カイコの第1白卵の雌に正常系 (+
w1) の雄を交配すると, その産下卵は普通は淡色に着色する。これは第1白卵には kynurenine が多量に存在し, その1部が+
w1遺伝子の作用によって 3-hydroxykynurenine となり, さらに色素に変化するからである。ところが雄に用いる系統の種類によって第1白卵が殆んど着色しない場合と, 強く着色する場合とがある。このような差異が如何なる遺伝的要因によって生ずるかについて交雑実験を行い調査したところ, この第1白卵の着色性に関与する遺伝子は
w1遺伝子の存在する第10染色体上に座位することがわかった。さらに第10染色体上に存在する既知の第2白卵及び第3白卵遺伝子とこの遺伝子との位置的関係を調べた結果,
w1遺伝子座位或はその附近に存在していることを明らかにした。即ち+
w1遺伝子として同類対立遺伝子の関係にある数種のものがあり, 系統によってこの遺伝子が異るため, 第1白卵に交配した時その着色性に差異を生ずるものと考える。
抄録全体を表示