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山下 優輔, 中村 晋一郎, 杉本 賢二, 林 良嗣
2017 年73 巻4 号 p.
I_301-I_306
発行日: 2017年
公開日: 2018/02/28
ジャーナル
フリー
2011年に発生したタイ国での大洪水において,バンコクでは都市施設が浸水しただけでなく,道路が浸水することによって生活を行う上で必要な施設への交通利便性が大きく低下した.本研究では2011年タイ洪水によって道路ネットワークに深刻な遮断が発生したバンコク都を対象として,広域且つ長期的な浸水による道路交通利便性の低下量の推計手法を構築し被害の時系列変化の推計を行った.さらに,道路ネットワークの浸水対策を行った場合の,被害軽減効果の評価手法を検討した.評価の結果,浸水域以外の地域でも交通利便性の低下が発生していることが明らかになった.そして,この評価結果にもとづき対策シナリオの評価方法を提案した.
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平賀 優介, 風間 聡, 小森 大輔
2017 年73 巻4 号 p.
I_307-I_312
発行日: 2017年
公開日: 2018/02/28
ジャーナル
フリー
開発圧力を受ける氾濫原であるメコン河下流域において,洪水氾濫モデルを用いて年氾濫期間を求め,年氾濫期間と純一次生産力,土地被覆との関係を明らかにした.また,2000年~2013年のメコン河年最大水位を用いて洪水氾濫の規模と純一次生産力の関係を明らかにした.その結果,年氾濫期間が2ヶ月大きくなると,水田・畑の割合は約1割減少することが示された.純一次生産力の年最大値は年氾濫期間が7.5ヶ月となる地点でピークを示し,2.0 gC/m
2/dayとなる.また,対象領域における土地被覆は,年氾濫期間により分類され得ることが示された.現在自然植生に分類される土地が水田・畑に開拓された場合,年間約134gC/m
2の純一次生産量が失われることとなる.また,純一次生産力の年変動は,周期的な洪水氾濫の年変動に関係することが示された.更に,氾濫原端部における純一次生産力とメコン河の年最大水位には正の相関があり,年最大水位が1m変化すると,純一次生産力は平均で約0.28 gC/m
2/day変化することが示された.
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八木澤 順治, 大窪 和明, 田中 規夫, 赤崎 佑太
2017 年73 巻4 号 p.
I_313-I_318
発行日: 2017年
公開日: 2018/02/28
ジャーナル
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本研究では洪水流と氾濫流を一体的に解析する数値解析モデルを開発し,埼玉県川島町に適用した.町内の氾濫特性が大きく異なる2つ(市野川氾濫ケース(Case A)と都幾川氾濫ケース(Case B))の出水に適用し,町内に設定した一次避難所への氾濫流の到達時間を把握した.
氾濫特性をもとにコミュニティバスを活用した最適避難経路を把握した.その結果,Case Aでは,氾濫開始前に町内の西部に位置する一次避難所を巡回し,氾濫開始後に東部の一次避難所を巡回する経路が総避難時間を最小化した.一方,Case Bでは,氾濫開始前に北部に位置する一次避難所を,氾濫開始後に南部を巡回する経路が総避難時間を最小化した.この結果は,越流地点やその後の氾濫形態の相違に応じて,どの地域を優先的・重点的に運行すべきかを事前に判断できる可能性を示唆している.
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Malik Ahmad ALI, Ichiro KIMURA, Ahmed M. ABDELRAZEK, Yasuyuki SHIMIZU
2017 年73 巻4 号 p.
I_319-I_324
発行日: 2017年
公開日: 2018/02/28
ジャーナル
フリー
In this study, a two-dimensional, finite volume hydrodynamic model is applied to simulate large scale floods that accounts for high resolution bathymetry and roughness data. This approach presents sub-grid based model, water level and velocity are computed using a coarse grid as these parameters doesn't need high resolution. On the other hand, finer grid considers roughness and bathymetric variations using high resolution data because they are vary over short distances. A wetting and drying algorithm is implemented in our model in order to correct the mass balance in wet areas as well as in the region of transition from wet to dry and from dry to wet. In order to check the model capabilities, two major floods in Pakistan and Thailand have been simulated. The numerical results are then compared with satellite images, and numerical results obtained from Nays 2D Flood (iRIC). The results obtained from these comparisons show that our model is capable to simulate large scale flood quickly and accurately.
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秋山 壽一郎, 重枝 未玲, 藤原 周平
2017 年73 巻4 号 p.
I_325-I_330
発行日: 2017年
公開日: 2018/02/28
ジャーナル
フリー
六角川水系を対象に既設牟田辺遊水地の洪水調節を考慮して牛津川の流下能力不足区間を抽出し,次に河道・遊水地包括解析を用いて“牛津川遊水地計画”で検討段階にある未設遊水地の洪水調節効果とそれに伴う外水位の低減効果について検討し,数値解析により遊水地による洪水調節,ポンプ排水による内水排除,支川から本川への流入を考慮して外水位を評価可能であることを示した.
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田中 甫幸, 井上 卓也, 清水 康行
2017 年73 巻4 号 p.
I_331-I_336
発行日: 2017年
公開日: 2018/02/28
ジャーナル
フリー
災害から身を守るためには,災害時に適切な対応がとれるよう,災害時の状況をイメージすることが重要であると考える.しかし平時から災害時の世界をイメージすることは難しい.本研究では,災害時のイメージを再現し,自分の住む土地のリスクを直感的に把握することができる手法を検討した.氾濫計算結果のデータより緯度経度等の位置座標を定義し,三次元化したポリゴンを生成する方法でKML化することで,Google EarthやStreet Viewに浸水範囲や浸水深を表示させ,浸水時の世界を自由に探索することを可能にする可視化手法を構築した.
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重枝 未玲, 秋山 壽一郎, Adelaida Castillo DURAN, 中木 翔也, 大久保 剛貴, 荒木 佑仁
2017 年73 巻4 号 p.
I_337-I_342
発行日: 2017年
公開日: 2018/02/28
ジャーナル
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本研究は,流域と河道特性を踏まえた上で,降雨外力から河道の水位・流量ハイドログラフなどの洪水流の予測を行なうことが可能な「分布型流出・準平面2次元洪水追跡モデル」と遺伝的アルゴリズムと粒子群最適化法を用いたモデルパラメータの最適化法を構築し,仮想流域での解析結果や彦山川流域での実測値に基づき,その妥当性について検討したものである.本研究から,本最適化手法を用いた分布型流出・準平面2次元解析は,同解析のモデルパラメータを推定できること,堰周辺の流れの再現性については改善の余地が残るものの,複数の支川が合流する河川での水位ハイドログラフをある程度の精度で予測すること,などが確認された.
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堂薗 俊多, 坂井 健太, 小林 侑, 仁田原 公亮, 柏原 佳明, 青木 規, 太井 正史, 大野 勝正, 土橋 将太, 矢野 真一郎
2017 年73 巻4 号 p.
I_343-I_348
発行日: 2017年
公開日: 2018/02/28
ジャーナル
フリー
球磨川の中流域を対象として,流木発生ポテンシャルと橋梁の相対的流木災害リスクの評価を試みた.本研究では,矢野ら(2016)による既存の流木解析の手法の改良として,航空レーザプロファイラ(LP)データを活用して流域内の立木材積などを推定すること,地盤地質情報を加味した斜面崩壊箇所評価により流木発生源を評価すること,などを行った.これにより,球磨川中流域の本川において鉄道橋である球磨川第二橋梁が最も流木災害のリスクが高いことが明らかとなった.さらに,1点/m
2と4点/m
2の2種類の解像度のLPデータを用いた場合の材積量推定精度の比較を行った.その結果,全国で幅広く整備されている1点/m
2のLPデータでも実用上十分な精度で評価可能であることが明らかとなった.これにより,広範囲な流域についても効率的に流木リスク評価を展開できるようになった.
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矢野 真一郎, 土橋 将太, 富田 浩平, 堂薗 俊多, 笠間 清伸
2017 年73 巻4 号 p.
I_349-I_354
発行日: 2017年
公開日: 2018/02/28
ジャーナル
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平成24年の九州北部豪雨で被災した山国川流域を対象に,歴史的な石橋群の流木災害リスク,流木被害を受けて撤去される橋梁による流木災害リスクの変動,洪水調整ダムの流木災害リスク低減効果,ならびに砂防ダムの流木災害リスク低減効果などを,矢野ら(2016)により開発された流域全体の流木発生ポテンシャルと橋梁位置での相対的流木災害リスクの評価法を適用して,評価することを試みた.その結果,橋梁撤去により下流の石橋へ流木災害リスクが伝播される状況,貯水ダムにおける流木カット効果が全体の約14%であること,ならびに砂防ダムが流木捕捉率2~3割程度で流域全体の流木災害リスク低減に十分寄与できることなどが明らかとなった.
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福岡 捷二
2017 年73 巻4 号 p.
I_355-I_360
発行日: 2017年
公開日: 2018/02/28
ジャーナル
フリー
わが国の流域の社会・経済環境の変化, インフラストックの活用と生産性増大への要請は,治水事業の進め方の変化と具体的対応を求めている.河川の維持管理が重要な時代になり,これまでの治水施設のストック効果を高めるためにも,また地球温暖化に対する適応策の効果的な実行のためにも,河川堤防やダム等の治水施設により流域の洪水流量をコントロールし,流域の適切な流量配分を行えるように洪水流の水位と流量の新しい関係の構築が求められている.
本文では,洪水観測水面形を用いた解析法の必要性を示し,この解析法が河川堤防,ダム等治水施設による洪水流量の適切なコントロール,バランスの見積もりを可能にすること,広域的・総合的な視点から河川管理につながることを示した.次に,この解析法を平成27年9月の鬼怒川洪水流に適用し,洪水水理現象を広域的,総合的に把握し,流域全体の治水施設による水量分担を見積もることにより,洪水水面形が河川管理と洪水水理現象の見える化に重要な役割りを果たすことを示している.
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倉橋 実, 角 哲也
2017 年73 巻4 号 p.
I_361-I_366
発行日: 2017年
公開日: 2018/02/28
ジャーナル
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我が国では,経済的制約や,適切なダムサイトの不足等の要因により,新規ダムを建設することが困難な状況にあり,既設ダムの機能を長期にわたって維持していく必要性が高まっている.特に,貯水池堆砂問題への取り組みはダム機能を長期間確保するうえでは最も重要な課題のひとつであり,経済的かつ効果的な土砂マネジメント手法の確立することが必要とされている.
本稿では,同一水系内の複数ダムについて,個別管理ではなくダム群として一括管理する手法に着目し,水系全体の治水機能を長期間にわたって効果的に維持していくための土砂マネジメント手法について検討した.検討対象として宮崎県大淀川流域を選定し,流出予測計算を用いて水系内における対策優先度を評価した.また,水系全体の治水機能を維持してくための複数の対策シナリオを検証し,優先的に展開すべき土砂マネジメント手法を提案した.
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沖 岳大, 中津川 誠
2017 年73 巻4 号 p.
I_367-I_372
発行日: 2017年
公開日: 2018/02/28
ジャーナル
フリー
本研究は,超過洪水によって発生する氾濫被害を最小化できるような施設運用について分析できる手法の開発を目的とする.具体的には,遊水地群,排水機場,樋門といった施設運用を勘案し,内水・外水を一体化した氾濫解析が行えるような手法を提案する.研究対象とした千歳川は石狩川の支川の一つであり,その背水影響を30km以上にわたり受ける河川で,流域の主要部分が地盤の低い低平地を流れるため,氾濫リスクが高い.ここで整備が進められている治水施設の操作を勘案した氾濫解析をおこない,(1)観測史上最大の昭和56年洪水の再現計算,(2)計画を上回る大雨に対する分析をおこなった.検討結果より,治水施設の効果が総合的に分析でき,今後の気候変動で懸念される超過洪水への適応策を検討するうえで有効な手法を提案することができた.
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渡辺 春樹, 井芹 慶彦, 佐々木 織江, 武川 晋也, 吉川 沙耶花, 鼎 信次郎
2017 年73 巻4 号 p.
I_373-I_378
発行日: 2017年
公開日: 2018/02/28
ジャーナル
フリー
洪水防御計画の基となる過去の降雨観測データは地点数及び観測期間という面において必ずしも十分ではなく,既存の降雨データをどのように活用するかは未だ重要な課題の一つである.そこで本研究では,時空間高解像度であるレーダーアメダス解析雨量とモンテカルロシミュレーションにより,過去の限られた観測降雨から,観測データには含まれないような数千年分もの豪雨イベント発生を試みた.本稿では,関東地域において作成した豪雨イベントデータを用い,平成27年9月関東・東北豪雨の再現期間を計算し,他の研究結果との比較を行った.さらに,時空間スケールや入力データの年数を変化させ,結果を比較することにより,作成したデータセットにどのような特色が見られるかを調べた.
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鬼束 幸樹, 秋山 壽一郎, 定地 憲人, 泉 孝佑, 緒方 亮, 西川 貴大
2017 年73 巻4 号 p.
I_379-I_384
発行日: 2017年
公開日: 2018/02/28
ジャーナル
フリー
魚にとって低流速の休憩場所が確保されていることは重要である.しかし,低流速域における魚の休憩特性については十分な解明がなされていない.本研究では,開水路急拡部における拡大率および流速を系統的に変化させ,オイカワの休憩特性に及ぼす影響の解明を試みた.その結果,急拡部の拡大率および流速の増加に伴い,オイカワの急拡部の利用率が増加することが判明した.また,急拡部では魚群重心の対地速度が低下し,拡大率の影響により魚群の形状が円形に近づくことや急拡部の上流側壁面と魚群重心との距離が増加することが確認された.
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鬼束 幸樹, 秋山 壽一郎, 定地 憲人, 緒方 亮, 西川 貴大
2017 年73 巻4 号 p.
I_385-I_390
発行日: 2017年
公開日: 2018/02/28
ジャーナル
フリー
魚類は洪水時に遊泳挙動を変化させ,流速の低い場所や上流へ移動することが解明されている.加速度や流速などの水理量は魚の遊泳挙動に影響を及ぼす要因と考えられる.本研究は加速度および増水後の流速とオイカワの挙動との関係について検討したものである.ベース流速を固定し,加速度と増水後の流速を変化させ,開水路内のオイカワの挙動を撮影した.その結果,増水時の加速度の増加に伴い,増水時と増水完了直後におけるオイカワの降下率が増加することが判明した.また,増水の前半と比較すると,後半における頭部上流向きのオイカワの対地速度が低下することが判明した.
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高橋 直己, 長尾 涼平, 林 和彦, 多川 正
2017 年73 巻4 号 p.
I_391-I_396
発行日: 2017年
公開日: 2018/02/28
ジャーナル
フリー
安価で容易に運用できる木製のV型断面簡易魚道について,隔壁形状と流況特性に関する実験的検討,および実河川での魚道利用状況調査を行った.隔壁形状を全面越流から両端のみの越流となるように変更することで,水生生物の移動経路となる提案魚道両岸の水深を増加させ,加えて魚道内プール中層の流れを減勢することができた.また,提案魚道(両端越流型)を実河川に設置したところ,魚道両岸の移動経路にて遊泳力の低いウキゴリ類の遡上が確認され,提案魚道が小型水生生物の遡上を補助する手段として有効であることがわかった.
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矢田谷 健一, 泉 完, 東 信行, 丸居 篤
2017 年73 巻4 号 p.
I_397-I_402
発行日: 2017年
公開日: 2018/02/28
ジャーナル
フリー
岩木川河口から一つ目の河川横断構造物に設置された既設全面越流型階段式魚道を対象に,ウキゴリ類等の採捕調査,切欠き部の流速分布調査および水中ビデオカメラ観測調査を行った.この結果,プール間落差20cm,面取りが無い厚さ40cmの切欠き部において,越流水深30cm前後の水理条件では,体長5cm未満のウキゴリ類等の遡上が困難であることを明らかにした.調査対象とした魚道と類似した幾何構造の階段式魚道は,全国に数多く存在するものと考えられ,小型ウキゴリ類が遡上困難な階段式魚道切欠き部の水理条件を示唆する有用な知見を得ることができた.
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青木 宗之
2017 年73 巻4 号 p.
I_403-I_408
発行日: 2017年
公開日: 2018/02/28
ジャーナル
フリー
本研究は,特に階段式魚道内において礫堆積時におけるプール内流況および魚類行動に着目し,魚道機能低下の要因を明確にすることを目的とした.そのために,実験水路に階段式魚道を設置し,水理量の計測および実魚(ウグイ)を用いた挙動実験を行った.
その結果,渦度
ωyに着目することで,プール内流況を把握できることが分かった.また,プール内に礫が堆積していても,魚の遡上しやすい落下流状態を形成していた.しかし,礫が堆積したことにより魚の遡上率
Rrは低下し,さらに魚道内を通過する時間および滞留する時間が長くなった.そこで,特にプール内での流れの乱れ
w'に着目しFFT解析を行った結果,礫が堆積していることで1/
fゆらぎを持つ流れとなっていることが分かった.そのため,魚がその場に滞留し,魚道機能が低下したものだと考えられる.
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鬼束 幸樹, 秋山 壽一郎, 有須田 朋子, 定地 憲人, 緒方 亮
2017 年73 巻4 号 p.
I_409-I_414
発行日: 2017年
公開日: 2018/02/28
ジャーナル
フリー
階段式魚道の底面に設置した粗石間隔と魚の遊泳特性との関係はほとんど解明されていない.本研究では,階段式魚道の底面に間隔を変化させて粗石を設置し,オイカワの遡上特性の解明を試みた.その結果,オイカワは粗石間隔の増加に伴い,粗石間の空隙を利用して遡上する傾向が顕著になることが判明した.そのため,粗石間隔の増加に伴い遡上率が増加した.この原因として,粗石間隔の増加に伴い休憩場所が確保されるため,オイカワの疲労が蓄積されにくくなることが挙げられた.
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鬼束 幸樹, 秋山 壽一郎, 武田 知秀, 角田 裕香
2017 年73 巻4 号 p.
I_415-I_420
発行日: 2017年
公開日: 2018/02/28
ジャーナル
フリー
同一の魚道であっても魚種によって遡上率は異なる.本研究は,階段式魚道におけるアユおよびオイカワの遡上特性の比較を行った.アユおよびオイカワの遊泳挙動を2台のビデオカメラを用いて撮影した.撮影後,魚の遊泳位置,魚向,遡上経路を解析した.その結果,アユよりもオイカワの方が高い遡上率を示すことが判明した.これは,オイカワはアユと比較して流速が遅い領域を通過して遡上し,遡上経路が短いためであると考えられる.
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鬼束 幸樹, 秋山 壽一郎, 武田 知秀, 藤木 翼, 國崎 晃平
2017 年73 巻4 号 p.
I_421-I_426
発行日: 2017年
公開日: 2018/02/28
ジャーナル
フリー
高い遡上率を有する魚道を設計するには,魚道の適切な幾何学形状の把握が必要となる.本研究では,階段式魚道のプールの底面を上流側に下り勾配とし,勾配および流量を変化させ,カワムツの遡上特性の解明を試みた.その結果,底面勾配の増加によりプール内の下流域における遊泳可能なスペースが減少し,そこでの流速が増加することが判明した.この影響でカワムツの定位位置が変化し,切欠きまでの遡上距離が減少し,低流速域を通過して遡上する頻度が増加することで,遡上率が増加することが解明された.
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常住 直人
2017 年73 巻4 号 p.
I_427-I_432
発行日: 2017年
公開日: 2018/02/28
ジャーナル
フリー
農業取水堰付設魚道は魚道機能と農業利水の調和から多様な魚種の遡上が可能でかつ極力,小流量,急勾配でも魚道流況が安定する事が望ましい.この観点から本論文では隔壁間隔を狭めた急勾配潜孔式魚道を検討した.この魚道では隔壁間隔が狭くても大型魚が遡上可能なように,隣接潜孔断面の一部を流下方向に重ね合わせている.この魚道の水理特性を実験により検証した結果,隣接潜孔の重合率次第では,勾配1:2.5でも水深0.8m以上で安定して潜り流出に近い状態が保たれる事,その際の魚道流量は約0.1m
3/sで安定する事,潜孔断面の非重合側には緩流速域(潜孔中心で約0.7m/s)が生じプール下層の側壁近傍にも緩流速域(約0.2~0.6m/s)が確保される事が明らかとなった.
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Hidekazu YOSHIOKA, Tomoyuki SHIRAI, Daisuke TAGAMI
2017 年73 巻4 号 p.
I_433-I_438
発行日: 2017年
公開日: 2018/02/28
ジャーナル
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Fish migration in open channels, such as rivers and drainage canals, is a fundamental research topic of civil and environmental engineering. This paper establishes a new and simple mathematical approach for efficiently analyzing upstream fish migration in 1-D open channel flows based on an optimization theory considering advantages and disadvantages of forming a school. Upstream migration of isolated and schooling fishes follows a differential equation where swimming speed and total number of individuals are optimized, so that a biological cost function is minimized. The optimal swimming speed of a fish school and its total number of individuals are exactly derived assuming realistic functional shapes of the cost function. The optimal swimming velocity is validated with experimental results of upstream fish migration of three migratory fish species. Reasonable ranges of several model parameters involved in the cost function are inferred from theoretical consideration. The obtained results of this paper employing a new mathematical approach can be potentially useful for considering swimming behavior of isolated and schooling fishes.
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北野 慈和, 山田 朋人
2017 年73 巻4 号 p.
I_439-I_444
発行日: 2017年
公開日: 2018/02/28
ジャーナル
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大気ブロッキングは豪雨や干ばつ,熱波や寒波といった中緯度地域の極端現象の重要な一因である.本研究では,Rossby(1950)により提案された,開水路流れとのアナロジーに着眼した大気のジェット気流に関するエネルギーの理論を応用しブロッキングを定義することを試みた.ジェット気流の有するエネルギーを先行研究よりも厳密に定義する式系を構築し,ブロッキングが発生時における蛇行したジェット気流に対して適用可能とした.
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金子 凌, 仲吉 信人
2017 年73 巻4 号 p.
I_445-I_450
発行日: 2017年
公開日: 2018/02/28
ジャーナル
フリー
建物の幾何形状がメソ気象に及ぼす影響を明らかにするため,2次元海風計算を行った.建物GISデータから導出された1 km解像度の熱空気力学パラメータ(運動量粗度Z
0,ゼロ面変位Z
d,そして天空率SVF)を海風計算に組み込んだ.これらの都市幾何パラメータの与え方により,6ケースの計算を実施し,それぞれのケースでの海風到達時刻の違いを,都市の顕熱フラックス,乱流エネルギー,陸域の温位分布より考察した.Z
0やSVFの気象場への影響は大きく,実際の都市幾何パラメータ分布を与えたケースとその平均値を領域に一様に与えた計算ケースでは海風動態は大きく異なった.一方,Z
dの影響は殆ど見られなかった.
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田中 俊洋, 仲吉 信人, 田中 智裕
2017 年73 巻4 号 p.
I_451-I_456
発行日: 2017年
公開日: 2018/02/28
ジャーナル
フリー
都市域における接地境界層内の風速場・乱流特性の評価を可能とする測風気球と安価なデジタルカメラを利用した新たな風速測定手法を開発した.本手法は多方向から物体を撮影し,その画像群より3次元座標を算出するコンピュータビジョンの立体認識理論に基づいている.本手法は以下の流れで風速を測定する.(1)地上に上向きに設置した複数台のカメラによるインターバル撮影によってバルーンの軌跡を撮影する.(2)コンピュータビジョンの理論に基づきバルーンの3次元座標を算出する.(3)時々刻々のバルーンの位置座標変化から風速を算出する.本手法の性能を評価するためパイロットバルーン観測値と精度を比較したところ,東西方向の風速において両者の差はおよそ0.6 m s
-1であり,本測定手法は既存手法と同程度の精度で風速同定可能であることが分かった.
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土方 基由, 稲垣 厚至, 神田 学, 山下 幸彦
2017 年73 巻4 号 p.
I_457-I_462
発行日: 2017年
公開日: 2018/02/28
ジャーナル
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地表面に沿った風速場を推定する手法に熱画像地表面風速場推定法(Thermal Image Velocimetry, TIV)が存在する.本手法は,サーモカメラによって観測される地表面温度変動の中から乱流熱交換起因の変動を抽出し,その空間パターンの移流速度ベクトルから表面近傍風速を推定するものであり,これまでに数十メートルスケールの塵旋風や建物壁面付近の上昇流の観測及び定量的な表面風速場の測定が行われてきた.本研究では,TIVを,明治神宮を対象としたヘリコプター観測に適用し,数百メートルスケールの領域における移流の可視化及びベクトルの推定を行った.Scale Invariant Feature Transform(SIFT)による座標系統一補正と時系列及び空間フィルタリングを施すことにより,本観測に対してTIVを適用することができ,その結果地表面移流ベクトルの時系列変化や,発散流等の局所的特徴を有する風速場の測定に成功した.それらを時間及び空間平均したところ,主に北と北北西の方向から2.44ms
-1のTIV速度が算出され,観測値と比較して大局的な整合性が確認された.
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Muhammad Rezza FERDIANSYAH, Atsushi INAGAKI, Manabu KANDA
2017 年73 巻4 号 p.
I_463-I_468
発行日: 2017年
公開日: 2018/02/28
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フリー
Identifying the pre-convective condition of the atmospheric boundary layer plays an important role in the prediction of extreme weather events. To achieve this, acquisition of low-level flow fields is necessary. Latest available wind vector dataset, called Atmospheric Motion Vector (AMV), is still incapable for estimating near-ground level fields. We investigated the possibility applying the Thermal Image Velocimetry (TIV) method to Himawari-8 satellite retrievals to estimate near-ground level fields in cloud-free areas, identified during days of calm weather with sea-breeze penetration.
A sea-breeze day event on August 4,2015 was selected. Average sea-breeze inland penetration speed was estimated to be ~3.6 m/s and ~1.8 m/s from Sagami Bay and Tokyo Bay, respectively. The derived motion vector of advection flow from TIV revealed the general pattern of near-surface atmospheric flow due to sea-breeze phenomena.
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入川 裕太, Deepak Bikram THAPA CHHETRI, 重松 和恵, 藤森 祥文, 森脇 亮
2017 年73 巻4 号 p.
I_469-I_474
発行日: 2017年
公開日: 2018/02/28
ジャーナル
フリー
著者らは,都市部と郊外域の土地利用のコントラストが明瞭な松山平野の4地点に微気圧計を設置した.各気圧計の地点間距離は数キロメートルから二十数キロメートルである.この高密な気圧データを元に気圧の時空間特性について解析を行った.その結果,松山平野の地形的特徴が気圧の時空間特性に影響を与えており,海陸風を引き起こしていることが明らかになった.また,内陸部で発生し海岸域に向けて移動した局所降雨が発生した2015年8月8日に着目したところ,降雨発生1時間前から内陸部の気圧が上昇をはじめた.このときの気圧の時空間分布の特徴は,気温の低下と雲の発生によって説明されることが示された.
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藤森 祥文, Sijapati SWEATA, 都築 伸二, 森脇 亮
2017 年73 巻4 号 p.
I_475-I_480
発行日: 2017年
公開日: 2018/02/28
ジャーナル
フリー
太陽光発電量から全天日射量を推定する手法を都市スケール領域に適用し,日射量分布の推定を試みた.また,領域内の日射量観測地点を代表地点とし,そこでの快晴日日射量を領域内の太陽光パネルの換算係数の算出に利用するという新しい手法を提案した.
本手法により太陽光パネル毎に日射量を観測することなく,様々な角度・方位に設置された太陽光パネルで換算係数の算出と,日射量の推定を行うことができた.また,推定された日射量分布を全天カメラ画像と比較することで,その妥当性を確認することができた.本手法で稠密な日射量や雲分布を観測することができることが示唆された.
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Deepak Bikram THAPA CHHETRI, Herlin VERINA, Yoshifumi FUJIMORI, Ryo MO ...
2017 年73 巻4 号 p.
I_481-I_486
発行日: 2017年
公開日: 2018/02/28
ジャーナル
フリー
The main objective of this study is to analyze downward shortwave radiation estimated from geostationary satellite by using an index called Clear Sky Rate (CSR) and apply it to see the impact of geographical and land use variation on clouds. Matsuyama, the target area in this study has mountains, plains and contrasting land uses of urban and rural areas. The following outcomes were obtained. CSR is likely to be lower in mountainous areas than in the plain areas. The temporal analysis shows that the CSR on the mountains decreases down to the midday and then increases accordingly with time compared to the plain areas. The comparison between urban and rural areas shows that formation and thickness of cloud in an urban area are higher than the rural area in the afternoon. The CRS index and the dataset has a high potential to understand the local cloud properties.
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Deepak Bikram THAPA CHHETRI, Yoshifumi FUJIMORI, Ryo MORIWAKI
2017 年73 巻4 号 p.
I_487-I_492
発行日: 2017年
公開日: 2018/02/28
ジャーナル
フリー
This paper analyses and standardize the urban heat island (UHI) and urban dry island (UDI) effects in Matsuyama plane, focusing on the Local climate Zones (LCZs). LCZs classifies the landscape into homogeneous types based on structural type, land surface cover, materials used and human activities. This standard classification has made urban studies more meaningful and easy to compare the results with various cities globally. The LCZ map for Matsuyama was created using Landsat images, Google Earth and SAGA-GIS software. Four out of twenty-five in-situ meteorological stations network available in Matsuyama plane for different atmospheric studies were selected to represent the unique LCZ area each. UHI favourable days (August 1-6) were selected using Japanese Meteorological Agency (JMA) data. The results show LCZ with the compact mid rise building were on average 0.6°C cooler at day time and 2°C warmer at night time than LCZ with low plants. The result also shows that LCZ with the compact mid rise building were on average 2.5% dryer at daytime and 1.25% dryer at night time than LCZ with low plants.
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李 文怡, 久田 由紀子, 杉原 裕司, 松永 信博
2017 年73 巻4 号 p.
I_493-I_498
発行日: 2017年
公開日: 2018/02/28
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2013年8月に発生した記録的な暑夏を対象に快晴で穏やかな8日間を抽出し,71地点における多点同時長期観測データに基づいて福岡都市圏全域における熱環境特性を調べた.日中においては,海風侵入によって海岸線から約4kmの範囲でcool areaが形成される.日射によって都市域が加熱されるにつれ海風は河川に沿って内陸域に侵入するため,cool areaが河川に沿って発達する.河川に沿った海風侵入によって,沿岸付近では4つの孤立した明瞭なhot spotが形成される.夜間では,放射冷却のため福岡市の中心地である天神周辺で気温が最大となり,郊外に向かって低下するという沿岸都市特有の島状のパターンが形成される.最高気温からの偏差を求めることにより,夜間における福岡都市圏の気温平面分布を普遍的に表した.
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Ichiro FUJITA, Kenichiro KOBAYASHI, Frederick Yaw LOGAH, Frank TEYE OB ...
2017 年73 巻4 号 p.
I_499-I_504
発行日: 2017年
公開日: 2018/02/28
ジャーナル
フリー
Kobe University provided a training program in Japan within a SATREPS project to three Ghanaian hydrologists on discharge measurement by using an image analysis software KU-STIV, developed at Kobe University for flow measurement. Then, three delegates from the Kobe University, Japan visited Ghana to actually measure stream flows at three rivers stations on the Densu River basin in Ghana. The flow measurements are carried out by using two techniques, KU-STIV and Vale-port current meter. The measured discharges were very small, less than or equal to 1m
3/s. The maximum relative measurement error between the two methods is roughly about twenty percent so that it is acceptable considering the measurement condition at the site. The paper briefly summarizes the usefulness of discharge measurement by an image analysis technique to avoid the risks of field measurements in African regions.
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能登谷 祐一, 藤田 一郎, 建口 沙彩
2017 年73 巻4 号 p.
I_505-I_510
発行日: 2017年
公開日: 2018/02/28
ジャーナル
フリー
近年の洪水災害の頻発を受けて流量観測の高度化が進められており,水位情報と同様より正確な流量情報をリアルタイムに発信することが要求されるようになってきた.従来の流量はしばしば不正確な観測値を出力する浮子法をもとに蓄積されており,現状ではこのデータから得られる水位流量関係からしか流量情報は算出できない.代替手法として,画像処理を用いた表面流速計測技術であるSTIV (Space-Time Image Velocimetry)が開発されてきた.しかし,その計測精度は表面流の移流特性を表すSTIの質に左右される.そこで,STIの特性を利用した新たな計測法を示し,STIに現れるパターンの質を定量的に評価するために,2つの新たな指標を提案する.これにより様々なSTIから質の良いSTIのみの抽出が可能となる.
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能登谷 祐一, 藤田 一郎, 建口 沙彩
2017 年73 巻4 号 p.
I_511-I_516
発行日: 2017年
公開日: 2018/02/28
ジャーナル
フリー
近年の河川災害の頻発を契機として,流量観測技術の高度化が進められている.特に流速計測についてはADCP,電波流速計,画像計測法などの精度が確認され,実用化や普及の試みがなされている.特に既存ストックである河川モニタリングカメラを有効活用できるという経済的メリットから画像計測法が注目されている.しかし,従来からあるLSPIV, PTVは頑健性確保などの理由からトレーサーを撒かなければならないことが多く,人的労力や危険性の面で課題が残っている.一方STIVはLSPIV, PTVと比較して頑健であり,トレーサーを撒かなくても高精度に流速を算出することが可能である.しかし,ユーザーが設定した方向の流速成分しか得られず,流向を合理的に定めることはできなかった.そこで本研究では流向が得られるLSPIVと頑健性に優れるSTIVの長所を組み合わせたSTVVを開発した.
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赤穗 良輔, 前野 詩朗, 吉田 圭介
2017 年73 巻4 号 p.
I_517-I_522
発行日: 2017年
公開日: 2018/02/28
ジャーナル
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河道湾曲部など洪水流が偏流する場所における浮子観測は,流量計算に用いる測線を横断面形状に応じて配置しない場合,測線と浮子の軌跡にずれが生じるため,観測流量の精度が低下する可能性がある.本研究では,準三次元洪水流解析に基づく浮子の軌跡の再現計算を行い,測線を修正することで浮子観測流量を高精度化する新たな手法を構築した.さらに,三川合流部の下流に位置する江の川水系尾関山観測所の浮子観測に本手法を適用し,流量の再現性を検証した.その結果,修正した測線を用いて実際の観測流量を算出することで,洪水の上昇期,ピーク期,減衰期の各時刻で,精度が向上することが示唆された.
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長谷川 祐治, 宮田 秀介, 今泉 文寿, 中谷 加奈, 堤 大三
2017 年73 巻4 号 p.
I_523-I_528
発行日: 2017年
公開日: 2018/02/28
ジャーナル
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ハイドロフォンによる流砂量解析には,流砂の衝突回数(パルス数)を記録する方法が用いられる.しかし,流砂量が多い状態では全ての流砂がハイドロフォンに衝突しても管内で音が飽和してパルス数が検出され難くなり,流砂量を少なく評価することが課題に挙げられる.本研究ではパルスの記録方法を検討して,パルス数が最も多く記録される閾値で評価する
Method 1と,閾値毎に記録されたパルス数で評価する
Method 2の2つの手法を確認した.現地観測の結果を基に両者を検証して,
Method 2で解析したパルス数は流砂量が多い状態でも検出されやすいことを明らかにした.また,この手法から得られた流砂量を基に数値シミュレーションを実施して観測と計算を連携させるために必要な情報を整理した.
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北村 旭, 河原 能久, 椿 涼太
2017 年73 巻4 号 p.
I_529-I_534
発行日: 2017年
公開日: 2018/02/28
ジャーナル
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洪水時に形成される河床波は土砂移動や流れの抵抗に大きく影響する.河床波を対象とした研究は多数行われてきたが,河床波の発達過程を検討するために河床波上の個々の砂粒の動きを直接計測した研究は限られている.本研究では個別の砂粒子を可視化しビデオ撮影することで,平面2次元内の個別粒子の位置と速度を計測する手法を組み立てた.また,2次元砂堆と3次元砂堆をそれぞれ形成し,それらの上の砂粒子の運動を計測した.そして,平均流速で無次元化した砂粒子の移動速度は,2次元砂堆上よりも3次元砂堆上の砂粒子の方が流下方向にも横断方向にも大きい速度で移動するという計測結果を得た.
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橘田 隆史, 萬矢 敦啓, 小関 博司, 吉川 世里子, 岡田 将冶, 工藤 俊
2017 年73 巻4 号 p.
I_535-I_540
発行日: 2017年
公開日: 2018/02/28
ジャーナル
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流水抵抗をはじめとする土砂水理学に関する理解は,実験水路を中心に行われてきた.一方,実河川における現象がこれらの知見と整合しない例も散見され,この問題は土砂水理学を考慮した水位流量関係の構築に課題を残している.他方,近年開発されている観測技術は流況,河床面の多点計測を可能にし,実河川における計測結果と既往の知見の評価が行われるようになってきた.本研究では準実スケールの実験水路においてマルチビームを用いた面的なスワス測深とaDcpを用いた流況観測システムを構築した.観測結果の検証においては,計測された河床波形状が既往の知見に整合し,その移動特性と掃流砂量についても妥当な結果が得られた.
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岡田 将治, 萬矢 敦啓, 小関 博司, 工藤 俊
2017 年73 巻4 号 p.
I_541-I_546
発行日: 2017年
公開日: 2018/02/28
ジャーナル
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近年,超音波の散乱強度を用いた浮遊砂濃度の推定技術が進展してきたが,精度検証のための浮遊砂取得技術が課題となっている.本研究では改良したバンドーン型採水器を用いて石狩川において浮遊砂観測を実施した.その結果,高流速時の河床近傍においても採水が可能であることを確認するとともに,河床材料と異なる一様な粒径の浮遊砂の採取に成功した.さらに,実測したデータをウォッシュロードを考慮したラウスの浮遊砂濃度分布式に適用し,実測した浮遊砂の鉛直分布を再現することができた.
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森田 大詞, 川尻 峻三, 渡邊 康玄, 田中 悠暉
2017 年73 巻4 号 p.
I_547-I_552
発行日: 2017年
公開日: 2018/02/28
ジャーナル
フリー
常呂川水系無加川では,河床の礫が流出し,その下部の軟岩や火山灰層が露出した場合には,洗掘や河床低下が急激に進行する.このため,洗掘抵抗が低い軟岩や火山灰層の空間的な分布を把握することは防災計画を立案する上で重要である.地盤剛性に関するパラメータであるS波速度の2次元分布を取得可能な表面波探査は有用な方法であるものの,水流がある河道内での実施例は無い.本研究では,水流の影響を低減できる治具の開発,水面下での地震計の設置方法,河道内での起振方法について検討した.その結果,新たに検討した手法を用いて得られた水面下でのS波速度は現地の状況と良く一致した.また,深度6mまでの結果に着目すると,水面下の河道内から陸域までのS波速度分布の連続性は良好であった.
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渡辺 豊, 河原 能久, 北 真人
2017 年73 巻4 号 p.
I_553-I_558
発行日: 2017年
公開日: 2018/02/28
ジャーナル
フリー
河川の物理環境データ(河床高, 植生等)は, 河川計画や管理の根幹を支えるものであり, その質・量をさらに充実させていくことが求められている.河川の物理環境は場所的にも時間的にも変化するため,迅速かつ低コストで正確に計測することが必要である.本研究は,UAVを用いたレーザ測量を太田川の植生が密生する区域において実施し,GPS測量との比較を通して,その精度を検討するとともに, 波形解析の有効性を示した.また,実務における効率化なデータの取得に関連するレーザのパルスレートや照射角度の点群数に与える影響を評価した.
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角 哲也, 森田 佐一郎, 小宮 秀昭
2017 年73 巻4 号 p.
I_559-I_564
発行日: 2017年
公開日: 2018/02/28
ジャーナル
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黒部川において,2001年より出し平ダムと宇奈月ダムの連携排砂および通砂が実施されている.流砂系の総合土砂管理の観点からは,排砂時の貯水池内および下流河道の土砂の量と質のモニタリングは極めて重要となる.特に,SS濃度は下流河川の魚類に対する影響などを評価する上でも重要な指標であり,実時間で計測し可能な限りダム操作に反映させることが重要である.本論文では,2015年および2016年の排砂時の高濃度SSの連続観測結果を紹介する.これらのデータは,高精度の差圧センサーを用いた水中型SMDP(以下,水中型SMDP)を用いて計測されたものである.計測データは,直接採水によるデータと良好に一致し,水位低下に伴って高濃度が発生する自然流下直前のゲート操作を実時間で管理するために有効に活用された.
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吉田 圭介, 前野 詩朗, 間野 耕司, 山口 華穂, 赤穗 良輔
2017 年73 巻4 号 p.
I_565-I_570
発行日: 2017年
公開日: 2018/02/28
ジャーナル
フリー
河川計画の策定,河道の維持管理には,河道の地形情報は必要不可欠である.緑色波長域のレーザを用いた航空レーザ測深(ALB:Airborne Laser Bathymetry)では陸部・水部を含む広域の連続的な河道形状が計測でき,従来よりも高精度で面的な河道地形が容易に得られる可能性がある.本研究では旭川下流河道6kmの区間を対象にALB計測を行い,河川定期縦横断測量結果などと比較することで,測量精度を検証した.また,ALB計測値を用いて浅水流解析を行い,従来の定期測量の内挿結果を用いた場合の解析結果と比較検討した.
定期横断測量との比較から,ALB計測は数cmから数十cm程度の精度で地形形状を再現できることが確認できた.また,ALBでは2m格子幅で面的に河道を再現することで,砂州と低水路の形状が以前よりも鮮明になり,流況解析では洪水時の流れの集中箇所が明確になることを示した.
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谷 昂二郎, 藤田 一郎, 吉村 英人
2017 年73 巻4 号 p.
I_571-I_576
発行日: 2017年
公開日: 2018/02/28
ジャーナル
フリー
開水路粗面乱流において発生する水面変動を取り扱う研究においては,特に計測に伴う困難が重要な課題である.数値計算結果の検証に用いることを考慮した場合,高分解能かつ三次元的な計測が必要となるが,これらを共に満たす計測は過去に例を見ない.本研究では,位相画像解析による面的変位計測手法であるサンプリングモアレ法を用いることで,以上の課題を解決した.底面に粗度要素としてガラスビーズを敷き詰めた実験水路において同手法による水面変動計測を実施し,水面変動強度や水面の時空間変動特性についての知見を得た.
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田中 智大, 吉岡 秀和, 木村 匡臣, 山崎 大
2017 年73 巻4 号 p.
I_577-I_582
発行日: 2017年
公開日: 2018/02/28
ジャーナル
フリー
高速な洪水・氾濫計算を実現できる数値モデルの中核として,浅水方程式の慣性項を無視した局所慣性方程式が注目されている.局所慣性方程式を有限差分法によって離散化する場合,摩擦項の半陰的な取り扱いが数値解の安定性を担保し,陽的な取り扱いと比較して許容タイムステップを著しく大きく指定できることが経験的には指摘されてきた.しかし,摩擦項の取り扱いが数値解の安定性に及ぼす影響を理論的に定量化した研究例はない.本研究では,von Neumannの安定性解析を用いて,線形化した摩擦項の取り扱いが空間1次元の局所慣性方程式に対する数値解の安定性に及ぼす影響を定量的に検討した.安定性解析の結果から,摩擦項を陽的に離散化した場合の許容タイムステップが半陰的な場合と比較して著しく小さく,空間ステップが大きい場合に極限値を持つことを示した.また,半陰的な離散化はこの事態を回避できることも示した.さらに,理論的な安定性解析の結果が数値実験の結果と良好に一致することを示した.本研究から,局所慣性方程式に基づく実用的な洪水・氾濫解析において摩擦項の半陰的な取り扱いが果たす役割の重要性が定量的に解明された.
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新井田 靖郎, 仲敷 憲和, 坂井 伸一, 坪野 考樹
2017 年73 巻4 号 p.
I_583-I_588
発行日: 2017年
公開日: 2018/02/28
ジャーナル
フリー
本研究では,負の浮力を持つ密度噴流を計算する3次元数値モデルを液化天然ガス基地から冷排水が放水される現地海域に適用し,観測結果との比較を通じて,モデルの妥当性を検証する.計算結果は冷排水が希釈されながら,海底に向かって沈み込み,潮汐によって拡散範囲を変化させる一連の過程を定性的に再現し,現地観測で得られた水温ともよく一致した.一方,本モデルによる水温低下範囲は,従来沿岸域での負の浮力を持つ密度噴流の拡散計算に用いられてきた平面2次元数理モデルによる水温低下範囲より狭くなった.これは平面2次元モデルが斜面を流下する冷排水の混合挙動を評価できない為であり,複雑な地形の沿岸域での負の浮力を持つ噴流の拡散予測には,本3次元モデルのように,海底地形条件を直接考慮できる手法が必要である.
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Akihiko NAKAYAMA, Wei Song KONG, Lap Yan LEONG
2017 年73 巻4 号 p.
I_589-I_594
発行日: 2017年
公開日: 2018/02/28
ジャーナル
フリー
The density re-initialization technique and the wall model are introduced to the weakly compressible smoothed hydrodynamics (WCSPH) to improve the prediction of high speed turbulent flows by large eddy simulation. The improved method is examined by comparing with the experimental results of flow past ski-jump flip bucket and the corresponding calculation results of existing method. The calculated nappe flow trajectory and the spread of the flow agree well with the experiment and better than the existing Finite Element Method. It is due to the improved representation of the wall shear stress and the near wall near the flip bucket. The density re-initialization contributed to the stable distribution of the density and the pressure.
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柏田 仁, 二瓶 泰雄
2017 年73 巻4 号 p.
I_595-I_600
発行日: 2017年
公開日: 2018/02/28
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河川水位の縦断分布をリアルタイムで精度良く算定するために,離散的な水位の「点」データから,一次元不定流解析における運動方程式と連続式を満足する形で水位の「線」データに内外挿できる新たなデータ同化手法を開発した.本手法の精度や有効性を調べるために,仮想・実河川条件下に本手法を適用し,水位縦断分布推定精度と実洪水への適用性を検証した.その結果,本手法は,マニングの粗度係数
nを介して水位データを同化することができており,河道条件を踏まえた適切な間隔の水位データと組み合わせることで,高精度な水位縦断分布の推定が可能となることが示された.また,複断面河道を有する実河川洪水流データに対しても本手法は適用可能であり,水位データ同化によって河道状態を合理的に数値モデルに反映できており,本手法の基本的な有効性が明らかとなった.
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