日本小児看護学会誌
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20 巻, 1 号
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  • 藤原 紀世子, 川島 美保
    原稿種別: 本文
    2011 年20 巻1 号 p. 1-8
    発行日: 2011年
    公開日: 2017/03/27
    ジャーナル フリー
    本研究は、現在青年期にある小児慢性疾患患児のきょうだいが得た糧は何か、生きていく上で糧をどのように活用しているのかを明らかにすることを目的としている。研究デザインは質的帰納的アプローチによる因子探索型研究方法である。対象者は幼少期から小児慢性疾患患児と暮らしている青年期のきょうだいで計14名であった。見出されたカテゴリーは、【同胞の存在自身が糧】【同胞の疾患や障害を介して得た糧】【見守り支え心強い味方となる糧】【きょうだいとしての立場から解き放つ糧】【無意識に封じ込めた苦悩に気づくターニングポイントとなる糧】【成長の過程で培われ熟成した力となる糧】【自己を発揮し活躍できる夢を追求する糧】【社会にきょうだい支援の必要性を投げかけるための源となる糧】であった。看護師は、きょうだいが無意識に封じ込めた苦悩に気づき、心の深層に閉じ込めた苦悩を吐露できるように介入する必要性があるという示唆を得た。
  • 荒川 まりえ
    原稿種別: 本文
    2011 年20 巻1 号 p. 9-16
    発行日: 2011年
    公開日: 2017/03/27
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は、看護師が子どもの死を心に受けとめる際に関係したことを明らかにすることである。看護師経験年数が6年以上で、子どもの死に遭遇したことのある看護師12名を対象として、半構成的面接を実施した。得られたデータから「子どもの死を心に受けとめる際に関係したこと」に関する文脈を抽出し質的に分析をした。その結果【よい看取りを行う】【子どもについて親とわかちあう】【第三者からのサポートを得る】【日々の流れに身を委ねる】【意識的に前に踏み出す】【死を捉える力】という6つのカテゴリーが抽出された。死を心に受けとめる際に関係したことは、子どもの生前および死後それぞれに見出された。死を心に受けとめるためには、自分自身と向き合うことが必要であり、看護師はありのままの自分を受け入れることで、自分の中で子どもが亡くなった出来事やその時抱いた気持ちを消化していた。
  • 永田 真弓, 廣瀬 幸美, 氏家 圭子, 石井 さおり
    原稿種別: 本文
    2011 年20 巻1 号 p. 17-24
    発行日: 2011年
    公開日: 2017/03/27
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は、「臨床看護師の接授業による子どもへのプレパレーションや倫理的配慮についての学生の学び」の内容を明らかにすることである。授業終了後に、自由回答式調査用紙への回答の得られた43名の学生(回収率59.7%)の記載内容を質的帰納的に分析した結果、以下のことが明らかとなった。学生の学びとして【プレパレーションにおけるストラテジー】、【実践における子どもの権利や倫理への配慮】、【プレパレーションの効果】の3つのコアカテゴリーが抽出された。これらの内容は基本的なプレパレーションの概念に相当しており、臨床看護師による実践事例を豊富に用いた授業は、実践における子どもへのプレパレーションや倫理的配慮についてのイメージができるだけでなく、プレパレーションの概念を理解するのに有効であった。プレパレーションにおける看護師の技術と機能を明確に位置づけた講義展開、発達段階別のプレパレーションやプレパレーションにおける家族の存在・連携を認識できる演習の工夫が今後の課題である。
  • 森 浩美, 澤田 みどり, 岡田 洋子
    原稿種別: 本文
    2011 年20 巻1 号 p. 25-31
    発行日: 2011年
    公開日: 2017/03/27
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は、看護学生(以下、学生)が、検査・処置を受ける子どものケアを体験し、何を学んでいるのかを明らかにすることである。対象は大学で看護学を専攻し、小児看護学実習(以下、実習)を終了した4年次の学生35名である。学生が実習終了後に提出したレポートを質的・記述的に分析した。その結果、学生の学びは、【子どもの特性】【不安・恐怖を緩和する物的環境】【安心につながるケア】【身体拘束の是非】【プレパレーションの意義・自己の課題】【子どもが主体となる医療・看護】という6つのカテゴリーで構成された。学生は、実習で検査・処置を受ける子どものケアを体験し、その体験を通して、子どもを尊重することを学んでいるため、臨床と基礎教育の連携は重要であり、基礎教育を検討することは看護教育全体の課題であると考えられた。
  • 柴 邦代
    原稿種別: 本文
    2011 年20 巻1 号 p. 32-39
    発行日: 2011年
    公開日: 2017/03/27
    ジャーナル フリー
    先行論文(柴,2005)で報告した「小児看護学実習で『患児との融和』をめざすそれぞれの段階において学生がとった行動の影響要因を明らかにする目的で質的帰納的研究を行った。3年課程看護専門学校3校の実習直後の学生32名の半構成的面接データから、今回は乳幼児との関わりについて語っている43事例を継続的比較分析の対象とした。結果、【接近手がかり探索行動】を構成する〔行動モデルの参照〕〔患児の興味の探索〕には1個ずつの背景要因と学生の行動の発動を促進または阻害していたそれぞれ4因子が抽出された。また【融和化接近行動】を構成する〔遊びによる融和化接近行動〕〔あやす行為による融和化接近行動〕にも各2個の背景要因と学生の行動の発動を促進・阻害していた要因として前者は5因子、後者は2因子が抽出された。さらに【実習課題的ケア行動】では4個の背景要因と学生の行動の発動を促進・阻害していた4因子が明らかになった。
  • 生田 まちよ, 宮里 邦子
    原稿種別: 本文
    2011 年20 巻1 号 p. 40-47
    発行日: 2011年
    公開日: 2017/03/27
    ジャーナル フリー
    在宅人工呼吸療法の小児に対して在宅レスパイトケアと位置づけして夜間滞在型訪問看護を実施した。この研究は夜間滞在型訪問看護が母親に与えた影響を明確にすることを目的とした。一家族が対象で母親に半構造化面接を実施した。見出されたカテゴリーは【母の心身症状の改善】【定期的な自由時間の確保による余裕】【家族の中での自分の健康の重要性の気づき】【自分の心身をいたわる思いの出現】【医療者のケアの質の向上】【家族の関係性の改善】【母の他者への接し方の改善】【医療者との児やケアについての共有感の出現】【ひとりで介護する意識からの開放】【介護意欲の向上】【社会活動の芽生え】であった。ホームベースレスパイトケアとして位置づけした夜間滞在型訪問看護は、QOL向上のために生理的欲求の充足から始めることが重要で、介護を見つめなおす機会を提供し、家族の関係性の改善や閉塞的な介護からの開放、看護ケアの質の向上などの効果が示唆された。
  • 石見 和世
    原稿種別: 本文
    2011 年20 巻1 号 p. 48-54
    発行日: 2011年
    公開日: 2017/03/27
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は、顔や四肢へ外表性疾患をもつ学童へ保護者が行った病気説明と養育態度、保護者が認識している学童の病気の捉え方を明らかにすることである。外表性の疾患をもつ小学3〜6年生の保護者143名に、質問紙調査を行い、有効回答は62名(43.4%)であった。子どもから病気に関する質問を受けたことのある保護者は50名(80.6%)で、疾患の特徴を踏まえて病気になった原因や事実をけがや事故といった比喩を用い、子どもの年齢に応じて工夫を凝らして説明を行っていた。また、保護者からみる学童の病気の捉え方は、受け入れている、何とも思っていないと捉える一方で、苦痛やあきらめに感じていると認識していた。保護者は養育する上で、子どもが病気に立ち向かう心身が培われるよう配慮し、心身の健康管理に気を配っていた。保護者は、子どもが外表性疾患をもちながらも、自律性をもち、明るく前向きに、自分も他者も大切にできる子どもに育つことを望んでいた。
  • 清水 史恵
    原稿種別: 本文
    2011 年20 巻1 号 p. 55-61
    発行日: 2011年
    公開日: 2017/03/27
    ジャーナル フリー
    通常学校の医療的ケアを要する子どもをケアする看護師と教諭との協働の実態を看護師の認識から明らかにする目的で、通常学校で医療的ケアを要する子どもをケアする看護師11名に半構成的面接を行った。面接内容を質的帰納的に分析した結果、《看護師のおかれている状況》《看護師としての軸となる考え》《状況にそう》《看護の力を発揮する》《協働の感覚》の5つのカテゴリーを抽出した。通常学校で医療的ケアを要する子どもをケアする看護師は、《看護師のおかれている状況》で、《看護師としての軸となる考え》をもとに、《状況にそう》、《看護の力を発揮する》中で、《協働の感覚》を得ていた。《看護師のおかれている状況》、《協働の感覚》のサブカテゴリーの内容より、教諭との協働に向けて、通常学校における医療的ケアを要する子どもをケアする看護師の役割の明確化、教諭と看護師の情報・意見交換の場の設定が必要であること、看護師と教諭の日々のコミュニケーションが大切であることが示唆された。
  • 廣井 寿美, 古屋 敦子, 森 早苗, 高木 由美子, 阿久澤 智恵子, 相澤 康子, 矢嶋 美恵子, 飯塚 もと子
    原稿種別: 本文
    2011 年20 巻1 号 p. 62-69
    発行日: 2011年
    公開日: 2017/03/27
    ジャーナル フリー
    子どもの入院に付き添う母親への支援は、小児看護の重要な役割であるが、学生や新人看護師の多くは、母親へのかかわりに戸惑いを感じている。そこで、小児病棟で働く熟練看護師6名を対象に、母親の疲労に対する介入の視点を明らかにするための研究を行った。内容分析の結果、15のカテゴリーが抽出された。熟練看護師は、付き添う母親に起こりうる問題を幅広く認識し、些細な変化が重要な情報であることを意識しながら情報収集を行っていた。母親の疲労への介入として、直接的な身体の負担の軽減や医療チームの調整はもちろんのこと、良好な母子関係への促進や母親役割への満足度を高める支援を行っていた。また、母親との信頼関係を重視し、会話のための環境づくりや会話の工夫など、日常的な努力を重ねていた。熟練看護師は、すべてのかかわりを通して、母親とのかかわりの一貫した姿勢を持っていた。
  • 甲斐 恭子, 佐藤 朝美, 草柳 浩子, 川名 るり, 筒井 真優美, 下道 知世乃, 後藤 淳子, 江本 リナ, 平山 恵子, 松本 沙織 ...
    原稿種別: 本文
    2011 年20 巻1 号 p. 70-77
    発行日: 2011年
    公開日: 2017/03/27
    ジャーナル フリー
    本研究は、重症心身障害児者(以下、重症児(者))とその家族への外来看護を外来看護師と話し合い、看護師の重症児(者)とその家族への思いがどのように変化するのかを明らかにする目的でアクションリサーチを行った。研究参加者は小児科外来勤務に携わる看護師5名、アクションは勉強会等を行い、データ収集は質問紙調査、参加観察、インタビュー等により行った。重症児(者)へかかわる看護師に関する変化について共同研究者間での分析を行い、妥当性を検討した。6回の勉強会での対話を通して、看護師は1)重症児(者)へのかかわりが難しいと感じていたことを語り始め、2)重症児(者)への看護の悩みを共有し、3)家族から教えてもらう姿勢が大切という気づきから、重症児(者)とその家族への思いが変化していき、外来でのかかわりが変化した。
  • 太田 有美, 川名 るり, 鶴巻 香奈子, 平山 恵子, 朝倉 美奈子, 江本 リナ, 草柳 浩子, 筒井 真優美, 松本 紗織, 山内 朋 ...
    原稿種別: 本文
    2011 年20 巻1 号 p. 78-85
    発行日: 2011年
    公開日: 2017/03/27
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は、混合病棟で働く看護師の子どもへの遊びに対する意識を知り、遊びに関するアクションを起こすことで看護師の意識、行動にどのような変化が生じるのかを明らかにすることである。研究デザインはアクションリサーチであり、子どもへの遊びに関する意識と行動がどのように変化するのかを半構成的面接および参加観察によりデータを収集し、分析した。結果、看護師は遊びの捉え方が狭義であり、他の看護師に気兼ねして遊んでおり遊びへの罪悪感を持っていることがわかった。そこで文献を紹介し、話し合いの場を設け、日常で行われていた遊びのケアを振り返り、ケアの意味づけをした。その後、看護師は罪悪感を語ることがなくなり、遊びが日常のケアの中で行われていることを自ら認められるように変化し、また子どもを尊重する行動がとられていた。
  • 河村 昌子, 泊 祐子
    原稿種別: 本文
    2011 年20 巻1 号 p. 86-92
    発行日: 2011年
    公開日: 2017/03/27
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は、骨髄穿刺検査と腰椎穿刺検査を受ける患児と養育者へのプレパレーションを実施し、その効果を検討することである。対象者は3歳以上の患児(3歳〜14歳)12人とその養育者12人、病棟の看護師23人であった。プレパレーションの録音の逐語録と看護師が記入した患児別の個人記録用紙、チェックリスト、プレパレーション後の患児と養育者への面接調査の逐語録をデータとして事例毎に分析を行った。その結果、プレパレーションを受けた患児と養育者は主体的に検査に臨み、必要以上の緊張や不安を軽減できる効果が示された。また、プレパレーションは患児だけでなく、養育者への効果、(1)ディストラクションの向上、(2)養育者の不安の軽減、(3)養育者のニードを満たす、(4)患児の検査に対する価値観の向上が認められた。
  • 田久保 由美子, 宗村 弥生, 臼井 雅美, 佐藤 玲美, 楡木 志帆, 清水 若菜, 釼持 有代, 坂本 倫美
    原稿種別: 本文
    2011 年20 巻1 号 p. 93-99
    発行日: 2011年
    公開日: 2017/03/27
    ジャーナル フリー
    小児の生体腎移植は、子どもと親が同時期に手術患者となる特別な環境を生じさせ、移植後も生涯にわたる治療が必要となる。そこで、子ども自身が、親の手術を理解し、主体的に移植に臨むことで、子どもと家族双方によりよい影響があると考え、小児の腎移植に携わる看護師、看護系大学教員、看護学部学生が協力してプレパレーションに取り組んだ。手術前のプレパレーションを目指して始めた取り組みは、2年以上にわたる活動を続ける中で、入院前から退院後までの継続したプレパレーションへと発展した。さらに、途中から児童精神科医や臨床心理士も参加し、チーム医療へと発展した。定期的に会議を実施し、他職種間で、一事例ごとに、プレパレーションの進め方の検討や、実施後の反応の評価を行った。これらの過程を通して、看護者のプレパレーションに対する理解が深まり、日々のケアの中に浸透した。さらに、活動に参加していない医療者の理解へと繋がった。
  • 佐藤 玲美, 田久保 由美子, 宗村 弥生, 臼井 雅美, 楡木 志帆, 清水 若菜, 釼持 有代, 坂本 倫美
    原稿種別: 本文
    2011 年20 巻1 号 p. 100-106
    発行日: 2011年
    公開日: 2017/03/27
    ジャーナル フリー
    小児の生体腎移植は、家族内に同時期に2名の手術患者が発生し、子どもは術直前、術直後に心の拠り所である親と接することが出来ないという体験をする。そこで、生体腎移植の特徴を踏まえたプレパレーションを8歳から14歳の子どもと親7組に実施した。プレパレーションは一事例ごとに、情報交換を行い、どのように進めるかを他職種間で検討、評価しながら進めた。プレパレーションによる子どもの反応は、「頑張れそう」との前向きな発言もあれば、「こわい」「泣く」といった反応もあり様々であったが、子ども気持ちの表出を促し、主体的に手術に取り組むことを支援した。また、ドナーとなった親は、自分の体調に合わせて面会をすることが出来ており、今まで気付いていなかった子どもの一面を知る機会となった。
  • 今村 美幸, 山口 求, 光盛 友美, 鍋島 和貴
    原稿種別: 本文
    2011 年20 巻1 号 p. 107-112
    発行日: 2011年
    公開日: 2017/03/27
    ジャーナル フリー
    少子化時代に生まれた看護学生は子どもとのかかわりが少ないために、講義のみでは子どもや子育て観を描きにくい状況にある。そこで本研究は、小児看護学の授業に導入している「地域の親が看護学生に子育て体験を語る」ワークショップ(以下WS)前後の学生の子育て観の変化を明らかにし、WSの教育的効果を検討することを目的とする。WSによって学生は、子育てを多角的にとらえ否定的イメージから肯定的イメージへと変化させるとともに、子育て支援の必要性に学生自らが気づいていた。子育て体験を母親・父親から直接聴き、親子のふれあいを直接目で見ることにより学生は、子どもや子育てへの理解を深めることができ、母親・父親の人間的成長にも気付くことができたためであろう。したがってWSは、講義だけでは限界のある学生への学びを深めるものであり、将来の保健指導や子育て支援へと生かすために効果的なものであるといえる。
  • 山口 求, 今村 美幸, 光盛 友美, 鍋島 和貴
    原稿種別: 本文
    2011 年20 巻1 号 p. 113-119
    発行日: 2011年
    公開日: 2017/03/27
    ジャーナル フリー
    乳児期の虐待死が増えており、その理由は「泣きやまない」というものである。子育てに疲弊する母親は、相談する相手もなく「社会的に孤立」しやすい現状がある。そこで本研究は、「地域の親が看護学生に子育て体験を語る」ワークショップ(以下WS)を導入した。親はWSの参加で子育て体験を振り返り、子育てへの「気づき」から、親としての自覚と親自身の自尊感情の高まりがある。WSによる親の自尊感情の高まりは、親教育の支援となるのかを検討することを目的とする。WSの結果は、6つの大カテゴリーに分類された。【子育ての大変さ・困難性】【子育ての楽しさ・喜び】【誕生の喜び】【子育てサポート体制】【両親への尊敬】【子育てによる自己成長の実感】である。自分の子育てを振り返ることで、否定的な子育てを客観的に見つめ、肯定的な子育ての感情と交錯しながら、親自身が成長することを自覚することにつながっている。WSでの子育て体験は、親としての自覚を再認識し、自尊感情を高めるという"親が親となる"発達支援になることが示唆された。
  • 薦田 彩会, 松森 直美
    原稿種別: 本文
    2011 年20 巻1 号 p. 120-126
    発行日: 2011年
    公開日: 2017/03/27
    ジャーナル フリー
    本研究目的は、人形を活用した血圧測定におけるプレパレーション実施の効果を明らかにし、子どもの思い・主体性を尊重した実践の中でのプレパレーションの方法を検討することである。6〜9歳の健康な小学生14名を無作為に人形使用群と口頭説明群に分け、自作のフェイススケール、脈拍数及び実施中の子どもの様子を観察、比較検討を行った。その結果、導入時に人形を使用することで子どもの緊張の緩和や不安の軽減をより効果的に図ることができ、子どもとの関係づくりが行いやすくなり、人形を使用したデモンストレーションやジェスチャー、口頭での動作の指示を加えることにより、子ども自身が次にどういう行動をとるのかを予測しやすくなることが考えられた。また、処置後に人形を活用した遊びの場を設けることで、処置後のフォローや安心感獲得への支援も行いやすくなることが示唆された。
  • 今野 美紀, 上村 浩太, 蝦名 美智子, 佐藤 洋子, コリー 紀代, 箱崎 真木子, 吉田 雪絵, 桃内 雅代, 岩崎 美樹, 岡田 洋 ...
    原稿種別: 本文
    2011 年20 巻1 号 p. 127-135
    発行日: 2011年
    公開日: 2017/03/27
    ジャーナル フリー
    看護学生の講義前・後・実習後における小児のプレパレーションに関する認識を明らかすることを目的に20項目の質問紙調査を行った。講義前221名、講義後229名、実習後191名、計641名から有効回答を得て、Mann-Whitney検定を行った。講義前・後では10項目に有意差を認め、講義後にプレパレーション志向になった。実習中のプレパレーション経験有無による2群間では4項目に有意差を認め、経験有群がプレパレーション志向であった。経験有無別の講義後・実習後の分析では、経験有では13項目に、経験無では14項目に有意差を認めた。いずれも実習後にプレパレーション志向には概してならなかった。臨床と協働することで学生が実習中にプレパレーションを経験できるようにすること、時に後退するプレパレーションの認識を「子どもの権利」の点から再考できる機会を設けること等が、学生の倫理的感受性を育む一助になると考えられた。
  • 志賀 加奈子
    原稿種別: 本文
    2011 年20 巻1 号 p. 136-140
    発行日: 2011年
    公開日: 2017/03/27
    ジャーナル フリー
    本研究は、未成年者を対象とした看護の研究論文におけるプライバシー保護の現状と課題を明らかにするために行った。日本小児看護学会誌15(1)-18(3)の中から、未成年者を研究対象とした論文を抽出し、個人の特定を防止する倫理的配慮、個人情報の漏洩を防止する倫理的配慮、倫理委員会による事前のチェック、未成年者の特徴として保護者に対するプライバシー保護についてどのように記載されているかを調査した。その結果、調査対象とした全ての論文は匿名化を用いて個人を特定できないようにしていたが、低年齢の未成年者を対象としている論文は、個人の特定に繋がりやすいデータを収集する一方で、漏洩防止方法などについて記載されていない場合もあった。また、保護者に対する未成年者のプライバシー保護について記載している論文は多くはなかった。どのように論文に記載していくかは、今後も重要な課題として残されていると考えられる。
  • 佐藤 朝美
    原稿種別: 本文
    2011 年20 巻1 号 p. 141-147
    発行日: 2011年
    公開日: 2017/03/27
    ジャーナル フリー
    本研究は、重症心身障害児(者)(以下、重症児(者))のコミュニケーションに関する研究の現状と課題を国内外の文献検討から明らかにした。医学中央雑誌WEBとCINAL Plus with Full Textを用いて2000年-2010年7月までの文献から22件を得た。これらをHolzemer(2000)のThe Outcomes Model for Health Care Researchを参考に分析した。その結果、inputsでは重症児(者)のコミュニケーション特性、養育者が感じるコミュニケーションの難しさ、コミュニケーションスキルに対する看護師の思いが明らかにされていた。Processesでは、養育者や医療従事者と重症児(者)の相互作用の場面から、重症児(者)の反応の意味を読み取るプロセスが示され、Outcomesでは、親や看護師への影響、教育の必要性、モデルの抽出、経験の構造化が明らかにされていた。
  • 笠井 由美子, 小野 敏子, 木村 紀子
    原稿種別: 本文
    2011 年20 巻1 号 p. 148-154
    発行日: 2011年
    公開日: 2017/03/27
    ジャーナル フリー
    本研究は、小児看護学実習において、乳児および幼児期前期の患児を受け持った学生の戸惑いに対する対処行動とその要因を明らかにし、今後の実習指導への示唆を得ることを目的とした。看護短期大学生12名を対象に、小児看護学実習終了後に半構成的面接を行った。学生の戸惑いに対する対処行動は、【子どもの側に行く】【試行錯誤しながら自分自身で工夫】【周囲の援護を支えに実施】の3カテゴリーが抽出された。対処行動の要因は、【ケアの必要性の認識】、【周囲からのサポート】、【気持ちの余裕の形成】、【関わりたくなる子どもの姿】の4カテゴリーが抽出された。【ケアの必要性の認識】は【子どもの側に行く】という対処行動を起こす要因になっており、【周囲からのサポート】を受けて子どもに関わることで子どもに変化が見られ、【関わりたくなる子どもの姿】を認識できることが子どもをかわいいと思えることにつながり、戸惑いに対する学生の対処行動を後押しする要因となっていた。このような対処行動の要因を踏まえて、学生個々のレディネスを見極めながら、戸惑いを乗り越えられるように支援していく必要性が示唆された。
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