(1) 茶褐色種子に關する因子
br (brown) を有する白種子の系統と茶褐種子系統間の交配のF
2に於て豫期の如く茶褐色種子, 白種子が3:1の比に分離されたが, この外に, 若干の黒種子個體と, 茶褐色種子の〓と黒種子の〓を共に着生する1個體を見た。F
3代の處理により, 出現した若干の黒種子は恐らく主としてF
2植物に起つた seminal mutation に原因し, 兩種の〓を着生した個體は vegetative mutation に原因する。而して後者は ontogenesis の最初に中組織原に起つた
br→
Br なる轉化に次で外組織原の一部に於ける同樣の轉化に原因するものと認む。
(2) 黒種子と茶褐色種子間の交配のF
2に分離された茶褐色種子の個體の蔓の先端に近く時に黒種子や, 茶褐色種皮上に黒色の條斑の入つた條斑種子の混査する〓を見た。次代の鑑定により出現した黒種子は vegetative mutation に原因し, 外組織原のみに b
r→
Br なる轉化の起つたに因る場合と, 同時に中組織原にも起つたに因る場合とがある。
(3) 條斑種子はその成因が少なくとも次の二通りあるものと考へられる。即ち其一は茶褐色種子のものが ontogenesis の初期に中組織原のみに
br→
Br なる轉化を起し, その結果
Br 又は
BrBr となれる外觀茶褐色のものが, その末期に外組織原で
br→
Br なる轉化を起した場合で, 他の一つは茶褐色種子の外組織原のみに ontogenesis の末期に同樣の轉化を起した場合である。
(4) 茶褐色種子に關與する
br 因子は易變因子で, 生殖細胞に於ても體細胞に於ても常習的に優性因子
Br に轉化を起す。
(5) 取扱個體數僅少であつたので, 適確なる轉化率は求め難いが生殖細胞に於ては約4%位であつて, 體細胞では中組織原にも, 外組織原にも起り, ontogenesis の最初と最後に多い。
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