日本小児看護学会誌
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25 巻, 2 号
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原著論文
  • —療養生活についての語り—
    松内 佳子, 小島 ひで子
    2016 年25 巻2 号 p. 1-7
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/09
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は、小児期に生体肝移植を受けた患者にとっての生体肝移植やそれに伴う療養生活の意味を明らかにし、小児生体肝移植患者やその家族に対する支援への示唆を得ることである。ナラティヴ・アプローチを用い対象者2名にインタビューを実施した。両氏に共通したテーマ【移植患者であることを自問自答する】、【生きていることは、生かされていること】、【すぐそばにいる生体ドナーという絶対的な存在】を見出した。小児生体肝移植患者は、成長発達過程での療養生活で様々な障壁にぶつかり、移植患者であることを自問自答し、特に思春期・青年期には移植患者であることが心理的葛藤となり、自己概念の形成における障害となり得ること、また移植患者としての自覚や自律を育むためには、思春期以前より成人期への移行を見越したサポートを行う必要があり、社会における移植患者への理解を深めることも重要な支援であることが示唆された。

  • 高橋 衣
    2016 年25 巻2 号 p. 8-15
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/09
    ジャーナル フリー

     本研究は、小児看護に携わる看護師の子どもの権利擁護実践に至るプロセスを明らかにすることを目的とした質的帰納的研究である。対象は、関東圏にある大学附属病院3施設の小児看護経験5年以上の看護師14名である。結果、コアカテゴリー【子ども中心に考える力】の発展プロセスとして明らかになった。発展プロセスは、≪指示のままに動き、自分で考えられない≫、≪非言語化されたルールに従ってしまう≫、≪子ども中心に考える力を形成し一歩踏み出す≫、≪子どもの立場に立ち皆を巻き込んで実践する≫の4段階で構成されていた。さらに、【子ども中心に考えられる力】の強まりに影響をもたらすのは、≪子どもの力の確信≫、≪子どもの力を伝える工夫力≫、≪子どもに引き寄せられる思い≫の3つの力であった。発展プロセスは、小児の臨床場面、看護基礎教育、現任教育、研究に適用し、看護師の子どもの権利擁護実践をより早く可能にできることが考察された。

研究報告
  • 田中 さおり, 茎津 智子, 草薙 美穂
    2016 年25 巻2 号 p. 16-23
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/09
    ジャーナル フリー

     本研究は、SGA (small-for-gestational age : 以下、SGA) 性低身長症児をもつ母親の成長ホルモン療法 (以下、GH療法) に伴う体験を明らかにし、治療開始から治療継続時における支援を検討することを目的とした。外来を定期受診しているGH療法中のSGA性低身長症児をもつ母親4名に半構成的面接を行い、質的帰納的に分析を行った。分析の結果、SGA性低身長症児をもつ母親のGH療法に伴う体験として、【子どもが低身長であることへの絶え間ない自責と願い】、【GH療法に奮闘】、【治療に対するサポートのなさ】、【治療に見出す希望】、【尽きない心配】の5カテゴリーが抽出された。SGA性低身長症児の母親は子どもに対して絶え間ない自責があり、それゆえ子どもの成長への願いは強く治療を継続していることが特徴であり、医療者からは十分なサポートを受けていない現状が明らかとなった。また家族同士のネットワーク作りや治療時期ごとのサポート体制の確立の必要性が示唆された。

  • 草野 淳子, 高野 政子
    2016 年25 巻2 号 p. 24-30
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/09
    ジャーナル フリー

     目的 : 医療的ケアが必要な子どもの母親が在宅で医療的ケアを実践するプロセスを明らかにする。

     方法 : 医療的ケアが必要な在宅療養児を持つ母親15人を対象に、半構成的面接を行った。データの分析は修正版グランデッド・セオリー・アプローチを用いた。

     結果 : 『ケアの根拠への気づき』、『分析的思考の取得』、『察知可能になる』の3つのカテゴリーを生成した。子どもの退院直後は、母親は子どもの状態は酸素飽和度の値で判断していた。母親は探索的行動をし、『ケアの根拠への気づき』をしていた。その後母親は、状態悪化時の『分析的思考の取得』ができ、子どもの微妙な変化が『察知可能になる』ことができていた。

     結論 : 母親が、医療的ケアを実践するプロセスは3段階であり、段階に応じた看護師の支援が必要である。最終段階では、母親はわが子に対して、専門家より熟練したケア提供者となり、看護師は実際的サポートや緊急時の判断を求められていた。

  • 松﨑 奈々子, 阿久澤 智恵子, 久保 仁美, 今井 彩, 青栁 千春, 下山 京子, 佐光 恵子, 金泉 志保美
    2016 年25 巻2 号 p. 31-37
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/09
    ジャーナル フリー

     【目的】小児訪問看護の際に訪問看護師が行った他機関・多職種との連携内容を明らかにし、連携における訪問看護師の役割について示唆を得ることである。

     【対象と方法】A県内の訪問看護ステーションに勤務し、小児の訪問看護を経験したことのある訪問看護師12名。半構成的面接法によるインタビュー調査を実施した。

     【結果】訪問看護師は、【小児と家族についての情報共有】、【小児と家族のための退院支援】、【在宅での支援方針の決定】を連携の基盤とし、小児のニーズを満たすための【多職種の専門性を活かしたケア提供】、【小児のニーズに応じて専門職を巻き込む】働きをしていた。

     【考察】訪問看護師は、情報共有や協議を通じて連携するための基盤をつくり、在宅生活を送る中での様々な状況や小児の成長・発達に応じて必要な他機関・多職種とつながり、小児と家族の支援体制に他機関・多職種を巻き込んでいく役割があることが示唆された。

  • 河俣 あゆみ, 片田 範子, 三宅 一代, 原 朱美
    2016 年25 巻2 号 p. 38-44
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/09
    ジャーナル フリー

     小児のセルフケア看護理論構築のため大学教員6名と小児看護専門看護師6名に小児のセルフケアをどう捉えるかインタビューを行い、セルフケアについて語られた内容から実践に活用する視点で分析を加えると18のカテゴリーに分類された。これらより小児のセルフケア看護理論の必要な要素として、『子どもの発達に応じたセルフケア』、『子どもをできる主体として捉える』、『子どものエージェンシーとしての能力』、『子どもにおける依存と不足の意味』、『依存的ケアエージェンシーとしての能力』、『子育ての文化と甘え』、『親子のありよう』、『親役割』の8つが抽出された。これらの要素について、どのようにわかりやすく説明するかが今後の課題である。

  • 水落 裕美, 益守 かづき
    2016 年25 巻2 号 p. 45-52
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/09
    ジャーナル フリー

     本研究は、気管切開管理が必要な重症児を養育する家族の現状と看護師による指導内容の現状と課題を明らかにすることを目的とした。全国の訪問看護ステーションで、訪問看護を受けている気管切開管理が必要な在宅療養中の重症児を養育する家族76名を対象に、無記名の自記式質問紙調査を行った。41名から回収されたデータを分析対象とした (有効回答率100%)。

     その結果、家族は身体的不調を抱えており、気分転換を望みながらも、子どもの世話は自分でなければならないという責任感を抱えていた。家族が子どもとの適切な距離を保ちつつ、在宅療養を続けられるような支援が必要である。また、家族は、病院看護師、訪問看護師それぞれに対し異なるニーズを持っており、その一方で、看護師による病院から在宅への途切れない継続した看護ケアの提供を望んでいた。病院看護師、訪問看護師それぞれが、家族が求めるニーズの違いを理解し、双方の役割の強化と連携が重要である。

  • 吉田 玲子, 川名 るり, 太田 智子, 江本 リナ, 鈴木 健太, 鈴木 翼, 山内 朋子, 筒井 真優美
    2016 年25 巻2 号 p. 53-60
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/09
    ジャーナル フリー

     本研究は、小児看護専門看護師 (以下、小児CNSとする) が考える基礎教育における小児看護学実習でめざす学生の学びを明らかにすることを目的とした。看護系大学の小児看護学実習指導に携わった経験のある小児CNS 7名に、半構成的面接法による各3名程度のグループインタビュー、もしくは個別インタビューを行い、内容を目的に照らしあわせて比較検討を行い、重要な要素を抽出した。

     小児CNSは、まず 「子どもってこうなんだ」 を生身で体感することが重要であり、子どもの反応は当然であるという子どもの体験を捉えることが必要だと考えていた。さらに、病気になった 「特殊な状況」 と、本来はどのような発達をしていくのかということを結びつけて、目の前にいる子どもが病気だけで生きているわけじゃないということに気付き、子どもの生活リズムを立て直し、発達を途切れさせずに、子どもが目指すところを見通す考え方や力を付けて欲しいと考えていた。

実践報告
  • 岡田 摩理, 中垣 紀子
    2016 年25 巻2 号 p. 61-67
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/09
    ジャーナル フリー

     小児看護学演習として、中学校の応急処置を学ぶ保健の授業に看護学生が教育の補助者として参加し、中学生に応急処置の手技を教える体験をした。この演習の学習効果を明らかにするために、学生の演習後のレポートから学びを抽出し、類似する内容ごとにカテゴリー化した。その結果、6つのカテゴリーと31のサブカテゴリーを見出した。

     【中学生の特徴の理解】では、それまでの中学生のイメージとは異なる特徴や個別性を学び、【中学生が応急処置を学ぶ意味の理解】では、教育の多面的な意味を学んでいた。また、補助者として教える体験から【中学生に教える際の工夫や留意事項の理解】ができ、看護師として必要な教育的視点を学ぶことができた。そして、演習での体験から【演習による不安感の軽減と満足感】を感じたり、【教えることの難しさの実感】を持ち、さらに【学習意欲の向上】という気持ちを得ていた。小児看護学の演習として本演習には、様々な学習効果があった。

資料
  • —養育者の語りから—
    鈴木 和香子, 中垣 紀子
    2016 年25 巻2 号 p. 68-73
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/09
    ジャーナル フリー

     特別支援学校で医療的ケアを受けている児童生徒の父親2名、母親7名を対象とし、医療的ケアの現状について思うことを明らかにし、その現状から課題を考察することを目的に質的記述的研究を行った。結果、【養育者の負担が大きいと思う】、【教員との信頼関係が重要だと感じる】、【教員の医療的ケア実施の負担が大きく心配である】、【教員が医療的ケアを拒否しているように感じる】、【学校側との相互理解ができていないと感じる】、【個別性を配慮した医療的ケアをしてほしい】、【医療的ケア制度の改善を検討してほしい】、【教育を受ける権利を尊重してほしい】の8カテゴリーが抽出された。

     養育者の視点での医療的ケアの課題には、養育者の負担、教員に対する信頼と不安の葛藤、養育者と学校間の相互理解不足、児童生徒の個別性に対応可能な医療的ケア制度の不足、特別支援学校の看護師の役割の不確定さが存在すると考えられた。

  • 市原 真穂, 小室 佳文, 荒木 暁子
    2016 年25 巻2 号 p. 74-80
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/09
    ジャーナル フリー

     高次脳機能障害の子どもへの看護実践とプロセスを明らかにし、復学支援の示唆を得ることを目的に、看護師8名に半構成的面接を行い、コードを集積、抽象度を高めた。その結果、102サブカテゴリ、23カテゴリ、9大カテゴリを抽出した。看護実践は、【障害特性の見極めによる復学を視野に入れたケア】、【家族の障害受容過程に配慮したケア】、【高次脳機能障害のある子どもへの看護が確立されていない中で積み上げてきた看護実践】、【専門医療施設看護師の使命感による復学支援の仕組みつくりへの関与】、【細やかな配慮による機能的な多職種連携の促し】、【試験登校前後の関わりによる本人、家族、多職種、学校関係者への働きかけ】、【地域や学校の状況と子どもと家族の思いを理解した意思決定支援】、【復学後に生じる困難の理解と予測】、【退院後のケアの継続性を意図した働きかけ】であった。復学への多職種支援を方向付ける看護実践の示唆を得た。

  • —3歳~10歳を対象として—
    加納 円, 中垣 紀子
    2016 年25 巻2 号 p. 81-87
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/09
    ジャーナル フリー

     本研究は、入院時に絵本を活用したプレパレーションが、子どもの対処能力にどのように影響したのかを明らかにすることを目的に、質的記述的研究を行った。研究対象者は、B病院C病棟にはじめて入院した3歳~10歳の8名であった。結果、【入院時のプレパレーションを受けることで、入院することに覚悟をきめた】、【家族から離れる寂しさをはじめて体験し、乗り越えようと努力した】、【看護者を頼り入院生活を送れた】【入院生活を落ち着いた気持ちで過ごした】、【入院生活に前向きな気持ちで過ごした】、【医療行為に前向きな気持ちで臨んだ】、【入院生活を頑張ることができ、達成感を持った】の反応が見られ、子どもは入院時に絵本を活用したプレパレーションを受けることで、危機的状況を回避できるようになると考えられた。

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