日本小児看護学会誌
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16 巻, 1 号
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  • 野口 裕子
    原稿種別: 本文
    2007 年 16 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 2007/03/20
    公開日: 2017/03/27
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は重症な脳性まひを持つ子どもと看護師の「抱っこ」がどのように成立していくのか、その構造を明らかにすることである。重症な脳性まひを持つ子どもの「抱っこ」のモデルと考えられる看護師7名(重症な脳性まひを持つ子どもの看護経験5-18年)に非構成面接を行い、重症な脳性まひを持つ子ども(3歳)との「抱っこ」の場面の参加観察を行なった。データを質的に分析した結果、重症な脳性まひを持つ子どもと看護師間の「抱っこ」は《「抱っこ」に影響する環境》の中で《看護師の「抱っこ」の力》と《子どもの「抱っこ」の力》が相互に作用しあい《「抱っこ」の繰り返し》をすることで、〈子どもと看護師の間にある体と心の距離を近づける〉ことにより《 「抱っこ」の成熟》へ変化していた。そして看護師は「抱っこ」を通して〈子どもに一人の人間として大切に思っていることを伝える〉ことを表現していた。重症な脳性まひを持つ子どもと看護師間の「抱っこ」の成立の過程ではコミュニケーション的様相が行われ、看護観が表現されていることが示唆された。
  • 和田 久美子
    原稿種別: 本文
    2007 年 16 巻 1 号 p. 9-16
    発行日: 2007/03/20
    公開日: 2017/03/27
    ジャーナル フリー
    本研究は、看護学生を対象とし、内容の異なる2種類のビデオ視聴により、看護学生が考える幼児の特徴、幼児に対応するときの思いについて、ビデオ視聴直前と直後に調査し、ビデオ視聴そのものの影響を明らかにすることを目的とした。以下のことが明らかになった。1.健康な幼児のビデオの内容に多くみられた運動機能発達、認知発達、言語発達、情緒発達に関する映像・解説は、映像で見たままの子どもの様子の理解となる。2.入院している子どものビデオの内容に多くみられた「反応の捉え方」、「声のかけ方」、「発達を促す」、「子どもの見方」、「ケア時の対応」という子どもとの関わり方は、子どもの理解を深める要因といえる。3.入院している子どものビデオでは、健康な幼児のビデオよりも看護学生が考える幼児の特徴と幼児に対応するときの思いが視聴前後で有意差のあった項目が多かった。4.健康な幼児のビデオ、入院している子どものビデオの視聴により、子どもがどういう状態かは理解できるが、どのように対応するかを理解することは難しいと考えられる。
  • 小泉 麗, 鈴木 明由実, 出野 慶子, 大木 伸子, 本間 照子
    原稿種別: 本文
    2007 年 16 巻 1 号 p. 17-24
    発行日: 2007/03/20
    公開日: 2017/03/27
    ジャーナル フリー
    小児看護学実習において学生が体験した「ヒヤリハット」の場面と、学生が認識したその要因を明らかにし、小児看護学実習での事故防止に関する指導を検討することを目的に、学生107名を対象に調査を行った。その結果、学生の「ヒヤリハット」の場面は[ベッドからの転落の危険性][その他の転倒転落の危険性][外傷の危険性][ルートトラブルの危険性][状態悪化の危険性][誤飲の危険性]に分類された。また、学生が認識した要因は<安全に対する注意の欠落><安全に対する認識の甘さ><患児の精神面の影響><技術不足><運動発達の特性の認識不足><設備上の問題>に分類された。学生の過度な緊張や気の緩み、小児についての理解不足が「ヒヤリハット」の場面につながっており、学生が適度な緊張感を維持できるよう援助することや、学生が早期に患児の全体像を把握し、個別性を考慮した事故防止対策を行えるように関わることの必要性が示唆された。
  • 倉田 節子, 竹中 和子, 田中 義人
    原稿種別: 本文
    2007 年 16 巻 1 号 p. 25-32
    発行日: 2007/03/20
    公開日: 2017/03/27
    ジャーナル フリー
    本研究は、短期入院の子どもと家族に関わる看護師がどのような認識のもとで、看護ケアを提供しているかを明らかにすることを目的に、8名の看護師に半構成的面接を行い、内容分析をしたものである。その結果、看護師が行っている看護ケアは、【素早い治療提供への支援】【今後に役立つ情報提供】【母親への支援】【家族が力を発揮できるための支援】【子どもと密に関わる】の5つに分けられ、以下のことが明らかになった。(1)看護師は、「母親は動揺・ストレスが大きい」「子どもは恐怖心が強いが、適応力が高い」ととらえて、的確な看護ケアを提供しており、その看護ケアの内容を充実させる必要がある。(2)看護師は、短期入院の看護は「充実感がない」と感じる一方で、看護師としての役割を認識して看護ケアを提供しており、その意味づけをする必要がある。(3)意義の大きい看護ケアが、どの子どもと家族にも提供できるよう短期入院の看護をシステム化する必要性が示唆された。
  • 橋本 ゆかり, 杉本 陽子
    原稿種別: 本文
    2007 年 16 巻 1 号 p. 33-39
    発行日: 2007/03/20
    公開日: 2017/03/27
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は、静脈麻酔下で髄腔内注入を受ける小児がんの子どもの認知に変化をもたらした医療者の関わりを明らかにすることである。小児がんで小児病棟に入院しており髄腔内注入が予定されている3〜11歳までの子ども4名に対して処置前・中・後を通して介入を行い、得られたデータを質的に分析した。分析の結果、子どもの認知に影響を及ぼす医療者の関わりは、【プレパレーションの時期】【子どもの興味や関心を引くプレパレーション】【プレパレーション・ツールの選択】【説明内容】【子どものタイミングに合わせる】【子どもの交渉に応える】【子ども自身が見出した対処法を支持する】【保護者が付き添う】【子どもが体験したことを振り返ることができる機会をもつ】【子どもの望む世界をつくる】であった。
  • 流郷 千幸, 法橋 尚宏
    原稿種別: 本文
    2007 年 16 巻 1 号 p. 40-46
    発行日: 2007/03/20
    公開日: 2017/03/27
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は、採血を受ける幼児の力を引き出す保護者の支援効力感尺度の開発である。保護者の支援として文献検討から得られた内容を小児看護の専門家で検討し、15項目の質問紙を作成した。近畿圏内の幼稚園2箇所に研究への参加を依頼し、保護者120名に子どもの採血場面を想定してもらい回答を得た。有効回答102名を対象に尺度の信頼性および妥当性の検討を行なった。得点に偏りのあった7項目を削除し、8項目で主成分分析を行なった結果、第1主成分の固有値は4.6、寄与率58.6%であり、「採血を受ける幼児の保護者の支援効力感尺度」としての構成概念妥当性が確認された。一般性セルフエフィカシー尺度との相関はr=0.302(p<0.01)、8項目のCronbach's αは0.898となり信頼性が得られた。本調査と再調査との相関係数はr=0.801(p<0・01)であり安定性も確保された。さらに臨床場面で検証を行うことにより、本尺度は採血を受ける子どもの保護者への介入とその評価に活用が期待できるものと考えられた。
  • 市六 輝美
    原稿種別: 本文
    2007 年 16 巻 1 号 p. 47-52
    発行日: 2007/03/20
    公開日: 2017/03/27
    ジャーナル フリー
    排泄障害をもつ幼児期の子どもが外科的手術により排泄経路を変更する場合、【トイレットトレーニングに関するアプローチ】と【入園・入学などの集団生活に溶け込む為の社会的アプローチ】が必要となる。今回、禁制導尿路作成・順行性洗腸法を導入した幼児に対し、地域と連携したことで、スムーズな保育園生活を得ることができ、早期のセルフケアの習得が可能となった。その要因には、病院・地域における立場の違う看護職が個々の役割を認識・遂行したことがあった。また、セルフケア導入の機会を見極め、病院・地域・家族が目標を共有化し、継続した支援を行うことができた。
  • 飯村 直子
    原稿種別: 本文
    2007 年 16 巻 1 号 p. 53-60
    発行日: 2007/03/20
    公開日: 2017/03/27
    ジャーナル フリー
    1996年〜2005年まで(過去10年間)の医学中央雑誌Web版(Ver.4)を中心として文献検索を行い、小児看護における外来看護に関する国内の文献47件を分析し、小児の外来看護の今後の実践および研究の課題を検討した。その結果、外来には継続的なケアを必要とする子どもと家族への援助、一般外来を訪れる子どもと家族への援助、育児支援など様々な内容の看護があり、乳児からキャリーオーバー患者まで様々な発達段階の患者と家族のニーズがあることが明らかになっていた。今後は、継続的なケアを必要とする子どもと家族に質の高い援助を提供していくための時間や空間、マンパワーの確保などに関する検討および地域との連携についての方策を考えること、また、一般外来、乳幼児健診などでの短い関わりにおける有効的な支援方策および援助の継続性を検討し、実践していくことが課題である。また、こうした実践の課題を克服していくためには外来の看護業務全体を見渡す視点が不可欠であり、今後の研究課題として、外来の小児看護の構造や特殊性、専門性についても明らかにしていく必要があると考えられる。
  • 鈴木 恵理子, 小宮山 博美, 宮谷 恵, 小出 扶美子, 入江 晶子, 松本 かよ
    原稿種別: 本文
    2007 年 16 巻 1 号 p. 61-68
    発行日: 2007/03/20
    公開日: 2017/03/27
    ジャーナル フリー
    児童の権利に関する条約の批准、小児看護領域の看護業務基準の作成などにより、小児医療の主体が小児とその家族であることが改めて確認された。そのことにより、小児の採血や腰椎穿刺などの侵聾的な処置への家族の付き添いの実態に、変化はあったのだろうか。その変化の有無を知るため、今回、私たちは全国の小児が入院する病棟を対象に調査し、10年前の調査結果と比較した。その結果、小児の採血や腰椎穿刺には、10年前と同様、大半の病棟で家族が付き添っていないことが明らかになった。一方、自由記載の中では病棟の看護管理者の多くは、医療の主体が小児と家族であることを明らかに表現していた。今後は小児が最善の状態で医療を受けるために、処置の際の家族の付き添いに関して、小児と家族が主体的に判断し、看護者はその決定を支えていけるよう、情報提供や環境整備などの支援をすることが必要である。
  • 井上 みゆき
    原稿種別: 本文
    2007 年 16 巻 1 号 p. 69-75
    発行日: 2007/03/20
    公開日: 2017/03/27
    ジャーナル フリー
    本研究は、法的な手続きも視野に入れた「子どもの最善の利益」の看護ケアの構築を目指すために、法的対応に焦点を絞り、日本における医療ネグレクトの文献から現状の課題と対応を検討する目的で行われた。文献検索は、医学中央雑誌によるコンピュター検索を行った。その結果、医療ネグレクトの問題は、現実に臨床の現場で直面しながらも、わが国には医療ネグレクトへの法的介入を目的とする制度は存在しないため、どのように対応してよいのか模索している段階であると考える。今後は、医療ネグレクトの介入を目的にした法の整備や、臨床の問題を検討する倫理委員会の活用など、医療ネグレクトに対応するためのシステムが整備されることが望まれる。そして看護師は、「子どもの最善の利益」が守られるような法の整備を含むシステムの構築を提唱していく必要があるだろう。またわが国の現行法の中で、「子どもの最善の利益」を守る具体的なケアを明らかにする必要があると考える。
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