日本小児看護学会誌
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21 巻, 2 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
  • 吉田 美幸, 楢木野 裕美
    原稿種別: 本文
    2012 年 21 巻 2 号 p. 1-8
    発行日: 2012/07/20
    公開日: 2017/03/27
    ジャーナル フリー
    看護師が点滴・採血を受ける幼児後期の子どもの自己調整機能をどのように捉えているかを明らかにするために、看護師13名を対象に半構成的面接を行い、質的記述的研究方法を用いて分析した。その結果、9つのカテゴリーが抽出された。看護師は、【処置に向かう気持ちの表出】や【処置への情報探索】、【納得できる処置方法の選択】をしながら、母親や医療者の期待に添えるよう【気持ちの折り込み】をする子どもを捉えていた。そして、【頑張ろうとする自励的努力】により処置に向かいながら、恐さに向き合う【処置への注意の集中】または【処置からの注意の移行】をしていることを掴んでいた。これらは、【重要他者やお気に入りの物を支えにした頑張り】と共に発揮され、さらに、重要他者や医療者からの承認を得て【頑張れた自己の認識】に至ることを捉えていた。このことから、点滴・採血を受ける幼児後期の子どもの自己調整機能を意図的に支援するために、看護師は、子どもの思いの表出を支え、子どもの意思で参加することへの理解や、子どもの思考するための時間への理解、子どもの頑張りを言語化し自己形成視を促す共感的評価への理解の必要性が示唆された。
  • 山口 大輔, 堀田 法子
    原稿種別: 本文
    2012 年 21 巻 2 号 p. 9-16
    発行日: 2012/07/20
    公開日: 2017/03/27
    ジャーナル フリー
    本研究は採血後の幼児後期の子どもの対処行動とその親の対応、および関連要因を明らかにすることを目的として、小児科外来に通う3歳から6歳の子どもとその親を対象に、処置室入室から退室後10分間までの様子の参加観察と、採血後30分以降のチェックリスト調査を行った。参加観察は48組53事例、チェックリスト調査は40名44事例であった。採血後の子どもの対処行動は「気分転換行動」「コントロール行動」「愛着行動」が多く、親の対応は「誉める、慰める」「何もしない」が多かった。退室後10分間の子どもの対処行動「苦痛行動」に対し親の対応「スキンシップ」「叱る」が有意に多く、「受動的行動」に「叱る」が有意に多く、「気分転換行動」に「遊びの提供」が有意に多く、「誉める、慰める」が有意に少なかった。「愛着行動」に「スキンシップ」が有意に多かった。採血後の親の対応について援助する必要性が示唆された。
  • 加藤 千明, 大見 サキエ
    原稿種別: 本文
    2012 年 21 巻 2 号 p. 17-24
    発行日: 2012/07/20
    公開日: 2017/03/27
    ジャーナル フリー
    退院前調整会議を実施したがんの子どもの担任教員12名を対象に、子どもの学校生活の適応を支援する過程を構造化し、復学支援に向けた看護の役割を明らかにすることを目的とし、M-GTAによる質的帰納的研究を行った。担任教員が子どもの復学を支援するプロセスの中核は《クラスメートとの一体化》であった。教員は会議内容を基に【登校初日の第一歩が踏み出せる迎え入れ準備】に向け〈使命感の高まり〉を持ち〈受け皿づくり〉を支援していた。復学後は〈学校生活構築調整〉をし、子どもの〈リズムに乗った!〉を経て《クラスメートとの一体化》へ支援していた。このプロセスの中で、教員は【ストーリーが描けない不安】や【舵取りできないもどかしさ】などを体験しながら支援していることが明らかになった。入院中の看護実践への示唆として、教員の不安や支援の困難さを考慮し、教員の状況に応じた対応と、会議以外に教員との直接連携を図るための支援が必要であることが示された。
  • 工藤 悦子
    原稿種別: 本文
    2012 年 21 巻 2 号 p. 25-32
    発行日: 2012/07/20
    公開日: 2017/03/27
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は、思春期炎症性腸疾患(以下、IBD)患者のQOLについて療養行動やソーシャル・サポートとの関連を明らかにすることである。11〜18歳のIBD患者42名に対し自記式質問紙調査を行い、有効回答が得られた31名を分析対象とした。その結果、QOLと療養行動との関連では、食事制限がない群、家で食べる量を調整しない群、学校で食べる量を調整しない群でQOLが高かった。また、QOLとソーシャル・サポートでは、症状があったときの対応の手段的サポート(ρ=0.479、p<0.006)、睡眠・休息の手段的サポート(ρ=0.434、p<0.015)、内服・注腸の情報的サポート(ρ=0.400、p<0.026)、症状があったときの対応の情緒的サポート(ρ=0.377、p<0.036)で正の相関が見られた。食事制限の有無や食べるものの量を調整しながら生活することが、思春期IBD患者のQOLに影響することを理解したうえで、患者が日常生活の中で療養行動を継続できるよう、具体的な方法を患者とともに考えていくことの重要性が示唆された。
  • 平林 優子
    原稿種別: 本文
    2012 年 21 巻 2 号 p. 33-40
    発行日: 2012/07/20
    公開日: 2017/03/27
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は、慢性疾患を持つ子どものケアにあたる看護師の、幼児の療養行動支援の現状と、幼児への療養行動支援への認識を明らかにし、幼児の療養行動支援に向けた看護のあり方を検討することである。質問紙調査により225名の看護師からの回答を得た。58項目の療養行動中60%以上の看護師が幼児に実施していたのは15項目で、医療的な技術に関わる項目の実施は少なかった。実施には、幼児向け教材や幼児指導マニュアルの存在が有意に関係した。幼児の指導経験のある看護師は経験のない看護師よりも療養行動の指導開始可能と考える年齢を低く認識しており15項目で有意であった。幼児の療養行動支援には、発達、個人差、親の意思、看護師の幼児の能力の判断、モデルやツールの存在などが影響しており、幼児の日常生活行動の発達に添い、親と協働する、モデルやマニュアルなどの整備により幼児への支援の経験を増やしていくことが必要である。
  • 桶本 千史, 長谷川 ともみ
    原稿種別: 本文
    2012 年 21 巻 2 号 p. 41-48
    発行日: 2012/07/20
    公開日: 2017/03/27
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は、心臓手術中の子どもを待つ両親へのケア評価を両親自身が示す満足度から探索的に分析することで、今後のケア提供の方向性について検討することである。調査内容は手術結果に対する満足度、術中のケアに対する総合満足度、術中のケア20項目の項目別期待度と満足度等であり、心臓手術を受けた子どもの保護者を対象に自記式無記名質問紙調査を実施した。対象者58名の回答を分析した結果、手術結果に対する満足度(満足群:58名中52名,89.7%)と比べ、術中のケアに対する総合満足度(58名中30名,51.8%)は低かった。また、術中のケアに対する総合満足度と項目別満足度では「無事に終了するとの励まし」で中程度の相関関係を認めた(r=.50,p=.00)。項目別期待度をX軸、満足度をY軸としてケア評価図を作成したところ、両親の期待度が高く満足度が低かったのは「手術延長時の状況伝達」であり、術中のケア20項目の中で最優先に改善への取り組みが必要であることが示唆された。
  • 山下 早苗, 神ノ川 博, 長澤 芳
    原稿種別: 本文
    2012 年 21 巻 2 号 p. 49-54
    発行日: 2012/07/20
    公開日: 2017/03/27
    ジャーナル フリー
    医師による病名病状説明が子どもに行われる時の看護師役割について実態調査を行った。A県内における3施設で勤務する看護師63名と医師25名を対象に、質問紙調査を行った結果、看護師の認識度は小児看護の経験に関係なく高く、看護師は看護ケアに反映するための情報を得る機会として同席しており、医師もまた看護師に同様の役割を期待している現状であった。看護師の実践度や医師の期待度において、説明前に「子どもが理解しやすい状況を整える」ために看護師がコーディネータとして機能する役割項目や、子どもが説明を受けるその場で看護師が「子どもの理解を促す」ために代弁することや説明を補足する役割項目が下位となっていたことから、医師主導による病名病状説明が子どもに行われていることが多いのではないかと考える。看護師は子どものアドボケイトとして役割を果たすべきであり、医師にも看護師が子どものアドボケイトとして果たす役割について理解を求めていく必要がある。
  • 生田 まちよ
    原稿種別: 本文
    2012 年 21 巻 2 号 p. 55-63
    発行日: 2012/07/20
    公開日: 2017/03/27
    ジャーナル フリー
    在宅人工呼吸療法(以後HMV)中の子どもの家族に対して、定期的に自宅に看護師が6時間以上の長時間訪問を行い、小児のケアを行うホームベースレスパイトケア(以後HBRC)を実施した。研究の目的は、定期的HBRCを受けた母親の体験を明らかにしてその意義を示すことである。定期的HBRCを受けたHMV中の小児の母親4名に、半構造化面接を実施した。事例ごとに、母親の介護の状況と定期的HBRCの受入れの体験の視点で質的に分析した。定期的HBRCは、介護負担を軽減する、抱え込みの介護からの状況を早期に見直す機会となる、家族の介護負担の影響を軽減する体験であった。効果的に定期的HBRCを行うためには、安心して自分の時間を持つことができるように、他人である看護師が長時間自宅に滞在することへの気遣いの軽減や看護師に児のケアを移譲できることが必要である。それを可能にするためには、母親が満足できる看護師のケア技術や看護師との信頼関係の強化、1人での介護を美徳としない介護観へ他者だけでなく本人も含めての変換が必要である。
  • 中村 和明
    原稿種別: 本文
    2012 年 21 巻 2 号 p. 64-71
    発行日: 2012/07/20
    公開日: 2017/03/27
    ジャーナル フリー
    入院している子どもの母親が、入院による子どもの生活上の変化をどのようにとらえているか明らかにすることを目的とし、母親20名を対象に半構成的面接を行い、質的帰納的方法を用いて分析した。その結果、母親は、子どもの病気の症状改善や、生活リズムの確立、入院当初より眠れるようになったこと、排泄行動の自立などを肯定的な変化として、生活リズムが不規則になったこと、熟睡できなくなったこと、睡眠時間の減少、排泄行動の退行などを否定的な変化としてとらえていた。母親が子どもの生活上の変化を肯定的にとらえるためには、同室児との関わりを促すこと、子どもの生活習慣行動に着目して、成長し自立できるようになったことを母親にフィードバックしていくこと、睡眠環境や病棟設備への配慮、乳幼児には一定した日課を過ごせるようにし、保育園や学校に通っていた場合はその時の日課を考慮し、病棟の日課も臨機応変に考えることが必要である。
  • 原稿種別: 付録等
    2012 年 21 巻 2 号 p. App4-
    発行日: 2012/07/20
    公開日: 2017/03/27
    ジャーナル フリー
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