日本繁殖生物学会 講演要旨集
第106回日本繁殖生物学会大会
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精巣・精子
  • 島田 愛美, 檜垣 彰吾, 藤岡 康弘, 酒井 則良, 高田 達之
    セッションID: P-64
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/10
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    【目的】琵琶湖は世界で最も古い湖の一つであり,多くの貴重な固有種の生息が確認されている。しかし,近年の気候変動や環境汚染等により,その個体数が激減しており,特に固有魚種の一種であるホンモロコにおいては養殖や放流等の資源量回復のための処置が行われているにも関わらず,生息数が著しく減少し,絶滅危惧IA類に指定されるまでに至っている。本研究では種および遺伝資源の保存を目的として,ホンモロコ精子のin vitro分化培養系の確立を行った。【方法】非繁殖期および繁殖期のホンモロコより精巣を摘出し,細切・酵素処理後,種々の成長因子およびホルモンを添加したゼブラフィッシュ精子分化培養液に懸濁し,18℃で培養した。培養液は3~4日毎に交換し,生殖細胞の分化を観察した。また,in vitroにおける精子分化を確認するため,5-bromo-2’-deoxyuridine(BrdU)の取込み試験を行うとともに,フローサイトメーターを用いた核相解析も行った。次に,in vitroにおいて分化した精子の受精能を確認するため,人工授精実験を行った。【結果・考察】精原細胞のみが存在する非繁殖期の精巣を用いた場合,培養開始後1週目は主として精原細胞が観察され,第2週目には精母細胞が,第3週目には精子が観察された。一方,繁殖期の精巣を用いた場合,全培養期間を通じて全ての分化段階の生殖細胞が観察され,BrdUを取り込んだ精子は,添加開始後11日目に初めて観察された。核相解析の結果,非繁殖期および繁殖期の両方で精子および精細胞を示す1倍体のピークが観察されるとともに,人工授精により多数の受精卵が得られた。以上の結果から,in vitroにおいて,正常に減数分裂が進行し,受精可能な精子が分化することが示され,ホンモロコ精子のin vitro分化培養系が確立されたと考えられる。
  • 大木 美奈, 金 允貞, 定兼 和哉, 小林 吉倫, 濱野 光市, 保科 和夫, 高木 優二
    セッションID: P-65
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/10
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    【目的】我々はブタ精原細胞に特異的なモノクローナル抗体PSS1を作出し,日本繁殖生物学会(2007年)において報告した。PSS1抗体は,ブタ以外の精巣には反応せず,未分化な精原細胞の細胞質および細胞膜を認識する(北信越畜産学会,2012年)。また,PSS1抗体とFACSを用いて,幼若ブタ精巣より前精原細胞を単離できることを報告した(日畜学会,2013年)。今回我々は,精細管の中の精原細胞の挙動を探るために,幼若ブタ精細管のホールマウント標本の作製とPSS1抗体による免疫蛍光染色法について検討したので報告する。【方法】生後数日の幼若ブタより精巣を採取した。精巣を細切した後,ボルテックスにより精細管を精巣組織より遊離させ,ステンレスメッシュにより精細管のみを単離した。4%PFAで固定した後,Smear Gell(GenoStaff社)により精細管をスライドに貼り付けた。0.1%Triton/TBSで透過処理した後,PSS1抗体およびCy3標識2次抗体,HoechstおよびDAPIによりホールマウント免疫染色を施した。共焦点レーザー顕微鏡FV1000(OLYMPUS社)により蛍光イメージを取得し,3D画像解析を行った。【結果】幼若ブタ精細管のホールマウント免疫蛍光染色により,精細管の中のPSS1抗体陽性の前精原細胞を観察することができた。また,3D画像解析により精細管の中の精原細胞の位置を立体的に詳細に観察することが可能となった。生後間もない幼若時に,精原細胞は精細管の管腔に散在する形で存在していた。今後,性成熟に伴う精原細胞の挙動を観察するとともに,精細管の器官培養と精原細胞の経時的な変化について同手法を用いて検討を行う予定である。
  • 武田 久美子, 金田 正弘, 田上 貴寬, 韮澤 圭二郎, 渡邊 伸也
    セッションID: P-66
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/10
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    【目的】潜在精巣は精巣下降の欠如により発生し,ブタ,イヌ,ウマで多くみられ,ウシでは比較的発生頻度が低い(0.2%)。潜在精巣はステロイドホルモン産生能を有するが,体温により精子形成障害を起こすとされる。当研究所にて飼養しているホルスタインについても一側性潜在精巣の症例が発生した。本研究では,この雄牛についてもう一方の正常な精巣と比較して細胞死関連遺伝子発現およびミトコンドリアタンパク質発現に違いがあるかどうかを検討した。【方法】6ヶ月齢の一側性潜在精巣のホルスタイン(H1),10歳齢の黒毛和種(B1),3歳齢の黒毛和種 (B2),5ヶ月齢の黒毛和種(B3)の双方の精巣からmRNAを抽出した。細胞死関連遺伝子13–15種類について,Lightcyclerシステムを用いたリアルタイムPCRによりその発現量を比較定量し,個体ごとに左右精巣の発現量の比較を行った。また,潜在精巣を示したH1の双方の精巣よりミトコンドリア分画を精製し,タンパク質を溶解後Ettan DIGEシステムによる2次元電気泳動スポットの比較解析を行った。【結果】H1については正常と潜在精巣間での発現量に2倍以上違いがみられる遺伝子が数種類(MnSOD, BAX等)検出された。一方,B1~B3について調査した遺伝子発現量に2倍以上違いがみられるものは2–3個と少なかった。また,ミトコンドリアタンパク質についてEttan DIGEシステムの解析結果,2倍以上の発現量差異のあるスポットが検出された。以上の結果より,潜在精巣ともう片側の正常な精巣との間に細胞死関連遺伝子発現に差異が検出されることが示唆された。今回は1例の結果であるため,今後更に例数を重ねた検討を要する。
  • 川島 明弘, 木越 琢海, 石川 祐, 加藤 祐希, 松田 学, 岡村 直道
    セッションID: P-67
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/10
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    【目的】精子形成の半数体形成時期(精子完成時期)では不要なタンパク質の除去・分解が盛んに行われていることが以前から知られている。これらの分解過程において,ユビキチン・プロテアソーム系が深く関与すると考えられており,複数の精巣特異的なユビキチン・プロテアソームに関与するタンパク質の同定・解析が進められている。しかし,その詳細はまだまだ不明である。本発表にて精巣特異的に発現するE2uタンパク質を発見し,以下の発現・機能解析を行った。 【方法】発現解析としてノザンブロット,In situ Hybridization,免疫染色を行った。また,生化学的解析として,発現タンパク質を用いてスペクトル解析,ユビキチン結合アッセイを行った。 【結果】マウス精巣を用いたカルシウム結合タンパク質の探索をプロテオームにて行い,新たなE2(ユビキチン結合タンパク質群)のE2Uを発見した。マウスE2Uは,8個(脳,心臓,肺,脾臓,肝臓,腎臓,精巣,筋肉)の組織別発現解析において精巣特異的に発現しており,Insitu Hybridizationを用いて,mRNAは円形精子細胞に発現していることを,免疫染色において伸長精子細胞に発現していることを明らかにした。また,構造上,N末端側にユビキチン結合ドメインを有し,C末端側にカルシウム結合ドメイン(グルタミンが多量に連なる領域)を有している。N末端側のユビキチン結合ドメインを含む組み換えタンパク質を用いて,ユビキチン結合アッセイを行ったところ,微弱ながらユビキチンとの結合も観察された。C末端側を含む組み換えタンパク質を用いてカルシウム結合能を有することを,また,蛍光スペクトルを用いた解析から天然変性タンパク質であることも明らかにした。まとめとして,E2Uは半数体以後に発現し,N末端側にてユビキチン結合能が認められ,C末端側に不安定な天然変性領域を有している。これらの結果からE2Uは精子完成の細胞質にてユビキチン・プロテアソーム系に関与していることを示唆している。
  • 渡辺 伸也, 武田 久美子, 赤木 悟史, 原口 清輝, 平尾 雄二, 内山 京子, 絹川 将史, 金田 正弘, 小林 栄治
    セッションID: P-68
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/10
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    【目的】FGF2 (Fibroblast growth factor 2)とPOU1F1 (Pituitary-specific positive transcription factor 1)は,牛の体外受精成績に影響を及ぼす一塩基多型(SNP)の存在が報告されている遺伝子である。本研究では,これらの遺伝子を取り上げ,そのSNPの遺伝子型が雄牛の交配成績に及ぼす影響を検討した。【方法】調整交配に用いた雄牛(黒毛和種:28頭,ホルスタイン種:35頭)の血液よりゲノミックDNAを調製した。FGF2については,Csp6I を(g.11646A>G ,Wang et al., 2008),また,POU1F1については,StuI を(c.577C>A,Huang et al., 2008),それぞれ用いたPCR-RFLP法でSNPの遺伝子型を判定した。調整交配の受胎率を雄牛の交配成績とした。【結果】雄牛の交配成績は,品種により有意に異なっていた(P<0.01)。FGF2のSNPにおいて, AA型,AG型およびGG型の遺伝子型を有する雄牛の交配成績(平均±標準偏差)は,黒毛和種で,それぞれ,74.3%(n=2),59.2±5.1%(n=7) および 57.5±10.4%(n=19),ホルスタイン種で,それぞれ,38.7±5.2%(n=18), 38.9±4.6%(n=12) および42.8±3.8%(n=5)であった。一方,POU1F1の SNPにおいて, CC型,CA型およびAA型を有する雄牛の交配成績は,黒毛和種で,それぞれ,61.9%(n=1),59.3±6.4%(n=3)および58.9±10.5%(n=24),ホルスタイン種で,それぞれ,40.4%(n=1) ,40.2±6.0%(n=9) および39.0±4.7%(n=25)であった。n=3以下を除き,品種ごとにそれぞれ分散分析した結果,いずれの遺伝子のSNPにおいても今回調査した雄牛では交配成績に有意な影響は検出できなかった。
  • 奥平 裕一, 舟橋 弘晃
    セッションID: P-69
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/10
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    【目的】受精能獲得時に精子ミトコンドリアリボソームで受精能,運動能,シグナル伝達制御等への関与タンパク質の新合成がヒト,ウシ,マウス,ラットで報告されている。本研究は,タンパク質合成阻害剤存在下でのブタ精子の受精能獲得および体外受精能を調べた。【方法】精子は,バークシャー種雄ブタから採取した濃厚部精液を修正モデナ液で5倍希釈して研究室に輸送し,パーコール洗浄後に実験に供した。洗浄精子は,体外受精用培地中に再浮遊後,5% CO2 in air,39℃の気相条件下で45または90分間培養した。その際,ミトコンドリアリボソーム特異的阻害剤クロラムフェニコール(CP,0.3 mM)または細胞質リボソーム特異的阻害剤シクロへキシミド(CH,3.6 mM)を添加した。培養の前後の精子生存率および運動指数を調べるとともに,CTCアッセイにて受精能獲得精子/先体反応精子割合を調べた。また,ブタ体外成熟卵を用いてこれらの阻害剤の存否下で体外受精を行い,媒精後8時間の精子侵入を調べた。【結果】受精受精用培地へのCPまたはCHの添加は,培養45および90分後の精子生存率および運動指数に影響しなかった。CP添加区の受精能獲得精子および先体反応精子割合は,培養45分および90分後に低下したが,CH添加区のそれらは影響なかった。CH存在下での体外受精率は対照区のそれよりも低かったが,CP存在下では影響なかった。また,CH存在下での受精卵当たりの侵入精子数は,対照区のそれより低かったが,CP存在下では影響なかった。しかし,CHの添加は卵母細胞の核相にも影響しており,CH添加区で,MIIを示す卵母細胞の割合が他の2区に比べて低く,A/T−IIを示す卵母細胞の割合が他の2区に比べて高かった。以上の結果から,ブタ精子の受精能獲得時のタンパク質新合成は,CTC染色パターンには影響するが,体外での卵母細胞への精子侵入能に必須ではないことが示唆された。
  • 小林 吉倫, 大木 美奈, 金 允貞, 定兼 和哉, 濱野 光市, 保科 和夫, 高木 優二
    セッションID: P-70
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/10
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    【目的】コンピュータを用いた精子運動性解析装置(CASA)は,精子の運動性の客観的評価に有効である。しかし,用いる基材や培養液によって精子がスライドガラスに付着し,評価が困難な場合がある。これまで我々は,MPC(2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン)ポリマーをスライドガラス表面にコーティング処理を施し,培地はブタ精子の希釈保存液として知られるモデナ液に1%PVAを添加することで精子のスライドガラスへの付着を低減できることを報告した(日畜学会2013)。しかし,コーティング処理に手間がかかり,準備に時間を要するため,より簡便な手法の開発が必要である。Lipidure-BLは,ホスホリルコリン基を有する水溶性のポリマーであり,試薬の安定化,非特異的吸着を低減できる。そこで本研究では,6種類のLipidure-BLをモデナ液に添加し,ブタ精子の付着の低減について検討したので報告する。【方法】日油(株)の6種類のLipidure®-BL-103,-203,-206,-405,-802,-1002を実験に供した。スライドガラスは脱脂洗浄し,カバーガラスとの間隙を10μmになるようにセットした。モデナ液にLipidure-BL,PVAを添加し,ブタ精子の運動性をCASAにより評価した。【結果】モデナ液のみの場合,全ての精子がスライドに付着したが,Lipidure-BLを添加することで有意に精子の付着が低減し,特にLipidure-BL-206,-802,-1002の効果は著しかった。Lipidure-BL添加は,MPCポリマー処理よりもスライドへの付着低減効果は低かったものの,精子の曲線速度は有意に高かった。以上のことから,Lipidure-BL添加によりスライドのコーティング処理が不要であり,精子の運動性評価に利用できることが示された。
卵・受精
  • Elisa Caroline da Silva SANTOS, Elisangela Mirapalheta MADEIRA, Bruna ...
    セッションID: P-71
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/10
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    The polyspermy blockage failure is one of the major problems for swine IVP. The efficient block is dependent to adequate exocytosis of the cortical granules (CG) into the periviteline space after fertilization. Wherever, this phenomenon is dependent to adequate oocyte IVM ability. Considering this, the oocyte selection by Brilliant Cresyl Blue (BCB) could be a useful tool. In this context, the objective of this research was to compare a new media produced from PZM (PZMm), with the most commonly used D-PBS for the BCB staining. Both media was used without BCB (controls) and with 13 μM of BCB for oocyte incubation during 60min prior to IVM. After incubation period, the treated oocytes was classified as stained (+) or no staining (-), constituting the following groups: PBS control (PBSc; n=19); PZMm control (PZMmc; n=20); PBS+ (n=23); PBS- (n=21); PZMm+ (n=20) and PZMm- (n=20). IVM was performed in NCSU-23 (24 hours with AMP-c, PFF, eCG and hCG) and more 24 without hormones and AMP-c. After IVM all oocytes where fixed prior staining with FIT-LCA (10 μg/mL) and photographed under confocal microscopy. The CG distribution was estimated using the software ImageJ, i.e. Lower area of CG distribution in ooplasm, means higher migration to the periphery. The results were analyzed by Chi-Square. The CG ooplasm lower area (P < 0.05) was observed in PZMmc (34.7 % ± 7.9). A higher CG area (P < 0.05) was observed in PZMm- and PBSc (80.7 % ± 7.9 and 77.6 % ± 7.6, respectively), that was similar (P > 0.05) to others groups. In conclusion, oocytes incubated with PZMm (without BCB) had better CG migration, indicating possibility to be a good maintenance media.
  • 新見 沙織, 北山 みずほ, 竹下 純隆, 松川 和嗣, 葛西 孫三郎, 枝重 圭祐
    セッションID: P-72
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/10
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    【目的】ブタ卵子は低温感受性が高く,15℃以下に数分間さらされると傷害を受ける。もし低温傷害のメカニズムが明らかになり,この傷害を簡単に回避できるようになれば,ブタ卵子の凍結保存が実用化できるかもしれない。本研究では,皮膚の神経などに存在して温度を感受する温度感受性TRPチャンネルに着目し,このチャンネルがブタ卵子の低温傷害に関与しているかどうかをしらべた。【材料および方法】屠場由来のブタ卵巣から卵丘細胞に包まれた卵核胞期卵子を採取した。回収直後の卵子を未成熟卵子,10%FCSと0.1 IU/ml hMGを添加したTCM-199液中で12時間培養した卵子を成熟途上卵子,同液で48時間培養後に極体の放出が確認された卵子を成熟卵子とした。<実験1>TRPチャンネルのmRNAの発現を調べるために,種々の成熟段階の卵子からcDNA を合成し,低温を感受するTRPA1とTRPM8の塩基配列をもとに作製したプライマーを用いてリアルタイム PCR を行い, mRNA の相対的な発現量を調べた。<実験2>低温傷害における低温感受性TRPチャンネルの関与を明らかにするために,TRPA1のdsRNAを未成熟卵子に注入して,12時間培養して作製したTRPA1発現抑制成熟途上卵子を低温処理 (15℃で10分間) した後に,さらに36時間培養して,低温処理による生存率と成熟率の低下が改善されるかどうかをしらべた。【結果および考察】<実験1>17℃以下の低温を感受するTRPA1のmRNAはいずれの成熟段階の卵子においても発現していたのに対し,26℃の低温を感受するTRPM8のmRNAは成熟卵子でのみ発現していた。<実験2>卵子を低温処理すると,無処理の卵子と比べて生存率は3分の1以下に低下し,成熟率も大きく低下した。しかしながら,TRPA1のdsRNAを注入したのち低温処理した卵子では,生存率と成熟率のいずれもが改善された。これらの結果から,ブタの未成熟卵子の低温傷害にはTRPA1が関与していると考えられた。
  • 佐藤 大地, 木下 尚也, 羽場 久美子, 向田 幸司, 村山 智紀, 鵜沢 美穂, 鈴木 由紀子, サントス エリッサ キャロライン, 門 ...
    セッションID: P-73
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/10
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    【目的】卵子内部のミトコンドリア(Mt)DNAコピー数は卵子の発育や核成熟中にも大きく変化するが,どのような要因がこの変化に関わっているのかは不明である。我々は同一個体より採取した卵子を一定数用いることで,MtDNAコピー数に培養条件が及ぼす影響が検討できることや,卵巣の保存が卵子のMtDNAコピー数に大きく影響することを本年度の卵子学会にて示している。本研究では,卵巣の虚血保存によって卵子中のSIRT1の活性がどのように変化するのか,SIRT1の発現量とMtDNAコピー数の間にはどのような関係があるのか,そして卵巣の保存が卵子中のPARKINの発現にどのような影響を与えるのかについて検討した。【方法】ブタ卵巣を食肉センターより1時間以内に持ち帰り,卵巣表面の一部の卵胞から卵子を回収後,同卵巣をPBS(-)中にて37℃で1時間さらに保存し,再度卵子を回収した。得られた保存前と保存後の卵子を用いてSIRT1の発現量を免疫染色にて比較した。この結果卵巣の保存は,有意に卵子中のSIRTの発現量を増やすことが明らかになった。次に卵巣を実験室に持ち帰った直後に,全ての卵胞から卵子を回収し,同一個体から回収した卵子を2グループに分け,一方をSIRT1の発現量の観察のため免疫染色を行い,残りの卵子はリアルタイムPCR法にてMtDNAコピー数を測定し,両者の間の相関を求めた。合計24頭の豚を用いて実験を行ったところ,MtDNAコピー数とSIRT1の発現量の間に正の相関が認められた(0.41,P<0.05)。さらに保存した卵巣から回収した卵子ではPARKINの発現量が増えることや特徴的な局在が確認できた。そこで同様に同一卵巣から回収した卵子を2群に分け一方をCCCPで2時間処理した。CCCP処理は卵子中のATP含量を有意に減少させ,さらに保存卵子で見られた特徴的な局在も確認できた。本実験より,卵巣の保存はSIRT1を活性化すること,卵子内タンパク質の品質管理機構が活性化している可能性が示された。本研究はJSPS科研費 25450400の助成を受けたものです。
  • 石川 禎将, 町田 遼介, 平賀 孔, 平館 裕希, 星野 由美, 種村 健太郎
    セッションID: P-74
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/10
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    【目的】ブタの体外生産において,卵巣から得られた未成熟卵子から胚盤胞へ発生する割合は約5割と,未だ低いのが現状である。この要因の一つとして,卵胞内で発生した活性酸素種(ROS)による酸化ストレスが挙げられる。酸化ストレスの一つとして知られる過酸化脂質(LPO)は,ROSである過酸化水素(H₂O₂)が脂質の不飽和結合に対して一重項酸素やハイドロペルオキシラジカル等が反応して生成される。ブタの卵母細胞は,他の動物種と比べ,LPOの標的となる脂質(トリグリセリド)を多量に含むことから,酸化ストレスの影響を受けやすいことが推察される。そこで本研究では,ブタ卵母細胞の体外培養系において,作用機序の異なる抗酸化物質を与え,各々の有効性を明らかにすることを目的とした。【方法】実験には,食肉処理場由来のブタ卵巣より採取した未成熟卵母細胞を用い,抗酸化物質のみの作用の解析を行うため,パラクラインの影響を受けず,高スループット性を期待できるHD法での検討を行った。96wellプレートに,NCSU-23培地を10μL/wellになるようドロップを作成し,採取した卵母細胞をHD法によってIVMを行った。IVMはホルモンとdbcAMPを含む培地で22時間し,細胞周期の同期化を行い,卵丘細胞を剥離し,同培地にH₂O₂(70μM)および抗酸化物質であるL-カルニチン,ラクトフェリン,スルフォルファンをそれぞれ添加(0.01μg/mL,0.1μg/mL)し,22時間の成熟培養を行った。IVM後,酢酸オルセイン染色により,核相判定を行い,核成熟率を算出した。【結果】培養液中に抗酸化物質を添加したところ,核相の進行は,controlと比較して有意に改善された。さらに,作用機序の異なるそれぞれの抗酸化物質で,その効果は異なっていた。以上の結果より,それぞれの抗酸化物質を添加することで,酸化ストレス影響を改善することが可能であることが明らかとなり,さらに本研究はブタ卵成熟において,より効果的な抗酸化物質の選択に貢献できると考えられる。
  • 辻 岳人, 清須 千代, 秋山 耕陽, 国枝 哲夫
    セッションID: P-75
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/10
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    【目的】卵巣内の卵母細胞は減数分裂第一分裂前期の状態を維持し,LHサージにより再開する。C型ナトリウム利尿ペプチド(CNP)は,受容体(NPR2)により合成されたcGMPを介して減数分裂の停止維持に関わることが後期胞状卵胞でのみ報告されている。本研究では,CNPシグナルによる減数分裂抑制効果がより早期卵胞で機能しているか調べ,さらに,LHによる減数分裂再開への関与についても解析をおこなった。 【方法】 1.Npr2遺伝子に機能欠失型の突然変異をもつマウスについて,25日齢の卵巣切片を作成し,卵母細胞における核の状態を観察した。2.25日齢の正常マウスとPMSG,hCGを投与した正常マウス卵巣におけるCNP (Nppc) 遺伝子および受容体(Npr2)遺伝子の発現パターンを解析した。3.正常マウス卵巣より単離した顆粒膜細胞を培養し,アンフィレギュリンおよびEGFレプター阻害剤によるNppc遺伝子の発現量への影響を解析した。【結果】 Npr2遺伝子に変異をもつマウスの卵巣では,前胞状卵胞までの卵母細胞は正常マウスと同様にGV期であったが,初期胞状卵胞以降の半数以上の卵母細胞では染色体が観察され,減数分裂が異常に再開していた。初期胞状卵胞では卵胞外側および卵母細胞周囲の顆粒膜細胞にNppcおよびNpr2遺伝子はそれぞれ発現し,PMSG投与48時間後の胞状卵胞では,顆粒膜細胞と卵丘細胞において発現していた。また,Nppc遺伝子の発現はhCG投与後に顕著に減少した。培養顆粒膜細胞では,Nppc遺伝子の発現量はアンフィレギュリン添加により減少し,EGFレセプター阻害剤の前処理により発現量の低下は認められなかった。以上の結果より,CNP/NPR2シグナルは,胞状卵胞期以降の卵母細胞の減数分裂の停止維持に関わる体細胞由来の必須因子であることが示された。また,LHサージによる減数分裂再開には,CNPによる減数分裂停止維持効果の低下が関与している可能性が示された。
  • 若井 拓哉, 今村 博臣, 河野 友宏
    セッションID: P-76
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/10
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    【目的】ATPは細胞の主要なエネルギー源であり,生体内の多くの化学反応を支える。卵母細胞は,卵成熟の進行やその後の受精や発生を支持するために多くのATPを必要とすることが考えられるが,時間空間的なATP濃度の変化について詳しくは解明されていない。最近, ATP濃度を測定する方法として,蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)の原理に基づいたバイオセンサー,ATeamが開発され,生細胞における正確なATP濃度の測定が可能となった。そこで我々は,ATeamを用いてマウス卵母細胞の成熟過程や受精後におけるATP濃度の測定を行った。【方法】ATeamをコードするcDNAからIn vitro転写によりRNAを合成し未成熟卵母細胞(GV卵子)にインジェクションを行った。GV卵子はIBMX存在下で5時間培養し,ATeamの蛍光発現を確認した。ATP濃度はCFPおよびYFP蛍光画像をそれぞれ取得し,YFP/CFP蛍光強度比により評価した。ATP濃度の変化を調べるためにATP合成阻害剤oligomycinとミトコンドリアの機能阻害剤CCCPを添加した。卵成熟過程におけるATP濃度の変化を調べるためにATeamを発現したGV卵子をM2培地に移し成熟培養を行った。受精後のATP濃度の変化は,ATeamを発現させた成熟卵母細胞(MII卵子)にICSIをすることにより調べた。【結果】 ATeamの蛍光発現はインジェクション5時間後に卵細胞質内全体で確認され,その後はYFP/CFP比に大きな変化が認められなかった。OligomycinおよびCCCP添加後,YFP/CFP比は速やかに低下したことからATeamが卵子内でATPセンサーとして機能していることが確認された。卵成熟過程におけるATP濃度の測定からGV期からMII期にかけてATP濃度の緩やかな低下が観察された一方で,受精後はATP濃度の大きな増加が観察されたことから,細胞内Ca2+濃度の上昇がATP産生に寄与したことが考えられる。
  • 伊丹 暢彦, 田中 裕士, 門司 恭典, 桑山 岳人, 岩田 尚孝
    セッションID: P-77
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/10
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    【目的】肝臓は代謝や内分泌機能に関与し,乳牛においては乳生産や繁殖機能にも寄与する重要な臓器であるが,肝臓と卵子の質との関係を調べた報告はない。我々は食肉センターで検査されたウシ肝臓の状態が卵胞発育の環境や卵子の体外受精および胚発生率に影響することを示している。それらの報告の中では肝臓に疾患を抱えるウシ(肝臓疾患牛)の卵子で減数分裂再開の遅延が顕著に確認されたが,その詳細なメカニズムは明らかにされていない。そこで,本研究では肝臓疾患牛における減数分裂再開の遅延の原因解明に取り組んだ。【方法】肝臓疾患牛と肝臓が全く正常なウシ(正常牛)で体外成熟中の卵子内MPF活性の推移,裸化卵子の減数分裂再開,および卵子と卵丘細胞間のギャップ結合の消失について比較した。また,Epidermal growth factor(EGF)を体外成熟培地に添加し,両区の卵子で減数分裂再開が促進されるかどうかについて検討した。さらに,体外成熟中の卵丘細胞内p38MAPKのリン酸化の推移について正常牛および肝臓疾患牛間で比較した。【結果】肝臓疾患牛の卵子では減数分裂再開が遅く,それに伴いMPF活性の上昇も遅かった。しかし,裸化卵子を培養すると,両区で減数分裂再開に差は認められなくなった。そこで,体外成熟中の卵子と卵丘細胞間のギャップ結合の消失を比較すると,肝臓疾患牛が正常牛に比べ遅かった。一方,EGFを体外成熟培地へ添加すると,減数分裂再開が肝臓疾患牛で正常牛と同程度の割合まで促進された。しかし,成熟開始時における卵丘細胞内p38MAPKのリン酸化は肝臓疾患牛で正常牛に比べ低かった。【結論】本実験より,肝臓疾患牛では卵丘細胞内のp38MAPKが低リン酸化状態にあり,卵子と卵丘細胞間のギャップ結合の喪失の遅れを介して,減数分裂再開の遅延が引き起こされることが明らかになった。本研究はJSPS科研費 25450400の助成を受けたものです。
  • 下井 岳, 林 雅人, 工藤 謙一, 亀山 祐一, 橋詰 良一
    セッションID: P-78
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/10
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    【目的】排卵後の体外加齢が卵子の受精能や初期発生能に影響することはよく知られている。我々は,体外加齢卵子に由来する受精卵の胚盤胞期において,着床後に胚体外組織に分化する栄養外胚葉(TE)細胞の減少を報告した。TEの出現は受精卵における初期分化であり,2つの転写因子Oct3/4およびCdx2が関与している。特にTEへの分化にはCdx2の発現が必須であり,胚盤胞期のTE細胞の減少から,加齢卵子ではCdx2の発現量が胚レベルで低下していることが懸念された。そこで,本研究は体外加齢卵子由来の胚盤胞におけるTE分化能についてCdx2の発現から検証し,これらの胚を移植することで胚の着床能について検証した。【方法】B6D2F1マウスに過排卵を誘起して未受精卵を得た。採卵後,培養気相内で12 h静置したものを体外加齢区,採卵直後の新鮮卵子を対照区として以下の操作を行った。0.1%ヒアルロニダーゼで卵丘細胞を除去後,定法に従い卵細胞質内精子注入(ICSI)を実施した。得られた受精卵の一部は,72 h培養して桑実胚を受卵雌の子宮内に移植した。残りの受精卵は,96 h培養して胚盤胞期にCdx2の発現解析を行った。Cdx2の発現は,胚盤胞からtotal-RNAを抽出し,リアルタイムPCRにてSYBR Greenを用いたインターカレーションアッセイで定量した。【結果】受精後96 hにおいて,体外加齢区の胚盤胞におけるCdx2発現量は,対照区の胚盤胞と比較して顕著に低値を示した。そこで,受精後120 hで比較したところ,体外加齢区ではCdx2の発現量が急激に増加し,両区間で差は認められなかった。これらの胚を子宮内に移植したところ,着床率は体外加齢区および対照区でそれぞれ10.4%(15/144),38.8%(83/244)であり,体外加齢区で有意に低値を示した。以上の結果,排卵後の卵子の体外加齢は,受精後の胚盤胞期におけるCdx2発現量の減少と発現時期の遅延を引き起こし,着床に影響することが示唆された。
  • 野澤 佑介, 鈴木 伸之介, 塚本 智史, 金子 武人, 今井 裕, 南 直治郎
    セッションID: P-79
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/10
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    【目的】マウス初期胚では受精後卵母細胞に蓄えられた母性因子に依存し胚自身のゲノムからの活性化(ZGA)が起き,転写が開始される。この時期にヒストン修飾酵素によってヒストン修飾が劇的に変化することから,ヒストン修飾は胚性ゲノムの活性化にとって重要と考えられる。マウスH3K4メチル化酵素Mll2を卵母細胞特異的に欠損させると,ZGAが損なわれ4細胞期までに発生が停止することが明らかにされている。ヒストンメチル化酵素Smyd3 (SET and MYND domain containing protein 3)はH3K4,H4K5,H4K20のメチル化を行っており,ZGAに関与していることが考えられるが,初期胚におけるSmyd3の解析は行われていない。そこで本実験ではマウス初期胚におけるSmyd3の役割について検討を行った。【方法】本研究では後期1細胞期,後期2細胞期,4細胞期,8細胞期,桑実期および胚盤胞期におけるSmyd3の発現量を定量的PCRによって比較検討した。また初期胚におけるSmyd3を抑制するためにSmyd3を標的とするsiRNAを受精後3時間の1細胞期胚に顕微注入し,受精後36,48,60,84,96,108時間における胚の形態および発生率について観察し,同様の時期に抗Smyd3抗体,抗H3K4me3抗体,抗Oct4抗体および抗Cdx2抗体により免疫蛍光染色を行い,それぞれのタンパク質の局在について検討した。【結果】対照区の胚と比べSmyd3抑制胚の形態,胚盤胞期胚までの発生率,脱出胚盤胞率に有意な差は見られなかった。しかしながら,免疫染色の結果,対照区の胚と比べSmyd3抑制胚の胚盤胞期胚において多能性の維持に必要なOct4と胎盤形成に必要なCdx2の発現の減少が確認された。また定量的PCRの結果,Smyd3抑制胚において4細胞期から発現を開始するOct4が有意に減少していたことから,Smyd3がOct4の胚性での転写開始に関与していることが示唆された。またSmyd3抑制胚では8細胞期からCdx2も有意に減少していたことから,Smyd3はCdx2の発現の制御にも関与していることが示唆された。以上の結果より,Smyd3はマウス初期胚の分化に重要な役割を持つのではないかと考えられた。
  • 鈴木 千恵, 櫻井 優広, 野口 倫子, 吉岡 耕治
    セッションID: P-80
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/10
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    【目的】インターロイキン(IL)-6は,単核球,リンパ球,線維芽細胞及び子宮内膜細胞等で産生される多機能性のサイトカインである。近年,マウス体外受精胚あるいはブタ単為発生胚において,血清含有培地へのIL-6添加が胚発生を促進することが報告されている。本実験では,ブタ体外受精胚の体外発生時における完全合成培地へのIL-6添加が胚発生に及ぼす影響について検討した。【方法】既報に従い,体外成熟・体外受精を行った。媒精後10時間後に卵丘細胞を除去した胚を種々の濃度でIL-6を添加した培養胚発生用培地(PZM-5)で培養し,胚発生率及び胚盤胞の細胞数を計測した。次に,媒精後の胚を0あるいは10 ng/ml IL-6添加培地で培養し,媒精後5日目の胚盤胞の内部細胞塊(ICM)と栄養外胚葉(TE)細胞数を,ヘキスト33342とプロピウムイオダイドを用いた二重染色法により計測した。さらに,媒精後5日目に得られた胚盤胞を0あるいは10 ng/ml IL-6を添加した後期胚培養用培地(PBM)で継続培養し,媒精後6及び7日目の胚盤胞の生存率及び孵化率と,媒精後7日目の胚盤胞の総細胞数及びアポトーシス指数(総細胞数に対するアポトーシス陽性細胞数の割合)を解析した。アポトーシス細胞はTUNEL法にて検出した。【結果および考察】媒精した胚を,0,1,10,100 ng/ml のIL-6添加培地で培養すると,2日目の分割率及び5日目の胚盤胞への発生率に差は認められなかったが,胚盤胞の総細胞数は10あるいは100 ng/ml添加により,無添加および1 ng/ml添加と比較して有意に増加した。媒精後5日目の胚盤胞のICM,TE細胞数及びICM/総細胞数比は,無添加と比較して有意に増加した。媒精後6日目の完全孵化率及び7日目の部分的孵化率と総細胞数は無添加と比較して有意に高く,アポトーシス指数は有意に低い値を示した。これらの結果から,完全合成培地へのIL-6添加はブタ胚の体外発生において,胚盤胞の細胞数及び孵化率を増加させることが明らかとなった。また,IL-6は胚盤胞のアポトーシスを抑制して胚発生を促進している可能性が示された。
  • 阪谷 美樹, 高橋 昌志, 竹之内 直樹
    セッションID: P-81
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/10
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    【背景】初期胚発生にエピジェネティックな遺伝子発現制御が密接に関わっており,DNAメチル化パターンやTen eleven translocation genes (TETs)による5メチルシトシンの水酸化が受精の成立や正常胚発生に重要なことが指摘されている。ウシでは高温成熟条件が卵子成熟や初期胚発生を阻害するが,これらの発生阻害とエピゲノム状態に関する報告はほとんどない。そこで高温成熟条件がウシ卵子および体外受精後の発生胚におけるTETsとDNMTsの発現パターンを解析した。 【方法】屠場由来卵巣より採取した卵子を体外成熟(38.5℃),受精させて得られた成熟卵子,zygote,2,8細胞期胚,桑実胚,胚盤胞各15個からmRNAを抽出し,定量PCRにてDNAメチル基修飾に関連する遺伝子(TET2, TET3, DNMT1, DNMT3A, DNMT3B)のステージ別発現量をΔCT法(成熟卵子=1)で解析した。また,通常区(38.5℃),高温区(40℃)で成熟培養したウシ受精卵について同様の遺伝子発現と体外受精による発生能に関して検討を行った。 【結果・考察】胚の発生ステージ依存的に遺伝子発現に差が認められた。すなわち,TET2,3並びにDNMT1は成熟卵子期~8細胞期まで高発現であり,桑実胚,胚盤胞での発現は有意に低かった。一方DNMT3Aは8細胞期,胚盤胞期で高く,DNMT3Bは成熟卵子,zygote,胚盤胞で高い発現を示した。高温成熟培養により卵子成熟率,発生培養2日目の8細胞期以上発生率および7日目の胚盤胞発生率は有意に低下した。また,TET2は処理区間の差が認められなかったが,zygoteで高温区のTET3, DNMTsの発現量が有意に増加し,反対に8細胞期胚ではTET3の発現量が有意に低下した。以上の結果から高温成熟培養によりウシ初期受精卵のエピゲノム状態も影響を受ける可能性が示唆された。現在も研究を継続中である。本研究は平成24年度旗影会研究助成金で実施された。
  • 定 郁里, 長友 啓明, 高橋 昌志, 川原 学
    セッションID: P-82
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/10
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    【目的】哺乳類の初期胚は胚盤胞期において細胞分化が明確化する。すなわち,将来胎子組織となる内部細胞塊(ICM)と,胚体外組織を形成する栄養外胚葉(TE)の2種の細胞群に分化し,それぞれの細胞に特有の遺伝子発現を示すようになる。これまでに我々は,ウシ胚盤胞期胚においてICMあるいはTE特異的な発現遺伝子パターンを明らかにするために部位特異的発現を示す遺伝子群をマイクロアレイにより決定した。本研究では,これらの遺伝子群のうち,定量PCRおよびIn situ hybridization法によってTE特異的な発現が新たに確認されたConnective tissue growth factor (CTGF )について着目し,初期胚における発現動態を解析した。体細胞の研究において,CTGFCDX2の上流で機能するTEAD4の標的遺伝子であると考えられているが,ウシ胚での発現の挙動は明らかになっていない。そこで,TEAD4に関しても発生過程における発現動態を解析した。【方法】屠場由来の卵巣より採取した卵子を体外成熟,受精,培養に供した。体外受精後の発生胚を8–16細胞期,桑実期,胚盤胞期の3ステージに分け,1ユニット10個として各時期で3ユニットずつサンプリングした。各サンプル胚からRNAを抽出後,cDNAを合成し,定量PCRに供してmRNA発現レベルの比較を行った。【結果および考察】CTGFは8–16細胞期から拡張胚盤胞期にかけて約10倍に発現レベルが有意に上昇した(P<0.01)。一方,TEAD4についても同様に8–16細胞期から胚盤胞期にかけて約20倍に発現レベルが上昇し,有意差が認められた(P<0.01)。CTGFおよびTEAD4遺伝子ともに,8–16細胞期から胚盤胞期にかけて発現レベルが上昇したことから,胚盤胞期胚でのCTGFのTE細胞特異的発現にTEAD4が関連していることが示唆された。
  • 杉村 智史, RITTER J. Lesley, SUTTON-MCDOWALL L. Melanie, MOTTERSHEAD G. Da ...
    セッションID: P-83
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/10
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    【目的】Amphiregulin (AREG)およびrecombinant human bone morphogenic protein 15 (rhBMP15)のウシ卵母細胞の発育能および卵丘細胞の機能への影響を解析した。【方法】rhBMP15無添加もしくは添加培地にFSHもしくはAREGを添加した。体外成熟培養後,体外受精を行い発生能を評価した。卵丘細胞の卵丘膨化,グルコース代謝,卵母細胞内のNAD(P)HとFAD++含量,および卵丘細胞-卵子複合体(COCs)のギャップ結合(GJC)を解析した。【結果】rhBMP15無添加区においてFSHは卵母細胞の体外発生を改善させた。一方,AREGはrhBMP15添加区において発生能を改善させた。rhBMP15の有無に関わらずAREGはFSHに比べ卵丘膨化が弱く,HAS2発現の増加も認められなかった。FSHおよびAREG共にCOCsにおけるグルコースの取り込み,および乳酸の生産を刺激したが,FSHに比べAREGで乳酸/グルコース比が高かった。これらは,FSHとは異なりAREGの刺激によって取り込まれたグルコースは卵丘膨化というよりは解糖系を介してより効率的に代謝されたことを示唆している。rhBMP15無添加区において卵母細胞内のNAD(P)HおよびFAD++含量に変化は認められなかったが,rhBMP15添加区においてAREGはそれら代謝補酵素を増加させた。卵丘細胞を裸化もしくは裸化した卵母細胞とCOCsを共培養した場合にこれら変化は認められなかったことから,卵母細胞内の代謝補酵素の増加は卵丘細胞からのGJCを介した結果であったと推察される。FSHはrhBMP15の有無に関わらず,3時間でのGJCの開口が認められた。一方,AREGはrhBMP15添加区でGJCの開口が認められた。以上,AREGはrhBMP15と協調的に卵丘細胞での代謝産物をGJCを介し卵母細胞内へ効率的に輸送することで,その後のウシ卵母細胞の発生能を改善させることが示された。
  • 内堀 翔, 清水 なつみ, 畑中 勇輝, 西原 卓志, 武本 淳史, 樋口 智香, 守田 昂太郎, 永井 宏平, 天野 朋子, 岸上 哲士, ...
    セッションID: P-84
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/10
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    【目的】母性遺伝子由来転写産物やタンパク質は,卵胞発育,受精及び胚発生に重要な役割を果たしている。これまでの研究から,母性遺伝子の機能解析において糖タンパク質の一つであるZp3のプロモーターが用いられている(Millar et al., 1991; Linang et al., 1997)。しかし,原始卵胞ではこのプロモーターの転写活性が認められず,また卵母細胞で発現する他のプロモーターについても情報は少ない。我々は,卵母細胞における母性遺伝子の機能解析を行うためのツールとしてHistone H1foo(H1oo)のプロモーター領域を単離し(Tsunemoto et al., 2008),下流にホタルルシフェラーゼ遺伝子を結合した導入遺伝子を組み込んだトランスジェニックマウスを3系統(H14・H16・H19系統)作出した。本実験では,これらのトランスジェニックマウスにおける導入遺伝子の発現を明らかにすることを目的にトランスジェニックマウス由来卵母細胞及び初期胚,各組織におけるルシフェラーゼの発現を検討した。【方法】導入遺伝子が導入された雌マウスに過排卵処置を行い体外受精を施した。培養後,各発生段階でシングルフォトンイメージング装置を用いてルシフェラーゼ活性を測定した。また,各組織をタンパク質抽出し,ルミノメーターを用いて発光量を測定した。【結果及び考察】H16系統での卵母細胞及び初期胚で導入遺伝子の発現が認められ,H1ooの転写制御下でマーカー遺伝子であるホタルルシフェラーゼが発現していることが明らかになった。
性周期・妊娠
  • 高橋 啓人, 羽田 真悟, 松井 基純
    セッションID: P-85
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/10
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    【目的】黄体の存在する卵巣と同側の子宮角(同側角)に胚移植を行うと,受胎率が高い事が知られている。また,子宮内膜組織中プロゲステロン(P4)濃度は同側角で高いことが知られている。P4は妊娠成立に重要な役割を担っており,同側角は黄体の存在する卵巣と反対側の子宮角(反対側角)と比較して,受胎に適した環境を有していると考えられる。マウス子宮内膜においてPGRMC1の発現は,P4によりその発現量が変化し,細胞の機能や形状の周期的変化に影響を与えていると考えられている。一方,ウシ子宮内膜におけるPGRMC1の発現と機能については知られていない。本研究では,発情周期におけるウシ子宮内膜組織中P4濃度とPGRMC1発現を調べ,同側角と反対側角を比較した。【方法】と畜場由来の子宮を,卵巣の形態に基づき3つの時期(黄体形成期・黄体開花期・卵胞期)に分類した。さらに,機能的黄体あるいは退行黄体の存在する卵巣と同側角および反対側角に分類した。それぞれの子宮内膜を採取し,子宮内膜組織中P4濃度(内膜P4濃度)と,PGRMC1のmRNA発現を調べた。さらに,TUNEL法を用い,子宮内膜におけるアポトーシスの発現を調べた。【結果】同側角では,形成期において,内膜P4濃度およびPGRMC1のmRNA発現が高かった(p<0.05)。また,内膜P4濃度とPGRMC1のmRNA発現には正の相関(r=0.83,p<0.01)が認められた。一方,反対側では,内膜P4濃度およびPGRMC1のmRNA発現に,発情周期による差異は見られなかった。同側角において,形成期に子宮内膜細胞のアポトーシス発現が低い傾向が認められた。【考察】同側角では,子宮内膜組織中P4濃度とPGRMC1発現は形成期に高く,両者に正の相関が認められたことから,PGRMC1を介したP4によるアポトーシス抑制などの機能が増強されていると考えられた。また,P4によりPGRMC1発現が亢進している可能性が示された。
  • 徳山 翔太, 香西 圭輔, 登石 裕子, 角田 修男, 田谷 一善, 阪谷 美樹, 高橋 昌志, 南保 泰雄, 奥田 潔
    セッションID: P-86
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/10
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    【目的】哺乳類において子宮で産生されるPGFは主要な黄体退行因子である。最近,私達はウシ子宮内膜においてPGFがPGF産生を自己増幅的に促進することを報告した。ウマでは,ウシと比較し少量のPGF投与でも黄体が退行することから,我々はウマ子宮にPGF自己増幅機構が存在しているという仮説を立て,この仮説を証明するため以下の実験を行った。【方法】1)中期黄体を有するウマにPGF類縁体のEstrumate (d,l-cloprostenol: 250 mcg/ml)を1 ml投与した。投与から3日目まで定期的に採血し,血液中progesterone (P4)濃度および血清中PGF metabolite (PGFM)濃度を測定した。2)発情周期を通じた子宮内膜組織におけるPGF receptor (FPr) mRNA発現量を調べた。3)子宮内膜組織および上皮細胞,間質細胞にPGF (0.1 μM)およびPGF合成酵素阻害剤のindomethacin (Indo: 10 μM)を単独または組み合わせて添加し2時間培養した。組織片および細胞を洗浄後,培養液を交換し,2時間培養後の培養上清中PGF濃度を測定した。4)子宮内膜上皮細胞および間質細胞にPGF (0.1 μM)を添加し4時間培養後,上皮細胞および間質細胞におけるPGF関連遺伝子発現量を調べた。【結果】1)血液中P4濃度はEstrumate投与2時間後に半減し,投与24時間後で約1/10量まで減少した。血清中PGFM濃度はEstrumate投与45分後に一過性の上昇を示し,投与16時間以降はピークよりも高い値を示し続けた。2)黄体後期の子宮内膜組織のFPr mRNA発現量は黄体初期および退行期と比較し高かった。3)子宮内膜組織および上皮細胞,間質細胞においてPGF添加によりPGF産生が刺激された。また,IndoはPGF添加によるPGF産生刺激作用を抑制した。4)子宮内膜上皮細胞および間質細胞においてPGFはcyclooxygenase (COX)-2 mRNA発現を刺激した。COX-2はPGF合成酵素の一つのため,ウマ子宮においてPGFはCOX-2発現を増加させることでPGF産生を刺激していると考えられる。本研究の結果より,ウマにおいて少量のPGF投与でも黄体が退行する理由は,子宮にPGF自己増幅機構が存在するためと推察される。
  • Jinghui LIU, Rasoul KOWSAR, Mohamed Ali MAREY, Nina HAMBRUCH, Shingo H ...
    セッションID: P-87
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/10
    会議録・要旨集 フリー
    The oviduct supplies a suitable microenvironment for sperm capacitation and fertilization. Pathogens and endotoxins can invade the oviduct via the uterus, peritoneal cavity and follicular fluid. We recently showed that bovine oviduct epithelial cells(BOEC) keenly respond to proinflammatory stimulus thereby regulating the balance of Th1 and Th2 cytokines. We describe here a novel local production of AGP, a major acute phase protein mainly secreted from the liver, in bovine oviduct, and the existence of PMN in oviduct fluid at high concentration. The aim of the present study is to investigate 1) PMN in oviduct fluid, 2) IL-8 expression, a major chemoattractant to PMN, in the oviduct by IHC, 3) a local production of AGP in BOEC, 4) the action of AGP on BOEC in regulating Th1 vs. Th2 balancing, and 5) a direct effect of AGP on PMN phagocytosis to the capacitated sperm. PMN were found in oviduct fluid and oviduct tissue as confirmed with histology and Giemsa staining. Number of PMN in oviduct fluid was stable over the estrous cycle. IL-8 was intensively stained in BOEC of ampulla, but lesser in isthmus. AGP was detected by ELISA in the oviduct fluid and BOEC culture supernatant at concentration of 10% of serum. In BOEC culture, AGP (1–1000 ng/ml) induced mRNA for Th2 cytokines IL-4 and IL-10 whereas inhibited Th1 cytokine TNFa. Moreover, AGP (1–100 ng/ml) dose-dependently suppressed PMN phagocytosis to capacitated sperm in vitro. Overall, the findings strongly suggest that PMN migrate into the oviduct fluid by IL-8, and that a local produced AGP in the oviduct induces Th2 balancing in BOEC, and directly inhibits PMN phagocytosis to sperm, indicating a novel role of AGP in oviduct physiology.
  • 林 憲悟, 作本 亮介, 細江 実佐, 木崎 景一郎, 橋爪 一善, 高橋 透
    セッションID: P-88
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/10
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】リピートブリーダー牛(RB牛)は,「生殖器,発情周期,臨床徴候に異常を認めないが3回以上授精しても妊娠しない牛」と定義される。空胎日数の延長は生産性低下に直結するが,抜本的な解決策は見出されていない。本研究は,RB牛および正常に受胎する牛(正常牛)の黄体期における子宮内膜の遺伝子発現動態を,マイクロアレイを用いて網羅的に解析し,ウシ子宮内膜において受胎性に関わる遺伝子を探索することを目的とした。【方法】本研究所で飼養された黒毛和種経産牛のうち,正常に発情周期を回帰するが3回以上人工授精(AI)しても不受胎だった個体をRB牛とした(4頭)。正常牛(4頭)は,AIから30日目に超音波診断装置で受胎を確認して人工流産させた後,発情周期を2回以上回帰させた。各牛群は発情周期の15日目(発情日=0日)にと殺し,黄体側と非黄体側子宮角の子宮小丘および子宮小丘間内膜を採取した。組織から総RNAを抽出後,15kウシオリゴDNAマイクロアレイにより遺伝子発現を解析し,データマイニングソフト(GeneSpring GX)を用いてバイオインフォマティクス解析を行った。【結果】RB牛の子宮小丘における遺伝子発現は,黄体側では正常牛と比較して高発現な128遺伝子と低発現な277遺伝子が同定され,非黄体側では,高発現な333遺伝子と低発現な110遺伝子が同定された。これらの遺伝子のうち,RB牛で最も発現の高かった既知遺伝子は,有害物質の無毒化や排泄に関与する酵素であるGlutathione S-transferase A3であった。一方,RB牛の子宮小丘間内膜における遺伝子発現は,黄体側では正常牛と比較して169遺伝子が高発現で,228遺伝子が低発現であり,非黄体側では,121遺伝子が高発現で136遺伝子が低発現であった。以上より,RB牛の子宮内膜では正常牛と比較して特異的に発現が変化している遺伝子の存在することが明らかとなり,これらの遺伝子発現動態が不受胎と関連している可能性が示された。
  • 菊地 美緒, 松田 秀雄, 茂野 智子, 橋谷田 豊, 今井 敬, 平田 統一, 木崎 景一郎, 橋爪 一善
    セッションID: P-89
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/10
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    【目的】授精後ウシ末梢血顆粒球には,妊娠情報に関連する遺伝子群が発現することから,血中遺伝子発現動態を検出することにより妊娠成立の予知が可能である。その由来は,胚の栄養膜細胞が産生,分泌する妊娠認識シグナルであるインターフェロンτ(IFNT)と考えられている。末梢血球には多数の遺伝子情報が含まれており,直接IFNTと関連しない遺伝子群の妊娠成立過程との関わりは明らかでない。本研究では,マイクロアレイにより得た末梢血白血球中に発現する遺伝子データを精査し,既知のIFNT関連遺伝子の他に妊娠の成立と関わる遺伝子が存在するかを検討した。【材料及び方法】人工授精当日(AI0),受精後21日(AI21),胚移植日(ET7),移植後14日(妊娠21日に相当,ET21),ET24に白血球を採取,遺伝子発現を解析したマイクロアレイデータを用い,関連する遺伝子を抽出した。抽出した遺伝子の発現動態をAI0, AI14, AI21, ET7, ET14, ET21及びET24の各日に採取した顆粒球中の遺伝子発現をRT-PCR並びにQRT-PCRにより検証した。【結果】マイクロアレイデータから,AI0と比較してAI21で末梢血白血球中に発現が上昇したのは24遺伝子,ET7と比較してET21で発現が上昇したのは213遺伝子であり,両者で共通して発現が上昇したのは7遺伝子であった。その遺伝子群にはOAS1及びISG15が含まるが,他はこれまで未検証の遺伝子であった。既知のISG15, MX1, MX2及びOAS1の4遺伝子の検証ではAI21, ET24から妊娠判定が可能であり,早期胚死滅が疑われる事例でも4遺伝子による判定が可能であった。新規ESTの検証では,妊娠21日において2遺伝子の上昇を認めた。以上のことから,末梢血白血球中には,IFNTに関連する既知の4遺伝子以外にも妊娠成立に伴い発現が上昇する遺伝子の存在することが示唆された。
  • 越 勝男, 古澤 軌, 徳永 智之, 木崎 景一郎, 橋爪 一善
    セッションID: P-90
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/10
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    【目的】ウシ胚は,妊娠16日頃から,妊娠認識物質としてInterferon tau (IFNT)を分泌することが知られている。しかし,現在のところ,簡便に利用できるバイオアッセイは存在しない。我々はアッセイ系の確立のため,IFN応答性遺伝子であるISG15 ubiquitin-like modifier (ISG15)およびindoleamine 2,3-dioxygenase 1 (IDO1)の上流配列についてIFN応答能を検証した。
    【方法】排卵後1–4 日の黒毛和種ウシ子宮内膜から樹立した線維芽細胞 (間質細胞)を遺伝子導入に用いた。ルシフェラーゼ遺伝子上流にウシISG15およびIDO1上流配列 (-1127–+75,-1275–+24)およびその欠失配列を組込んだベクターを作成し,細胞に導入した。培養液に組換えウシIFNT,IFNαもしくはIFNγを添加し,12時間培養後,発光量の変化を検討した。
    【結果】 ISG15上流配列導入細胞では,全てのIFNに反応し発光量が上昇した。このうちISG15 (-1127–+72)を導入した場合が最も発光量が高く,-1127–-528 間の欠失により発光量は減少した。一方,IDO1 上流配列を導入した細胞ではIFNγ添加時に,特異的な発光を認めた。その発光量は-1275–-346 および-212–-183 間の欠失により減少した。これらの結果より,ウシISG15ではInterferon-stimulated response element (ISRE) (-74–-87および-80–-93)およびISRE類似配列 (ISRE like element) (-843–-856)がIFNT,IFNαおよびIFNγの応答に,IDO1ではISRE (-106–-119)およびISRE like element (-192–-205および-493–-506) がIFNγの応答に関与していることが示唆された。
生殖工学
  • 堀田 章徳, 山本 彩子, 後藤 哲平, 平林 真澄, 前多 敬一郎, 大森 保成, 本道 栄一, 井上 直子
    セッションID: P-91
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/10
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    【目的】遺伝子改変マウスやラットを用いた生理機能解析は,生命現象の解明に大きく貢献している。しかし,マウスやラットで欠失した遺伝子の機能を解析するには,その遺伝子を保持している実験動物を用いる必要がある。我々は無盲腸目 (旧食虫目) に属する唯一の実験動物であるスンクス (Suncus murinus) において遺伝子改変動物の作出を目指している。本研究では遺伝子改変動物作製に必要な基礎的技術としてスンクスにおける過剰排卵誘起,体外受精および胚移植の確立を目的とした。【方法】実験には8週齢以上の雌スンクスを用いた。過剰排卵を誘起するために,妊馬血清性性腺刺激ホルモン (PMSG) とヒト絨毛性性腺刺激ホルモン (hCG) を72時間間隔で腹腔内投与した。投与量はそれぞれ5.0,7.5,10 IUとし,hCG投与後すぐに雄と交配した。hCG投与後30時間に採卵し,排卵数,卵丘細胞の有無,受精率を確認した。体外受精においては,精巣上体尾部より採取した精子をTYH培地にて3時間培養して受精能を獲得させ,卵丘‐卵子複合体を加えて発生を観察した。胚移植においては,hCG (10 IU) 単独投与またはhCG投与後精管結紮した雄と交配して偽妊娠を誘起し,受精卵を移植して産子を確認した。【結果】交尾排卵による排卵数と比較し,過剰排卵誘起では7.5 IU,10 IU投与群で排卵数 (19.0±10.8個,22.0±9.4個) が増加したが,個体差が大きく,受精率はいずれも10%以下と低かった。体外受精では,媒精後24時間に2細胞期胚へと発生が進み,スンクスにおいても体外受精が可能であることが明らかとなった。胚移植においては,hCG単独投与群,hCG投与後精管結紮した雄と交配した群どちらにおいても産子を得ることに成功した。以上のことより今後,過剰排卵誘起により得られた未受精卵を体外受精させ,マイクロインジェクション法による遺伝子改変スンクスの作製が可能であると示唆された。
  • 金子 武人, 真下 知士
    セッションID: P-92
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/10
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    【目的】近年,ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)やTALエフェクターヌクレアーゼ(TALEN)を利用したゲノム編集技術が開発された。ラットにおいては,この技術を用いることで,これまで作製が困難であったノックアウト系統をES細胞を使用せずに簡易かつ短期間で作製できるようになった。本研究では,ZFNおよびTALENを用いたノックアウトラットの作製効率について検討したので報告する。【方法】X連鎖重症複合免疫不全症(X-SCID)の原因遺伝子であるインターロイキン2受容体γ鎖(Il2rg)遺伝子を標的遺伝子としてZFNおよびTALENプラスミドを構築した。これらプラスミドからZFN/TALEN mRNAを合成し,PMSG-hCGによる過剰排卵処理後,自然交配により採取したラット前核期胚へ導入した。導入後の胚は,体外培養し翌日2細胞期に発生した胚を偽妊娠雌ラットの卵管内に移植することで産子にまで発生させた。【結果および考察】ZFNを導入した胚においては,得られた産子の33%に遺伝子欠損が認められた。一方,TALENを導入した胚においては,得られた産子の全てに遺伝子欠損が認められた。また,別の遺伝子を標的したTALENを導入した胚から得られた産子においては,その50%に遺伝子欠損が認められた。本研究成果より,ZFN/TALENはラット胚内でも十分機能することが明らかとなり,簡易かつ短期間でノックアウト系統が作製できることが明らかとなった。今後,本方法を用いて作製されたノックアウトラットが,様々な研究分野で利用されることが期待される。
  • 平林 真澄, 田村 千尋, 後藤 哲平, 三宝 誠, 保地 眞一
    セッションID: P-93
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/10
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    【目的】MEK阻害剤とGSK3阻害剤を含む2i培地でラット胚盤胞を培養すれば,ES細胞株を樹立することができる。数報の公表論文に基づく限りラットES細胞株の樹立にとってLIFは必須ではなさそうだが,ヒトやブタではフォルスコリンの添加によりコロニーがNaïveになるという。本実験ではフォルスコリンの2i培地への添加がラットES細胞株の樹立に関わるいくつかの指標にどう影響するか,検討した。 【方法】2i培地 (1 μM PD0325901+3 μM CHIR99021) への10 μM フォルスコリン (F) と1,000 U/ml ラットLIF (L) のそれぞれの添加の有無により,計4実験区 ([-][-]区,[-][L]区,[F][-]区,[F][L]区) を設定した。(1) BLKラット胚盤胞のOutgrowth,(2) 継代5代目までの維持,(3) WIラット胚盤胞への顕微注入によるキメラ個体の作製効率,(4) 生殖系列への寄与,の各指標について比較した。 【結果】(1) Outgrowth率は,[-][-]区,[-][L]区,[F][-]区,[F][L]区でそれぞれ,62,88,90,100%となり,F and/or Lの添加区で高かった。(2) P5までの継代維持率は81,87,100,100%だった。(3) 産仔当たりのキメラ誕生率は,44,61,57,71%だったが,注入胚当たりでは25,39,28,14%となり,[F][L]区で真逆の傾向となった。(4) 生殖系列への寄与率,すなわち有色毛のG1産仔例を生じたキメラの割合は,53,55,23,63%だった。結論として,フォルスコリンはラットES細胞株の樹立に有効だが必須ではなく,キメラ作製や生殖系列寄与の効率には影響しなかった。
  • 森田 ひろみ, 田中 舞弥, 佐伯 佳美, 堀内 俊孝
    セッションID: P-94
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/10
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    【目的】体内では,LHサージに伴い,卵丘細胞のcAMP濃度は急激に増減する。体外成熟(IVM)では,卵子のcAMP制御が発生能に影響する。そこで,本研究では,cAMP量を増加させるforskolin (FSK)とcAMP分解酵素ホスホジエステラーゼの阻害剤IBMXによるIVM前培養(pre-IVM)が核成熟,紡錘体形態,体外受精(IVF)後の胚発生に及ぼす影響を調べた。【方法】3週齢ICR雌マウスにPMSG投与後48hに未成熟卵子を採取した。pre-IVM区では50 μM FSK+50 μM IBMXで1h前培養を行い,cIVM区では前培養をしない,通常のIVMとした。IVM培地はαMEM+0.3% BSA+0.1% fetuin+5 ng/ml EGFとした。紡錘体はLC-PolScopeで観察した。[実験1]GVBD率とMII率の経時的な推移を調べた。[実験2]MII期の紡錘体面積を調べた。[実験3]IVM後15,21hのIVFによる胚発生を調べた。【結果】[実験1]cIVM区とpre-IVM区におけるIVM後1,2,3h のGVBD率は,各88,96,90%と各27,85,97%となり,pre-IVM区ではGVBDが遅くなった。IVM後7,9,11,13h のMII率は,各0,81,93,100%と各3,79,100,100%となり,同様であった。[実験2]cIVM区とpre-IVM区におけるIVM後15,18,21hにおける紡錘体面積は,各179,183,194 μm2と各156,164,172 μm2となり,pre-IVM区の紡錘体面積は小さく,排卵卵子の紡錘体面積158 μm2と同様であった。[実験3]cIVM区とpre-IVM区におけるIVM後15,21hの胚盤胞率は各29,9%と各41,10%となり,15hではpre-IVM区の胚盤胞率が有意に高かった。【結論】FSK+IBMXのpre-IVMを行うことで,MII期の紡錘体面積は小さくなり,IVF後の胚盤胞率も高くなった。
  • 持田 慶司, 長谷川 歩未, 渡辺 元, 田谷 一善, 小倉 淳郎
    セッションID: P-95
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/10
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    【目的】過排卵の困難な野生由来マウス系統では,抗インヒビン血清の投与が効果的であることを本大会で報告してきた(2011–2012年)。その中で,Mus. M. molossinusに属するMSM/MsおよびJF1/Ms系統は,性成熟直前の5–7週齢でeCG投与の4–6倍にあたる排卵数のピークが見られた。しかし,他の系統で投与の適期が異なるケースも見られたことから,各系統における最適な週齢の検討を行った。【材料と方法】動物Mus musculusに属する5亜種の34系統,Mus spretus およびMus spicilegusに属する5系統を用いた。過排卵処置:主に5~9週齢の雌マウスにヤギ抗インヒビン血清(0.1ml/匹)またはPMSG(5IU/匹)を腹腔内投与し,48時間後にhCG(7.5IU/匹)を投与,約17時間後に採卵を行った。採卵では,卵管膨大部もしくは卵巣嚢内に排卵された卵子と,卵巣の卵胞内に残存している成熟卵子をそれぞれ集めた。体外受精:採取した卵子を入れたHTFまたは1.25mM還元型グルタチオン添加HTF液内へ,0.4 mM methyl-β-cyclodextrin を添加したPVA-HTFで1時間前培養した同系統の雄由来精子を導入して行った。4~6時間後に異常卵子数を数え,形態的に正常な卵子のみをグルコース添加CZBに移して,1晩培養を行った。卵子数のカウント:体外受精翌日の午前中に,受精卵(2-cell),形態的に正常な未受精卵子,異常卵子数をカウントした。【結果】抗インヒビン血清またはPMSG投与による効果は,6週齢での採卵数を比較することで各系統に効果的な誘起排卵方法を判別しやすかった。抗インヒビン血清における排卵数は,5–7週齢に多い系統が顕著であったが,ピークが分かり難い系統や8–9週齢もしくはそれ以降で多い系統も見られた。以上より,これら野生由来系統の過排卵には系統ごとに効果的な投与法および週齢を考慮することが重要と考えられた。
  • 長谷川 歩未, 持田 慶司, 小倉 淳郎
    セッションID: P-96
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/10
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    【目的】微小滴内で体外受精を行うことで,最少精子数でも効果的に受精卵を獲得する手法を考案した。一般的なマウス体外受精には数万~数十万の精子数が必要となることから,精子形成異常のマウス系統や凍結された精子など,十分な精子数を確保できない場合に有効であると考えられる。【材料と方法】動物:C57BL/6JおよびC57BL/6N系統の,それぞれ12週齢以上の成熟雄および5または10週齢の雌を用いた。過排卵処置:雌マウスにPMSG(7.5IU/匹)を腹腔内投与し,48時間後にhCG(7.5IU/匹)を投与,約17時間後に採卵して体外受精に用いた。精子凍結:18%ラフィノース+3%スキムミルク水溶液に精巣上体尾部精子を拡散後,ストローへ封入して液体窒素の気相で凍結した。融解は37℃温浴で行い,15分後に回収した。体外受精:採取した卵子はHTFまたは1.5 mM還元型グルタチオン(GSH)添加HTFで約1時間培養後,各1 μℓの微小滴にキャピラリーを用いて卵子1,3,5,10個を移した。精子前培養はHTFおよび0.4 mM methyl-β-cyclodextrin を添加したPVA-HTFで30分~1時間行い,各微小滴にキャピラリー(内径100 μm)を用いて前進運動性を示す5,10,20,50精子をカウントしながら導入した。4~6時間後にグルコース添加CZBに卵子を移し,培養試験に供した。 【結果】受精用培養液へのGSH添加が受精率を改善し,卵子1または3個に対して5精子を導入した場合でも受精した。新鮮精子では卵子数1~5個の場合,20精子以上導入することで両系統とも60%以上,凍結精子でもC57BL/6JとC57BL/6N系統でそれぞれ60%および78%までの受精率が得られた。更に通常の方法で約30%と低率を示した凍結精子からも,微小環境で同等の受精率を得ることができた。本実験から,微小環境で体外受精を行うことで,通常の体外受精に必要な1/1000以下の精子量で受精卵の獲得が可能となった。
  • 水谷 英二, 若山 清香, 岸田 佳奈, 若山 照彦
    セッションID: P-97
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/10
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    【目的】哺乳動物の生殖細胞保存技術は畜産,医療,基礎生物学分野さらに生物種の保全など多くの分野で利用されている重要な技術である。我々が開発したマウス精子の凍結乾燥保存方法は,精子を液体窒素や冷凍庫なしでも1か月以上,–80℃では長期保存可能であり,サンプルの輸送も簡便であるため,新規生殖細胞保存法としての利用が期待される。ところが凍結乾燥精子を顕微授精した場合,産仔率が新鮮精子と比べて非常に低いという問題がある。そこで本研究では凍結乾燥精子で受精した胚の初期発生過程をライブセルイメージング解析し,発生停止の原因を探った。 【方法】複数のBDF1マウスから精子を採取し,個体別に凍結乾燥精子を作成した。初めにこれらの精子を顕微授精して個体間の産仔率の違い調べた。次に高い産仔率だったもの(BDF1–1)と,産仔が1匹も得られなかったもの(BDF1–2)を選んで顕微授精し,前核期にH2B-mRFP1のmRNAを注入後,ライブセルイメージングにより観察を行った。一部の胚は発生促進を期待して人為的に活性化し,同様にライブセルイメージングにより観察した。また新鮮精子の顕微授精胚をコントロールとして用いた。 【結果】イメージング解析に用いたサンプルBDF1–1および2の産仔率はそれぞれ22%と0%であった。ライブセルイメージングの結果,産仔率によらず凍結乾燥精子で受精した胚は新鮮精子を用いた場合と比較して第一卵割までにかかる時間が長く,各胚間でのばらつきも多かった。凍結乾燥精子由来胚では第一卵割での染色体分配異常が新鮮精子 (7%)と比べて非常に多く,BDF1–1が78%, BDF1–2では87%で両者の間に有意な差はなかったものの産仔率が高いもので少ない傾向があった。人為的活性化刺激を加えた胚では染色体分配異常が増える傾向が見られた(BDF1–1 88%, BDF1–2 100%)。以上より,第一卵割における染色体分配異常が凍結乾燥精子の発生停止の原因であり,この頻度が産仔率に影響していることが示唆された。
  • 野老 美紀子, 山中 香織, 寺下 愉加里, 福永 憲隆, 浅田 義正, 若山 照彦
    セッションID: P-98
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/10
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    【目的】一般的に初期胚の輸送には,ガス濃度,温度および湿度等を最適な状態に維持するためにCO2インキュベーターの機能を搭載した輸送器が用いられる。しかしながら,それらの輸送器は大きくて重いだけでなく,精密な培養環境を維持するため高価な装置となっている。そこで本研究では,初期胚の輸送の簡便化を目的に,新しい初期胚輸送方法の検討と宅配便で常温輸送したマウス胚から産仔の作出を行った。【方法】新しい簡易輸送法には,我々が開発した小型のバッテリー式恒温器を使用した。この恒温器内では胚をマイクロチューブ(tube)内で培養するため,まずマウス胚がtube内で発生するのか検討した。体外受精由来の前核期胚を製造会社,生産ロットおよびサイズの異なるtube(0.2mL,0.5mLおよび1.5mL)に移した後,インキュベーター内で培養し,その後の胚発生および産子率を検討した。またtube内の培養液におけるガス濃度を調整するため,tubeの蓋に穴を開け,ガス透過膜を挟み,ガス透過が胚発生に与える影響を検討した。Tubeでの胚培養検討の後,小型恒温器に前核期胚を入れたtubeを移し,4日間宅配便による常温輸送を行い,輸送後の胚を雌マウスに移植した。通常のCO2インキュベーターで培養した胚を対照区とした。【結果】Tube内で胚を培養した結果,培養前にtubeを洗浄せずに前核期胚を入れ培養を行うと,洗浄した場合と比較して胚盤胞期までの発生率が低下した。また検討したtubeのうち,0.5mL tubeで最も高い胚盤胞形成率および産子率を得た。Tubeの蓋を完全に閉めて培養した場合,対照区に比べ胚盤胞期の細胞数は有意に減少した。しかしtubeの蓋にガス透過膜を挟むと,発生率および細胞数は対照区と同等の高い成績が得られた。前核期胚を宅配便にて常温輸送し,4日目に届いた胚盤胞期胚を移植した結果,ガス透過膜を使用した区では対照区(36.7%)と同等の産子率(36.4%)を得た。【考察】マウス胚は,従来の精密で高価な大型輸送器を使用しなくても輸送が可能であることが明らかになった。この輸送方法は,胚の簡単で低コストな輸送手段として使用できると考えられる。
  • 松下 淳, 加藤 容子
    セッションID: P-99
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/10
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    【目的】クローン胚を移植後の受胚雌は,妊娠の成立・維持に必要なホルモンの血中濃度が異常になることが報告されている。我々は,クローン胚を移植後,受胚雌にhCGまたはプロラクチンを投与,受精卵と共移植,免疫抑制剤を投与すると,発生能が若干改善されたことを報告しているが(第54回日本卵子学会など),妊娠中期以降の発生能は低いままである。そこで本研究では,マウスにおいて妊娠中期以降の黄体機能維持に働くPlacental Lactogen (PL)を受胚雌に投与することでクローン胚の体内発生能が向上するか否か検討を行った。また,血中プロゲステロン濃度を測定した。【方法】過剰排卵処置を施したBDF1雌マウスをICR雄マウスと交配させ,hCG投与20時間後に前核期受精卵を回収した。同様に,hCG投与14~15時間後にMⅡ期卵を回収し,除核したものをレシピエント卵とした。卵丘細胞をドナー細胞核とし,直接注入法を用いて核移植を行った。その後,クローン胚に活性化を付与し,2細胞期まで体外培養を行い,翌日,得られた受精卵由来2細胞期胚と核移植由来2細胞期胚を受胚雌の異なる卵管に移植した。次いで,偽妊娠9.5日目~17.5日目の期間,0.15,0.3,0.6 μg/g ヒツジ由来PL(oPL)を24時間間隔で毎日筋肉内投与を行い,18.5日目に開腹検査を行った。また,受胚雌の血中プロゲステロン濃度はEIA kit (Cayman)を用いて測定した。【結果】偽妊娠9.5–17.5日目まで受胚雌にoPLを投与したところ,クローン胚の着床数・胎子数に各濃度間で大きな差は認められなかった。一方,得られた生存胎子の体重を測定したところ,対照区と比較して有意に重い値となった(1.372g (対照区) vs. 1.758g (0.3 μg/g),1.819g (0.6 μg/g))。また,共移植を行った受精卵でも,着床数・胎子数に差は認められなかったが,生存胎子の体重は対照区と比較して有意に重い値となり(1.499g (対照区) vs. 1.767g (0.6 μg/g)),oPLが母体内で成長ホルモン様の働きをしたと推測できる。なお,受胚雌の血中プロゲステロン濃度は現在検討中である。
  • 大日向 康秀, 築山 智之
    セッションID: P-100
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/10
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    【目的】マウスにおいて生殖細胞系列は胚発生初期に多能性幹細胞集団であるエピブラストから始原生殖細胞として体細胞系列から分岐し,成体においてそれらは精子・卵形成過程に貢献する。これら全過程を生体内及び試験管内で可視化する目的でCAG-TagRFP, stella-EGFP, Acr-EGFPの三重蛍光レポーター遺伝子導入マウス系統を作製した。【方法】全身で発現するCAG-TagRFP遺伝子,始原生殖細胞及び卵母細胞で発現するstella-EGFP遺伝子,精子細胞及び精子で発現するAcr-EGFP遺伝子をコードするDNA断片をそれぞれ雄性前核に注入し,遺伝子導入マウス系統を作製,その後交配によって三重遺伝子導入マウス系統を樹立した。さらにこれらマウスの胚盤胞より雌雄のES細胞株を,胎仔繊維芽細胞より雌雄のiPS細胞を樹立した。【結果】CAG-TagRFPは遺伝子導入マウスのほぼ全身で発現が認められた。stella-EGFPは胎仔期においては始原生殖細胞で,卵形成過程においては始原卵母細胞から成熟MII卵母細胞で特異的な発現が認められた。Acr-EGFPは精子形成過程において円形精子細胞からアクロソームに特異的に局在し,精子細胞及び精子で特異的発現を示した。これらレポーターを持つES/iPS細胞からは試験管内において始原生殖細胞様細胞の誘導が可能であった。【考察】本レポーターによってマウス生殖細胞系列の全発生過程を生細胞として可視化する事が可能となった。本レポーターは生殖細胞系列形成過程の詳細な理解と試験管内における全生殖細胞形成過程の再構築に有用である。
  • 藤井 渉, 川崎 紅, 杉浦 幸二, 内藤 邦彦
    セッションID: P-101
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/10
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    【目的】近年,細菌や古細菌の獲得免疫機構であるCRISPRが真核細胞ゲノム配列の改変に有効であることが報告されている。しかし,哺乳類における報告は少なく,その効率や最適条件の検討は不十分である。本研究では,CRISPR構成因子であるCAS9ヌクレアーゼおよび人工設計したguide RNA(gRNA)からなるCAS9/gRNAシステムの発生工学ツールとしての最適化を試み,マウスにおいて複数ゲノム改変および大規模ゲノム欠損に利用可能であるかを検討した。【方法】2種類の異なるgRNA(long型,short型)をRosa26座位の同一の標的配列に対して設計し,マウス初期発生過程での変異導入効率を比較した。また,受精卵へのCAS9 mRNAおよびgRNAの導入濃度について検討した。最適条件において,同一染色体上の10kb離れた2ヶ所の座位に,同時に変異が導入可能であるか,また得られた産子に導入された変異が次世代へ伝達されるかを調べた。【結果】同一配列に対するlong型/short型gRNAの効率比較を行った結果,マウス初期発生においてlong gRNAが極めて高い変異導入活性を示した。CAS9 mRNAとgRNAを10μg/ml以上の濃度で受精卵へ導入した場合は胚移植で得られたほぼ全ての産子で変異が認められた。2つのgRNAの共注入により同一染色体上の2ヶ所の標的配列の同時破壊を試みた結果,高効率(89%)に2ヶ所両方へ変異が導入され,更に33%の産子では約10kbの標的配列間が削除された大規模な欠損が認められた。また,これらの変異は次世代個体に伝達された。以上より,最適化されたCAS9/gRNAシステムはゲノム改変マウス作製のための非常に有効な発生工学ツールとなることが明らかとなった。
  • 若山 照彦, 幸田 尚, 小保方 晴子, 野老 美紀子, リ チョン, 寺下 愉加里, 水谷 英二, グェン ヴァン トン, 岸上 哲士, ...
    セッションID: P-102
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/10
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    【目的】哺乳動物のクローン作出は,優良家畜の大規模な生産や絶滅危惧種の保全を可能にする新しい技術として期待されてる。しかし現在の成功率では一度に大量のクローン動物を作ることは出来ないため,クローン動物の体細胞から再びクローン動物を作り出す連続核移植(再クローニング)技術が必要だと考えられていた。ところがこれまでの報告では,再クローニングを繰り返すごとに出産率は低下し,マウスで6世代,ウシやネコで2世代までが限界だった。この原因は,クローン技術特有の「初期化異常」が,核移植を行うたびに蓄積するためと考えられていたが,成功率が低すぎるため検証できていなかった。そこで今回我々は,最新の技術を用いて再クローニングに限界があるのか確かめてみた。 【方法】我々は2005年にトリコスタチン A(TSA)が初期化を促進し,クローンマウスの出産率を大きく改善できることを発見した。そこでTSAを用いて1匹のドナーマウス(BD129F1)からクローンマウスを作り(G1と呼ぶ),このクローンマウスが3カ月齢になった段階で再びクローンマウスを作製した(これをG2と呼ぶ)。以降これを繰り返した。生まれた再クローンマウスについて,テロメアや妊性,網羅的遺伝子発現などを調べ,自然マウスおよびG1クローンマウスと比較し,エピジェネティック異常が蓄積されるか調べた。 【結果】現時点で27世代,合計645匹のクローンを作ることに成功している。核移植の出産率は1世代目の7%から上昇傾向を示し,最高で15%を記録している。G20クローンの繁殖能力,寿命,テロメアの長さなどに異常は見られなかった。また網羅的遺伝子発現解析により核移植を繰り返しても初期化異常は蓄積しないことが明らかとなった。これらの結果は,再クローニングはほぼ無限に繰り返せることを示している。Wakayama et al., Cell Stem Cell 2013.
  • 郡山 実優, 稲田 絵美, 齋藤 一誠, 三浦 浩美, 大塚 正人, 中村 伸吾, 桜井 敬之, 渡部 聡, 三好 和睦, 佐藤 正宏
    セッションID: P-103
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/10
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    [目的]一個の細胞に複数個の遺伝子を導入することは,それに由来するクローン家畜の改良,生物学の基礎原理を解明する上で重要な手法である。特に,ブタゲノムへの複数遺伝子の導入は,異種移植用のブタを開発する上で重要である。しかしながら,プラスミドDNAの遺伝子導入に基づく現行法では,この課題を解消することは非常に難しい。トランスポゾンPiggyBacシステムは,マウスやヒトの細胞で一回の遺伝子導入で複数遺伝子をそのゲノムに挿入することが知られている。しかし,このようなシステムをブタ細胞に適用した例はこれまで報告されていない。今回,Clawn系ミニブタ由来繊維芽細胞(PEFs)に7個の遺伝子構築体を同時に導入することを試みた。[方法]PEFs (2 × 105個) に5種の薬剤耐性遺伝子を含むトランスポゾンベクターと2種の蛍光遺伝子を含むトランスポゾンベクターとをPiggyBacトランスポザーゼ(transposase)発現ベクターと共にLonza社の電気穿孔に基づく遺伝子導入システムを用いて遺伝子導入した(実験区)。上記成分からトランスポザーゼ発現ベクターを除いたものを対照区とした。[結果]導入後1日目で,細胞の蛍光を観察した結果,両者での遺伝子導入効率の差はなかった。しかし,その後の複数の薬剤による選別では,実験区では幾つかの生存コロニーを確認したが,対照区では皆無であった。生存コロニーから得たゲノムDNAのPCR解析では,90%ほどのコロニーで導入に用いた7個の遺伝子構築体の存在を確認した。また,当該細胞では赤,緑蛍光の同時発現が認められた。この複数個の遺伝子を内包する細胞は選択用薬剤非存在下で3ヶ月培養しても薬剤耐性の性質は変わらなかった。[結論]以上の結果は,トランスポゾンPiggyBacシステムはブタ細胞への複数個遺伝子の同時導入に有効であることを示す。このシステムと核移植を用いれば,複数個の遺伝子をもつクローンブタの開発が加速するものと期待される。
  • 林田 豪太, 渡邊 將人, 松成 ひとみ, 中野 和明, 金井 貴博, 小林 美里奈, 松村 幸奈, 倉本 桃子, 坂井 理恵子, 浅野 吉 ...
    セッションID: P-104
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/10
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    【目的】細胞周期可視化蛍光プローブFucci (Fluorescent Ubiquitination-based Cell Cycle Indicator)の開発により(Sakaue-Sawano et al.,2008),発生や再生における形態形成,癌の浸潤や転移など細胞増殖が関わる動的メカニズムを細胞周期情報と同時にリアルタイムで観察する事が可能となった。Fucciを発現するブタは様々なトランスレーショナルリサーチへの利用が期待される。我々はFucci発現ブタの作出を目的とし,Fucciを発現する核ドナー細胞の樹立並びに体細胞核移植胚の発生能の検証を行った。【方法】ブタ胎仔線維芽細胞(PFF)にFucci発現ベクターをエレクトロポレーションにより導入し,Puromycinによる薬剤選択と限界希釈を経てFucciを発現する核ドナー細胞を樹立した。NCSU23を基本とする培地を用いてブタ卵丘卵子複合体から体外成熟卵を得て,除核後,体細胞核移植のレシピエント卵とした。Matsunariら(2008)の方法を修正して体細胞核移植を行い,得られた胚をPZM-5中で7日間培養して,体外発生能と蛍光発現を検証した。Fucciを導入しないPFFを核ドナーとして,対照の核移植胚を構築した。【結果】限界希釈細胞480クローンの内,細胞周期の進行に合わせて蛍光発現が変化するFucci発現細胞(G1: mCherry, S/G2/M: mVenus)を2ライン(0.4%, 2/480)樹立し,その一方を核ドナーに用いた。Fucci細胞由来胚の正常分割率と胚盤胞形成率(n=50, 76.0% と82.0%) は,対照胚(n=40, 92.5%と75.0%)と同等であった。 Fucci細胞由来胚盤胞の細胞にはmCherryおよびmVenusの蛍光が観察された。【結論】Fucciを発現する核ドナー細胞によって構築されたブタ核移植胚は,in vitroで正常に発達し,胚盤胞期にFucci蛍光を発現することが明らかとなった。
  • Yeoung-Gyu KO, Hyun KIM, Sung-woo KIM, Yoon-Jung DO, Jae-Hwan KIM, Don ...
    セッションID: P-105
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/10
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    In the present study, we investigated differentially regulated proteins within porcine somatic cell nuclear transfer (SCNT)-derived conceptuses compared with conceptuses that were derived from natural matings on day 14 of pregnancy. On day 14 of pregnancy, the SCNT-derived conceptuses were smaller and appeared abnormal compared with the control conceptuses. In the proteomic analysis, 67 proteins were identified as being differentially regulated in the SCNT-derived conceptuses. Among these proteins, 61 were downregulated, whereas the other 6 proteins were upregulated. Among the downregulated proteins, glycolytic proteins, such as pyruvate dehydrogenase, malate dehydrogenase, lactate dehydrogenase, and isocitrate dehydrogenase 1, were identified in the SCNT-generated conceptuses. Proteomic analysis also showed that antioxidant enzymes, such as peroxiredoxin-4, oxidation resistance 1, and thioredoxin peroxidase II, were downregulated in the SCNT-derived conceptuses. Among the upregulated proteins, annexin V, Hsp60, lamin A, and aldehyde dehydrogenase 1, an apoptotic regulator that interacts with the key components of apoptotic signaling, were identified. These findings demonstrate that the conceptuses of the SCNT-derived embryos showed aberrant protein expression patterns during implantation.These observations strongly indicate that the developmental defects of the SCNT-derived embryos are caused, at least in part, by disruption of the developing conceptus, which occurs as a result of aberrant gene expression that causes abnormal apoptosis and metabolism.
  • 浅野 吉則, 松成 ひとみ, 小林 美里奈, 内倉 鮎子, 中野 和明, 林田 豪太, 松村 幸奈, 倉本 桃子, 坂井 理恵子, 金井 貴 ...
    セッションID: P-106
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/10
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    【目的】体細胞核移植胚におけるDNA高メチル化やヒストン低アセチル化などのエピジェネティック異常は,クローン産仔作出効率の低さの一因と考えられている。DNAメチル化/ヒストン修飾酵素阻害剤である5-aza-2’-deoxycytidine (5-aza-dC)やScriptaid(SCR)は様々な動物種において体細胞核移植胚の発生率向上に効果的であることが報告されている。本研究では,5-aza-dC,SCR,あるいはこれらを組み合わせた(5-aza-dC/SCR)処理がブタ体細胞核移植胚の発生能にどの様な効果を有するか比較検討することを目的とした。【方法】レシピエント卵には体外成熟卵を,ドナー細胞には体細胞クローンニングの6回反復で得られた個体(第6世代クローンブタ)から採取した前駆脂肪細胞を用いた。予備試験により,5-aza-dCとSCRの添加濃度および処理時間をそれぞれ10 nM,72時間および500 nM,17時間とした。作製した再構築胚を活性化処理した後,5-aza-dC,SCR,5-aza-dC/SCR,または無処理区を設け,PZM-5で6日間培養した。得られた核移植胚の正常分割率(Day-2),胚盤胞形成率(Day-6),および胚盤胞細胞数に対する影響を比較した。【結果】核移植胚の正常分割率は,5-aza-dC(47/56, 83.9%),SCR(45/56, 80.4%),および5-aza-dC/SCR(44/56, 78.6%)の各区いずれも,無処理区(48/56, 85.7%)と同等であった。胚盤胞形成率(30/56, 53.6% 〜 34/56, 60.7% vs. 25/56, 44.6%)および胚盤胞細胞数(63.0±5.76〜77.3±6.01 vs. 47.9±5.37)は,全ての処理区において高い傾向であった。胚盤胞細胞数のSCR区と無処理区の間には,有意差(P<0.05)が見られた。本研究で検証した5-aza-dC,SCR,および両者の組み合わせ処理が,ブタ体細胞核移植胚の発生率および胚盤胞の質を改善する可能性が示唆された。
  • 橋谷田 豊, 相川 芳雄, 松田 秀雄, 大竹 正樹, 今井 敬
    セッションID: P-107
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/10
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    【目的】多排卵処置後の体内成熟卵子を用いた体外受精では,高品質胚が高率に得られる。しかし,体内成熟卵子の卵丘細胞は,著しく膨潤化し粘張性が高いため,卵子の検索が難しく見落としが多いと考えられる。これに対し,卵丘細胞を溶解する酵素処理により改善が可能であるが,卵子への悪影響が懸念される。本研究では,体外成熟により卵丘細胞が膨潤化した卵丘細胞-卵子複合体(COC)への酵素処理が胚発生に及ぼす影響について検討し,さらにOPUにより採取した体内成熟COCについて同様に比較を行った。【方法】体外成熟には,食肉処理場由来卵巣から採取した卵丘細胞が2または3層以上付着したCOCを用いた。卵丘細胞の膨潤化を促すためFSH添加あるいは無添加培地で20h成熟培養したCOCを0.1%(最終濃度0.004%)ヒアルロニターゼ添加溶液に5 min曝して酵素処理した。COCは洗浄後に体外受精に供した。また,酵素無処理のものを対照区とした。体内成熟COCは,CIDR留置,8 mm以上の卵胞の吸引除去,FSHによる多排卵処置を行い,GnRH投与後25から26h目に5 mm以上の卵胞から吸引採取した。採取液を希釈しCOCを検索して取り出した。その後,採取液の残渣を酵素処理し,再度検索しCOCを回収した。これら酵素処理前後で回収したCOCを2hの培養後に体外受精に供し,胚盤胞発生率を比較した。【結果】FSH添加培地により卵丘細胞が膨潤化したCOCの胚盤胞発生率は,酵素処理区と対照区の間で差がなかった。また,FSH無添加培地で培養したCOCの胚盤胞発生率も両区で差がなかった。一方,酵素処理後の採取液の残渣から回収総数の12%にあたるCOCが検索された。体内成熟COCの胚盤胞発生率は,酵素処理区と無処理の対照区の間で差がなかった。以上のことから,本研究で用いたヒアルロニダーゼ処理が体外成熟および体内成熟したCOCの体外受精後の胚発生に及ぼす影響は少ないことが示唆された。
  • 堀内 俊孝, 梶原 千晶, 森田 ひろみ, 田中 舞弥, 可兒 知加子, 桑波田 暁子, 越知 正憲, 日高 健雅, 松雪 暁子, 山田 博 ...
    セッションID: P-108
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/10
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    【目的】体外成熟・体外受精・胚移植(IVM-IVF-ET)によって効率的に子牛生産を行うためには,発生能の高い卵子を作出できる体外成熟(IVM)培養系の確立が必要である。これまでに,IVM培地へのdbcAMP添加はウシIVM卵子の発生能を高めることを報告した。そこで,本研究では,3-isobutyl-1-methylxanthine (IBMX)とForskolin(FSK)の前培養によるcAMPの亢進がIVM卵子の核成熟と顕微授精(ICSI)後の胚発生に及ぼす影響を調べた。【方法】ウシ卵丘細胞・卵子複合体(COCs)を100 μM IBMX+100 μM FSKで2h前培養(Pre-IVM)した。1 IU/ml FSH,50 ng/m EGF,10 μM dbcAMP添加TCM199をIVM培地とした。[実験1]pre-IVM区と無処理区のIVM開始後0,3,6,9hにおける卵核胞崩壊(GVBD)率と15,17,19,21,23hにおけるMII率を調べた。[実験2]pre-IVM区と無処理区でのIVM後21hのMII卵子にICSIを実施し,胚発生を調べた。また,8日目の脱出胚盤胞率を比較した【結果】[実験1]Pre-IVM区と無処理区のIVM開始後0,6,9hのGVBD率は,各0,31,73,100%と0,3,50,100%となり,pre-IVM区では早期にGVBDが誘起された。15,17,19,21,23h のMII率は各43,65,85,89,100%と30,62,79,82,92%となり,同様であった。[実験2]Pre-IVM区または無処理区の2細胞期率は各76±10%と84±5%となり,有意な差はなかった。胚盤胞率は各30±3%と21%±1%となり,Pre-IVM区で有意に高かった。胚盤胞あたりの脱出胚盤胞率は,各47%と26%となり,Pre-IVM区で有意に高かった。【結論】IBMX+FSKのPre-IVM2h前培養はIVM卵子のICSI後の胚盤胞と脱出胚盤胞率を高めた。
  • 平田 統一, 田中 宏光
    セッションID: P-109
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/10
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    【目的】漢方薬に広く用いられている甘草の抽出物の1種ricoriceは,マウス精子の体外受精前培養液に添加すると,その後の受精率を向上させることが知られている。この物質をウシ精子の体外授精前培養液あるいは媒精液に添加した場合に,分割率や胚発生成績に及ぼす影響を検討した。【方法】食肉処理場で得た卵巣から未成熟卵子を回収し,10%牛胎子血清加修正TCM-199 で約20時間成熟培養を実施した。精液は2種類の種雄牛を用い,体外受精前に市販の媒精液IVF100(機能性ペプチド研究所)で1時間前培養した。この際,前培養液に240μg/mlのricoriceを添加した区(前培養区)と加えない区を設けた。媒精はIVF100で8時間実施した。前培養時にricoriceを添加しなかったものについて,媒精時にricoriceを0(対照区), 25,250μg/ml添加した区を設けた。前培養区は媒精時にricoriceは添加しなかった。媒精後約90時間までの初期発生培養は修正CDM-1で,90時間以降の後期発生培養はIVD101(機能性ペプチド研究所)で行った。胚発生成績の評価は,媒精後48時間前後の分割率と6~8日目の胚盤胞への発生率で行った。実験は3回繰り返した。【結果】前培養区,および0, 25,250μg/ml添加区の分割率はそれぞれ61.6(151/245)および71.7(256/357),63.3(233/368),55.1(199/361)で,全培養時,媒精時にricoriceを添加しなかった対照区に比べ,前培養区(P<0.01),25区(P<0.05),250区(P<0.01)は有意に低かった。これに対し,胚盤胞率は対照区の22.4%に対して,前培養区の30.2%,25区の29.6%は有意に(P<0.05)高かった。ricoriceは受精率を改善するよりは,ウシ胚の体外発生成績を向上させると思われる。
  • 姜 成植, 今井 敬, 大藤 壮輔, 黄 偉平, 古山 敬祐, 柳川 洋二郎, 高橋 芳幸, 永野 昌志
    セッションID: P-110
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/10
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    To develop individual culture system for bovine oocytes, effect of individual maturation in MWP and individual culture in WOW were examined. For investigating influence of MWP on IVM, IVF and IVC (Exp. 1), oocytes were matured individually in MWP or 10-µl droplet and in 50-µl droplet in a group as control. Nuclear maturation, fertilization and development were evaluated in all experimental groups. Maturation rates were similar in all experimental groups. After fertilization, oocytes from 10-µl droplet IVM showed significantly higher rate of enlarged sperm head compared with those of other groups even though fertilization rates of all groups were similar. Blastocyst rates of oocytes matured in MWP and in 50-µl droplets tended to be higher than that in 10-µl droplets. For investigating influence of WOW on IVC (Exp. 2), fertilized oocytes were cultured in WOW. Cleavage and blastocyst development were assessed, and effect of number of neighbor embryos (0, 3, 5 and 8) in a WOW on embryonic development was also examined. As control, 5 or 25 embryos were cultured in a 40-µl droplet. No differences of blastocyst rate were observed in all experimental groups. However, cell numbers in blastocysts of 5 embryos in droplets were significantly low. Number of adjacent embryos in a WOW dish did not affect blastocyst development and cell numbers of blastocysts. In conclusion, MWP supports the acquisition of developmental competence of individual bovine oocytes as same as conventional group maturation system. Further, WOW can provide high and stable blastocyst development in small embryo group wherever embryos are placed in micro-wells of WOW.
  • 高橋 利清, ソムファイ タマス, 下司 雅也, 眞鍋 昇
    セッションID: P-111
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/10
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    【目的】L-Carnitine(LC)は,体細胞内においてCarnitine palmitoyltransferase 1(CPT-1)の作用により脂質代謝に関与していることが知られている。我々は,ウシ体外生産胚の発生培地へのLC添加により,胚発生率および耐凍性が向上し,脂質代謝が促進されることを見出した。本研究では,CPT-1のインヒビターによるLCの効果を検証するとともに,LC添加培地の種類が胚発生に与える影響を検討した。【方法】食肉処理場由来のウシ卵子を用いて,成熟および体外受精(Day0)を行った。体外受精後に卵丘細胞を剥離し,38.5C,5%CO2,5%O2,90%N2の環境下で発生培養を行った。試験1では,LCあるいはCPT-1インヒビターであるEtomoxir(Et)の5%FCS加CR1aaへの添加が,また,試験2では発生培地にCR1aa,mSOFaa,m199を用いてLC添加の有無が,ウシ体外生産胚の胚盤胞期への発生率(Day8)に及ぼす影響を検討した。【結果】試験1における胚盤胞期への発生率は,EtとLC無添加(対照区:33.3%)と比較して,Etのみ添加(22.4%)で有意に低下し,LCのみ添加で43.9%と有意に高くなった。また,Et+LC添加では26.8%となり対照区と有意な差は認められなかった。試験2では,各培地による胚発生への影響は認められなかった。以上より,LCはウシ体外生産胚に対して,胚細胞のミトコンドリア内でCPT-1を介して作用することが示唆され,発育促進作用については培地の影響を受けないことが示された。
  • 櫻井 伸行, 羽田 雅紀, 橋爪 力, 澤井 健
    セッションID: P-112
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/10
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】プロジェステロン(P4)は黄体組織から分泌されるホルモンであり,血流を介して子宮に到達し,着床のための子宮環境の構築,さらには胚着床後の妊娠維持に重要な役割を担う。ウシにおいては卵管液中にもP4が存在するため,胚はP4の存在下で初期発生が進行する。このことから,P4はウシ初期胚の発生に影響をおよぼしている可能性がある。そこで本研究では,体外発生培地へのP4添加がウシ体外受精(IVF)胚の発生におよぼす影響について検討を行った。【方法】食肉処理場由来ウシ卵巣から卵丘細胞-卵子複合体を吸引採取し,体外成熟培養20時間後に媒精を行うことでIVF胚を得た。IVFを行った日をDay0としてDay8まで胚の体外培養を行った。血清およびBSA無添加の体外発生培地(0.1%PVA添加mTALP)へのP4添加は,前半(Day0–3)と後半(Day3–8)に分けて行い,P4(15 ng/ml)を全期間添加する区(++),前半のみ添加する区(+−),後半のみ添加する区(−+),全期間添加しない区(−−)の計4区を設定した。これら条件下で体外培養を行ったIVF胚の発生率および胚盤胞期胚(Day8)における総細胞数とアポートーシス(TUNEL陽性)細胞の割合を調べた。【結果および考察】Day2における胚の分割率(61.7–68.3%)およびDay4における8細胞期以降への発生率(40.9–44.4%)は,各処理区間に有意な差は認められなかった。胚盤胞期(Day8)への発生率は,−−区(9.3%)と比較して++区(22.0%)において有意(P<0.05)に高い値を示した。胚盤胞期胚における総細胞数およびTUNEL陽性細胞率は,各処理区間に有意な差は認められなかった。本研究の結果から,体外発生培地へのP4添加はウシIVF胚の胚盤胞期への発生率を向上させることが明らかとなった。このことは,ウシ母体内において,P4が胚の初期発生にも直接関与することを示唆するものである。
  • 山中 賢一, 樫澤 彩, 和田 康彦, 阪谷 美樹, 竹之内 直樹, 高橋 昌志
    セッションID: P-113
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/10
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】我々はこれまで,リソソーム内でタンパク質分解に関わる酵素であるカテプシンBの活性とウシ体外受精胚の発生能との間に負の相関があることを明らかにしてきた。一方,暑熱ストレスにより受精胚の発生能が低下することがこれまでに報告されているが,カテプシンB活性の関与について調べた報告はない。したがって,今回は体外受精時の暑熱ストレスがウシ体外受精胚の発生能およびカテプシンB活性に及ぼす影響について検討を行った。さらに,カテプシンB活性の抑制により暑熱ストレスを受けた胚の発生阻害回避の可能性についても検討を行った。【方法】対照区,暑熱ストレス(HS)区,暑熱ストレス+カテプシンB阻害剤E-64添加(E-64;濃度:1, 5, 10 μM)区を設定し,対照区は38.5℃,HSおよびE-64区は40.0℃で体外受精を行った。媒精完了後,卵丘細胞を剥離し,38.5℃,5%CO2の条件下で発生培養を行った。培養後2日目にMagic Red Cathepsin B Detection Kitを用いてカテプシンB活性の検出を行った。また,発生率は分割率と胚盤胞形成率をそれぞれ培養後2日目,8日目に観察することで算出した。さらに,胚盤胞期胚は二重染色およびTUNEL染色により細胞構成数およびアポトーシス陽性細胞の検出により品質評価を行った。【結果】発生率はHS区において対照区と比較して分割率,胚盤胞形成率ともに有意に低下した。一方,5 μM添加E-64区で分割率,胚盤胞形成率および総細胞数がHS区と比較して有意に増加し,対照区と同等の成績であった。さらに,各実験区のカテプシンB活性を調べたところ,HS区では対照区と比較して有意に高く,5 μM添加 E-64添加区では,HS区と比較して有意に低かった。以上の結果から,暑熱ストレスによるカテプシンB活性の増加が胚発生阻害を引き起こす原因の一つであるという可能性が示された。
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