不規則抗体による胎児新生児溶血性疾患(Hemolytic Disease of the Fetus and Newborn:HDFN)では抗体価とIgGサブクラスの違いにより重症度は異なる.今回当院では抗E:128倍の妊婦より出生した児について,遅発性に溶血性貧血が進行し,生後11日目に赤血球輸血が施行され一度はHb値の改善を認めたものの51日目までに再び貧血が進行した症例を経験した.本症例について母児のIgGサブクラス解析と単球貪食試験,輸血後の児の赤血球量を経時的に測定し病態との関係について検討を行った.
解析結果から母児共にIgG1型の抗Eが検出され,単球の貪食率については低値を示していた.輸血直後の児の赤血球量は全体の約28%まで低下していたが,51日目では約50%まで増加していた.
本症例において遅発性に溶血が進行した理由として,IgG1型の抗Eであり単球の貪食率が低値であった事が考えられた.また輸血後に再度貧血を生じたのは産生された児の赤血球に対し残存していた抗Eが反応した事などが考えられた.
高力価IgG1型の抗体によるHDFNでは長期的な経過観察の必要性があり,不規則抗体のIgGサブクラス解析はHDFNの病態推察の一助となる可能性が示唆された.
抄録全体を表示