日本小児看護学会誌
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17 巻, 2 号
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  • 石河 真紀
    原稿種別: 本文
    2008 年 17 巻 2 号 p. 1-8
    発行日: 2008/09/20
    公開日: 2017/03/27
    ジャーナル フリー
    先天性心疾患患児(以下CHD児)の療養行動には、周囲の理解とサポートが必要であり、そこには「自分のことを話す」という自己開示が関連すると考えられた。自己開示には相手との関係や自己概念とも関連すると考え、自尊感情、ソーシャルサポートとの関係や自己開示の特徴を明らかにすることを目的に、外来通院中の10〜15歳のCHD児を対象に調査研究を行った。平均年齢は12.16±1.62歳であり、69.1%が手術を経験し、63.2%が管理指導区分E可であった。自己開示尺度の合計平均は52.33±13.36であった。57.4%が疾患開示をし、通院が頻回であるものがより開示しており(p<0.05)、通院などの行動は疾患開示のきっかけになると推察された。自己開示と自尊感情に関係は認めなかった。ソーシャルサポートの合計は自己開示尺度と相関を示し(p=0.32, p<0.05)、疾患開示しているもののほうが高かった(p<0.05)。また教師のサポートも疾患開示をしているほうが高く(p<0.05)、安心して自己開示できる環境として総合的にソーシャルサポートを高めること、特に学校での教師のサポートの重要性が示唆された。
  • 藤好 貴子, 藤丸 千尋, 納富 史恵, 兒玉 尚子, 奥野 由美子
    原稿種別: 本文
    2008 年 17 巻 2 号 p. 9-15
    発行日: 2008/09/20
    公開日: 2017/03/27
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は、大学病院小児科病棟に配属された新人看護師7名が、どのような経験を経て臨床実践能力の獲得をするのか、就職後3ヶ月間に絞り明らかにすることである。分析には修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いた。その結果、<小児科看護師への踏み出しの兆し><予想を超える現実><支えの意識化>の3つのカテゴリーが認められた。新人看護師は、[子ども相手の難しさ]などの予想を超える現実と、周囲からのプレッシャーから[無力な自分]を実感していた。その中で【試行錯誤】を行い、新たな支えを得ることで[がんばれそうな自分]へと変化していた。新たな支えには【子どもの笑顔】や【未熟さを認めてくれる母】の存在などがあった。新人の卒後教育を行う者は、新人看護師のプレッシャーを和らげ、試行錯誤する過程で自己効力を上げる関わりを行う必要性が示唆された。
  • 田中 千代, 奈良間 美保
    原稿種別: 本文
    2008 年 17 巻 2 号 p. 16-23
    発行日: 2008/09/20
    公開日: 2017/03/27
    ジャーナル フリー
    本研究は、思春期の子どもの(1)健康にかかわる情報の入手の特徴、(2)情報の入手と健康状態の評価、セルフエスティーム、ソーシャルサポートとの関係、(3)情報の入手と健康行動、社会適応との関係、を明らかにすることを目的に、小学5年生から高校3年生を対象に質問紙調査を行った。615名の回答を分析した結果、次のことが見出された。1)実際に情報入手していた者が最も多かったのは飲酒・喫煙(92.8%)、最も少なかったのは便秘(32.7%)であり、情報入手を希望したものが最も多かったのは食事(82.8%)、最も少なかったのは思春期の心身の変化(65.9%)であった。2)実際に情報を入手している者ほど情報の入手を希望していた。3)実際の情報源と希望する情報源の両方において、教師、母親、本が上位3項目であり、母親は学齢が進むにつれて減少し、友人、インターネットは増加した。4)実際に情報を入手している者や情報の入手を希望している者ほどソーシャルサポートが高かった。5)実際に情報を入手している者や情報の入手を希望している者ほど便秘予防行動を実施し、実際に情報を入手している者ほど学外活動に参加していた。
  • 深谷 基裕, 伊藤 孝子, 江本 リナ, 飯村 直子, 西田 志穂, 筒井 真優美, 松尾 美智子, 山内 朋子
    原稿種別: 本文
    2008 年 17 巻 2 号 p. 24-31
    発行日: 2008/09/20
    公開日: 2017/03/27
    ジャーナル フリー
    本研究は、子どもが入院する病棟で働く保育士が専門性を発揮することができないと感じる背景を明らかにすることを目的に行われた。対象は関東地方の総合病院で、子どもが入院する病棟に配属されている保育士7名であり、半構成的インタビューを用いてデータ収集し、その内容を質的に分析した。その結果、保育士は〔ベビーシッターや「お預かり係」として見られている〕、〔看護師長からの一言で決まる保育士の業務〕、〔遊びの捉え方の違いを理解してもらえない〕、〔「子どものペースに合わせて待つ」ことが受け入れられない〕、〔安静度等について、なぜ、どの位必要なのかという情報が伝えられない〕、〔治療および病気の見通しが分からない〕という6つのカテゴリーが抽出された。保育士は看護師に保育士の専門性を理解してもらえていないこと、看護師から情報を伝えられているが、特定の情報が不足しているために専門性が発揮できないでいることが明らかになった。
  • 伊藤 孝子, 深谷 基裕, 江本 リナ, 飯村 直子, 西田 志穂, 筒井 真優美, 松尾 美智子, 山内 朋子
    原稿種別: 本文
    2008 年 17 巻 2 号 p. 32-38
    発行日: 2008/09/20
    公開日: 2017/03/27
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は、子どもが入院する病棟に配属されている保育士が、看護師との協働に向けて看護師に期待していることを明らかにすることである。子どもが入院する病棟に配属されている保育士7名に半構成的面接を行い、データを収集した。データを質的に分析した結果、《保育士が行っていることの意味を理解すること》、《子どもへのかかわりを一緒に考えること》の2つの内容に大別され、さらにこれらを説明する内容、〈遊びにも意味がある〉、〈子どもの「普通の生活」が大切〉、〈生きた情報を共有する〉、〈かかわりの方向性をひとつにする〉、〈「個人の努力」からの脱却〉が明らかになった。子どもが入院する病棟における保育士の専門性を、保育士自身が看護師に伝えることの重要性、看護師が保育士の発言を積極的に活用する姿勢のあり方、保育士の手による業務規定作成の必要性が示唆された。
  • 大久保 ひろ美, 廣瀬 幸美, 田淵 和子
    原稿種別: 本文
    2008 年 17 巻 2 号 p. 39-44
    発行日: 2008/09/20
    公開日: 2017/03/27
    ジャーナル フリー
    本学の小児看護学臨地実習では、大半の学生が点滴施行中の小児を受け持っている。小児の特性などから点滴に伴うトラブル発生のリスクは高く、受け持ち児と接する学生は予期せぬ状況に遭遇する可能性がある。ゆえに、小児の安全保障を責務とする臨床側は、小児に起こり得る事故を予測し危機感をもちながら学生に対する指導を担っているものと考えられる。本研究の目的は、臨地実習指導体験をもつ看護師の点滴施行中の小児を受け持つ学生への指導を通しての認識について明らかすることである。実習指導経験をもつ看護師4名に対してインタビューを実施し、得られたデータを質的に分析した。看護師は、【点滴管理は看護師の業務であり責任がある】という自覚から、学生に対しても点滴管理について【臨床でなければ学べないことを体験して欲しい】と期待していた。また、その一方では看護師としての自覚と日々の指導を通して、【学生なりに考え学んでいる】と点滴管理に関する学生の学習状況を理解することで、【学生個々の実習状況をふまえた指導でありたい】という意向と、学生に対しては臨床での効果的な学習のためにも、【臨地実習で学内での学びを活用して欲しい】と期待していた。
  • 小宮山 博美, 宮谷 恵, 小出 扶美子, 入江 晶子, 鈴木 恵理子, 松本 かよ
    原稿種別: 本文
    2008 年 17 巻 2 号 p. 45-52
    発行日: 2008/09/20
    公開日: 2017/03/27
    ジャーナル フリー
    在宅重症心身障害児のきょうだいについての母親の困りごと、その対応、欲しい支援を明らかにすることを目的に本研究に取り組んだ。質的に分析した結果、困りごとは【障がい児がいることによるきょうだいの我慢】【きょうだいの心理面・行動面への影響】【きょうだいの将来について】【社会資源の不足】などの8つのカテゴリーに、対応は【きょうだいの欲求への埋め合わせ】【困りごとを切り抜ける対処】【きょうだいへの親の考えの表明】【周囲に適応するための工夫】【ソーシャルサポート・社会資源の活用】などの9つに、欲しい支援は【きょうだいに関わる時間の確保への支援】【直接的なきょうだいへの支援】【父親への支援】【母親への支援】【きょうだいへの将来の負担の軽減】【学校関係者の理解の促進】の6つに分類され、障がい児のみならず、きょうだいも含む家族全体を対象とした支援の必要性が示唆された。
  • 草場 ヒフミ, 野間口 千香穂, 藤井 加那子, 永瀬 つや子
    原稿種別: 本文
    2008 年 17 巻 2 号 p. 53-58
    発行日: 2008/09/20
    公開日: 2017/03/27
    ジャーナル フリー
    本研究は入院中の中学生の夜間睡眠の実態を把握すること及び主観的睡眠評価について検討することを目的とした。対象は慢性疾患をもち1か月以上入院している中学生3名(男2名、女1名)で、連続した2日間の夜間の睡眠をアクティグラフと睡眠日誌と主観的評価質問紙を用いて調査した。入院中の3名の全夜間睡眠時間は408分から518分の範囲、入眠時刻は21時台が1名、23時台が2名で、5分以上の覚醒回数は1回から2回であった。夜間の睡眠パターンには個人による違いが大きかったが、家庭で生活している一般中学生に比べ、覚醒数は多い傾向にあり、全夜間睡眠時間と入眠時刻においては休日の睡眠に近い傾向が認められた。睡眠の主観的評価では、「普通に眠れた」に比べ「良く眠れた」と評価した夜間睡眠の方に全睡眠時間が長く、最長覚醒時間と入眠潜時が短いことが示され、入院中の中学生が報告している主観的睡眠評価は、本人の睡眠状態をある程度正確に表しているものと考えられた。
  • 井上 玲子
    原稿種別: 本文
    2008 年 17 巻 2 号 p. 59-65
    発行日: 2008/09/20
    公開日: 2017/03/27
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は、親の会に関する国内研究の動向と会の活動の現状を示すことである。過去10年の検討の結果、文献の推移は2001年26篇をピークにその後は減少傾向といえる。筆頭著者は家族が最も多く、次いで医師、看護職その他の福祉・教育・心理系の専門職であった。文献内容は活動報告が最も多く、次いで医師・保健師による介入報告であった。活動の背景は障害児の親の会が最も多く、次いで不登校・引きこもり、低出生体重児であった。文献の種類は活動啓発が多いため、解説・総論が大部分を占め、研究論文はわずかであった。親の会は時代を反映したものとも考えられ、家族のニーズによって内容や形態は異なる。しかし障害児に対する請願活動は今も継続され、さらに不登校など家族・学校・社会を取り巻く問題も新たにみられる。家族機能の向上をめざし支援をするには、親の会と医療職、その他の専門職との協働が望ましいと考える。
  • 飯村 直子, 江本 リナ, 川口 千鶴, 中村 伸枝, 日沼 千尋, 平林 優子
    原稿種別: 本文
    2008 年 17 巻 2 号 p. 66-72
    発行日: 2008/09/20
    公開日: 2017/03/27
    ジャーナル フリー
    多くの医療施設で保育士が配置されている一方、組織形態や業務内容が施設ごとに異なり、看護師と業務が重複するなかで保育士の専門性の発揮や看護師との連携に関する課題は多い。そこで、これらの課題を検討することを目的に、日本小児看護学会は平成18年度に保育関連職種との連携プロジェクトを立ち上げた。その活動の一つとして、医療施設における保育士と看護師との連携に関する看護師の意識を明らかにすることを目的に、日本小児看護学会第16回学術集会の参加者を対象に行った質問紙調査について報告する。調査の結果、保育士が医療施設において子どもにかかわる必要性は多くの看護師より認識されているものの、施設の経済的理由や入院する子どもの状況などから保育士の配置や働きが制限される恐れがあることが明らかにされた。また、看護師は保育士に期待しつつ協働を望んでいるものの、経営や体制、保育士の専門性が見えにくいなどの理由から協働のあり方に課題がある現状が明らかにされた。今後、相互の働きについて理解を深める機会をもつことや、申し送りへの参加や記録の共有などを通してコミュニケーションをとる場を保障していく必要があることが示唆された。
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