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Kornravee SAIPETCH, Quynh Nga LE, Manabu FUJII, Chihiro YOSHIMURA
2017 年73 巻4 号 p.
I_1201-I_1206
発行日: 2017年
公開日: 2018/02/28
ジャーナル
フリー
Flow conditions are known to affect nitrogen transformation in freshwater environments. However, these effects have mainly been examined in interaction with the biofilm present on bed sediment. Therefore, this study investigated the relationship between the degree of turbulence and nitrification in a suspended phase of the water column. All experiments were performed in batch reactors equipped with stirrers set at six different rotational speeds varying from 15 to 1100 rpm, which correspond to Reynolds number (Re) from 540 to 39,500. The results showed that an increase in Reynolds numbers had effects on both ammonium and nitrite oxidation processes. The optimum ammonium oxidation rate constant (k
NH4+) was at laminar condition (Re = 2000), although the specific growth rate of the ammonium oxidizing bacterium
Nitrosomanas europaea (μ
AOB) were equal in all experimental conditions. On nitrite oxidation process, at Reynolds number up to approximately 4000 both nitrite oxidation rate constant (k
NO2-) and specific growth rate of the nitrite oxidizing bacterium
Nitrobacter winogradskyi (μ
NOB) were stimulated. At Reynolds numbers greater than Re 10,800, turbulence had an adverse effect that inhibited nitrite oxidation process. Thus, the present study emphasizes the importance on including turbulence as one of important factors which influences the efficiency of nitrification in freshwater column.
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赤松 良久, 河野 誉仁, 乾 隆帝, 宮本 仁志
2017 年73 巻4 号 p.
I_1207-I_1212
発行日: 2017年
公開日: 2018/02/28
ジャーナル
フリー
河川環境を把握する際に,水温は最も基本的な環境条件のひとつであるが,常設設備による河川水温のモニタリングはほとんど行われていない.そこで,本研究では中国地方の10の一級水系を対象として,河川水温の連続モニタリングを実施し,流域の上流から下流までの水温の連続データから各河川の水温変動特性を明らかにした.具体的には高津川の水温変動は湧水・地下水の影響を受けていることや,吉井川や小瀬川ではダム下流地点では気温の変化に対する水温の変化の応答が鈍いことが推察された.さらに,河川水温の連続モニタリングに基づく生物環境評価の可能性が示された.
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徳田 大輔, 山崎 大, 沖 大幹
2017 年73 巻4 号 p.
I_1213-I_1218
発行日: 2017年
公開日: 2018/02/28
ジャーナル
フリー
河川水温は,河川環境や利水と深く関係する物理量であり,また河川の氾濫は,河道と氾濫原にある水を混合することによって河川水温に影響を及ぼすことが明らかになっている.一方で河川の氾濫によって水深の浅い浸水域が広がることで,水面面積や滞留時間が増加し,大気や土壌と交換される熱量の増加や,水深に応じた下向き放射の吸収量の変化による熱収支の寄与割合の変化がもたらされると考えられる.本研究ではこれらの働きを評価するために,水面面積の変化を考慮して熱収支を解く河川水温モデルを開発した.これと河川流下モデルを結合した計算について,タイの観測所における流量,熱収支や河川水温の再現性を検証した上で,氾濫原考慮の有無によって河川水温がどの程度異なるかを算定した.
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森本 優希, 林 利洋, 中本 健二, 日比野 忠史
2017 年73 巻4 号 p.
I_1219-I_1224
発行日: 2017年
公開日: 2018/02/28
ジャーナル
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京橋川の河岸に堆積したヘドロの浄化と生態系の再生を目的とした石炭灰造粒物層による底質改善効果の実証が2011年から行なわれている.本論文では河岸干潟に構築した石炭灰造粒物層に継続的に沈降・堆積する有機泥の浄化効果を明らかにした.構築初期の浄化機能として実証された(1)冠水中の造粒物層内で酸素の保持,(2)堆積泥の掃流,(3)堆積泥内での還元状態の抑制等の効果が3年間継続して発現されていることが明らかにされた.これらの効用は洪水により急速に堆積した有機泥の減量と性状変化に現れており,造粒物の掃流効果を確認することができた.
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工藤 功貴, 片岡 智哉, 二瓶 泰雄, 日向 博文, 島崎 穂波, 馬場 大樹
2017 年73 巻4 号 p.
I_1225-I_1230
発行日: 2017年
公開日: 2018/02/28
ジャーナル
フリー
近年,直径5mm以下の微細プラスチック片(microplastics,以下MP)による環境影響が懸念されている.海洋では多くの調査・研究が行われているが,河川での調査例は少なく,調査手法も統一されていない.現地観測を行う際,プラスチック製用具の使用や周辺環境中のプラスチックとの接触による予期せぬプラスチック混入はMP採取量の誤差要因となるため,プラスチック混入への十分な配慮が必要となる.そこでまずMP調査手法に関して基礎的検討を行った.検討結果を踏まえ,これまで国内18河川で実施したMP調査の結果を整理した.得られたMP数密度(0.0064~2.5 個/m
3)は日本近海(0.6~4.2 個/m
3)
13)より1オーダー小さく,地点毎に材質構成に違いが見られた.サイズは2mm以下がほとんどであった.
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北野 慈和, 山本 太郎, 小林 彩佳, 山田 朋人
2017 年73 巻4 号 p.
I_1231-I_1236
発行日: 2017年
公開日: 2018/02/28
ジャーナル
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2016年8月,複数の台風に起因する豪雨が北日本周辺に発生し河川の氾濫や土砂災害が頻発した.これらの台風は,太平洋沖を東方へそれずに北進し,北海道及びその周辺に到達するという経路をたどった.本研究では,1961-2016年の過去56年間に北海道に接近した台風を,北海道接近時に日本海,日本列島,太平洋を通過するもので分類した.これら3つの経路のうち北海道接近時に太平洋を通過する台風が2011年以降の6年間に頻発した.同経路は,平年よりも北日本近海に太平洋高気圧が張り出した際に多く,2016年8月に多発した.
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筒井 浩行, 澤田 洋平, 小池 俊雄
2017 年73 巻4 号 p.
I_1237-I_1242
発行日: 2017年
公開日: 2018/02/28
ジャーナル
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これまでオーストラリア大陸の干ばつは,10年に一度と言われてきた.しかし1994/95年・2002/03年・2006/07年・2007/08年と干ばつが頻発し,穀物生産高に大きな被害をもたらした.特に2006/07年の干ばつは,観測史上最悪な干ばつと言われ,オーストラリアにおいて干ばつは深刻な問題となっている.一方,植生動態-陸面データ同化システム(Coupled Land and Vegetation Data Assimilation System)が開発され,検証を通じて,その性能や推定精度が認められ,JAXA GCOM-Wプロジェクトにおける研究プロダクトに採択された.本研究では,地球観測データ統融合連携研究機構 地球環境情報統融合プログラム(DIAS-P)の枠組みにおいて,本システムによりシミュレーションされたオーストラリア大陸における陸面水文量と植生動態のアウトプット(土壌水分・水ストレスファクター・LAI,2003年1月1日~2010年12月31日)を用いたStandard anomaly解析を実施し,本システムによるオーストラリア大陸における渇水予測の可能性を検討した.
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田内 裕人, 中村 誠, 江種 伸之, 平田 健正
2017 年73 巻4 号 p.
I_1243-I_1248
発行日: 2017年
公開日: 2018/02/28
ジャーナル
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平成23年台風12号の豪雨により,紀伊半島では大規模土砂災害が多発した.本研究では,気象庁の土壌雨量指数を用いた大規模土砂災害発生予測の知見蓄積を目的とし,紀伊半島南部の土砂災害現場を対象に,降雨パターンと土壌雨量指数の時系列変化に着目した解析を行った.その結果,表層崩壊・土石流現場では,土壌雨量指数が崩壊の約3時間前に履歴1位を上回った後,猛烈な雨により土壌雨量指数第1段タンクの貯留高が急激に上昇したことが分かった.また深層崩壊発生現場では,土壌雨量指数が長時間継続する強雨により履歴1位を上回り,土壌雨量指数の第2, 3段タンク合計貯留高がピーク近くになった際に崩壊が発生したことが確認された.以上により,土壌雨量指数を活用した表層崩壊・土石流と深層崩壊の発生予測に関する重要な知見が得られた.
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陳 翔, 平川 隆一, 大本 照憲, 沼口 慎太郎
2017 年73 巻4 号 p.
I_1249-I_1254
発行日: 2017年
公開日: 2018/02/28
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家屋の形状と配置が氾濫流の挙動に与える影響は大きい.本研究では,2012年7月12日九州北部豪雨の中で甚大な洪水被害を受けた熊本県熊本市龍田陳内四丁目を対象とし,家屋の存在を考慮した平面二次元氾濫数値解析を実施した.LPデータをもとに詳細な地形データおよび国土地理院地図と航空写真から家屋情報の抽出を行った.数値解析の結果,堤内地家屋の配置と形状を考慮した洪水流量の違いによる最大浸水深および流況が明らかになった.また,家屋付近の流束運動量分布および構造物に作用する流体力は,洪水流量が増えるにつれて上流側と下流側の越流部付近で特に大きくなることがわかった.
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押川 英夫, 大串 浩一郎, 杉原 裕司, 小松 利光
2017 年73 巻4 号 p.
I_1255-I_1260
発行日: 2017年
公開日: 2018/02/28
ジャーナル
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地球温暖化に伴う災害外力の増加などに因る大規模水災害の発生が危惧されており,今後,流水型ダムの積極的な活用が必要になってくるものと考えられている.本研究では,自然流下方式である流水型ダムの洪水制御に関して,ダム湖の貯水位と放流量の時間変化を簡便に評価できるモデルを作成した.また,実験結果等との比較を通してモデルの精度について検討したところ,貯水位のピーク値については精度良く再現できていることから,治水計画で特に重要となるピーク流量については高精度な推定が期待できる.本モデルでは,貯水位が陰的な積分方程式で表現されており若干の数値計算が必要となるものの,表計算ソフト等で容易に解を求めることができることから,流水型ダムの効果の概算が必要な場合には非常に有用である.
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川尻 峻三, 川口 貴之, 早川 博, 中村 大, 渡邊 康玄, 森田 大詞, 田中 悠暉
2017 年73 巻4 号 p.
I_1261-I_1266
発行日: 2017年
公開日: 2018/02/28
ジャーナル
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堤防周辺における空気湧出の発生は,高水位作用を受けた堤防の安全性低下に関する予兆と考えられるため,その発生要因や発生時の堤体内の状況を理解することは工学的に重要である.本研究では,裏のり尻で空気湧出が確認された堤体に対して,堤体内部構造を把握するために表面波探査を行った.また,土質構成を確認するため,空気湧出発生箇所で試掘を行った.その結果,空気湧出が確認された付近では,高水位前後でS波速度は低い値を維持していた.土質構成は層厚1m程度の乾燥したシルト層の下部に湿潤状態の砂層が分布しており,砂層からは湧水が発生していた.このことから,S波速度の低速度領域では飽和状態かつ間隙水圧が作用していると考えられ,砂層からの水が不飽和状態にあるシルト層へ浸透する際に空気湧出が発生したと推定される.
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辻本 浩史, 増田 有俊, 本間 基寛, 吉開 朋弘, 真中 朋久
2017 年73 巻4 号 p.
I_1267-I_1272
発行日: 2017年
公開日: 2018/02/28
ジャーナル
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アンサンブル予測データと簡易的な洪水規模評価手法を組み合わせて,台風による大雨洪水リスクをシナリオとして提示する手法を検討した.解析には51個のメンバーからなるECMWFアンサンブルデータのうち気圧と雨の予測値を用いた.気圧データから抽出した51個の予想台風進路を,経路と速度を考慮したクラスター分析により3種類のシナリオに分類した.各台風進路による予測雨量についてはバイアス補正を行い実測値との適合度を高め,洪水リスクは洪水到達時間内の平均降雨強度によって近似的に評価した.本手法を平成27年9月関東・東北豪雨に適用した.その結果,予測シナリオの一つは実際の降雨分布と洪水規模を良好に予測できていた.また,台風18号の進路がわずかに西へシフトするシナリオでは多摩川における既往最大規模の洪水を予測していた.
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大塚 理人, 高崎 忠勝, 河村 明, 天口 英雄, 石原 成幸
2017 年73 巻4 号 p.
I_1273-I_1278
発行日: 2017年
公開日: 2018/02/28
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本論文は,東京都の都市中小河川である善福寺川の時間50mmの降雨に対応する河川改修の未完了区間において,溢水の発生頻度や豪雨時に浸水被害を発生し得る降雨規模,河川溢水を生じるまでの時間等の治水安全性について検討を行ったものである.都市域の流出特性を考慮した都市貯留関数モデルを用いた検討の結果,対象地点ではおよそ2年に一度の頻度で溢水が生じていると示唆された.また,豪雨時には60分雨量30mmや30分雨量20mm程度が流域内で浸水被害を生じる雨量の閾値となり,その後極めて早く河川溢水が生じる可能性があることから,予測雨量を利用した避難行動が望まれることを示した.
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久松 力人, 河辺 賢, 水野 佑亮, 篠塚 義庸, 堀江 啓
2017 年73 巻4 号 p.
I_1279-I_1284
発行日: 2017年
公開日: 2018/02/28
ジャーナル
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洪水被害と浸水深との関係性を示す被害関数は,自然災害リスクを計算する上で重要であるが,その研究事例は少ない.既往研究では,家屋損害は主に氾濫流の数値解析あるいはヒアリング調査により算出されてきている.損害保険会社は膨大な保険金支払情報を所有しており,それらを活用することにより,実被害情報を被害関数に反映することが期待できる.そこで本研究では,洪水被害関数の蓄積を目的に,平成27年9月関東・東北豪雨における保険金支払情報を活用し,建物および内容物の洪水被害関数を構築した.まず,保険金支払情報を入手し,物件毎に損害率を計算した.次に,洪水の再現計算を行い,損害率と推定浸水深のデータセットを作成した.最後に,建物・内容物別に被害関数を構築した.
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佐藤 裕和, 遠藤 雅実, 砂原 啓人, 黄 光偉, 磯部 雅彦
2017 年73 巻4 号 p.
I_1285-I_1290
発行日: 2017年
公開日: 2018/02/28
ジャーナル
フリー
従来浸水深で表現されることの多かった洪水ハザードマップについて,複数の外力指標を組み合わせて表現する方法を提案した.次元の異なる複数の指標に対して,避難可能上限値をもとに正規化した後,相乗平均によって危険外力指標の影響を陽に取り入れた.また,危険度を100点満点で表現するよう再度工夫を施し,多様な立場からの利用が想定される新しい洪水ハザードマップの見通しにも配慮した.様々な地形とハイドログラフを想定した予備数値実験によって提案ハザードマップの基本的性質を確認した後,斐伊川水系三刀屋川を対象にして検討を行った.その結果,情報提示上の工夫には今後の改善の余地が残ったものの,浸水深以外の外力指標,特に流体運動に起因する危険性を抽出できる可能性を示唆した.
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宮原 海, 田中 規夫
2017 年73 巻4 号 p.
I_1291-I_1296
発行日: 2017年
公開日: 2018/02/28
ジャーナル
フリー
近年,橋桁や橋脚等で流木が捕捉されることによる氾濫被害が数多く観測されている.本研究では,伊豆大島豪雨災害での事例を元に,水理模型実験を行い,急勾配河川における落差工が橋桁における流木トラップに与える影響について検討した.加えて,根鉢を考慮したモデルを用いて実験を行うことで,流木の形状による集積率の変化について考察した.その結果,落差工と橋桁の位置関係が流木の集積率を増減させる要因となることを明らかにした.落差工が橋桁の上流側にある場合の流木の集積率は最大で65.5%を示し,投下本数の半数以上が捕捉されるという結果を得た.また根鉢を考慮した実験を行い,根鉢を考慮しない場合と比較して流木の集積率は定常流で最大13.7倍,非定常で最大4.5倍,全体としては1.5倍であった.
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桜庭 拓也, 二瓶 泰雄, 倉上 由貴, 入江 美月
2017 年73 巻4 号 p.
I_1297-I_1302
発行日: 2017年
公開日: 2018/02/28
ジャーナル
フリー
本研究では,2016年熊本地震とその後の洪水(熊本県木山川)による複合災害の実態や洪水氾濫メカニズムの検討を行うことを目的とする.具体的には,(1)木山川を含む緑川水系における地震時の堤防被害調査,(2)6月20日豪雨による木山川の堤防被害・洪水氾濫調査,という二つの現地調査を実施した.その結果,2016年熊本地震では,堤防の天端・表のり面の縦・横断亀裂や天端沈下が秋津川や木山川のような県管理区間でも広範囲に生じていた.木山川では,地震による天端沈下(10cm程度)と豪雨による堤防決壊・洪水氾濫が生じるという複合災害が発生した.そこでは,沈下対策に設置された土嚢上の越流に加えて,土嚢直下のパイピングによる土嚢の不安定化が決壊を助長した可能性が示唆された.
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風間 聡, 峠 嘉哉, 高橋 範仁
2017 年73 巻4 号 p.
I_1303-I_1308
発行日: 2017年
公開日: 2018/02/28
ジャーナル
フリー
平成28年台風第10号は,特異な経路をたどり,東北地方の太平洋側から上陸し,住宅被害が全壊・半壊・床上浸水等,約3000棟に上るとともに,22名の死者と5名の行方不明者が発生した.洪水氾濫により甚大な被害が発生した岩手県岩泉町乙茂地区を流れる二級河川小本川を対象として,外的要因(降雨状況,河道水位),地形的要因,氾濫流況を基に,洪水発生状況の考察を行った.地形状況や氾濫流況から,当該地区においては,改めて,早期の避難が重要となることを示すとともに,避難判断等の簡易な目安として,メソ数値予報モデルを活用することの有効性を示した.
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泉谷 依那, 中野 晋, 安芸 浩資, 三好 学
2017 年73 巻4 号 p.
I_1309-I_1314
発行日: 2017年
公開日: 2018/02/28
ジャーナル
フリー
洪水災害で犠牲にならないために早期の積極的かつ適切な避難行動が求められるが,実際に避難行動をする住民は多くない.地形や環境条件によって被害の様相が異なる洪水災害には地域差があり,適切な避難行動を促進する方策を一般論で語ることは難しい.本研究では徳島県那賀町和食地区を対象とし,洪水氾濫解析及び住民への聞き取り調査を実施した.2014年台風11号及び2015年台風11号における浸水の様相と住民の避難行動を検証した.住民避難を妨げる要因には,浸水経験による慣れ,不十分なリスク理解,正常性バイアスの作用などがあることを示した.これを防ぐためには専門家と知識を共有するための防災研修や避難訓練を通して,避難しないことのリスクについての理解を図ることが重要である.
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野原 大督, 堀 智晴, 佐藤 嘉展
2017 年73 巻4 号 p.
I_1315-I_1320
発行日: 2017年
公開日: 2018/02/28
ジャーナル
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現業中長期アンサンブル降水予測情報を考慮した実時間ダム利水操作手法の検討を行った.気象庁の週間アンサンブル予報と1か月アンサンブル予報の降水量予測値を利用し,分布型流出モデルHydro-BEAMを用いて1か月先までのダム流入量のアンサンブル予測値を算出した.その上で,1か月先までのダム利水放流の最適化計算を行い,得られた放流戦略に従った放流を日別で行うものとした.最新の予報データが得られる度に,流入量予測の算出および利水放流の最適化計算を実施し,更新された最適戦略に従った放流を実施することとした.吉野川流域早明浦ダムの利水操作を元に単純化したダム操作を対象に適用を行ったところ,予測情報を考慮せずに平年値に基づいて操作した場合と比較して提案手法では渇水被害を抑える結果となり,ダム利水操作への現業中長期アンサンブル降水予測情報の利用可能性が示された.
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吉川 泰弘, 岡部 博一, 橋場 雅弘, 森田 共胤
2017 年73 巻4 号 p.
I_1321-I_1326
発行日: 2017年
公開日: 2018/02/28
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本研究の目的は,取水堰上流における河川縦断方向の晶氷変動現象の解明である.晶氷の発生・輸送・堆積を考慮した計算モデルを構築した.過去に冬期の取水障害が発生した実河川において,晶氷輸送量および氷板・晶氷断面積の現地観測を実施した.観測値および計算値に基づき,晶氷変動現象を推定した.結氷は取水堰から始まり,時間の経過とともに上流へと進む.水面で発生および輸送される晶氷は,下流の氷板下に堆積する.結氷の先端地点の上流に近いほど,晶氷面積は早い段階で急激に増加する.その後,上流の晶氷が下流へと流れて,下流において晶氷面積が急激に増加する.冬期の取水障害の危険性が高い時期は,結氷の始まりの時期と,結氷後に上流から晶氷が輸送される時期であることが推察された.
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田端 幸輔, 福岡 捷二
2017 年73 巻4 号 p.
I_1327-I_1332
発行日: 2017年
公開日: 2018/02/28
ジャーナル
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洪水時の河川堤防の破壊危険性を理解し,弱点箇所の堤防強化や危機管理対策を進めていくことは,極めて重要な治水課題である.著者らはこれまでに堤体浸透に起因した浸透,裏法滑り破壊危険確率の算定法及び堤防脆弱性指標を提案した.本論文では,基盤漏水に起因した堤防破壊を対象とし,洪水時における基盤透水層内の浸透水の挙動と圧力水頭分布を準二次元浸透流解析の枠組みで見積もることで,被覆土の盤膨れの発生と,パイピング発生時の砂の抜け出しによる堤体の安定性低下を評価する手法を提案する.そして本手法により,実際に洪水中に起こったパイピングによる堤防破壊及びその危険性を説明できることを示し,今後の検討課題を論じている.
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倉上 由貴, 浅野 友里, 篠原 麻太郎, 二瓶 泰雄, 成島 一輝, 町田 陽子, 桜庭 拓也, 菊池 喜昭
2017 年73 巻4 号 p.
I_1333-I_1338
発行日: 2017年
公開日: 2018/02/28
ジャーナル
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ドレーン工の形状や配置条件が堤体内の浸透挙動・安全性に及ぼす影響を明らかにするために,模型堤防(高さ1.0 m)の浸透実験及び二次元飽和・不飽和浸透流解析を実施した.ここでは,標準型ドレーン工に加え,施工が容易な裏のり面及び裏のり尻保護強化ドレーン工を対象とする.実験結果より,裏のり面ドレーン工では土堤と標準型ドレーン工の間の浸潤面高さとなっており,浸潤面低下に一定の役割を果たした.また,数値解析結果より,ドレーン層の幅を大きくすると局所水平動水勾配が大きくなる場合があるため,裏のり面ドレーン工には適切な幅の選定が必要である.裏のり尻保護強化ドレーン工の場合では,土堤よりも浸潤面は低下するが,その効果は裏のり面ドレーン工よりは小さい.
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鳥谷部 寿人, 吉川 泰弘, 岡部 博一, 田中 忠彦
2017 年73 巻4 号 p.
I_1339-I_1344
発行日: 2017年
公開日: 2018/02/28
ジャーナル
フリー
本研究は結氷河川におけるアイスジャム発生と河道形状の関係を明らかにすることを目的としている.水理模型実験を用いた既往研究では,河氷の速度,幅,厚さ,長さ,川幅の拡縮割合を用いてアイスジャムの規模を表し,アイスジャムによる河氷の速度の減衰割合を評価している.しかしながら,既往研究では支川合流の影響を考慮していない.本研究では支川合流を考慮した水理模型実験を行ない,アイスジャムの規模を表す値の適用性について検討した.さらに平面2次元不等流計算で算出したアイスジャムの規模を表す値から河氷速度の減衰割合を推定し,縦断的な河道変化に伴うアイスジャムの発生危険箇所を抽出した.
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島田 友典, 渡邊 康玄, 岡部 博一, 岩崎 理樹, 中島 康博
2017 年73 巻4 号 p.
I_1345-I_1350
発行日: 2017年
公開日: 2018/02/28
ジャーナル
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近年,堤防決壊が頻発する中,破堤被害軽減技術の構築は重要であるが,それには破堤現象の解明が不可欠である.千代田実験水路を用いた破堤実験により様々な知見を得ているが限られた河道条件である.そこで実験をもとに開発された数値計算モデルを用いて,川幅と河床勾配が破堤現象に与える影響について検討を行った.河床が急勾配では川幅の広狭によらず縦断方向に破堤拡幅が進行すること,河床勾配が緩くなるにつれ落掘の発達が顕著になり川幅が広くなると氾濫流況は正面越流に近くなることなど,河道特性を4つのカテゴリーに分類し破堤現象の相違を明らかにし,効果的な減災工法の考え方を示した.
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原田 紹臣, 高山 翔揮, 里深 好文, 水山 高久, 中谷 加奈
2017 年73 巻4 号 p.
I_1351-I_1356
発行日: 2017年
公開日: 2018/02/28
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我が国では,山林の荒廃や集中豪雨等の影響を受け,橋梁等における流木による被害が多く報告されている.これらの被害を軽減するため,土石流とともに発生する流木に対して,上流域の山地河川において対策を講じることは重要である.近年,これまで構築されてきた不透過型砂防堰堤における流木捕捉機能の不足が指摘され,鋼材の併用により流木対策機能を強化する考え方が設計指針において示された.ただし,効果的な流木対策の計画や設計を目的に,これらの示された構造における流木捕捉機能に関する更なる理解が急務であると考えられる.そこで,我々は基礎的な水路実験によって,流木の回転や堆積機構等を考慮した流木対策の計画や設計における留意点について考察した.
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中谷 加奈, 長谷川 祐治, 里深 好文, 水山 高久
2017 年73 巻4 号 p.
I_1357-I_1362
発行日: 2017年
公開日: 2018/02/28
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鋼製透過型砂防堰堤の土砂の捕捉効果は,土石流の偏心角が0度,すなわち捕捉面に対して直角に土石流が流入した場合を基本とするよう指針で定められている.一方,湾曲等の地形が流れに影響を及ぶ位置に堰堤が設置されると,偏心角を持って土石流が堰堤に流入する場合がある.しかし,土石流の偏心角を考慮した透過型堰堤の捕捉効果の検討は行われていない.本研究では,水路実験により偏心角を変えた検討を行い土砂の捕捉効果を確認した.結果から,偏心角を持つ場合は0度と比較して,閉塞発生にかかる時間が長く,一度閉塞した土砂の流出が起こりやすく,下流側の柱に流れが集中して,堆積形状に偏りが生じる.また,実験結果から0度の場合と偏心角を持つ場合の閉塞による捕捉過程の違いを考察して,偏心角を持つ鋼製透過型堰堤の留意点を示した.
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五十嵐 孝浩, 竹林 洋史, 浜田 裕貴, 的場 萌実, 飛岡 啓之, 澤田 悦史, 平川 了治, 上村 雄介
2017 年73 巻4 号 p.
I_1363-I_1368
発行日: 2017年
公開日: 2018/02/28
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住民一人一人にその時,その場所での土砂災害の危険性を直接通知する土砂災害危険情報サービスの土砂災害危険度判定について,実際の土砂災害の発生と危険度判定の実績から,その的中率(災害発生率),見逃し状況などを既存の方法と比較検討を行うとともに,空振り率,判定時刻と発生時刻の差について検討し,その有効性について確認した.2014年広島豪雨,2015年関東・東北豪雨,2016年の熊本地方の豪雨について気象庁による土砂災害警戒判定メッシュ情報と比較して,その判定区域が絞り込めていること,災害発生予測率が高いことを確認した.
土砂災害発生時刻と判定時刻を比較し,判定が避難に必要なリードタイムを確保できていることを確認するとともに,土砂災害発生に対して危険度判定のあり・なしを確認し,見逃しはあるものの80%以上の災害を判定できていることを確認した.
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牛山 素行
2017 年73 巻4 号 p.
I_1369-I_1374
発行日: 2017年
公開日: 2018/02/28
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一般的に公開されている消防庁などの統計を利用して,日本の自然災害による死者・行方不明者などの経年傾向を検討した.1949~2014年の自然災害全体の死者・行方不明者数,1968~2014年の風水害による死者・行方不明者数は,いずれも統計的に有意な減少傾向が見られる.1970年代以降は増減傾向が不明瞭だが,10年移動平均値は小さくなっている.全壊,半壊,床上浸水家屋数についても傾向は同様である.「近年災害(被害)が激増している」という認識は適切でない.同じ期間における「不慮の事故」(火災,交通事故,山岳遭難,水難)による死者数の変化傾向は一様でなかった.時代の進歩に伴うハード面,ソフト面の対策の充実とともに,死者等が単純に減少していくものではないことが示唆される.
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宮崎 嵩之, 中津川 誠, 西原 照雅
2017 年73 巻4 号 p.
I_1375-I_1380
発行日: 2017年
公開日: 2018/02/28
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本研究の目的は,融雪に伴う土砂災害危険度評価を行うことであり,合わせてそのための実用的な融雪量推定法を提案するものである.近年,日本の至る所で大雨に伴う土砂災害が発生しているが,北海道のような積雪地域では,融雪を誘因とする土砂災害も頻発している.本研究では,積雪重量計による観測データに基づき積雪密度の設定に改良を加えた雪面低下法の他に,熱収支法,デグリーアワー法の3つの手法を用いて融雪量の推定を行った.また,それらによって土壌雨量指数を推算し,スネーク曲線で土砂災害発生危険度を評価できるかを検証した.この結果,土砂災害発生危険度の評価において熱収支法の優位性を確認するとともに,実際の道路管理等の観点からの雪面低下法の改良について提案した.
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渋尾 欣弘, 谷口 健司, 佐貫 宏, 吉村 耕平, 李星愛 , 田島 芳満, 小池 俊雄, 古米 弘明, 佐藤 愼司
2017 年73 巻4 号 p.
I_1381-I_1386
発行日: 2017年
公開日: 2018/02/28
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これまでの想定を超える浸水が多発し,浸水想定区域の見直しが行われているが,沿岸部低平地を流れる都市流域の浸水を精度良く推定するには,河川流出,都市排水,沿岸水理の各要素を一体的に解く事が必要である.また想定する気象外力として,気候変動に伴い変化する将来の台風の規模にも留意する必要がある.さらには想定される浸水に対し,治水対策施設による効果を評価する事も重要である.本研究では総合治水対策が進む鶴見川を対象に,河川・下水道・氾濫・海岸の各要素がシームレスに結合されたモデルの陸域浸水解析機能を用いて,外水・内水氾濫の一体解析を行う.擬似温暖化手法に基づく温暖化台風実験値を外力として解析した結果,既往台風の降雨強度が大きく上昇すると共に,アンサンブル平均で累積雨量373mm,最大時間雨量90mm/hの降雨において,遊水地と貯留管の治水容量が一杯となった.
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石川 忠晴, 赤穗 良輔, 小林 裕貴
2017 年73 巻4 号 p.
I_1387-I_1392
発行日: 2017年
公開日: 2018/02/28
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江戸市街地を水害から守るために17世紀初頭に設置された日本堤の水理機能を,氾濫数値シミュレーションにより検討した.江戸時代の地形条件および水文条件に関する数値データは存在しないので,堤防高と氾濫原地形を明治42年の測量図をもとに作成し,洪水波形は明治44年の全国直轄河川治水計画における荒川計画流量と水文水質データベースに掲載されている2007年9月洪水の観測結果を組み合わせて3種類設定した.シミュレーション結果によれば,従来考えられていた上流低地の遊水量は意外に小さく,日本堤での塞き上げに伴う下流水面勾配増大による隅田川下流への流量増と,綾瀬川合流部を経由した中川低地水田地帯への氾濫水誘導が日本堤の主たる機能であると考えられた.また,このような“水の逃げ道を考慮した遊水機能”により.日本堤の越水破堤の危険性は小さかったものと考えられる.
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橋本 雅和, 川池 健司, 長谷川 祐治, 出口 知敬, 中川 一
2017 年73 巻4 号 p.
I_1393-I_1398
発行日: 2017年
公開日: 2018/02/28
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本研究では,従来の解析ではあまり考慮されていなかった河床上昇による洪水氾濫規模への影響について着目し,分布型流出モデル,一次元河床変動計算,平面二次元洪水氾濫モデルを用いて未観測流域で発生するフラッシュフラッドの氾濫解析を行った.入手可能なデータが限られていることから,2000年4-9月の観測水位・流量を用いて河床変動計算を行った後,2006年4-5月の衛星3時間雨量を用いて流出解析を行い,氾濫解析で用いるための河床高データとフラッシュフラッドによる流量それぞれのデータを作成した.解析結果より,河床上昇を考慮した氾濫解析では考慮しなかった場合に比べて浸水面積に二倍以上の違いがあり,河床上昇考慮の重要性が示された.水文・土砂データ収集および観測を行うことで解析手法を拡張していくことが今後の課題である.
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武田 誠, 野々部 竜也, 川越 陸, 松尾 直規
2017 年73 巻4 号 p.
I_1399-I_1404
発行日: 2017年
公開日: 2018/02/28
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近年,豪雨が多発しており,雨水排水不良に伴う内水氾濫災害が多くの場所で発生している.中部大学が立地している愛知県春日井市では平成23年の台風15号の影響を受けて9月19日から9月21日に断続的な大雨となり,床上浸水214戸,床下浸水183戸の被害を受けた.本研究は,この豪雨災害を対象に,春日井市の内水氾濫解析モデルを構築し,その精度検証を行った.つぎに,得られた解析モデルを活用し,内水氾濫に関する浸水特性を考察した.具体的には,下水道管渠の設置年代を目安に昭和期の下水道システムと現在(平成期)の下水道システムによる浸水解析を実施し,下水道施設の拡張に関わる効果を検討した.また,一つの集水区に着目し,雨水の移動の可視化を行った.これにより,雨水が集水区を跨ぐことの有無を明らかにした.
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小林 健一郎, 中山 恵介, 阪口 詩乃
2017 年73 巻4 号 p.
I_1405-I_1410
発行日: 2017年
公開日: 2018/02/28
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本稿では洪水氾濫解析を実施する際の基礎方程式となる浅水流方程式の適用性に関する検討を実施した.具体的には京コンピュータに実装された浅水流方程式に基づく数値計算プログラムにより高解像度浸水シミュレーションを実施する際の計算精度の検証を行った.検証は強非線形強分散内部波方程式及び平面2次元静水圧モデルを利用した解と比較することにより実施した.結果として,当該モデルは高解像度計算において一定の精度が保たれていることがわかった.したがって,大規模浸水計算において高速計算が可能という観点からの実用上の利点がより明白になった.
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守屋 博貴, 二瓶 泰雄, 水野 力斗, 神垣 崇郎, 片岡 智哉
2017 年73 巻4 号 p.
I_1411-I_1416
発行日: 2017年
公開日: 2018/02/28
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本研究では,2016年台風10号により発生した岩手県岩泉町乙茂地区における洪水氾濫状況を調べるために,現地調査を行うととともに,氾濫発生状況を把握するための洪水氾濫シミュレーションを行った.氾濫シミュレーションとしては,周囲の沢からの流入を捉えるための流出解析と洪水氾濫状況把握のための平面二次元解析を行った.その結果,今次水害の乙茂地区では,17時台の沢からの洪水と18時台以降の小本川上流域から洪水,という2段階の浸水が発生していた.一段階目の初期浸水時では流速が0.5~1.0m/sと早く避難が容易でない水理条件であった.そのため,浸水発生前の避難の重要性が改めて示唆された.
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水野 力斗, 二瓶 泰雄
2017 年73 巻4 号 p.
I_1417-I_1422
発行日: 2017年
公開日: 2018/02/28
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洪水被害に対しては避難判断に重要な初期浸水過程を明示することが重要であるが,排水河川が初期浸水過程に及ぼす影響は未解明である.本論文では洪水氾濫シミュレーションにおける排水河川の取り扱いが初期浸水過程に及ぼす影響を見ることを目的に,排水河川として中川や綾瀬川を対象とする利根川氾濫シミュレーションを実施した.排水河川有と無の計算結果を比べたところ,初期浸水過程ばかりでなく,洪水フロントの南下速度や,氾濫域全域の浸水にかかる時間も排水河川有の方が排水河川無のケースよりも早くなった.また,洪水氾濫シミュレーションにおける初期浸水過程に対して排水河川の扱い方(扱う数や規模)が大きく影響されることが示唆された.
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重枝 未玲, 秋山 壽一郎, 大久保 剛貴, 中木 翔也
2017 年73 巻4 号 p.
I_1423-I_1428
発行日: 2017年
公開日: 2018/02/28
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本研究は,河川横断構造物として堰を取り上げ,その簡易的な取り扱いを組み込んだ新たな平面2次元モデルを構築し,実験結果および実河川へ適用することでその再現性について検討したものである.堰の取り扱いについては,計算格子で形状を再現する方法1,流体力として取り扱う方法2,エネルギー損失として取り扱う方法3を提案した.堰を超える流れの非定常流実験結果に基づく検証から,方法1,方法3,方法2の順で予測精度が高いことを明らかにした.さらに,同モデルを,九州北部豪雨災害で被災した彦山川へ適用し,その実河川への適用性について検討した結果,同モデルは,堰が連続して設置された河川での洪水流を再現できること,などが確認された.
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石田 義明, 久加 朋子, 清水 康行
2017 年73 巻4 号 p.
I_1429-I_1434
発行日: 2017年
公開日: 2018/02/28
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2016年の北海道豪雨は,既往最大を記録するもので,過去に経験をしたことのない大洪水が全道各地で発生した.本論文では,空知川幾寅築堤における2ヶ所の堤防決壊に着目し,破堤と地形特性が氾濫状況に及ぼす影響について検討した.結果,上流破堤部が決壊した後,氾濫流は3m/s以上の高速で下流破堤部へと流れ込んだことが示された.また,下流破堤部の決壊の有無を比較し,この破堤が外水氾濫の排水機能を発現したことで,実質的な洪水被害の軽減につながったことが示された.さらに,今回の氾濫を昔の川の痕跡と比較した結果,氾濫流の流れは後背地の畑の下に隠れていた旧流路跡をたどり,本川へと再合流する様子が再現された.この現象は,水衝部における破堤や溢水箇所が若干異なっても,同様の結果を示すものであった.
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川池 健司, 橋本 雅和, 中川 一
2017 年73 巻4 号 p.
I_1435-I_1440
発行日: 2017年
公開日: 2018/02/28
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2015年9月に発生した常総市の鬼怒川洪水氾濫の再現計算を行った.現地では水田や側溝に堆積した大量の土砂が問題になったことから,解析では洪水流の氾濫のみならず,それにともなう土砂の堆積の再現も試みた.さらに,水田地帯の畦畔を有限な高さをもつ直立壁として,水路網をノードとリンクからなる1次元ネットワークとしてモデル化した.解析で得られた最大浸水位は実測の浸水位とよく一致し,越水地点ならびに決壊地点の近傍では地表と側溝にそれぞれ50cmほどの土砂が堆積する結果となった.このような土砂の堆積は水田の作物への直接的な被害になるとともに,側溝に堆積した土砂は水路網の排水機能の著しい低下を起こしたと推測される.
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村瀬 将隆, 中島 勇介, 武田 誠, 川池 健司, 松尾 直規
2017 年73 巻4 号 p.
I_1441-I_1446
発行日: 2017年
公開日: 2018/02/28
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近年,東日本大震災による津波災害や,平成27年の鬼怒川破堤による洪水災害など,大規模な浸水災害が生じている.地下鉄や地下街など高度に地下空間が活用されている都市域に対して大規模な浸水災害が生ずれば,その氾濫形態は複雑化することが考えられ,地下空間の浸水被害のみでは無く,地下鉄の線路が新たな水路となり,他地域への浸水を広めることも考えられる.本研究は,名古屋と大阪の地下鉄を有する都市域を対象に,洪水破堤による大規模な浸水解析を行い,地下鉄の有無による浸水被害の違いや地域による浸水特性を明らかにする.
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武田 誠, ケンインヒ , 村瀬 将隆, 中島 勇介, 川池 健司, 松尾 直規
2017 年73 巻4 号 p.
I_1447-I_1452
発行日: 2017年
公開日: 2018/02/28
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大規模浸水の計算の場合,計算領域も大きくなるので,計算量を抑えるために計算格子幅は極端に小さくできない.一般には,計算格子幅は50m程度(最近では25m程度)が採用されている.このような場合,小河川の水理は無視(河川内は満水と仮定)している場合があり,さらに都市の中の下水道施設も影響が小さいと仮定して無視される場合が多い.本研究では,大規模浸水の計算に対して,小河川および下水道システムを取り扱い,その影響を数値解析的に検討する.それらの配置に依存するであろうが,本研究の場合,小河川や下水道システムの影響は,破堤箇所付近では大きな差が生じなかったが,氾濫水の拡がりと浸水の低下において影響が生じた.また,地下鉄などの浸水の面からも,大きな差は生じておらず,大規模な浸水深の状況は大きく変わらない結果となったことが考えられる.
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関根 正人, 小林 香野
2017 年73 巻4 号 p.
I_1453-I_1458
発行日: 2017年
公開日: 2018/02/28
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本研究では,荒川と隅田川で挟まれたエリアを対象として,荒川破堤時の大規模浸水についての数値予測計算を行った.このエリアには大口径の幹線下水道を含む高密度の下水道ネットワークと,旧中川・北十間川などの内部河川,さらにはこれらを結ぶ多数のポンプ所が整備されている.下水道など排水施設の状況を考慮して3通りの計算を行い,それぞれの氾濫状況の違いについて比較した.その結果,本エリアにおける氾濫水伝播プロセス特有のメカニズムを解明した.さらに,これらの結果のうち実在するインフラ施設を再現した検討を用いて,区が指定している避難施設の浸水リスク評価に関する検討を加えた.大都市における避難の危険性について示している.
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関根 正人, 中森 奈波, 児玉 香織, 斎藤 涼太
2017 年73 巻4 号 p.
I_1459-I_1464
発行日: 2017年
公開日: 2018/02/28
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近年の気候変動の影響により,東京都の雨水排除システムの設計強度をはるかに超える規模の集中豪雨が頻発している.本研究では東京都23区南西部を対象とし,国土交通省のXバンドMPレーダ(XRAIN)によって観測された2013年7月23日の実降雨データを用いて浸水状況の再現計算を行った.これにより,この豪雨による浸水がどのように発生・拡大していくかを明らかにした.さらに,当時の画像を解析して得られた実績浸水深や河川水位の実測値と同時刻における計算結果を比較した.区域内の道路冠水ならびに河川水位はほぼ実際と一致し,予測計算手法の妥当性と精度が示されたと考える.これは,詳細な浸水の様子が確認しにくいアンダーパス部などで有益な情報を提示する助けとなると期待する.
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中島 勇介, 武田 誠, 久納 匠, 松尾 直規
2017 年73 巻4 号 p.
I_1465-I_1470
発行日: 2017年
公開日: 2018/02/28
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近年,大規模な浸水災害に関する検討が進められている.その中で,都市の地下空間の浸水に対する脆弱性が指摘され,検討も進められているが,まだ十分な状況とはいえない.本研究では,津波を外力とする浸水災害について,名古屋を対象に地下鉄の浸水に着目した数値解析的研究を行った.ここでは,津波解析モデルおよびネスティングモデルを構築し,地下鉄を有する都市の浸水解析を実施した.本研究により,内閣府で想定されている東海・東南海・南海地震による津波では,堤防が無い(崩れた)場合には大規模な浸水被害となるが,堤防が有る場合には浸水被害も小さいことが示された.また,堤防が無い場合,地下鉄名港線では水没する危険性も示されたが,実際には地下への流入を防ぐ対策が採られており,その対策の効果検証は今後の課題として残った.
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