目的:臨床現場における爪白癬治療の実態を明確にするとともに,爪白癬外用抗真菌薬の登場により生じた変化についても検討した.
方法:全国の皮膚科医70名にアンケート調査用紙を郵送し,返信された回答について集計・分析した.
結果および考察:52名(74.3%)の皮膚科医より回答を回収した.爪白癬に処方した治療薬としては,経口抗真菌薬(41.4%),爪白癬外用抗真菌薬(42.9%),その他の外用抗真菌薬(37.7%)であり,ほぼ同頻度の処方がなされていた.爪白癬外用抗真菌薬の処方頻度には施設による大きな差異はなかったが,経口抗真菌薬の処方率は開業医(51.9%)に比べて大学病院(33.2%)や一般病院(29.8%)で低かった.国内外のガイドラインで第一選択薬として推奨される経口抗真菌薬の処方頻度が低いのは,高い効果については大いに評価しているものの薬剤相互作用や肝機能障害などの懸念により積極的な処方を躊躇している皮膚科医が多いためと考えられた.新しく登場した爪白癬外用抗真菌薬は簡便な処方が大きく評価され,有効性には不満もあるものの新薬への期待も伴って今回の調査時点では高い処方率が示された.また,新しい経口抗真菌薬が登場した場合に処方する意志のある皮膚科医の割合は76.9%と高く,新薬への期待が高いことが判明した.今回の調査で経口抗真菌薬の処方が低い実態が明らかになった.今後,皮膚科医に対する更なる啓発活動を行い内服療法の頻度を向上させていく必要性がある.
抄録全体を表示