
    ブナ天然林における維管束着生植物・つる植物の生育環境を明らかにするために,岐阜県白川村のブナ天然林に100m×100mの調査地を設置し,胸高直径50cm以上の樹木に着生・登攀する維管束植物の種名・着生部位を調査し,あわせて森林の上層・下層の維管束植物リストを作成した。調査地には,着生植物43種,付着根型つる植物3種,上層木4種,下層植物99種が出現し,森林全体では111種が存在した。着生植物のうち31種は上層木または下層植物に含まれる種で,調査対象樹木上のみに出現したのは12種であった。調査対象樹木上に生育する着生植物の種数・出現数は,調査対象樹木の胸高直径が大きくなるほど増加する傾向がみられた。着生位置の高さ2〜4mの範囲では積雪の沈降圧により,着生植物が少なかった。高い頻度で出現した4種の着生する高さに着目したところ,ノキシノブ・ホテイシダに比べて,オシャグジデンダ・ヤシャビシャクは調査対象樹木の低い部位に分布していた。また,ヤシャビシャクが主に大枝の分枝点に着生していたのに対して,ほかの3種は幹や枝に多く着生していた。ブナ天然林の大型樹木によって作り出される多様な樹上の構造と環境の垂直分布が,そこに生育する着生植物の空間分布に影響していた。
  • 井藤 宏香, 伊藤 哲, 中尾 登志雄, 角本 健一
    原稿種別: 論文
    2008 年50 巻1 号 p. 17-24
    発行日: 2008/06/25
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
    霧島山系小池の小扇状地に成立する渓畔林において7年間における森林動態を調査し,既報で推定された河川縦断方向に沿った攪乱体制および地表面の安定性の変異を検証するとともに,扇状地内で多様な林分構造が形成・維持される過程を明らかにした。扇状地内の地表変動攪乱の空間分布を解析した結果,河川流下方向に沿って攪乱タイプは侵食型から堆積型へ変化し,攪乱サイズが大きくなる傾向が確認された。地表面の安定性の高い扇頂部および扇央部は他のゾーンと比べて枯死率が低く,林冠破壊を伴う大規模な土砂氾濫が発生しない限り,一度定着した個体の生残率は高いと考えられた。このことが,扇頂部および扇央部において小径から大径の個体を含む高密度の林分構造を維持している要因であると推察された。一方,地表面の安定性の低い扇端部では,落葉樹や扇端部に特徴的に出現する樹種の新規加入が他の樹種と比較して多かった。この結果から,扇端部の特殊な植生か成立し維持される上では実生稚樹の定着段階における弱度の攪乱の影響が重要であると考えられた。
  • 勝木 俊雄, 明石 浩司, 田中 智, 岩本 宏二郎, 田中 信行
    原稿種別: 論文
    2008 年50 巻1 号 p. 25-34
    発行日: 2008/06/25
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
    マツ科トウヒ属の樹木であるヤツガタケトウヒとヒメバラモミは本州中部にのみ分布し,個体数が少ないことから絶滅危惧植物としてリストされている。保全対策をおこなうためには,現在の詳細な分布状況を把握するとともに,分布適地を判定することが重要である。現地踏査によって2種の分布域を3次メッシュセル単位(緯度30"×経度45")で特定したところ,ヤツガタケトウヒ52セル,ヒメバラモミ74セルに出現が確認された。2種の出現セルの中部地域における気候特性を分析した結果,年平均気温が低く(ヤツガタケトウヒ出現セルの平均値5.8℃;ヒメバラモミ出現セルの平均値5.9℃以下同様),年降水量が少なく(ヤツガタケトウヒ1,635mm;ヒメバラモミ1,676mm),最深積雪が少なかった(ヤツガタケトウヒ33cm;ヒメバラモミ33cm)。各月の平均気温と降水量・最深積雪の上限値と下限値を用い,全国の3次メッシュセルに対し適合性を判別した結果,ヤツガタケトウヒで376セル,ヒメバラモミで351セルが気候適合セルとして抽出された。表層地質と2種の出現率の関係について分析した結果,最も高く出現した区分は石灰岩であり,ヤツガタケトウヒの出現率は47%,ヒメバラモミは80%であり,強い関係があることが示された。これらの結果から,南アルプス北西部の石灰岩地(ヤツガタケトウヒで33セル,ヒメバラモミで34セル)において,今後も2種の存続する可能性がもっとも高いと考えられた。
  • 松井 理生, 岡村 行治, 岡平 卓巳, 後藤 晋
    原稿種別: 報告
    2008 年50 巻1 号 p. 35-40
    発行日: 2008/06/25
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
    北海道富良野市の東京大学北海道演習林26林班(標高380〜410m)に事業的に造成されたエゾマツ造林地において,造成19年後の植栽木の生育と天然更新木の発生状況を調査した。エゾマツ植栽木の生存率は89.5%と高く,平均樹高は5.0m,平均胸高直径は6.7cmと順調に成長していた。植栽木のエゾマツカサアブラムシ被害率は77.5%であったが,被害度が高いほど成長が抑制されるという傾向は認められなかった。エゾマツ植栽列のわきには林業対象となる広葉樹が天然更新しており,胸高直径5cm以上の本数密度は1,580本/haであった。そのうち,ウダイカンバは本数比率で53.2%,胸高断面積合計で66.8%と優占し,平均樹高は10.8mとエゾマツ植栽木の約2倍の成長を示した。このように,低標高域に事業的に造成したエゾマツ造林地では,ウダイカンバとエゾマツの二段林が形成されており,エゾマツ資源保続と経済的価値の高い針広混交林の造成という両方の面で有用な情報が得られた。
  • 斉藤 昌宏
    原稿種別: 報告
    2008 年50 巻1 号 p. 41-49
    発行日: 2008/06/25
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
    明治時代初期に成立した佐渡の御料林は林分数420箇所,面積6,750haを占め,1890年から37年間存続した。その構成は一等林が12箇所(水源林1箇所を含む)であり,多くはアカマツ林で土壌は"壌土"であった。二等林は30箇所でアカマツ林が多いがスギ林,雑木林,竹林も含まれていた。土壌の多くは赤壌,黒壌などの壌土グループと燥埴,壌埴などの埴土グループに区分されていた。三等林は164箇所であり,ナラ林,雑木林の割合が高かった。土壌は石礫,岩石などに区分されている例が多く,立木密度も低いため,材の生産はあまり期待できなかったと推測される。その外に面積が小さい員外林,風致林が多数含まれていた。台帳を作成するための林分調査は1880年代から行われ,1876(明治9)年に制定された官林調査仮条例に従って行われたと判断された。土壌は"瀘土","埴土","壌土","砂土","石礫","岩石(地)"の主要な6夕イプに分けられ,埴土と壌土は色合いや乾燥度によってさらに細分されていた。当時としては最新の技術によって調査が行われていることから,地元の技術者と中央から派遣された技術者のグループがこれらの調査を実施したと推察された。
  • 福澤 加里部
    原稿種別: 記録
    2008 年50 巻1 号 p. 51-53
    発行日: 2008/06/25
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
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