土木学会論文集A1(構造・地震工学)
Online ISSN : 2185-4653
ISSN-L : 2185-4653
73 巻, 4 号
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地震工学論文集第36巻(論文)
  • 伊津野 和行, 石田 優子, 藤本 将光, 深川 良一
    2017 年 73 巻 4 号 p. I_1-I_8
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/21
    ジャーナル フリー
     通潤橋は熊本県上益城郡山都町にある石造りアーチ水路橋で,江戸時代に建設されて現代まで水路機能が保持されている国の重要文化財である.2016年熊本地震により石管からの漏水および壁石のはらみだしが確認された.本研究では,通潤橋および周辺地盤の現地調査によって振動特性を明らかにしたうえで,近傍で観測された地震記録を用いて熊本地震による揺れを推定した.簡易貫入試験の結果,壁石基礎斜面において表層部分は風化が進行しているものの,地下1.5~2.6mに基盤面があると推定された.振動計測の結果,周辺地盤における卓越固有振動数は2.4Hzであった.また,通潤橋の面外1次固有振動数は2.3Hz,たわみ1次固有振動数は5.3Hz,微小振動に対する減衰定数は約0.03だと考えられる.
  • 酒造 敏廣
    2017 年 73 巻 4 号 p. I_9-I_18
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/21
    ジャーナル フリー
     本研究は,定鉛直荷重下で繰り返し水平力を受ける鋼変断面片持ち柱の崩壊メカニズムの変動特性を数値解析によって調べている.まず,柱を剛体・バネでモデル化して弾塑性解析の基礎式を誘導し,既往の数値解析結果と比較の上,解析手法の妥当性を確かめる.次に,弾性域を無視した剛塑性アプローチによって,柱の上・下部断面の崩壊メカニズムYとVが半サイクル毎に交番する現象の発現理由を調べて,塑性変形性状の特徴を把握する.さらに,崩壊メカニズムVとYの遷移領域Sを弾塑性解析で求め,剛塑性理論から予測した遷移領域と比較する.最後に,変断面片持ち柱の崩壊メカニズムの遷移領域とその耐震設計法への応用法について考察する.
  • 樋口 俊一, 加藤 一紀, 佐藤 伸, 伊藤 悟郎, 佐藤 唯
    2017 年 73 巻 4 号 p. I_19-I_31
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/21
    ジャーナル フリー
     本研究では,岩盤上に設置し,埋め戻したボックスカルバート構造物を対象とし,構造物直下の断層が逆断層変位した時,構造物に作用する土圧を遠心模型実験により定量的に評価した.さらに,FEMによる遠心実験の再現解析により地盤の変形モードや地中構造物への土圧に対する再現性を検討した.
     実験の結果,地中構造物頂版の土圧は初期土圧相当で一定であること,側壁の土圧は断層変位に伴って増加するが,一定の断層変位量で頭打ちとなることがわかった.また,地中構造物の変形モードは,底版と断層線の位置関係により影響を受けることがわかった.
     また,2種類の地盤構成則を用いた地盤-構造物系の2次元弾塑性FEMによる再現解析により,地盤の変形状況や地中構造物に作用する土圧外力および構造物の変形モードの再現性について検討した.
  • 古川 愛子, 好川 浩輝, 清野 純史
    2017 年 73 巻 4 号 p. I_32-I_47
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/21
    ジャーナル フリー
     地震による無筋コンクリート橋脚の典型的な被害形態は,打継目における水平ずれと打継目下側のコンクリート端部の破壊である.地震時安全性の評価には,数値解析によるアプローチが有用であるが,無筋コンクリート橋脚に適した解析手法は確立されていない.本研究では,離散体の解析手法である改良版個別要素法に着目した.まず,摩擦特性に関して従来の改良版個別要素法が有する要素数依存性の問題を解決する方法を提案した.次に,振動台実験の再現解析を行った.その結果,供試体がほとんど破壊しないケースでは,水平ずれを良好に再現でき,非破壊または軽微な破壊を生じる結果となった.供試体に顕著な破壊が生じたケースでは,水平ずれの向きと滑動方向の打継目下側端部が破壊することを再現できた.回転角は過小評価となり再現性に課題を残した.
  • 蔡 飛, 芦澤 拓八, 佐藤 靖彦, 土屋 光弘, 小宮 隆之, 平野 孝行, 齋藤 禎二郎
    2017 年 73 巻 4 号 p. I_48-I_59
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/21
    ジャーナル フリー
     2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震により関東地方でも広範囲で液状化現象が発生し,戸建て住宅や公共施設に被害が生じ,生活に支障をきたす状況に陥った.本研究では,市街地や既設構造物にも施工可能な格子状改良工法・排水工法による液状化対策効果を検証するため,動的遠心模型実験の再現解析を実施したうえで,格子間隔に関するケーススタディの検討結果を報告する.
  • 植村 佳大, 高橋 良和
    2017 年 73 巻 4 号 p. I_60-I_73
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/21
    ジャーナル フリー
     今日,危機耐性確保に配慮するために,RC柱の急激な荷重低下を改善させることが重要となっている.本研究では,軸方向鉄筋の節の一部を高くすることによる付着特性向上が,RC柱の荷重低下挙動にどう影響するかを正負交番載荷実験により検討した.その結果,軸方向鉄筋の節の一部を高くすることにより,付着割裂ひび割れの進展が抑制され鉄筋の付着特性が向上すること,また,その付着特性の向上が同一振幅載荷での軸方向鉄筋の座屈抑制につながることを示した.そしてこの軸方向鉄筋の座屈抑制の要因が,座屈時の鉄筋の両端固定条件が維持されたこと,また,それにより座屈長増大が軽減したことであると推測した.そこで,座屈長の変化に着目したRC柱の非線形静的解析を行い,本実験におけるRC柱の挙動を再現するための今後の課題を示した.
  • 栗田 哲史
    2017 年 73 巻 4 号 p. I_74-I_82
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/21
    ジャーナル フリー
     2016年熊本地震では,活断層沿いの幾つかの市街地が非常に激しい揺れに見舞われた.そのような激震地の1つである益城町では,KiK-net益城(KMMH16)地点の鉛直アレイ地震観測システムによって,前震および本震など複数の強震記録が得られている.前震の発生以前に得られている弱震動記録との対比により,前震および本震の際に表層地盤で非線形性を生じていることが明らかとなった.即ち,非線形増幅特性の特徴であるフーリエスペクトル比の卓越周波数の低周期化および高周波成分の減少などが観察された.本研究では,これらの観測記録を用いて地盤物性値を逆解析手法によって推定することにより,表層地盤の非線形増幅特性について分析した.検討の結果,地盤のせん断ひずみとせん断剛性の非線形特性を定量的に評価することができた.
  • 坂下 克之, 畑 明仁
    2017 年 73 巻 4 号 p. I_83-I_96
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/21
    ジャーナル フリー
     トンネル等の地中構造物の断層変位に対する対策は,設計規準類に明確な規定は定められていないが,研究レベルではいくつか提案されている.本論文では,それらの対策工の様々な断層条件に対する効果を検証することを目的として,無対策・継手・免震層の3ケースに対して地盤-構造物一体3次元解析によるパラメータスタディを実施し,構造物に発生する曲げモーメント・せん断力・軸力に対して,耐震裕度が小さくなる断層変位の方向,断面力低減に効果的な対策工を比較・整理した.検討の結果,評価する断面力により,耐震裕度が小さくなる断層変位の方向が異なること,評価する断面力により,有効な対策工が異なることがわかった.
  • LE QUANG DUC, 能島 暢呂, 加藤 宏紀
    2017 年 73 巻 4 号 p. I_97-I_106
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/21
    ジャーナル フリー
     広域ライフラインを対象として,被災リンクの復旧所要時間を明示的に取り扱った地震被害・復旧シミュレーション手法を提案した.まずリンク構成要素ごとの被害率と復旧所要時間に基づいて,リンク被害発生を条件とする条件付復旧所要時間を定式化した.さらに,これを期待値としてばらつきを考慮してリンク復旧所要時間をシミュレートする方法を提案した.宮城県企業局の大崎広域水道用水供給事業と仙南・仙塩広域水道用水供給事業を対象として,送水ネットワークのモデル化と東日本大震災の被災事例に基づくパラメータ設定を行い,モンテカルロ・シミュレーションによる送水信頼性解析と復旧過程のケーススタディを行った.その結果,実際の被災状況を平均的に捉えるとともに,同じ条件下で起こりうる多様なパターンを示すことができた.
  • 古川 愛子, 真辺 寛人, 清野 純史
    2017 年 73 巻 4 号 p. I_107-I_121
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/21
    ジャーナル フリー
     盛土の地震時安全性は,円弧すべりを仮定したNewmark法により照査するのが一般的である.道路盛土の設計要領には,堤体の地震応答を考慮する方法として,有限要素解析により円弧の応答加速度を求め,応答加速度の質量による重み付き平均(等価加速度)をNewmark法に入力する方法が明記されている.本研究では,有限要素法による等価加速度を,等価な1自由度モデルの応答加速度で表現することを考え,等価1自由度モデルの固有周期および減衰定数の推定式を提案する.提案手法により,堤体の地震応答を考慮したNewmark法による滑動量を簡易に推定することが可能となる.さらに,堤体の減衰定数と降伏震度を凡例とし,様々な堤体の固有周期に対する滑動量を地震動毎に図化した滑動量スペクトルを提案する.
  • 井上 和真, 渡辺 和明, 五十嵐 晃
    2017 年 73 巻 4 号 p. I_122-I_134
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/21
    ジャーナル フリー
     本研究では,3次元地震応答解析による耐震設計・耐震性能照査に用いる水平2方向の設計用地震動を合理的に設定するために,水平2方向地震動の軌跡特性が構造物の弾塑性応答に及ぼす影響について検討した.まず,従来の振幅調整によるスペクトル適合法を2次元に拡張し,観測記録の実位相を用いた2方向スペクトル適合波の作成法を提案した.次に,構造物への入力エネルギー量を定量的に評価するために,従来のエネルギースペクトルを2次元に拡張し,水平2方向地震動の軌跡特性と地震応答の関係を調べた.更に,2軸非線形の地震応答が考慮できる構造モデルを用いた漸増動的解析(IDA)を行った.その結果,水平2方向地震動として円形軌跡とした場合に,観測記録の実位相による軌跡などに比べて,構造物の弾塑性応答が大きくなる傾向が確認された.
  • Lindung Zalbuin MASE, Tetsuo TOBITA, Suched LIKITLERSUANG
    2017 年 73 巻 4 号 p. I_135-I_147
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/21
    ジャーナル フリー
     Liquefaction was investigated after the 6.8 Mw earthquake on March 24, 2011 (Tarlay earthquake) in Chiang Rai Province, Northern Thailand. Several investigations including soil boring, SPT, and SASW tests were carried out and the results were used to perform one dimensional wave propagation analysis using finite element method. The maximum acceleration of 0.206 g recorded in Chiang Rai was used as the input motion. The input motion was applied at bottom of soil column to observe soil behavior under seismic loading. The result shows that liquefaction could occur at shallow depth (0 to 16.5 m), which is also followed by settlement (1.8 to 4 cm) due to compressibility of soil during earthquake. The analysis result indicates that there is no significant dissipated pore water pressure on liquefied layer. The longer duration of liquefaction is identified on layer (SP-SM), which have the low SPT values. Excess pore water pressure from bottom layer might also concentrate at this layer. The concentration of excess pore water pressure may trigger the duration of liquefaction up to 50 seconds. In addition, the excess pore water pressure ratio linked to impacted depth warns that the soils with excess pore water pressure in range of 0.9 to 1 are possible to get worse impact if a stronger earthquake attacks this area in the future.
  • 長尾 毅, 福田 健, 伊藤 佳洋
    2017 年 73 巻 4 号 p. I_148-I_160
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/21
    ジャーナル フリー
     深層地盤構造による増幅特性は一般に一次元構造を仮定した増幅特性と比較して大きな振幅を示す.このため,解析的にサイト増幅特性を精度良く評価することは困難を伴うことが多く,強震記録の解析により評価される.一方で,耐震設計や地震防災の観点からはサイト増幅特性を任意の地点で簡易に評価することが求められる.本研究では,一次元の深層地盤構造を仮定した周波数伝達関数を補正することでサイト増幅特性を安全側に評価する方法について,中部・北陸・中国・四国地方を対象に,クリギング法等の適用を検討した.さらに,周波数伝達関数の精度が悪い場合の改善方法として,常時微動H/Vスペクトルを用いて精度向上を図る方法についても検討した.
  • 藤森 弘晃, 荒木 功平
    2017 年 73 巻 4 号 p. I_161-I_169
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/21
    ジャーナル フリー
     近年,地下水位が深い位置にある不飽和埋め戻し地盤において,飽和地盤の挙動とは異なる沈下が生じ,度々報告されている.地震動による不飽和地盤の沈下に関しては研究・報告が少なく,メカニズムも解明されていない.本研究では不飽和状態の模型地盤を作製し,振動台を用いて加速度を与え,加振前と加振後の沈下量,飽和度,乾燥密度の関係を求めている.その結果,不飽和地盤の破壊形態にクラックが生じるケースと地表面に流出水が生じるケースを確認した.そして,二つの破壊形態が分かれる条件について,境界値となる飽和度の存在を示唆している.加えてその飽和度は締固め試験や水平浸潤試験から導かれる飽和度と近い値を示すことを考察している.
  • 坂井 公俊, 野上 雄太
    2017 年 73 巻 4 号 p. I_170-I_179
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/21
    ジャーナル フリー
     本検討では,地盤全体系の強度と入力地震動の最大加速度を考慮した表層地盤の地震増幅評価法を提案した.具体的には,地震増幅を評価する際の情報として,従来から一般的に用いられる地震動最大値(PBA, PBV)と表層地盤の固有周期Tgに加え,地盤強度比Kfを指標とすることで,地盤全体の塑性化の程度を直接考慮した増幅評価を可能とした.
     本手法は,従来の増幅推定式と同様の表現形式となっており,かつ必要な情報も従来法に地盤強度比Kfを加えただけである.本手法によって地表面地震動を推定することで,幅広い地震動レベルに対して精度が向上することを確認した.また詳細な地盤情報が存在しない場合においてKfを簡易に推定することも可能であり,得られる情報量に応じた適切な地表面地震動推定が実施可能となる.
  • 梅原 由貴, 清田 隆, 柳浦 良行
    2017 年 73 巻 4 号 p. I_180-I_186
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/21
    ジャーナル フリー
     本研究では,非排水繰り返し三軸試験により,同等の密度とせん断波速度をもつ不攪乱試料と再構成試料の液状化強度特性を比較した.千葉市にてジェルプッシュサンプリングを行い,品質の良い沖積砂質不攪乱試料を採取した.再構成試料は試験後の不攪乱試料を用い,乾燥突き固め法・湿潤突き固め法により不攪乱試料と同等の密度になるように作成した.せん断波速度は供試体上部の加振機と側面の加速度計を用いて等方圧密中に測定し,再構成試料のせん断波速度が不攪乱試料と同等であることを確認した.試験結果より,同等の密度とせん断波速度を持つにも関わらず,不攪乱試料と再構成試料の液状化強度や繰り返し載荷中の挙動には違いがあった.年代効果によって生じるセメンテーション効果や供試体の構造異方性の違いが影響した可能性がある.
  • 森山 達哉, 能島 暢呂
    2017 年 73 巻 4 号 p. I_187-I_196
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/21
    ジャーナル フリー
     地震時における都市ガス供給の第1次緊急停止判断をk-out-of-n遮断システムとして位置づけ,供給停止判断の高度化に向けて基礎的検討を行った.モンテカルロ・シミュレーションによりSI値の観測パターンを模擬的に生成し,遮断基準値との関係からk-out-of-nの概念に基づいて供給停止パターンを生成した.さらに被害関数を適用して種々の不確定要因を考慮したうえで低圧導管の被害率を生成した.さらに被害率の大小と供給停止判断の有無からなる2×2の分割表を用いてデータ分析を行い,遮断システムとしての性能評価を行った.感度・偽陽性率・陽性的中度・陰性的中度およびROCを評価指標として遮断基準値の妥当性を検討した結果,耐震管率に応じて遮断基準値を変化させることの適切性が明らかとなった.
  • 能島 暢呂, 森山 達哉
    2017 年 73 巻 4 号 p. I_197-I_207
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/21
    ジャーナル フリー
     本研究は,都市ガス供給システムにおける地震時の低圧導管被害予測と供給停止判断について,機械学習の適用性について検討したものである.まずモンテカルロ・シミュレーションに基づいて,地表面SI値と導管被害率に関する多くのデータセットを生成した.それらを訓練データとテストデータに分離し,訓練データについて,地表面SI値と導管被害率および供給停止判断の有無について,それぞれサポートベクトル回帰およびサポートベクトルマシンによる機械学習を行った.テストデータの地表面SI値を入力データとして,それぞれの分析結果に基づいて導管被害率と供給停止判断の有無を出力データとして結果を比較したところ,良好な結果が得られることを確認した.
  • Kazuo KONAGAI, Masataka SHIGA, Takashi KIYOTA, Takaaki IKEDA
    2017 年 73 巻 4 号 p. I_208-I_215
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/21
    ジャーナル フリー
     The Kumamoto Earthquake has caused extensive damage to a variety of facilities along ground ruptures that appeared along both the known and hidden fault zones. Moreover close to 500 millimeters of rain fell in the quake-hit areas on June 20 and 21, causing further extensive damage, highlighting the difficulty to cope with earthquake-flood multi hazards. This paper describes some unique features of ground deformations that appeared along the fault, and the effect of the heavy rain on some of these deformed grounds.
  • 山田 雅行, 山田 真澄, 羽田 浩二, 藤野 義範, Jim MORI, 坂上 啓, 林田 拓己, 深津 宗祐, 西原 栄子, 大内 徹, ...
    2017 年 73 巻 4 号 p. I_216-I_224
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/21
    ジャーナル フリー
     平成28年熊本地震によって被災した益城町の倒壊建物が集中している地域を対象とした悉皆調査から,狭い範囲における被害分布の急変が見られた.この説明のために,常時微動を用いた地盤調査に基づいて地表面での揺れの推定を試みた.
     常時微動は極小アレイ+1点の5点を基本とし,約62.5mメッシュごとに108箇所の観測を行った.各箇所でインバージョンを行い,地盤モデルを作成した.
     治水地形分布図に氾濫平野または旧河道と記された比較的被害の小さい地区は,非常に軟弱な堆積層が5m程度以上存在することがわかった.非線形地震応答解析を行った結果として,本震時の地表面の揺れにおいて,低周波数成分が卓越し,1-2Hz(周期0.5~1 秒)の応答倍率が小さかったことが,比較的被害が小さいことの一因である可能性が考えられる.
  • 高橋 良和
    2017 年 73 巻 4 号 p. I_225-I_235
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/21
    ジャーナル フリー
     2016年熊本地震は,震度7を観測する大きな地震が2度発生するとともに,震度6弱以上を観測した地震が7回発生するなど,過去の地震に比べて強い地震動が繰り返し発生している特徴がある.これら地震により,熊本県だけでなく大分県など広範囲にわたって,強震動に加え,地盤変状による被害も混在して発生している.熊本地震による被害を理解するにあたり,2度の大きな地震,すなわち,前震による被害を踏まえたうえで本震による被害を検討することが望ましいが,前震直後の被害情報が極めて少なく,この重要な情報の欠落が,被災メカニズムの推定を困難とさせている.本論は熊本地震による橋梁被害を整理するとともに,前震直後にも被害調査を行った木山川橋を対象に,本震前後での被害の変化に基づく被害メカニズムを推定するものである.
  • 鴫原 良典
    2017 年 73 巻 4 号 p. I_236-I_242
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/21
    ジャーナル フリー
     自治体等が津波対策計画を策定する上で参考となる人的被害評価手法を提案した.ある都市を対象として,複数の地震規模に対する津波人的被害の期待値を算出し,地域別に比較することで潜在的な津波リスクを示すことが可能になる.提案する手法を横須賀市に適用し,沿岸部の4地域について比較した.その結果,相模トラフ周辺で発生する可能性のあるM7~M8後半クラスの津波イベントを対象とした場合,行政・商業施設等が集中している東京湾内湾側(追浜~汐入,新港町~観音崎)よりも,東京湾外湾側(浦賀~津久井)や相模湾側(長井~秋谷)の方が人的被害のリスクが高いことが示された.
  • 梶原 和博, 小長井 一男, 清田 隆
    2017 年 73 巻 4 号 p. I_243-I_250
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/21
    ジャーナル フリー
     2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震(Mw=9.0)は,東京湾臨海部の埋立地や利根川流域に深刻な液状化被害をもたらした.将来の地震における再液状化の可能性も考慮して,本地震で生じた液状化被害を定量的な情報として記録し,防災へ役立てていくことは極めて重要である.この地震を受けて,Konagaiら1)は,千葉県沿岸部を対象に航空レーザー測量から得られた地震前後の数値表層モデル(DSM)の標高変化から地殻変動成分などを除去し,液状化に起因する地盤沈下量を示した液状化沈下マップを整備した.本研究では,同様の手法を用いて京浜工業地帯を含む東京湾岸西部の液状化沈下マップを作成した.また,地震後に現地で実測された地盤沈下量と比較を行うことで,沈下マップの精度検証を行った.
  • 大矢 陽介, 小濱 英司
    2017 年 73 巻 4 号 p. I_251-I_257
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/21
    ジャーナル フリー
     2011年東北地方太平洋沖地震の際,仙台空港の誘導路において地下構造物周辺の直上地盤で局所的な沈下被害が発生した.本研究では,このような地下構造物周辺で発生した沈下被害の原因を明らかにすることを目的に,砂地盤内に地下構造物模型を設置した1g場模型振動実験で得られた地盤内のせん断ひずみ履歴より体積ひずみを推定し,地表面沈下量について実験値と比較した.その結果,地盤内のひずみ履歴を評価することで,地下構造物近傍の地表面沈下量が局所的に大きくなる実験結果を再現でき,せん断ひずみの最大値よりも累加値で評価した地表面沈下量の方が実験結果の推定精度が高いことが分かった.
  • 沼田 宗純, 井上 雅志, 目黒 公郎
    2017 年 73 巻 4 号 p. I_258-I_269
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/21
    ジャーナル フリー
     本研究では,自治体における効果的な災害対応を実現するために,被害状況に応じて必要人員を算出する災害対応業務モデルを構築することを目指している.本稿では,本モデルを構築するために,東日本大震災直後における石巻市と矢吹町,熊本地震における熊本市の災害対応を分析することで,災害対応業務のフレームワークを構築することを目的とする.分析の結果,災害対応を48種の災害対応業務のフレームワークとして構築できた.これを関東・東北豪雨における常総市の災害対応の分析に用いることで,本フレームワークが地震・津波と水害の両者に適用できることを確認した.
  • 神山 眞, 三神 厚, 小出 英夫, 沢田 康次, 秋田 宏, 千葉 則行
    2017 年 73 巻 4 号 p. I_270-I_281
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/21
    ジャーナル フリー
     2016年熊本地震はMJ 6.5, MJ 7.3という内陸地殻内地震としては比較的大きな規模をもって連続的に発生したことにより各種構造物に甚大な被害を与えた.本論文は同地震による各種構造物の被害に関する筆者らの最初の解析試行として自然斜面被害を対象に国土地理院のGEONETデータによる地震時地殻変動から得られる各種ひずみ量による解析結果を述べたものである.本論文では土木構造物,自然斜面を含む土構造物などの平面的な広がりを有する構造物の被害は変位の空間変動率である各種ひずみ量が強い影響を及ぼすとの観点に重点を置き,強震観測網データによる計測震度分布および地殻変動による各種ひずみ量分布などの諸量分布と自然斜面被害の分布との関係が考察される.
  • 佐藤 忠信
    2017 年 73 巻 4 号 p. I_282-I_293
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/21
    ジャーナル フリー
     地震動のフーリエ振幅を円振動数に関する離散確率過程として捉え,その確率特性を抽出する.フーリエ振幅過程をその平滑化過程で割ったものを,標準化フーリエ振幅過程と名付け,それを考察の対象とする.差分間隔を変えて,標準化フーリエ振幅過程の差分を計算し,その標準偏差が離散円振動数間隔に一次比例することを明らかにする.標準化フーリエ振幅差分過程を標準偏差で正規化した確率変数が,差分間隔の取り方によらず,同一の裾切レヴィ分布関数で表現できることを明らかにする.その結果から,フーリエ振幅過程が自己アフィン相似性を持つフラクタル過程であることを明示する.さらに,裾切レヴィ分布関数が安定分布であることを述べ,フーリエ振幅の確率特性を精査する.
  • 長尾 毅, Tara Nidhi LOHANI, 福島 康宏, 伊藤 佳洋, 北後 明彦, 尾茂 淳平
    2017 年 73 巻 4 号 p. I_294-I_309
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/21
    ジャーナル フリー
     2016年熊本地震は各地に大きな被害をもたらしたが,特に熊本県益城町においては甚大な住宅被害が生じた.現地における特に甚大な住宅被害は県道28号と秋津川の間に挟まれたエリアに局在しており,局所的な地盤条件によって住宅被害の甚大なスポットが生じたことが示唆された.本研究では,住宅被害の激しかったエリアを中心に常時微動観測を実施し,地盤条件と住宅被害の相関について考察した.常時微動観測は単点観測とアレイ観測を併用するとともに,本震直後と3ヶ月以上経過後の条件の結果を比較することで地盤非線形の影響を検討した.さらに常時微動観測時に得られた余震記録から,サイト増幅特性の推定を試みた.
  • 山口 拓真, 縣 亮一郎, 市村 強, 堀 宗朗, Lalith WIJERATHNE
    2017 年 73 巻 4 号 p. I_310-I_320
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/21
    ジャーナル フリー
     地震災害においては地殻変動が災害要因の1つとなる.被害予測のために地殻変動の物理シミュレーションが試みられており,有限要素法等を用いて詳細な地殻構造を考慮した地殻変動計算手法が求められている.また地震時の地殻変動では不確実性が多数存在しており,地殻変動計算では入力データに含まれる不確実性を定量的に評価するアプローチが有効である.本研究では多数回地殻変動計算によるモンテカルロシミュレーションのための,地殻変動の高速有限要素解析手法を開発した.詳細な有限要素解析に伴う莫大な計算負荷を克服するためにGPUを導入し,適したアルゴリズムの構築により地殻変動計算を高速化した.琵琶湖西岸断層帯を対象とした適用例では,モンテカルロ法により震源の不確実性を定量的に評価する地殻変動計算を現実的な時間内で行った.
  • 猪飼 豊樹, 丸山 陸也, 賈 良玖, 葛 漢彬
    2017 年 73 巻 4 号 p. I_321-I_333
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/21
    ジャーナル フリー
     本研究では,制震鋼構造物の一部材として履歴型制震ダンパーに着目し,これまで多くの実験的および解析的研究がなされている座屈拘束ブレース(BRB)の,芯材およびフィラープレートの形状を変化させた新型の制震ダンパー,魚骨形座屈拘束ブレース(FB-BRB)の開発を行う.FB-BRBの主な機構である「ネッキング進行箇所の限定」と「ストッパーによる塑性化する箇所の分散」が変形性能に及ぼす影響を繰り返し載荷実験により検証した.
  • 鈴木 元哉, 宇津宮 直幸, 葛 漢彬
    2017 年 73 巻 4 号 p. I_334-I_345
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/21
    ジャーナル フリー
     本研究では,SM570鋼材を適用した鋼製補剛箱形断面橋脚に対し,橋脚の強度と変形能を左右する諸パラメータ(フランジプレートの幅厚比パラメータ,橋脚の細長比パラメータ,軸力比)の影響を詳細に調べるために,修正二曲面モデルを構成則に用いて繰り返し弾塑性解析を行った.その結果をふまえ,この種の鋼製橋脚の耐震性能に対して,既往の研究で提案されている普通鋼(SS400,SM490)を適用した鋼製補剛箱形断面橋脚の強度と変形能の推定式の適用性を検討した.その結果,新たにSM570を適用した場合の鋼製補剛箱形断面橋脚の強度と変形能の推定式を提案した.
  • 小野 祐輔, 岡本 遼太, 河野 勝宣, 酒井 久和, 秦 吉弥, 池田 勇司
    2017 年 73 巻 4 号 p. I_346-I_356
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/21
    ジャーナル フリー
     本研究では,地すべりの滑動再現を目的とし,側方拘束力や横断形状の影響を考慮することができる三次元地すべり解析を行い解析結果と実被害を比較することで,粒子法の一種であるSPH法の適用性を検討した.検討対象は,2008年岩手・宮城内陸地震により発生した宮城県栗原市の荒砥沢地すべりである.本研究では,現地調査により採取した試料に対する室内試験を行い,得られた材料パラメータと作成した三次元粒子モデルを用いて三次元解析を行った.今後解決すべき多くの課題が残されたものの,解析結果は,およそ300 mとされる最大の滑動量を再現した.
  • 小野 祐輔, 相澤 類, 酒井 久和, 太田 直之, 中島 進, 藤原 寅士良, 高柳 剛, 湯浅 友輝, 池田 勇司
    2017 年 73 巻 4 号 p. I_357-I_365
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/21
    ジャーナル フリー
     本研究では,SPH(Smoothed Particle Hydrodynamics)法と個別要素法(Discrete Element Method)を組み合わせ,石積擁壁の耐震対策工法の効果を検証するために利用できる数値解析法の開発を行った.開発した解析法を検証するために,既往の石積擁壁の耐震補強工法の効果を検証した実験を対象とした再現解析を行った.現時点において,参考にした実験を忠実に再現するためのモデル化と解析手法の開発が十分ではないため,実験結果を精度良く再現するには至っていない.しかしながら,本研究で示した解析方法によって,耐震補強として地山補強材を用いた場合に,石積擁壁の耐震性の向上を示すことができた.
  • 吉田 昌平, 香川 敬生, 野口 竜也
    2017 年 73 巻 4 号 p. I_366-I_375
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/21
    ジャーナル フリー
     1995年兵庫県南部地震以降,国内では大規模な内陸地殻内地震が頻発しており,幾つかの地震では地表地震断層の出現が確認されている.内陸地殻内地震における地表地震断層の有無は,地震動特性に大きな影響を与えることが既往の研究により知られているが,国内の内陸地殻内地震に対する評価は未だ十分になされていない.本検討では,国内で発生した内陸地殻内地震を対象として,スペクトル距離減衰式から算出される標準的な加速度応答スペクトルに対する,実地震から得られる観測加速度応答スペクトルの偏差に着目することで,地表及び潜在断層地震の地震動特性の違いについて検討した.その結果,対象としたMw 5.8-7.1の地震で,地表地震断層が出現した場合は出現しない場合と比較すると,周期帯0.1-0.4秒程度で地震動が顕著に弱くなる傾向が見られた.
  • 稲瀬 友樹, 鍬田 泰子, 澤田 純男
    2017 年 73 巻 4 号 p. I_376-I_384
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/21
    ジャーナル フリー
     ガスや水道などの埋設管の地震応答解析において挙動を支配する管と地盤の間の地盤ばねは,静的な摩擦力特性をもつとして単純なクーロン摩擦が用いられているのが現状である.本研究では,実大規模の埋設深に対して振動台を用いて外力を作用させることで管の引抜き実験を行い,管と地盤の間に働くせん断応力の速度依存性を明らかにすることを試みた.その結果,管の移動速度によって最大せん断応力が2倍程度大きくなることや,管周辺の地盤条件によって最大せん断応力のピークやその状態以降のすべり特性が異なることがわかった.
  • 田代 聡一, 井合 進
    2017 年 73 巻 4 号 p. I_385-I_403
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/21
    ジャーナル フリー
     液状化対策としての過剰間隙水圧消散工法は,想定地震を超えた場合に過剰間隙水圧の抑制効果が失われるためねばりがないとの指摘がある.しかし,東北地方太平洋沖地震などの実際の大規模地震においては人工材ドレーンが適用された岸壁などで減災効果が確認されている.本研究では,ドレーン改良地盤に液状化対策効果としてのねばりがあるのかを確認することを目的として,傾斜地盤の液状化による流動変位に着目し,透水を考慮したひずみ空間多重せん断モデルを用いて変形解析を行った.その結果,傾斜地盤の流動量が,未対策時に1,非液状化時に0となるように,改良地盤の流動量を0~1の範囲で正規化し,これを変形抑制効果の指標として評価すれば,想定地震を超えた場合でも人工材ドレーン改良地盤のねばりが十分発揮されることが判明した.
  • 塩野谷 遼, 平野 廣和, 井田 剛史, 河田 彰
    2017 年 73 巻 4 号 p. I_404-I_411
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/21
    ジャーナル フリー
     東北地方太平洋沖地震や熊本地震での貯水槽の被害調査により,天井や上部の側板が破損した事例,中心より下側の側板や隅角部が破損した事例の二種類が顕著であった.前者はスロッシングによる液面揺動に起因し,後者はタンク構造体の振動が主体となるバルジングに起因すると考えられる.そこで本研究では,3m×3m×3mのFRP製パネル実機貯水槽を用い,バルジングについて検証を行った.その結果,壁面変位と動液圧の変化より発生する周波数がある幅で存在すること,さらに加振終了後は速やかに振動が収束することを確認した.また,バルジングが発生するとタンク下部に大きな負荷が掛かることから,バルジングがタンク下部付近の破損の要因の一つであることを確認した.
  • 西川 源太郎, 塩浜 裕一, 鈴木 剛史, 大沼 博幹, 清野 純史
    2017 年 73 巻 4 号 p. I_412-I_421
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/21
    ジャーナル フリー
     埋設水道管路の耐震性評価は,管と地盤との境界で生じる滑りの有無で評価手法が異なる1).滑りが生じると異形管・給水分岐にひずみが集中し,詳細評価が必要となる.これまでの研究では水道配水用ポリエチレン管は軟弱地盤では滑らないが,良好地盤かつ呼び径が大きい場合は僅かであるが滑りが生じることが報告されている2).本研究ではこの滑りが異形管や給水分岐に及ぼす影響を評価した.レベル2地震動でも想定される滑り量(相対変位)は最大12.5mmであり,この滑りが給水分岐・異形管部に作用しても管路からの漏水は無く,また管体に発生する最大ひずみは地盤ひずみを合算しても十分に許容ひずみ以下であることが確認できた.本研究を通じて水道配水用ポリエチレン管は給水分岐・異形管を含めた水道管路として耐震性能を有することが確認できた.
  • 吉田 裕実子, 大澤 脩司, 藤生 慎, 高山 純一, 中山 晶一朗
    2017 年 73 巻 4 号 p. I_422-I_430
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/21
    ジャーナル フリー
     近年我が国では,地震や津波,土砂災害等の多様な災害が発生している.過去の被災事例を踏まえれば被災直後の食において,救援物資が届くまでの期間,各家庭で買い置かれている食料を用いた住民の自助・共助が重要であり,今後も南海トラフ巨大地震をはじめ今後も大規模な災害の発生が予測されることから,住民の自助・共助のための検討が必要である.本研究では金沢・東京において平時の家庭に存在する食料に関するアンケート調査を実施し,食料原単位を算出した.地方都市である金沢に比べて,大都市である東京の方が1世帯あたりに存在する食料が少ないことが明らかとなった.さらに,これら原単位を用いた南海トラフ巨大地震を想定した食料シミュレーションを行った.この結果,食料存在量の想定は県民1人あたり約4~8日分となることが示された.
  • 府川 裕史, 小濱 英司
    2017 年 73 巻 4 号 p. I_431-I_442
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/21
    ジャーナル フリー
     胸壁の耐震性能評価手法の確立を念頭に,レベル1地震動に対する照査用設計震度の算出を目的として,骨組解析を用いた固有振動数の算出と応答スペクトル法を用いた地震時の最大加速度の推定について,杭基礎式胸壁構造物への適用性を数値解析的手法により検討した.検討の結果,レベル2地震動相当の入力加速度の大きな場合を除いて,骨組解析から算出した固有振動数,および一次元地震応答解析の地表面における応答加速度時刻歴から算出した加速度応答スペクトルを用いることで,地震応答解析における胸壁の最大加速度を,標準誤差50Gal程度以下の高い精度で推測できることが明らかとなり,レベル1地震動に対する骨組解析および応答スペクトル法の杭基礎式胸壁への適用性が確認された.
  • 崔 準祜, 成 炫禹, 今井 隆, 植田 健介, 和氣 知貴
    2017 年 73 巻 4 号 p. I_443-I_456
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/21
    ジャーナル フリー
     2011年東北地方太平洋沖地震では,複数の道路橋においてゴム支承の破断や亀裂が生じる被害が発生した.破断したゴム支承の中には,3月11日の本震では損傷が確認できなかったが,4月7日の余震後に損傷が確認されたものもあり,継続時間の長い本震と多数回の余震による繰り返し振動でゴム支承が損傷した可能性も考えられる.本研究では,大規模地震を経験したゴム支承の残存耐震性能を評価することを目的とし,各種の積層ゴム支承を対象に許容値前後の大ひずみによる水平方向正負交番繰り返し載荷実験を実施した.ゴム支承の水平耐力,等価剛性,等価減衰定数,履歴吸収エネルギー,損傷状況などを分析し,繰り返し載荷回数がこれらゴム支承のせん断変形性能に及ぼす影響,また大ひずみのせん断変形を経験したゴム支承の残存耐震性について検討を行った.
  • 崔 準祜, 原 暢彦, 今井 隆, 植田 健介, 成 炫禹
    2017 年 73 巻 4 号 p. I_457-I_466
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/21
    ジャーナル フリー
     ゴム支承の水平方向に対する力学的特性については,これまで多くの実験により確認されてきており,その設計手法についても確立されているが,ゴム支承の鉛直方向に対する力学的特性に関しては,これまで検討事例が少なく設計手法が確立されていない状況である.特にゴム支承が引張力を受けた状態で水平方向の地震力を受けた場合のゴム支承の力学的特性については不明である.本研究では,ゴム系支承の引張せん断特性を明らかにすることを目的とし,積層ゴム支承(RB)を対象に一次形状係数の異なる2つの供試体を作製し,軸応力をパラメータとしたせん断実験を実施した.実験により得られた水平荷重-変位履歴から,等価剛性,等価減衰定数などを軸応力ごとに整理し,ゴム支承に作用する軸応力がゴム支承のせん断特性に及ぼす影響について調査した.
  • 大澤 脩司, 藤生 慎, 中山 晶一朗, 高山 純一
    2017 年 73 巻 4 号 p. I_467-I_478
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/21
    ジャーナル フリー
     平成28年熊本地震では,九州自動車道に架かる跨道橋が落橋するなど,緊急輸送道路が寸断される事態が多数発生した.このことから,地震時には重要な道路も被災することを念頭に考え,重要な道路が通行不能となった際に道路ネットワークの移動性にどれだけの影響を与えるかを分析・評価し,対策を行っていくことが急務である.本研究では,道路ネットワークでの移動を考慮した地震に対する道路網の脆弱区間を,迂回により目的地へ到達できる場合と,拠点間が到達不能である場合とでそれぞれ評価する手法構築し,それを実際の緊急輸送道路網に適用した.その結果,迂回に影響する区間を良好に評価できること,拠点間が到達不能となる場合に通行不能である道路区間の分布を評価できることがそれぞれ確認でき,構築した手法の妥当性を確認した.
  • 岡田 克寛, 鈴木 高二朗, 有川 太郎
    2017 年 73 巻 4 号 p. I_479-I_486
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/21
    ジャーナル フリー
     東北地方太平洋沖地震津波においては,地震と津波によって,多くの防護施設が被災した.その原因の多くは,津波越流時によるものと推定されている.一方で,地震の発生後には,数多くの余震が発生している.津波来襲時の構造物の被災に余震が影響していた可能性がある.そこで,津波と地震の重畳が構造物の被災に及ぼす影響を明らかにするため,地震と津波を同時に作用させる大型水理模型実験を実施した.その実験結果の時刻歴データを詳細に検討し,地震と津波の重畳時における防波堤への影響と残留水平変位の関係について検討した.その結果,地震と越流津波の複合作用時においては,加速度の低減効果や水平変位の増大傾向があることを明らかにした.
  • 羽場 一基, 堀田 渉, 園部 秀明, 畑 明仁, 渡辺 和明, 堀 宗朗
    2017 年 73 巻 4 号 p. I_487-I_498
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/21
    ジャーナル フリー
     本論文では,スペクトル展開を用いた確率リターンマッピングアルゴリズムによる確率弾塑性モデルを非排水粘土の応力-歪関係に適用し,地盤物性の不確実性が履歴特性に与える影響を評価した.その結果,弾塑性モデルを確率空間へ拡張することで,単純な弾完全塑性von Misesモデルを用いた場合でも,現実に近い履歴特性を評価できることがわかった.さらに,地盤物性の不確実性が応答場に与える影響を計算することで,動的変形特性の不確実性を評価することができた.
  • 内藤 伸幸, 松田 泰治, 宇野 裕惠, 川神 雅秀
    2017 年 73 巻 4 号 p. I_499-I_510
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/21
    ジャーナル フリー
     現行の道路橋示方書・同解説 V 耐震設計編では,鉛プラグ入り積層ゴム支承(LRB)を適用した免震橋梁の動的照査において,LRBの復元力特性を有効設計変位に対して割線剛性またはバイリニアでモデル化することを推奨している.しかし実際の復元力特性は,最大経験ひずみに依存し(Mullins効果),かつせん断ひずみが大きくなるとハードニングが生じることも確認されている.大規模地震に対する耐震性を評価する場合には,これらの復元力特性を適切に評価して動的解析を行うことが重要と考えられる.本研究は,LRBの製品検査の結果に基づいて新たな履歴モデルを構築し,現行の設計で用いられるバイリニアモデルとの比較検討を行ったものである.
  • 佐藤 芳仁, 和仁 雅明, 佐藤 清, 樋口 俊一, 加藤 一紀, 恒川 和久, 今枝 靖博
    2017 年 73 巻 4 号 p. I_511-I_521
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/21
    ジャーナル フリー
     浜岡原子力発電所では,東北地方太平洋沖地震の津波被災を受け,津波防護施設「防波壁」を設置した.防波壁のような壁状構造物の設計で地震時動水圧を考慮する場合,一般的にはWestergaard式が用いられる.しかし,Westergaard式が剛体を仮定しているのに対し,防波壁の地震時挙動は弾性振動であり,壁前面の砂丘堤防により水深が一定ではないことから,その適用性ついて確認が必要である.そこで,防波壁と前面地形をモデル化した模型振動実験およびその再現解析により検証した.その結果,弾性振動をする壁状構造物に作用する動水圧は揺れの増幅が大きい壁上部で剛体との乖離が大きいこと,再現解析ではWestergaard式に基づく付加質量モデルおよび液体要素モデルの何れでも評価できるが,液体要素モデルの方が合理的に評価できることが分かった.
  • 内藤 伸幸, 松田 泰治, 宇野 裕惠, 川神 雅秀
    2017 年 73 巻 4 号 p. I_522-I_536
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/21
    ジャーナル フリー
     免震支承の特性は様々な要因により変化するため,橋の地震時挙動は設計で想定する挙動と異なり,免震支承のせん断ひずみが大きくなることがあるが,破断ひずみまでの余裕は大きくない.本論文は,鉛プラグ入り積層ゴム支承(LRB)を対象に各種依存性や耐久性能による剛性低下や橋脚の過強度が,地震時の支承の挙動に与える影響をケーススタディした.その結果,LRBの剛性低下が設計で想定する範囲内であれば,現行設計で設定したせん断ひずみが許容せん断ひずみより大きくなっても,積層ゴム支承の高ひずみ域で発現するハードニングの変位抑制効果により,所要の耐震性を期待できる.さらに,免震橋のように橋脚の塑性化が制限を受ける橋は,橋脚に過強度があると弾性挙動に近づくため,地震時のせん断ひずみは大きくなりにくいことがわかった.
  • 地蔵 智樹, 谷本 俊輔, 佐々木 哲也
    2017 年 73 巻 4 号 p. I_537-I_550
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/21
    ジャーナル フリー
     本研究は,FLに基づく簡易液状化判定法における地震時せん断応力比Lについて,地震動特性および表層地盤の非線形性に基づく増幅特性の影響を加味する方法を検討したものである.
     本報では,著者らが提案した,地表地震記録から地中せん断応力を評価する手法の適用範囲の拡大を図るため,強震記録から地中せん断応力を直接的に推定する際にポイントとなる表層地盤のひずみ依存性によるS波速度の低下率cvについて,地表の地震記録から簡易に設定する手法を検討し,その適用性について検証した.さらに,多数の強震観測記録において,一連の手法により計算した地中せん断応力の低減係数と地表地震動および地盤に関する指標の関係性について回帰分析を行い,各地点のrd深さ方向分布を設定するための回帰式を組み立てた.
  • 福島 康宏, 後藤 浩之, 長尾 毅, 尾茂 淳平, 末冨 岩雄
    2017 年 73 巻 4 号 p. I_551-I_557
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/21
    ジャーナル フリー
     2016年熊本地震は,地震調査研究推進本部による長期評価が行われている活断層の活動により発生した地震であった.益城町に顕著な被害を生じさせた4月16日1時26分頃発生した地震の規模はMJMA 7.3であったが,震源断層に対応する布田川断層帯布田川区間の事前の評価ではMJMA 7.0と,実際に発生した地震のほうが大きな地震規模であった.
     本検討では,KiK-net益城サイトを対象として,観測された地震動と事前の活断層評価に基づき推定される地震動との比較を行った結果,加速度応答スペクトルで比較すると観測記録の大きさに近い地震動が推定されたが,住宅被害などにとって重要な周期1秒前後の周期帯では観測記録を下回る結果となった.
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