日本臨床皮膚科医会雑誌
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38 巻, 5 号
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論文
  • 髙橋 博之 
    2021 年38 巻5 号 p. 740-744
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/01/20
    ジャーナル フリー
     54歳,男性.咳と胸痛にて近医内科を受診し,精査目的で当院呼吸器内科に紹介された.画像検査にて胸水貯留や左頸部リンパ節腫大と多発性胸腔内腫瘍を認めた.さらなる精査目的で当院呼吸器外科にてVideo-assisted thoracic surgery(ビデオ補助胸腔鏡手術,以下VATS)予定となり,VATS施行前に生下時より存在する後頭部の皮膚腫瘍につき当科に相談となった.頭部の皮膚腫瘍は長径約9 cmあり一部に潰瘍を伴う隆起性病変を認めたため,病理診断目的でVATS施行時に生検を行った.病理組織検査では潰瘍病変部は大小不同,好塩基性で異型性を有する核と分裂像を呈する腫瘍細胞から構成されていた.一方,灰白色部の病理組織像は真皮全層に渡り濃染する明瞭な核と一部の腫瘍細胞に軽度のメラニン色素を有する比較的均一な円形の腫瘍細胞を認めた.免疫組織染色の結果では潰瘍病変部はS100蛋白,Melan A,HMB45陽性であったが,灰白色部はS100蛋白とMelan Aは陽性であったがHMB45陰性のため臨床および病理組織像をあわせ前者を悪性黒色腫,後者を色素細胞母斑と診断した.また,VATS施行時に採取された胸腔内腫瘍の病理組織像および免疫組織染色の結果は後頭部腫瘍の潰瘍病変部の所見と類似していたため,最終的に頭部の無色素性の先天性色素細胞母斑から発症し胸腔内転移を呈したStage IVの悪性黒色腫と診断した.  全色素細胞母斑における先天性色素細胞母斑の発生頻度は諸家により様々であるが概ね1~2%とされる.また,先天性色素細胞母斑から悪性黒色腫への悪性化のリスクは長径20 cm以上の大型先天性色素細胞母斑で高いとされ,発生する悪性黒色腫の約60%は10歳代に発症すると報告されているが,中型先天性色素細胞母斑からの悪性化の報告も散見される.  中型の先天性色素細胞母斑も悪性化する可能性があることを認識しておくべきである.
  • 山尾 暁, 渡邉 荘子, 石崎 純子, 田中 勝, 安齋 眞一, 中村 嘉男
    2021 年38 巻5 号 p. 745-748
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/01/20
    ジャーナル フリー
    症例:59歳,男性.半年前から左中指後爪郭に淡紅褐色の色素斑があり,近医で悪性黒色腫を疑われ当科を受診した.ダーモスコピーで淡褐色の背景の中に一部にbrown dots / globulesが散在し,他にも一部に濃淡のある不明瞭なdark brownのatypiclal pigment networkがみられ,それらの上にわずかなwhite scaleがあり,色素性Bowen病を疑い生検した.病理組織学的所見は過角化を伴い,比較的下端が揃い全体にほぼ均等な表皮肥厚がみられる.拡大すると表皮内,特に基底層に優位なメラニンの沈着があり,また,表皮全層に異型性がみられclumping cellや個細胞壊死が目立つ.異型角化細胞の真皮への浸潤はなかsったことから色素性Bowen病と診断した.治療は1 mmマージンで拡大切除を行った.Bowen病の典型的な所見としてはdotted and glomerular vesselsなどの血管所見がよくみられる.また,scaly surface, brown dots / globulesなどの所見もあるが,色素性Bowen病では灰色~褐色の無構造色素沈着などの所見が加わり,他にもpigment networkやirregular flossy streaksなどの所見を呈し,悪性黒色腫と鑑別困難な場合もある.色素性Bowen病はBowen病のまれな亜型で,黒褐色調を呈し,次第に疣状角化することを特徴とする.Bowen病全体に占める割合は約2%程度といわれ,指趾発症例の報告が多い.色素性Bowen病の頻度は高率ではないが,その診断にはダーモスコピーが有用であり,日常診察のなかで色素性Bowen病を鑑別として念頭におくことが重要であると考える.
  • 髙田 佳子, 野口 篤, 千田 香織, 長谷川 敏男
    2021 年38 巻5 号 p. 749-753
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/01/20
    ジャーナル フリー
    25歳女性.月経痛に対してアセトアミノフェン,片頭痛に対してエレトリプタンを不定期に内服していた.初診の4日前に発熱があり市販の葛根湯とロキソプロフェンナトリウム水和物を内服し,その後咽頭痛が出現した.翌日より手掌に皮疹が出現し,近医で処方されたレボフロキサシンとアセトアミノフェンを内服した.その2日後に眼脂,手掌の疼痛,排尿時痛が出現して当科を紹介受診した.初診時に発熱,両眼球充血,口唇,口腔内および陰部のびらん,手掌の標的状紅斑があり,手掌部の皮膚生検で表皮全層の壊死があり,Stevens-Johnson症候群(SJS)と診断した.臨床経過とDLSTの結果からロキソプロフェンナトリウム水和物が被疑薬と考えた.プレドニゾロンコハク酸エステルナトリウム1 mg/kg/日投与を開始した.第3病日に手掌の水疱が拡大したため,1.5 mg/kg/日に増量した.第4病日より経口摂取が可能となり,第13病日に眼脂が減少傾向に転じ,以後プレドニゾロンを漸減した.SJSの皮疹は通常体幹から始まり手掌にはほとんど病変を生じないが,今回我々は手掌に優位な分布を呈するSJSの一例を経験した.皮疹が体幹に生じず手掌に優位な分布を呈する場合もSJSの可能性を考慮し粘膜症状および全身症状に注意して対応する必要があり文献的考察を加えて報告する.
  • 松立 吉弘
    2021 年38 巻5 号 p. 754-756
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/01/20
    ジャーナル フリー
    COVID-19ワクチンによる副反応は様々なものがあるが,遅延型投与部位反応(COVID arm)は十分に認識されていない.COVID-19ワクチンの初回接種後1週間程度で生じるそう痒を伴う紅斑,硬結,圧痛を特徴とし,通常4~5日程度で消退する.2回目の接種でも同程度もしくは軽度の反応がみられることが多く,初回より出現までの期間が短い傾向にある.アナフィラキシーや蕁麻疹などの即時型過敏反応とは異なり,以後のワクチン接種は禁忌ではない.今後の集団接種の拡大に伴い,診察する機会が増えると思われる.本症状を認識しておく必要があると考え,経験した2例を報告する.
  • 島田 辰彦, 岸田 百世, 菊川 義宣, 林 伸和
    2021 年38 巻5 号 p. 757-765
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/01/20
    ジャーナル フリー
     小学4年生から中学3年生までの子を第一子にもつ母親1,256名を対象とし,自身の痤瘡経験や痤瘡に関する認識および子の痤瘡への対処方法等に関するインターネット調査を実施した.  痤瘡に罹患したことがあると回答した母親の割合は29.4%であった.炎症性皮疹が医療用医薬品で治療可能であることを知っている母親は全体の82.4%であり,面皰については71.4%であった.また,現在の痤瘡治療に用いられる医療用医薬品の種類が自身の思春期よりも増えていることを知らない母親が全体の78.5%を占めた.調査対象者の子(第一子)は49.7%が調査時点で顔面に痤瘡を有していた.痤瘡を有する子の母親のうち33.0%は子に治療目的で医療機関を受診させており,この割合は痤瘡治療薬の変化を認識している母親(55.2%)の方がそうでない母親(25.1%)よりも高かった(P <0.05,χ2検定).子の痤瘡へのアドバイスについては,面皰や軽症の痤瘡に対し,それぞれ54.9%,51.3%が「洗顔を念入りに行う」と回答し,中等症以上の痤瘡に対しては7割以上が「医療機関を受診する」と回答した.母親を介した子への質問では,89.6%が痤瘡について相談しやすい相手を母親と回答した.  本調査では,自身に痤瘡の罹患経験があることを認識している母親が一般的に知られている罹患率と比較して少ないこと,医療用医薬品を用いた痤瘡治療に対する認知が十分でないことが明らかとなった.子の痤瘡に対しては,痤瘡治療薬の変化を認知していない母親は医療機関受診を勧める割合が低いことや,面皰主体や軽症の痤瘡にはスキンケアで対処する傾向が示された.子の主な相談相手が母親であることを踏まえると,母親に対して痤瘡治療に関する適正な情報を提供することが,思春期痤瘡患者が早期に医療機関を受診するために重要であることが示唆された.
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