日本小児看護学会誌
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23 巻, 3 号
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原著論文
  • ─共分散構造分析を用いて─
    扇野 綾子, 中村 由美子
    2014 年 23 巻 3 号 p. 1-9
    発行日: 2014年
    公開日: 2016/12/09
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は、慢性疾患患児を育てる母親の心理的適応の構造の特徴について明らかにすることである。

     病児の母親247名と健康児の母親332名を対象に、自記式質問紙調査を行った。心理的適応に関連する要因として精神的健康度、コーピング、レジリエンスを測定し、分析は記述統計と平均値の差の検定の後、共分散構造分析を用い母親の心理的適応モデルを作成した。

     各尺度の得点を比較した結果、病児の母親は健康児の母親に比べて精神的健康度が低く、レジリエンスの 「I AM」 「I WILL/DO」、コーピングの 「肯定的解釈」 が有意に低かった。共分散構造モデルについて、子どもの疾患の有無による多母集団の同時分析を行った結果、病児の母親の心理的適応を構成する要因では 「自信」 の影響が大きく、『柔軟な力』を構成する 「楽観視」 と 「こころのゆとり」 のパス係数が高かった。

     これらの結果より、病児の母親に対しては育児を承認し、長期的な視点をもち関わるなど支援の方向性の示唆が得られた。

研究報告
  • 林 亮
    2014 年 23 巻 3 号 p. 10-17
    発行日: 2014年
    公開日: 2016/12/09
    ジャーナル フリー

     小児がん患者の病気体験におけるレジリエンスの構造を明らかにすることを目的に、小児がん患者11名を対象としてグラウンデッド・セオリー・アプローチによる継続的比較分析を行った。分析の結果、3個の主要カテゴリー [スイッチを切り替えるプロセス]、 [治療を乗り越える自信をつけるプロセス]、 [自分の人生に病気を取り込むプロセス] と、13個のカテゴリー、38個のサブカテゴリーが抽出され、小児がん患者の病気体験におけるレジリエンスは、患者が病気である自分を受け止め、病気体験を自分の人生の一部として取り込んでいくプロセスとして構造化された。このプロセスには、患者が自分自身に何が起こっているのかを知ること、入院環境・退院後の環境に子どもの居場所を作ることが必要であることが示唆された。

  • 木戸 恵美
    2014 年 23 巻 3 号 p. 18-25
    発行日: 2014年
    公開日: 2016/12/09
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は、思春期、青年期にクローン病 (Crohn’s Disease ; CD) をもつ人の療養法を遵守できない体験を明らかにし、なぜ療養法を実施することが難しいのかを検討することである。11歳から25歳までにCDと診断され11年から22年が経過した人10名に半構成面接を行い質的帰納的に分析した。結果、思春期、青年期にCDを発症した人は、診断前後の時期に [自分におこっていることがわからない] ので医師である [先生とお母さんに療養法を任せざるを得ない] 体験をしていた。すると、社会生活では [友だちの輪の中で自分の価値が揺れ動く] ことや [支えているのは母だけどお母さんから離れたい] 思いから療養法の実施が困難であった。結果より、思春期、青年期にCDを発症した人は、病気と向き合うまでに時間を要するため、診断前後の時期の療養行動を親に任せるが、発症が自立の時期であり親から療養行動を引き継ぐタイミングがないことが分かった。

  • ─保護者のインタビューを中心として─
    大西 文子, 神道 那実, 増尾 美帆
    2014 年 23 巻 3 号 p. 26-33
    発行日: 2014年
    公開日: 2016/12/09
    ジャーナル フリー

     慢性疾患をもつ子どもの社会復帰を支える保護者11組を対象に、子どもと家族が抱える問題と専門職者の支援の現状を明らかにし、具体的支援方法を検討することを目的に質的記述的研究を行った。結果、子どもと保護者は医療者から【保護者をサポートするための支援】を受けながらも、保護者は【病気の先行きに関連した進学や就職への不安】【病気・入院による学校生活への支障】【学校生活を送るうえでの心配・困難】【副作用による友人との関係性の困難・気がかり】を体験していた。専門職者の支援として、【進学や就職の将来への不安に対する支援】【病気・治療の管理を目的とした支援】【学校生活を送りやすくするための支援】【スムーズな復学のための支援】があった。しかし、保護者からは【日常生活上の困難を解決するための相談する場・人材・資料の要望】【入院中から、復学のための情報提供や相談等の支援の要望】【学校生活を送れるための物理的環境や人的環境の整備の要望】【子どものことを知っている医療者による退院後の支援の希求】があった。今後は、入院中から個々の退院後の生活に即した具体的な患者指導、養護教諭と子どもの通院する医療機関の医師・看護師との連携を可能とするシステム等の検討が必要である。

  • 横森 愛子, 谷澤 みどり, 加藤 由香, 石川 眞里子
    2014 年 23 巻 3 号 p. 34-41
    発行日: 2014年
    公開日: 2016/12/09
    ジャーナル フリー

     本研究目的は、小児がんの子どもを看る母親が療養体験中にセルフ・エンパワメントを生成するプロセスについて明らかにすることである。乳幼児期に小児がんの治療を受けた子どもの母親5名に半構造的面接をおこない、質的に分析した。その結果、子どもの発病により【子どもの危機的状態への不安】【想定外の病気になったことへの強い落胆】【病気になったことへの自責の念】を抱いた母親は、【治ると励まし気持ちが寄り添う家族】が支えとなり【治るという信念】【治すという前向きな気構え】を生成していたことが明らかになった。それは、病名の確定や治療法の決定が契機となり、母親は【治るという信念】【治すという前向きな気構え】を抱いた自分を認識し、子どもの闘病に立ち向かおうとしていた。母親の感情の変化を捉え、母親が自分のもつ力を発揮できる看護支援が示唆された。

  • 山﨑 祥子, 楢木野 裕美
    2014 年 23 巻 3 号 p. 42-48
    発行日: 2014年
    公開日: 2016/12/09
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は、小児がんの子どもをもつ親への死別前のグリーフケアに関する看護師の実践を明らかにすることである。小児がん拠点病院の小児がん看護経験年数3年以上の看護師10名に半構成的面接を実施し、質的記述的研究を行った。分析の結果、【医療者や家族とケア方針の統一を図りグリーフケアの準備をする】【親が子どもの存在を改めて実感できるケアをする】【子どもと親の望みを引き出して実現を目指す】【親が親らしく子どもと過ごすための後押し】【家族が家族らしい時間を過ごし、よい思い出を残す】【子どもの苦痛の緩和を通して親へのケアをする】【親に子どもとの死別の覚悟を促す】の7つのカテゴリーを抽出した。看護師は、子どもへのEnd-of-Lifeケアと同時に親へのケアを実践し、時に葛藤を抱きながら関わっていた。看護師は、これらの親へのケアには死別前からのグリーフケアの意味があることを認識し、実践していくことが必要である。

  • 名古屋 祐子, 塩飽 仁, 鈴木 祐子, 槌谷 由美子, 井上 由紀子, 相墨 生恵, 木村 智一
    2014 年 23 巻 3 号 p. 49-55
    発行日: 2014年
    公開日: 2016/12/09
    ジャーナル フリー

     本研究は、看護師が抱く子どもの終末期ケアを行う上での障壁と困難の内容を明らかにすることを目的とし、終末期ケアに携わった経験のある看護師21名に半構造化面接を行った。面接では、終末期ケアにおける困難やその困難が生じている背景を詳細に尋ね、その内容を質的帰納的に分析した。その結果、障壁として5カテゴリ【終末期ケアの経験不足】【個別性の高い事例】【決められた制約】【予測がつかない最期】【死との対峙】、困難として7カテゴリ《症状緩和》《子どもと家族への情報提供と意思決定支援》《子どもと家族への声のかけ方や関係作り》《子どもと家族を支えながら希望を叶える関わり》《医療者間での対応や治療方針の統一》《他の患者家族への対応》《行った終末期ケアの評価》が抽出された。これらのうち、【終末期ケアの経験不足】と【個別性の高い事例】は子どもの終末期ケアに特有の障壁であると考えられる。また、《子どもと家族への情報提供と意思決定支援》《子どもと家族への声のかけ方や関係作り》《子どもと家族を支えながら希望を叶える関わり》といったコミュニケーションに関連した困難が多く抽出されたが、要因の一つにbad newsを子どもに伝えることが難しい現状があると考えられる。

資料
  • ─外来における母親への支援─
    杉村 篤士
    2014 年 23 巻 3 号 p. 56-62
    発行日: 2014年
    公開日: 2016/12/09
    ジャーナル フリー

     外来におけるADの乳幼児をもつ母親への有効的な看護介入の方法の指針を得ることを目的に、11名の母親に聞き取り調査を行った。その結果、母親は、子どもの将来やステロイド外用薬の副作用に対する不安、医療者からの不明瞭・一方的な指導、ADの治療における軟膏処置の複雑さから、家庭でのケアが不十分となり、子どもの症状悪化や治癒の遷延を招いたことが明らかになった。これらのことより、外来における看護介入として、母親のADに関する理解や不安を把握したうえでの知識の提供、実演による軟膏指導、個別性に配慮したパンフレットの利用、初期段階においての母親との子どもの特徴の把握、症状悪化時の対応の検討、母親の自己効力感の向上を目指した関わり、家族の支援体制の調整が重要であることが示唆された。

  • ─検査・処置を受ける子どもの看護に関して─
    森 浩美, 岡田 洋子
    2014 年 23 巻 3 号 p. 63-69
    発行日: 2014年
    公開日: 2016/12/09
    ジャーナル フリー

     検査・処置を受ける子どもの看護に関する看護学生 (以下、学生) への指導内容を明らかにするために、小児看護学実習に携わる看護師 (以下、指導者) 5名に半構造化面接を行い、質的記述的に分析した。

     その結果、指導者による学生への指導は、【子どもを理解する方法】【子どもの親に対する心配り】【子どもに行う必要最小限の身体抑制】【子どもの心的負担の軽減】【子どもが主体となる支援】【子どもを看護する者の内省的態度】という6つにカテゴリー化された。これらは、〈子どもの権利について考える〉ことにより導かれる子どもと親への看護であり、看護師としての倫理観を重要視する内容と考えられた。そのため、実習指導では、学生の〈子どもの権利ついて考える〉過程を支援し、倫理観を育むことが課題となる。そして、指導者自身も学生のロールモデルとなるように、看護の改善に取り組み、その姿を学生に示すことが重要と考える。

  • ─医療関係者による実践に着目して─
    吉備 智史, 池田 真理, 上別府 圭子
    2014 年 23 巻 3 号 p. 70-76
    発行日: 2014年
    公開日: 2016/12/09
    ジャーナル フリー

     本研究では、我が国における小児に対する 「いのち」 や 「死」 についての教育の実態を明らかにすることを目的とした。文献検討では医学中央雑誌 (Ver.5) から得られた15件の原著論文を対象として質的分析を行った。インタビュー調査は4名の研究者を対象とした。

     その結果、以下のことが明らかになった。かつては 「死の教育」 などが主流であったが、近年は 「いのちの教育」 が増加していた。その変遷には学会の設立や行政の通達が影響していた。いのちの大切さを伝える際、自身の命の大切さについて伝えることによって、他者のいのちの大切さについても考えさせることができるとする考え方が存在した。また、医療機関だけでなく学校などにおいても、教師と協働しながら教育を実践していた。

     ここから、 「いのち」 や 「死」 についての教育は、自身のいのちについて考えることが重要視されており、様々な場面での実施が可能であるということが示唆された。

  • 岩瀬 貴美子
    2014 年 23 巻 3 号 p. 77-83
    発行日: 2014年
    公開日: 2016/12/09
    ジャーナル フリー

     患者家族滞在施設 (ハウス) を利用する家族の生活やハウス利用への反応を明らかにする目的で、スタッフに対しフォーカスグループインタビューを行った。質的内容分析を行った結果、家族の様子を表す86件の語りが抽出され、6カテゴリー【家族の行動】、【家族の置かれた状況】、【家族の心理状況】、【ハウス利用の好感】、【ハウス機能の活用】、【ハウスの認知と理解】と、20のサブカテゴリーに分類された。家族が、慣れない土地で慌ただしく付添い生活を開始し、患児の病状や家族間の問題の深刻さを抱えながら面会に通い詰める様子が語られた。一方で、ハウススタッフや設備に安心してごく普通の日常生活を送ることができ、同じ境遇の家族同士、ピアサポートとなっていることも語られた。以上より、家族は厳しい状況にありながらもハウス利用により日常性を回復し、負担軽減につながっていることが示唆された。

  • ─1996年カリキュラム改正前後の比較─
    太田 智子, 筒井 真優美, 川名 るり, 山内 朋子, 江本 リナ, 吉田 玲子
    2014 年 23 巻 3 号 p. 84-91
    発行日: 2014年
    公開日: 2016/12/09
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は、看護系大学教育における小児看護学実習に関する文献を、1996年カリキュラム改正前後で比較し分析することで小児看護学実習における研究動向を明らかにすることである。カリキュラム改正から10年経過した2007年から2013年7月までの国内文献81件を、カリキュラム改正前の1995年から1998年7月までの文献54件を検討した先行研究と比較して分析した結果、6つのカテゴリーに分類された。<実習内容に関するもの>の割合はカリキュラム改正前後でほぼ同率であったが、文献内容は実習全体のあり方に関するものから具体的な実習内容に関するものに変化していた。<実習施設に関するもの>は入院病棟以外の実習施設の文献が増えており、<実習につながる授業・技術演習に関するもの>はカリキュラム改正後に約3倍に増えていることが明らかになった。以上の結果には、実習時間の短縮や日本の医療事情の変化による小児看護学実習への影響が関係していると考える。

  • 吉田 玲子, 川名 るり, 江本 リナ, 太田 智子, 山内 朋子, 筒井 真優美
    2014 年 23 巻 3 号 p. 92-99
    発行日: 2014年
    公開日: 2016/12/09
    ジャーナル フリー

     本研究では、小児看護学実習における教員と臨地実習指導者に焦点を当てて文献検討を行い、実習指導の内容を明らかにすることを目的とした。

      「看護学実習」 「小児」 「看護系大学」 に関連するキーワードを用いて、2007年から2013年7月、 「原著」 に限定して文献検索を行い、教員を対象とした論文21件、臨地実習指導者を対象とした論文4件の計25件から実習指導の内容に焦点を当てて分析した。

     教員の具体的なかかわりとして、①カンファレンスの有効活用、②実習中のヒヤリハットや倫理的な場面でのかかわりについて記述されていた。しかし、子どもと家族へ直接接する場面を取り上げて記述されたものはなく、かかわりが効果的であったと考察されていても、教育評価の方法が記述されたものはなかった。臨地実習指導者のかかわりについて記述された論文はなかった。

     今後は子どもと家族への接し方やケアについての具体的な指導内容を明らかにするとともに、教育評価の方法についても検討することが課題である。

  • 中村 恵美, 廣渡 加奈子
    2014 年 23 巻 3 号 p. 100-106
    発行日: 2014年
    公開日: 2016/12/09
    ジャーナル フリー

     子どもの死を看取った看護師の経験を45文献から明らかにした結果、急変に備えつつ苦痛緩和やQOLの維持向上など多岐にわたるケアを担う一方、時間不足や知識・経験不足、家族の気持ちを受け止められない、満足ゆく看取りが出来ない、あるいは十分な看取りができたかどうか分からず、不全感や無力感などを抱いていることが明らかとなった。看取りの過程で抱いた悩みや疑問に対しては、同期や先輩に相談、自分にできることをする、割り切る、家族と距離をとるなど多岐であった。子どもが亡くなった後の喪失感や不全感に対しては、看護師や親と気持ちを分かち合うなどして乗り越えたり、行ったケアを振り返り意味付けすることで自らの成長に繋げている看護師もいた。しかし、誰にも相談しない看護師がいることや、カンファレンスや個別サポートにおける課題が明らかとなり、今後の対策の必要性が示唆された。

  • 山内 朋子
    2014 年 23 巻 3 号 p. 107-114
    発行日: 2014年
    公開日: 2016/12/09
    ジャーナル フリー

     目的 : 児童精神科病棟における看護師と発達障害の学童とのかかわりについて文献検討を行い、研究の動向とかかわりの具体的内容を明らかにする。

     方法 : 医学中央雑誌Web (Ver.5) にて2000年から2013年8月までの国内文献を検索し、かかわりが読み取れる文献19件を抽出して研究の動向とかかわりの具体的内容を分析した。

     結果 : 量的研究と質的研究が各5件と最も多かった。かかわりの具体的内容は【かかわり方とそれによる子どもの変化】【専門的なかかわり】【かかわりの困難さと達成感】に類型化された。看護師は発達障害の学童の特性に応じたかかわりや子どもの成長と発達を意識したかかわりを行っていた。それによって発達障害の学童は思いの言語化などができるように変化していた。しかし、専門性のあるかかわりには困難さも伴っていた。

     結論 : 今後、看護師が行う発達障害の学童との距離調整といった専門性の高いかかわりについて、より具体的な内容を明らかにする必要がある。

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