日本臨床皮膚科医会雑誌
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39 巻, 4 号
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論文
  • 影治 里穂, 飛田 泰斗史, 原 朋子, 山下 理子, 坂本 佳奈, 竹内 賢吾
    2022 年 39 巻 4 号 p. 562-566
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/22
    ジャーナル フリー
    76歳,男性.喉頭癌,直腸癌,関節リウマチの既往あり.受診2週間前より左側腹部に紅色腫瘤が出現し,当科へ紹介となった.左側腹部に長径5センチの浸潤を伴う紅斑,同部には長径2センチの半球状の紅色腫瘤があった.生検組織は,真皮全層にわたり,大型で核小体の明瞭な異型細胞が増殖していた.免疫染色にてCD4,CD56,CD123,TCL1が陽性で,芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍と診断した.CHOP療法を施行し,当初は皮膚病変に有効であったが,徐々に治療抵抗性となり,体幹四肢に紅色腫瘤,浸潤を伴う紅斑が多数出現した.皮膚病変に対して,放射線療法を施行し,局所コントロールに有効であった.本疾患は非常に稀であるが,高率で白血病化をする致死的疾患である.ほとんどの症例は,皮膚病変から発症しているため,皮膚科医も認知する必要がある.本例のように一般的に,芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍に対する放射線療法は,予後の延長には寄与しないものの,皮膚病変に対する局所コントロールには有効である.
  • 朱 瀛瑤, 木花 いづみ, 大喜多 肇, 栗原 佑一
    2022 年 39 巻 4 号 p. 567-571
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/22
    ジャーナル フリー
    77歳,男性.初診3ヶ月前から右鼠径部の皮疹に気づき,増大傾向のため切除目的に当科を受診した.右鼠径部に径1 cm大の境界明瞭な紅色結節を認め,結節の表面は角化を認めず,一部浸軟し乳頭腫状を呈した.病理組織像は,乳頭腫状の表皮変化を呈し,過角化,不規則な表皮肥厚を認めた.表皮全層に有棘細胞様の異型細胞が増殖し,核腫大,異型分裂像,細胞の大小不同を認めた.コイロサイトーシスを認めず,異型細胞の真皮内浸潤を認めなかった.免疫組織染色において,p16 INK4aは表皮異型細胞の核と細胞質に陽性を示した.ボーエン様丘疹症と診断し,有棘細胞癌に準じて腫瘍の辺縁より5 mm離して病変を全摘した.切除断端に腫瘍細胞の残存はなく,2年間経過した時点では再発を認めない.切除組織よりHuman papillomavirus (HPV)のDNA検査を行い,HPV 66型を検出した.一部のHPV型はヒトで発癌性があることが確認されており,子宮頸癌,陰茎癌,肛門癌,および中咽頭癌を引き起こす.発癌性の高いHPVはハイリスク群に分類され,皮膚でも爪部,外陰部の有棘細胞癌,Bowen病,ボーエン様丘疹症において子宮頸癌における粘膜ハイリスク型HPVの検出率が高く,性感染症としての側面を指摘されている.本症例で検出されたHPV 66型は粘膜ハイリスク型の一型であった.HPV 66型はボーエン様丘疹症での検出は稀であるが,皮膚においても発癌性がある可能性が示唆された.近年,子宮頸癌に対するHPVワクチンは世界的に広まっている.現在HPVワクチンは一部のHPV型の感染しか防ぐことができないが,本邦での普及がHPV関連腫瘍の発症率低下に寄与する可能性が期待できる.
  • 伊藤 李奈, 小松 広彦, 小渕 英里, 梅垣 知子, 石崎 純子, 平野 明, 田中 勝
    2022 年 39 巻 4 号 p. 572-577
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/22
    ジャーナル フリー
    症例は55歳,女性.43歳時に乳癌に対して,エピルビシンとシクロフォスファミド,パクリタキセルを用いた化学療法と全摘術後にホルモン治療を受けた.以後再発はなく経過観察されていた.45歳頃より体幹,四肢に紅色の小結節が出現し,多発した.初診時,体幹,四肢に約5 ㎜の鮮紅色小結節が36個多発していた.ダーモスコピーでいずれも糸球体状血管と淡紅白色の脱色素ネットワークを呈し,病理所見と併せて多発性汗孔腫と診断した.その後,皮疹の増大,新生はない.残存病変については増大傾向のあるものは,切除する方針とし経過観察中である.近年,悪性腫瘍の治療後に汗孔腫が多発する報告が増えている.その大多数が悪性リンパ腫,白血病などの造血性腫瘍に伴うものであり,固形癌単独の報告は少ない.汗孔腫は掌蹠が好発部位とされるが,自験例では掌蹠に皮疹を欠いていた.汗孔腫の診断にはその特徴的なダーモスコピー所見が役立つが,特に多発例においては非侵襲性検査として極めて有用である.
  • 髙杉 亜里紗, 和田 直子
    2022 年 39 巻 4 号 p. 578-582
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/22
    ジャーナル フリー
    70歳,男性.約30〜40年前より,躯幹,四肢に環状の紅斑が出現し,一時期のみ外用治療をしたが無効のため中止,その後長年放置していた.当院泌尿器科通院を機に当科を初診.項部,上背部,両上肢に手掌大までの辺縁がわずかに隆起する環状の紅斑が多発していた.病理組織学的所見で真皮内に多核巨細胞を含む組織球よりなる肉芽腫の形成,Elastica van Gieson染色により真皮浅層の弾性線維の減少,巨細胞内に貪食された弾性線維の断片を認めたことから,環状弾性線維融解性巨細胞肉芽腫(annular elastolytic giant cell granuloma: AEGCG)と診断した.トラニラスト内服を開始,7ヵ月後に皮疹は退色傾向を示したが,その2ヶ月後に再燃,一時的な軽快はトラニラストの効果ではなく自然経過と思われた.嘔気や胃部不快感の副作用も生じたためトラニラストを中止し,その後無治療で経過観察した.約3年間の経過中,皮疹は数ヶ月単位で増悪と軽快を繰り返したが,大腸ポリープ切除後や腰椎圧迫骨折後には軽快傾向を認めた.AEGCGの治療にはステロイドの外用や内服,トラニラスト,ジアフェニルスルフォン,エトレチナートの内服などが行われているが,いずれも十分な奏功を示すとはいえない.自験例では結果的に有効な治療を提供できなかったが,患者はむしろ過去に効果の感じられない外用治療を長期間行ったことへの不満が大きかった.効果が乏しいと判断された治療を漫然と継続することは患者に負担を強いることになり,皮疹が患者のQOLに及ぼす影響や患者の希望に配慮し,有効な治療が見いだせない場合は経過観察のみとするのも選択肢になることが示唆された.
  • 野口 博光, 仲 弥, 西尾 和倫, 松田 哲男, 中野 眞, 比留間 政太郎
    2022 年 39 巻 4 号 p. 583-592
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/22
    ジャーナル フリー
    ホスラブコナゾール L-リシンエタノール付加物(ネイリン®カプセル,以下ホスラブコナゾール)は,日本で開発され,2018年より爪白癬治療に使用されている新規トリアゾール系抗真菌薬である.実臨床におけるホスラブコナゾールの有効性,安全性および治療継続率を検討する目的で,多機関共同後ろ向き観察研究を実施した.2019年6月から2020年4月までにホスラブコナゾールで治療を開始した350例の患者が登録された. ホスラブコナゾールの治療継続率は12週後で83.4%,48週後で32.6%であった.ホスラブコナゾール投与開始48週後の臨床的治癒率は78.9%,完全治癒率は57.8%であった.ホスラブコナゾール投与開始36週以降に臨床的治癒する症例が多かった.臨床的治癒までの期間の中央値は41.9週であった.副作用は350例中64例(18.3%)に76件認められ,そのうち15例がホスラブコナゾールの投与を中止した.重篤な副作用はなかった.臨床検査はホスラブコナゾール投与開始10週後までに実施された症例が多かった. 本研究の結果,実臨床におけるホスラブコナゾールの高い有効性と忍容性,および治療継続率の高さなどが確認された.ホスラブコナゾールによる治療は,患者のコンプライアンス・アドヒアランス維持に貢献すると思われる.
  • 〜国内第III相試験の追加解析〜
    五十嵐 敦之, 中川 秀己
    2022 年 39 巻 4 号 p. 593-599
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/22
    ジャーナル フリー
    目的:新規ヤヌスキナーゼ(Janus kinase, JAK)阻害薬デルゴシチニブ軟膏0.5%(本軟膏)の日本人成人アトピー性皮膚炎(AD)患者における重症度別安全性および有効性を検討した. 方法:軽症から重症の成人AD患者352例を対象とした国内第III相,多施設共同,非対照,非盲検,長期投与試験(52週間)の結果を事後解析した.本軟膏塗布開始時のInvestigator’s Global Assessment(IGA)スコアによる重症度別およびステロイド外用薬(TCS)使用の有無別に,本軟膏の安全性及び有効性を累積modified Eczema Area and Severity Index50/75%低下(累積mEASI50/75)達成割合で評価した. 結果:塗布開始時IGA2(軽症)の副作用発現例数は23/110例(20.9%),3(中等症)では45/215例(20.9%),4(重症)では1/27例(3.7%)であった.TCS非使用例における副作用発現数は25/128例(19.5%),TCS使用例では44/224例(19.6%)であった.本軟膏単剤使用集団128例におけるIGA2のmEASI50達成割合(累積)は87.0%,mEASI75達成割合(累積)は69.6%であり,IGA3ではそれぞれ72.2%,62.5%,IGA4では85.7%,14.3%であった.全被験者におけるIGA2のmEASI50達成割合は78.8%,mEASI75達成割合は54.8%であり,IGA3ではそれぞれ62.8%,43.7%,IGA4では74.1%,37.0%であった. 結論:本軟膏はいずれの重症度においても副作用発現に大きな違いはなく,ADの皮疹を改善する有効性が認められたことから,重症度を問わず使用できる可能性がある.本軟膏単剤でのADコントロールだけでなく重症度や症状に合わせ適切にTCS併用を考慮することが重要である.
  • 〜ランダム化プラセボ対照二重盲検並行群間比較多施設共同試験〜
    林 伸和, 高岡 伊三夫, 駒嵜 弘
    2022 年 39 巻 4 号 p. 600-606
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/22
    ジャーナル フリー
    過酸化ベンゾイル2.5%ローション(以下,BPO-L)の尋常性痤瘡患者に対する有効性および安全性をランダム化プラセボ対照二重盲検並行群間比較多施設共同試験で検討した. 本試験では,12歳以上49歳以下の中等症の尋常性痤瘡患者を対象にBPO-Lまたはプラセボを1日1回洗顔後,顔面全体に12週間適量を塗布した. ランダム化された222例(BPO-L群109例,プラセボ群113例)に治験薬が塗布された.主要評価項目である治療開始12週後のベースラインからの総皮疹数(炎症性皮疹数および非炎症性皮疹数の合計皮疹数)の減少率の最小二乗平均値は,BPO-L群で63.0%,プラセボ群で26.5%であり,BPO-Lは有意に総皮疹数を減少させた(P < 0.0001) .副次評価項目である炎症性皮疹数および非炎症性皮疹数も有意に減少した(ともにP < 0.0001) .有害事象の発現割合は,BPO-L群29.4%,プラセボ群23.9%であり,治験薬と関連ありの有害事象の発現割合は,BPO-L群(11.9%)がプラセボ群(6.2%)よりも高かった.有害事象の多くは軽度で,治験薬塗布部位に発現しており,未回復の3例を除き,回復または軽快した.尋常性痤瘡患者に対するBPO-Lの忍容性は良好で,治療開始2週間後から総皮疹数の減少がみられたことから,BPO-Lは,これまでゲルのみであったBPO製剤の治療選択肢を拡充させ,尋常性痤瘡の早期かつ積極的な治療に貢献する薬剤の一つとなることが示唆された.試験登録番号 jRCT2031200251.
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