本實驗は
D. melanogaster 及び
D. virilis に發見されてゐる眼色彩突然變異を材料とし, 組織學的方法でその眼色素發生状態を研究し, 且つ眼色彩突然變異に作用する二種類のゲンを組合はせたる時の状態, 並びに
D. melanogaster と
D. virilis の眼色彩突然變異の中で平行突然變異と見倣されてゐるものの中, 若干例につき比較研究を行つたものである。
今その結果を摘記すれば次の如くである。
I. 眼色素には赤色系色素及び黄色系色素の二種類があり, 小眼内に於ける分布上から見ると主色素, 副色素及び基底色素の三種類に分けられる。
II. 眼色彩突然變異の出現原因は眼色素の分布, 質, 量及び色素發生時期の四種類の變化の種々な組合はせに基づくものであつて, しかも質の場合を除きゲンは常に抑壓因子の作用をなし, 色素發生を妨げるものである。
III. 實驗に用ひた平行突然變異と見倣されてゐるもの五例の中, 三例は色素發生の上から見て正しいと認められるが, 他の二例は疑問である。
IV. 二種類の眼色彩突然變異のゲンを組合はせた個體に於ける眼色素發生状態を見ると量, 分布及び色素發生開始時期に就ては, 組合はせた二種類のゲンの抑壓作用を受けない部分のみの眼色素を發生する事が判る。
V. 赤色系色素の質に關しては, 上位, 下位又は等位の關係がある。
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