日本臨床皮膚科医会雑誌
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40 巻, 5 号
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論文
  • 稲垣 充亮, 杉山 聖子, 山本 剛伸, 青山 裕美, 梅垣 知子, 石崎 純子, 浦井 誠
    2023 年 40 巻 5 号 p. 639-644
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/23
    ジャーナル フリー
    黒色菌糸症は免疫不全患者の皮膚に好発する,黒色真菌による深在性真菌症である.今回,黒色菌糸症を2症例経験し,うち1症例で膿のKOH鏡検により迅速に診断を行えたので報告する.症例1は,87歳男性.肺小細胞癌(stageⅣB)に対して緩和治療中.初診の3か月前に転倒による外傷歴があり,抗菌薬による加療を受けたが,左環指基部腹側の発赤・腫脹が継続するため受診した.波動を触知し,超音波検査で皮下に境界明瞭な低エコー領域を認めた.膿汁の直接鏡検で多数の菌糸が観察された.症例2は,80歳男性.コントロール不良の2型糖尿病あり.1年前より右母指基部背側の小結節が出現,排膿を繰り返し,抗菌薬内服で改善しないため受診した.皮膚生検ではHE染色で両例とも肉芽腫性細胞浸潤を形成し,症例2では茶褐色調の菌糸を確認した.両例ともにGrocott染色で菌糸を多数認め,深在性皮膚真菌症と診断した.真菌培養及び遺伝子解析の結果から,症例1はPleurostomophora richardsiae,症例2はExophiala xenobioticaによる黒色菌糸症と最終診断した.両例とも切開排膿および,抗真菌薬テルビナフィン内服にて軽快した.黒色菌糸症は近年増加傾向にあることから,免疫不全患者で手指に膿貯留を伴う抗菌薬無効の肉芽腫性病変をみたときには,膿の直接鏡検を行い,菌糸陽性であれば本疾患を念頭に鑑別する必要があると考えられた.
  • 南 健, 野中 勇佑
    2023 年 40 巻 5 号 p. 645-652
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/23
    ジャーナル フリー
    実臨床下において爪外用抗真菌薬(以下,外用薬)からホスラブコナゾールL-リシンエタノール付加物(ネイリン®カプセル,以下,F-RVCZ)に切り替えられた爪白癬患者を対象に,F-RVCZの有効性と安全性に関する,単機関,探索的,後ろ向き観察研究を実施した.  前治療薬である外用薬の平均投与期間は24.3ヵ月で,いずれの症例も効果不十分でF-RVCZに切り替えられ,治療開始時の平均混濁比は7.8と重度の症例が多かったが,F-RVCZの有効性評価対象例では48週時の臨床的治癒率は62.5%であったことから,外用薬からの切り替え時にもF-RVCZは高い有効性を示すことが明らかとなった.副作用が13例(25.0%)に認められ,うち3例が中止に至ったが,いずれも既知の症状で軽快・回復が確認された.外用薬で効果不十分の場合,相互作用や安全性への懸念が比較的少なく,12週間の短期投与で高い治療効果が期待できるF-RVCZは切り替え先として有用な選択肢の一つとなり得る.
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