日本小児看護学会誌
Online ISSN : 2423-8457
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ISSN-L : 1344-9923
28 巻
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総説
  • 原口 昌宏, 竹内 朋子
    2019 年 28 巻 p. 240-247
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/30
    ジャーナル フリー

     本研究は慢性疾患患児の父親に着目し、文献検討から先行研究を概観し、父親の心理的特性と対処行動の特徴を明らかにし、支援のあり方を考察することを目的とした。PubMed (Web版)、医学中央雑誌 (Web版) を用いて検索を行い、国内外23件の論文を分析対象とした。国内外いずれの先行研究においても、父親の心理的特性として、大きな不安や失望などを抱きながらも、父親・夫として、患児や妻を支えようと懸命に努力しようとしていることが明らかになった。また患児や家族に関する問題に前向きに焦点をあてる対処行動をとる一方、否定的な思いから、現実から逃避する対処行動をとることも明らかになった。これらの特徴を踏まえ、父親が心情を吐露できるような語りの場を設けるとともに、問題解決につながる情報を提供するなどして、父親を支援の輪に組み込んでいくよう積極的に働きかける必要があることが示唆された。

研究
  • 久保 仁美, 今井 彩, 松﨑 奈々子, 阿久澤 智恵子, 柏瀬 淳, 金泉 志保美, 佐光 恵子
    2019 年 28 巻 p. 1-9
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

     本研究の目的はNICU看護師がとらえた退院支援における多職種連携の成果と課題を明らかにしNICU看護師の役割について示唆を得ることである。NICU看護師145名を対象に、退院支援における多職種連携の経験の有無、連携から得られた成果および課題について質問紙調査を実施した。自由記述の質的帰納的分析を行った結果、72名から回答を得た (回収率49.7%) 。NICU看護師がとらえた多職種連携の成果として【退院前から児と家族の様子やケア内容を共有できた】【家族の不安軽減や思いの表出の機会となった】など7カテゴリーが生成され、課題として【情報を精査し情報共有を強化する必要がある】【連携の時期を見極める必要がある】など5カテゴリーが生成された。多職種連携におけるNICU看護師の役割として、連携先に適した情報提供の時期を見極め、児と家族を熟知している強みを生かし、退院に向けた課題を表在化させる必要がある。

  • 山本 久美子, 今井 多樹子
    2019 年 28 巻 p. 10-18
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

     本研究では、育児経験前・後、自身の看護にどのような変化が生じたのか、育児経験者である看護師が語る小児看護に対する認識の変化を明らかにした。育児経験前・後で小児病棟に勤務する看護師6名を対象に半構造化面接を行いKJ法で面接内容を構造化した。結果、母親に対して【医療目線ではなく】【母親の場所への “原点移動”】によるかかわりが可能になり、入院児に対しても【実体験の “引き出し” がある】と感じかかわれるようになった。さらに母親込みで考える【母子理解に立脚した母子への看護介入】の必要性や、子どもを単独でとらえるのではなく【子どもを尊重した家族込みのサポート】の必要性、子どもをひとりの人間として尊重する【子どもを尊重した看護介入】の重要性を認識し、実践できるようにもなっていた。以上の母子へのかかわりの質向上を支えているのが看護師自身に育児経験を通して【育児経験を媒介とした小児看護のキャリア形成】ができたことであった。

  • 新家 一輝, 植木 慎悟, 北尾 美香, 藤田 優一, 前田 由紀, 藤原 千惠子
    2019 年 28 巻 p. 19-26
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は、小児看護学実習を受け入れている病棟に勤務する臨地実習指導者としての経験がない看護師の、小児看護学実習に対する認識と、その認識に関連する要因を分析することである。協力が得られた全国178医療機関の、臨地実習指導者としての経験がない看護師359名を分析対象とした。対象者は、小児看護学実習に対して『子どもや家族のケア効果』を最も強く、次いで『学生指導に対する困難感』を強く認識していた。重回帰分析の結果、対象者は、 「業務量」 や 「子どもが嫌がる処置への対応」 といった看護師側に向いたストレスを感じる者ほど、看護師主体に『いつもどおりにできない負担感』を感じていた。一方で、 「子どもと家族への対応」 や 「難しい対象へのかかわり」 といった子どもと家族に向いたストレスを感じるほど、子どもと家族中心に『子どもや家族へのケア効果』や『学生がもたらす摩擦』を感じていた。

  • ―看護師のインタビュー調査から―
    今井 彩, 久保 仁美, 松﨑 奈々子, 金泉 志保美, 佐光 恵子
    2019 年 28 巻 p. 27-34
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

     A県内のNICUに勤務している看護師12名を対象に家族支援におけるFCCの実践内容と課題を明らかにしFCC推進のための示唆を得ることを目的に半構成的インタビューを実施し、質的帰納的分析を行った。実践内容は、6コアカテゴリーが形成され【在宅を見据えて継続的に支援する】、【タイミングを見極めて家族のケアへの参加を促す】、【子どもの状態把握を支援する】、【家族機能をアセスメントして支援する】、【親役割の認識を促進しケアの移譲を図る】、【家族を尊重しかかわる】であった。課題については、4コアカテゴリーが形成され【家族支援の充実とその評価】、【施設や医療チームにおける体制の整備】、【FCCに関する知識や技術の質的向上】、【スムーズな在宅移行への支援体制の整備】であった。FCC推進のための示唆として、看護教育の強化・充実、NICUの環境・体制づくり、小児の在宅移行システムの整備の3点を得た。

  • 徳島 佐由美, 藤田 優一, 藤原 千惠子
    2019 年 28 巻 p. 35-41
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

     経験豊富な看護師11名を対象に、重症心身障がい児 (以下、重症児) のレスパイト入院時に重症児の家族から信頼を得るために実践している看護師のかかわりについて明らかにすることを目的に質的記述的研究を行った。その結果、経験豊富な看護師のレスパイト目的の入院における重症児の家族へのかかわりは、【少ない機会をとらえた意図的な介入】、【レスパイト入院中の重症児の生活状況を詳細に伝達】、【家族の望みに沿った連絡】、【在宅でのケア方法の尊重】、【在宅での生活リズムの保持】、【在宅の環境の取り込み】が抽出された。

     経験豊富な看護師は、誠実な態度で愛情をもって重症児に接していることを示すために重症児を理解したい思いを伝え、家族が面会に来た時に重症児の生活状況を詳細に伝達していた。在宅のケア方法や家族の方針が特殊でもいったんは受け入れ調整を行うことが、家族より信頼を得るために重要なかかわりであることが示唆された。

  • ―小児看護学演習において―
    田中 岳美, 鎌田 佳奈美, 池田 友美
    2019 年 28 巻 p. 42-50
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は、看護系大学生の学習活動の質と看護実践の基盤となる力の関連性を明らかにすることである。近畿圏内の看護系大学生で小児看護学の学内演習を履修中の409名を対象に演習前後で学習活動の質に関する既存尺度と看護実践の基盤となる力に関する自作の質問紙を用いて調査を実施した。回収のあった123名 (回収率30.1%) のうち、有効回答を得た110名 (有効回答率26.9%) を分析対象とした。看護実践の基盤となる力は、平均総得点と各項目の平均得点が演習後に有意に上昇し、因子分析の結果、4因子26項目が抽出された。看護実践の基盤となる力と学習活動の質はr=.25 (p<0.01) で正の相関がみられ、看護実践の基盤となる力の因子【看護過程を展開する力】が学習活動の質の下位尺度と最も多く相関がみられた。看護実践の基盤となる力の育成には、学生の学習活動の質を高めることが重要であり、支援の必要性が示唆された。

  • ―急性期を脱した子どもの家族との関係性に焦点を当てて―
    藤塚 真希, 廣瀬 幸美, 佐藤 朝美
    2019 年 28 巻 p. 51-58
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

     NICU・GCU看護師による急性期を脱した子どもの家族へのファミリーセンタードケア (Family-Centered Care、以下FCC) の実践の特徴と関連要因を明らかにすることを目的に、関東圏内26施設の看護師626名を対象に無記名自記式質問紙調査を行った。215名から回答が得られ、そのうち有効回答の213名 (有効回答率34.0%) を分析した結果、FCCの実践には臨床経験年数、小児科経験、産科経験、助産師資格、新生児集中ケア認定資格、カンファレンスの実施、研修会の受講、臨床心理士の病棟配属が関連し、FCC実践に対する自己効力およびコミュニケーションスキルの情報収集、積極的傾聴、パーソナルスペース・視線交差とは正の中等度の相関が認められた。特に看護師のコミュニケーションスキルがFCCの実践に影響しており、家族との関係性を構築し、思いやニーズを引き出すスキルを向上させる必要性が示唆された。

  • 清重 真衣子, 鎌倉 恵, 三浦 浩美, 舟越 和代
    2019 年 28 巻 p. 59-68
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は、内服に抵抗を示す幼児前期の子どもにがんばりを引き出す内服援助を行った際の言動を明らかにし、内服に対する理解やとらえ方を推察する基礎的データとすることである。1歳~3歳の子ども20名とその家族の内服場面を参加観察し、子どもの内服に対する理解やとらえ方を年齢ごとの発達段階を考慮して解釈し、カテゴリー化した。その結果、1歳児は二者択一での【選択】ができたり、内服に使用する物品や食材などの【理解】を示した。2歳児、3歳児は内服に対し【葛藤】を抱えながらも、【心構えができる】と内服でき、選択の機会を与えると【選択】に加え【自己決定】ができた。また、2歳児は薬の準備や数・量、3歳児は内服時間や苦手な薬剤の判別など、年齢が上がるとより複雑な理解ができた。そして、幼児前期の子どもは苦手な内服に対しても【意欲】【興味】をもって内服に向き合い、内服できると【喜び】、【自慢】する反応をみせた。

  • 金子 沙世, 山口 桂子
    2019 年 28 巻 p. 69-77
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

     本研究は、手術を目的とした短期の予定入院児に付き添う母親の思いと生活行動を明らかにし、今後の入院児と家族に対する支援の在り方について検討することを目的とした。方法は、インタビューガイドを用いて、手術を目的とした短期予定入院をする乳幼児に付き添う母親20名に半構成面接を実施し、質的に分析した。その結果、付き添う母親の生活として、Ⓐ母親の病児の世話役割に対するベースとなる考えのもと、Ⓑあるべき母親像に縛られた、Ⓒ母親の生活行動実態が明らかになった。母親の生活行動の実態では、【子どもを優先にしたぎりぎりの生活】による疲労の蓄積の中で、【最低限の生活からの解放への見通しの再確認と奮起】【患児優先のために自己容認してきた最低限の生活からの脱却】をして、退院を迎えていた。以上より、入院生活の見通しについての説明や、 “あるべき母親像” に対する柔軟な考えへの転換に向けた援助の必要性が示唆された。

  • 野本 美佳, 薬師神 裕子
    2019 年 28 巻 p. 78-86
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は、思春期・青年期1型糖尿病患者の成人型医療へのトランジションにおけるレディネスの実際を明らかにすることである。12歳~20歳の1型糖尿病患者27名からトランジションにおけるレディネス、病気の受け止め方、糖尿病自己効力感について回答を得た。レディネスの評価には、Am I ON TRAC? For Adult Care Questionnaire (Saewyc, Paone, & BC Children’s Hospital ON TRAC Transition Initiative, 2012) を使用した。その結果、レディネスが形成されていたのは5名 (18.5%) のみであった。レディネスの 「知識」 と 「行動」 得点ともに、大学・専門学校生よりも高校生が高く、学習機会がなければ、年齢が上がってもレディネスは獲得できないことが示唆された。また、患者のレディネスの 「知識」 と 「行動」 、病気の受け止め方、糖尿病自己効力感は相互に関係し、特に糖尿病自己効力感と相談・判断に関する行動との相関が強いことが明らかとなった。

  • 清水 美恵
    2019 年 28 巻 p. 139-147
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/31
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は、アレルギー疾患をもつ思春期にある子どものレジリエンスの構造を検討し、子どもの家族、友人、教師、医師、看護師への信頼感を示す指標として 「相談できる」 「支えてくれている」 と 「説明してくれる」 か、または 「協力してくれる」 の3項目を用い、その評価の違いがレジリエンスに及ぼす影響を明らかにすることであった。レジリエンス尺度の因子分析で検討した結果、4因子構造が確認され、なかでも第4因子である 「意見有用性」 は、他者からの助言を受容し、自己の思考判断に役立て適応に変えるという、アレルギー疾患をもつ子どもに必要な要素を示すことができた。また、アレルギー疾患をもつ子どもを囲むそれぞれの立場の者が、子どものレジリエンスを高める上で異なる働きをしていることが示された。

  • 吉岡 詠美
    2019 年 28 巻 p. 148-155
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/31
    ジャーナル フリー

     学生が子どもの意思を尊重した看護を実践するプロセスを明らかにする。方法はグラウンデッド・セオリー・アプローチを参考にした質的帰納的研究で行った。対象は、研究開始の9か月以内に小児看護学実習を修了した、A大学看護学部の3、4年生、7名とする。結果、学生が子どもの意思を尊重した看護を実践にするプロセスは、今までの看護体験や看護師とのかかわりを通して身につけた【臨地実習に取り組む姿勢】を基盤に、【子どもの気持ちに添った看護ができない】状況において、【“子どもの意思を尊重した看護” となっているのか揺れる】体験を倫理的ジレンマとしてとらえ、【子どもの意思を尊重する看護学生としての倫理的行動】へと意味付けるプロセスとして表すことができた。今後、教員や指導者は、本プロセスを病棟実習での実習指導に活用し、学生が子どもの意思を尊重した看護実践を獲得できるよう支援していく必要がある。

  • 田中 さおり, 茎津 智子
    2019 年 28 巻 p. 156-164
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/31
    ジャーナル フリー

     成長ホルモン (以下GH) 治療を受けるSGA (Small-for-Gestational Age : 以下、SGA) 性低身長症児とその家族に対する小児科外来看護師の認識および実施しているGH治療の支援を明らかにすることを目的に、SGA性低身長症児とその家族にGH治療の指導経験がある小児科外来看護師8名に半構成的面接を行った。質的帰納的に分析を行った結果、小児科外来看護師の認識として【SGAを意識したかかわりはない】、【治療の主体は親である】、【親子は治療にすぐ順応する】、【この治療には難しさがある】、【母子への支援はできている】、【外来での支援には課題がある】と、実施している支援として、【自己注射導入を手厚くサポート】、【治療の継続・習慣化に伴うトラブルを防止】が抽出された。治療開始直後の母親のニーズに沿った支援と治療継続時の親子の主体的な治療への取り組みを促す支援を検討する必要性が示唆された。

  • 長柄 美保子, 田中 千代
    2019 年 28 巻 p. 165-172
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/31
    ジャーナル フリー

     新生児期に先天性心疾患と確定診断された子どもの父親の体験を明らかにすることを目的に、父親7名に半構成的面接を行い質的記述的に分析した。その結果、二つの視点が見出され、父親としての思いや姿勢には<子どもが心臓病と知った時のショックと受け入れがたい気持ち><父親としての責任感と男性であることの無力感><自分の気持ちを抑えたり病気のことは考えないようにしながら自分ひとりで取り組む>などの10カテゴリーが抽出され、家族の中での支え合いには<子どもの様子を伝えたりそばにいることで妻を支える><夫婦で支え合って子どもを育てる>などの3カテゴリーが抽出された。言葉や表情に表れにくいが、父親の心情を理解し感情表出の場を提供することの重要性が示唆され、また、家族の中での支え合いが父親の支えにもなっており、夫婦が支え合えるよう支援することも必要である。

  • ―人生の長距離ランナーを目指して―
    野澤 祥子, 住吉 智子
    2019 年 28 巻 p. 173-181
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/31
    ジャーナル フリー

     目的 : 成人先天性心疾患患者 (以下、患者) が、自分の疾患と向き合いながら、就職、就労継続を目指すプロセスを明らかにすること。

     方法 : 20代~30代の患者9名に半構成的面接を行い、修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて分析した。

     結果 : 8カテゴリー<常態的にある心疾患>、<シビアな現実との対峙>、<自分の心臓への関心の高まり>、<わかり合える人との出会い>、<自分の存在意義を見出す>、<自分の身体を大事にする>、<長く働き続ける努力>、<いつかくる心機能悪化の予感>、1コアカテゴリー【人生の長距離ランナーを目指す生き方】が抽出された。

     結論 : プロセスは重層的で循環し、疾患や人間関係を再構築し社会で生きる過程が描かれていた。患者が社会で居場所をみつけ、自分らしい人生を歩むことができるために、看護師は、就職時期の疾患理解への再教育や存在意義の自覚を促していく必要性が示唆された。

  • 澤田 唯, 仁尾 かおり
    2019 年 28 巻 p. 182-190
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/31
    ジャーナル フリー

     目的 : 思春期発症の小児血液・腫瘍疾患経験者が退院から5年間の環境をどのように認知しているのかを明らかにする。

     方法 : 8名に半構造化面接を行い、得られたデータを質的記述的に分析した。

     結果 : 42のサブカテゴリーと、13のカテゴリーが得られた。家族に関する認知は【家族のサポートを感じた】など、友人に関する認知は【友人との間では普通でいられた】など、学校・社会生活に関する認知は【問題なく学校生活が送れた】など、社会の目に関する認知は【メディアの報道に左右された】など、将来に関する認知は【将来を考える時病気のことが浮かんだ】などであった。

     結論 : 退院後の環境に対する認知に対し、家族との関係を支える看護、病気を調整しながら友人と過ごすための看護、学校・社会生活を円滑に送るための看護、小児血液・腫瘍疾患経験者として社会で生きることを支える看護、将来を設計していくための看護が必要である。

  • 西田 紀子, 盛光 涼子
    2019 年 28 巻 p. 248-256
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/30
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は、食物経口負荷試験 (以下、負荷試験) を受ける子どもと保護者への小児アレルギーエデュケーター (以下、PAE) 資格をもつ看護師の具体的な看護実践を明らかにすることである。PAE資格をもつ看護師を対象にフォーカス・グループインタビューを実施し、その内容を質的記述的に分析した。その結果、第1に、PAEは【スムーズな負荷食物摂取のための支援】として、『負荷試験の事前支援』『子どもの食べようとする気持ちを引き出す支援』を実践していた。第2に、PAEは【子どもの安全を守る 「症状の早期発見と確実な対応」】として、『事前アセスメント』『症状の早期発見』『観察・アセスメント時の姿勢』『安全を守る症状出現時の処置』を実践していた。第3に、PAEは【負荷試験の時間を利用したアプローチ】として『日常生活への支援』『アナフィラキシー対応教育』『前向きにFA医療に向かう支援』を実践していた。

  • 青野 広子, 濵田 裕子, 藤田 紋佳
    2019 年 28 巻 p. 257-264
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/30
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は、血友病をもつ子どもの病気に伴う体験を明らかにすることである。血友病をもつ10代後半~20代前半の男性7名を対象に半構造化インタビューを行い質的帰納的に分析した結果、4カテゴリー、12サブカテゴリー、36コードを抽出した。子どもは、血友病であることが当たり前で【血友病の不自由さはいつものこと】という認識だったが、自己注射の導入を契機に【血友病を自覚し模索 (する)】しはじめ、仲間関係の立ち位置を探りながら止血管理の習得にもがき、時には療養法を放棄するような行動をとっていた。やがて子どもは、止血管理の経験から血友病による限界を受け止め【血友病と何とかやっていく】ことを了解し、血友病である自分へと自己像を更新し【血友病は自分の一部】というアイデンティティを形成した。また、子どもは、親とともに取り組んだ療養行動により日常生活を支えられ、その親子のタイミングで療養行動が移行していた。

  • ―幼児期後期から学童期前期の子どもをもつ母親を対象に―
    袋田 沙織, 堀田 法子
    2019 年 28 巻 p. 265-273
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/30
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は、幼児期後期から学童期前期の小児がんの子どもをもつ母親が子どもへ病気説明することに対してどのような思いを抱いているのかを明らかにすることである。初発の小児がんの子どもをもつ母親8名を対象に半構成的面接を実施し、質的記述的に分析を行った。その結果、【子どもが病気と前向きに向き合うことを切望】【家族の意向を尊重する心積もり】【子どもの病気のとらえ方に合わせた表現を用いたい】【子どもの心の平穏を優先したい】【心の混乱から生じる葛藤】【意思決定の役割を担う不満・重責】【心の揺らぎを支える存在の希求】という7つのカテゴリーが見出された。看護師は母親の思いを理解し病気説明に関する情報提供を入院時から行うこと、揺らぎがあることを理解した上でその思いを支えること、夫や医師との話し合いがもてるような環境調整を行い支援していくことなど、母親をサポートする役割としてかかわることの必要性が示唆された。

  • 遠藤 晋作, 上田 敏丈, 堀田 法子
    2019 年 28 巻 p. 274-283
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/30
    ジャーナル フリー

     先天性心疾患をもつ学童期までの子どもに対して母親が行う病気説明プロセスを明らかにすることを目的とし、疾患をもつ10歳~12歳の子どもの母親4名に半構成的面接を行った。分析にはSCATの手法を用いた。母親は医師から病気説明を受け、 「自発的な情報収集」 を行うが 「断続・漸進的な理解向上」 しか望めず、子どもが学童期になっても 「理解追求が停滞する不全的な病気説明理解」 状態にあった。その背景には 「疾患衝撃による理解阻害」 「病気理解の追求困難」 「医師母親間の信頼関係形成困難」 があり、母親は幼児期までの子どもに対する 「日常生活に即した内容中心の病気説明」 を、学童期までに 「日常生活に即した内容と不十分な医学的知識が共存した病気説明」 に変容させていた。またその病気説明は 「成長に付帯する病気説明選択要因」 に影響されていた。母親が医学的知識を向上し、子どもへ希望に沿った説明を行えるよう支援することが求められる。

  • 加藤 依子, 川﨑 ゆかり, 三国 久美
    2019 年 28 巻 p. 284-291
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/30
    ジャーナル フリー

     食物アレルギー (以下、FA) をもつ子どもが安全な日常生活を送るために、アレルギー外来の看護師が行っている支援を明らかにすることを目的に、外来看護師6名に半構造化面接を行い、質的記述的に分析した。その結果、【FAをもつ児の治療を継続するために家族との信頼関係の基盤をつくる】【周囲の人々やFAをもつ児の家族に治療の理解を深めてもらう】【アレルギーを起こしにくいようにFAをもつ児の皮膚の状態を整える】【FAをもつ児の療養行動に対する主体性を育てる】【FAをもつ児が安全に原因食物の摂取を継続できるようにする】【FAをもつ児が栄養バランスの取れた食生活を送れるようにする】【家族がいつでも医療従事者に相談しやすい体制を整える】【家族がアレルギー症状の重症度に応じた対応ができるように働きかける】の8カテゴリーが抽出された。外来看護師は、FAをもつ児や家族、集団保育先の人々に多様で継続的な支援を行っていた。

  • 横山 利枝
    2019 年 28 巻 p. 292-299
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/30
    ジャーナル フリー

     研究の目的は、保育所に勤務する看護職者の役割受容とその関連要因について明らかにすることである。研究対象は、全国保育園保健師看護師連絡会に所属する看護職者759名で、自記式質問紙を郵送し、182名から回答を得た (回収率24%)。調査内容は、保育施設の現状、保育所看護職者の背景、保育保健活動の実施状況、役割受容度である。役割受容度は役割受容尺度を用い、その合計を平均値±0.5SDに基づいて3段階に分け、上位群・下位群の間で比較、分析を行った。結果、有意差が認められたのは、障がい児保育の有無、 「自らの経験が生かせるから」 という保育所勤務の選択理由、待遇の満足度、就労の継続の意志、保育保健活動の実施状況であった。さらに二項ロジステック回帰分析の結果、待遇の満足度の 「職場での人間関係」 と 「労働条件」 「自分の専門性が生かせるから」 という保育所勤務を選択した理由が、役割受容に有意に関連していた。

実践報告
  • 山﨑 歩, 齊藤 志織
    2019 年 28 巻 p. 87-94
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は、小児看護学臨地実習で継続して実施した個人目標共有カンファレンス (以下 : カンファレンス) のもたらす効果と課題を明確化することである。方法は、小児看護学臨地実習でカンファレンスを経験したA大学の学生12名を対象にフォーカスグループインタビューを実施し、質的記述的に分析した。

     分析の結果、カンファレンスがもたらす効果として7カテゴリーが抽出された。カンファレンスではほかの学生の受け持ち患児の状況を把握する中で≪受け持ち患児以外への興味≫や≪情報共有による他患児のケアへのスムーズな参加≫という効果が示されていた。一方で、カンファレンスの課題として5カテゴリーが抽出された。質疑に参加する中で≪不十分な応答からくる落ち込み≫という発表者として生じる課題とともに、≪ディスカッション活性化への気負いとしんどさ≫という質問者としての課題も示された。

  • 倉田 節子, 青木 由美恵, 永田 真弓
    2019 年 28 巻 p. 191-199
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/31
    ジャーナル フリー

     小児と成人の混合病棟において小児看護初心者への教育担当者を支援するためのリフレクションを取り入れた研修プログラムを作成し、その評価について明らかにした。6名のプログラム参加者への面接調査の結果、プログラムの成果として、小児看護初心者の立場に戻って小児看護初心者のキャリアを尊重しながら、小児看護において特徴的なことを優先的に伝え、混合病棟での経験を支えていたことが明らかになった。また、プログラムに参加したことで、リフレクションによって思いが表出でき、プログラムの実施方法も適切であるとの評価が得られた。一方で、小児看護初心者教育への支援体制や、評価方法、継続性については課題が残った。本プログラムは混合病棟における小児看護初心者への教育担当者の教育力や気付きを高めるとともに、小児看護初心者を同僚として尊重し合う有用な組織文化の育成に寄与することが示唆された。

  • 藤堂 美由紀
    2019 年 28 巻 p. 200-207
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/31
    ジャーナル フリー

     本研究は、重症心身障害児 (以下、重症児) を対象とした小児看護学実習において、実習指導を行っている指導看護師は、重症児の特性を学生が理解できるように具体的にどのようにかかわっているのかを明らかにすることを目的とした。質的記述的デザインを用い、重症心身障害児病棟、施設に所属する指導看護師12名を研究協力者として半構成的面接を行い分析した。指導看護師は、重症児の特性を学生が理解できるように学生に対して【いつもの身体状態であることの重要性を理解するために最適なかかわりを見せる】【学生だけでは難しいかかわりを一緒に行う】【怖がらずに側に近づいてもらうために触ることを促す】【心理的な距離を縮めるために抱っこを促す】【重症児の背景を踏まえてかかわって欲しいという願いを伝える】かかわりを行っていた。学生には、具体的に現状維持、悪化の予防につながる先を見通した看護の大切さまで意味付けを行う必要性が示唆された。

  • 増田 由美, 別所 史子
    2019 年 28 巻 p. 300-309
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/30
    ジャーナル フリー

     A大学における小児看護技術の学修支援を検討するために、小児看護学実習を終えた学生103名を対象に実習前の学内演習と実習の振り返りの内容分析を行った。実習前の学修レポートと実習でのそれらの活用状況のアンケート結果から、①子どもへの看護技術の実践には、学生が主体的に取り組むことができる演習の企画と子どもとのかかわり方のバリエーションを増やせる指導を検討すること、②学生が子どもの世界に近づけるよう助言し実施したことを子どもや家族の反応を丁寧に評価して学生の子どもを主体とし尊重するかかわりにつなぐこと、③演習から母親の存在を意識し、実習では母親に自信をもち向き合えるよう見守ることが求められた。演習までの学びは実習でおおむね活用できたと考えられるが、不足ととらえる矛盾もあり、学生の個々の学びに向き合い、演習までの学びと実習での経験を結びつけフィードバックすることで学生の思考の充実が図れると考える。

  • 白木 裕子, 松澤 明美, 津田 茂子
    2019 年 28 巻 p. 310-317
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/30
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は、入院中の子どもの療養環境シミュレーション演習における学生の学びを明らかにし、今後の教育方法の示唆を得ることである。研究協力者はA大学看護学部2年次生81名である。ベレルソンの内容分析の手法を用いて分析した結果、【子ども特有の危険がある】【発達段階に応じて環境を整える】【危険を予測する】【注意深く観察する】【子ども・家族とともに環境を整える】【環境整備により子どもの安全を守る】のカテゴリーが抽出された。学生は子ども特有の危険があることを理解し、それを予測しながら発達段階に応じて安全な療養環境を整えることの重要性を学んでいた。今回の演習で、具体的に設定された危険な療養環境は、学生の真剣な観察と思考を働かせて環境を整えることを促した。今後の課題は、学生のより発達段階に沿った思考を育てていくために、シミュレーション演習における課題の吟味やシナリオの工夫、模擬患者の活用の検討である。

資料
  • 藤原 紀世子, 相原 ひろみ
    2019 年 28 巻 p. 95-100
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は重症心身障害児 (者) とその次子をもつ母親の思いを明らかにすることである。研究デザインは質的統合法で、対象者は7名である。分析の結果、【孤独感 : 信頼して障害児 (者) を任せられる人がいない】【感謝の念 : 家族や医療福祉スタッフが助けてくれる】【諦念 : 障害児 (者) と共に生きていく】【衝動 : 何もかも捨てて自由になりたい】【準備 : 自分亡き後の障害児 (者) の生活を整える】【後悔の念 : 次子に制約をかけてしまっている】【期待 : 障害児 (者) を大事にしながらも次子には自立してほしい】の7つのシンボルマークが抽出された。母親は障害児と次子を共に養育している先輩母親の後押しと医療福祉スタッフによる支援に対して感謝し支援学校卒業後、障害児 (者) の生活を整える準備をしながら、自分が亡くなった後、次子に障害児 (者) を委ねながらも自立してほしいと願い将来を案じる親心を抱いていた。

  • 松永 妃都美
    2019 年 28 巻 p. 101-106
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は、乳幼児と東日本大震災を経験した母親が震災後に行うようになった防災対策を明らかにすることである。24名の母親を対象として半構造化面接を行った結果、母親は震災を契機に【物品を備える】、【環境を調整する】、【訓練・教育をする】、【想定をする】防災対策を行うようになったことが明らかになった。具体的には、母親は〔自宅での避難生活への備え〕、〔緊急避難行動への備え〕、〔情報を収集するための備え〕、〔子どもの安全を確保するための備え〕、〔家族の安全を確保するための備え〕、〔精神的な混乱を想定した備え〕を行うようになっており、これらの備えが大規模災害からもたらされる2次的な災害への有用な備えになる可能性が示唆された。

  • ―テキストマイニングによる実習記録の解析から―
    合田 友美, 河合 洋子
    2019 年 28 巻 p. 107-112
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

     3日間の実習記録の記述内容 (テキストデータ) から外来実習における学生の学びに関する部分を取り出し、テキストマイニング・アプローチを用いた分析を試みた結果、172文が抽出され、総抽出語数は2,371語であった。3日間を通して最頻出語は 「子ども」 であり 「親」 、 「家族」 が常に上位に出現し、3日目のみ 「医師」 を認め、 「処置」 だけでなく 「治療」 や 「検査」 「指導」 など、経験場面に関する単語の出現回数が増した。1日目は、対象の 「不安」 の大きさを知り、 「不安」 を 「軽減」 することの必要性を理解した。2日目は、 「安心」 して 「診察」 を受けられるよう対象に 「伝える」 ことや 「説明する」 ことが 「大切」 であることを理解していた。そして、3日目は家庭療養をスムーズに行うために、 「子ども」 だけでなく 「親」 の 「声」 を聴き 「医師」 とつなぐ 「支援」 や 「指導」 も外来看護の役割の一つであることをつかんでおり、3日間で学びの深まりを認めた。

  • 別所 史子, 増田 由美, 鈴木 隆弘
    2019 年 28 巻 p. 113-119
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

     重度の運動機能障害がある未就学児の在宅における座位のケアの実態と関連要因を明らかにすることを目的に、近畿・東海地方の小児療育施設、小児の訪問看護・訪問リハビリステーション28施設を利用する子どもの家族178名に対し自記式質問紙調査を行った。回答が得られた68名のうち有効回答57名を分析した結果、運動機能レベルが重度であるほど医療依存度が高かった。中でも呼吸に関する医療的ニーズが高い子どもは、座位のケアの実施が困難なことが明らかになった。そして、子どもの年齢が低く人工呼吸器管理を必要とする場合、座位保持装置を使用していない傾向があった。座位のケアには、複数の場・専門職によるかかわりがあった。

     以上より、呼吸に関連した医療ニーズが高い子どもは、子どもと家族の負担や不安に配慮しながら座位のケアを進めていく必要性が示唆された。今後、専門職種間の連携により座位のケアを継続することが課題とされた。

  • 山本 智子, 市江 和子
    2019 年 28 巻 p. 120-125
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

     本研究は、在宅生活をする重症心身障害児の父親10名を対象に養育体験を調査し、父親への看護支援の示唆を得ることを目的とした。半構成的面接を実施し、質的帰納的分析を行った。結果、父親は【子どもの誕生に対する複雑な胸中】、を抱き、養育を始めていた。【子どもが受ける医療に対する苦悩】から【重症心身障害児の成長・発達への感動】を強みにし【周囲の支えによる在宅生活の成立】をしていた。父親は、【重症心身障害児のきょうだいへの心掛け】、【配偶者へ心配り】を行い、【父親として現状を見極めた上での判断】をし、父親役割を遂行していた。これらの体験は【在宅生活をする重症心身障害児の養育での父親自身の変化】、【在宅生活をする重症心身障害児の将来への見据え】になっていた。看護支援として、看護者は父親と重症心身障害児の成長・発達を共有すること、父親の養育体験を尊重し、父親とその家族を支える必要性が示唆された。

  • 吉岡 詠美, 藤田 千春
    2019 年 28 巻 p. 126-131
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

     目的 : 我が国の小児看護学における倫理教育の現状と課題を明らかにし、小児看護領域における倫理教育の教授法の示唆を得る。

     方法 : 医学中央雑誌、CiNii、Google Scholarで、2005年から2018年6月、小児看護、倫理、教育で検索し、18件を対象とした。

     結果 : 倫理教育の現状として、 「講義・演習」 では事例学習や子どものイメージ化を図る教授法が取り入れられていた。 「臨地実習」 では倫理カンファレンスや修正4ステップモデルを活用し系統的に倫理的問題を検討していた。

     結論 : 子どもや家族とじっくりかかわる実習など学習の期間が減少しているため、講義の中で子どもへの倫理的配慮について繰り返し伝えること、小児看護で起こりやすい倫理的課題をグループで分析することで、学生の判断能力を高めていく必要性がある。倫理教育を試み、さらなる教授法に関する文献を蓄積し、より効果的な倫理教育につなげていく必要がある。

  • 今西 誠子, 市江 和子
    2019 年 28 巻 p. 132-138
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

     本研究は、侵襲的処置体験をする子どもとその家族への看護師のかかわりから、子どもの侵襲的処置体験からの心理的回復に向けた看護師のかかわりの検討を目的とした。

     小児看護経験が4年以上の看護師を対象に半構成的面接を実施し、質的記述的に分析した。侵襲的処置前では【侵襲的処置に対する理解しやすい説明】【侵襲的処置に対する思いへの配慮】【侵襲的処置に対する緊張の緩和】【母親と子どもの関係を把握した関与】、侵襲的処置中では【侵襲的処置による恐怖の軽減】、侵襲的処置体験後では【侵襲的処置体験による緊張の緩衝】【子どもの侵襲的処置体験の家族による承認への支援】【子どもの侵襲的処置体験の承認】【侵襲的処置体験後の子どもの気持ちの容認】【侵襲的処置体験後の子どもと看護師との関係の再構築】の10カテゴリーが抽出された。侵襲的処置前、中、後の各段階で侵襲的処置体験からの心理的回復に向けたかかわりの実施が明らかになった。

  • 増井 洋子, 市江 和子
    2019 年 28 巻 p. 208-213
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/31
    ジャーナル フリー

     本研究は、NICU退院後において縦断的に低出生体重児の母親の育児と外来受診に関する思いを明らかにし、児の成長とともに変化する母親の思いから小児外来で行う支援の検討についての基礎資料とすることを目的とした。NICU退院後、小児外来を受診する低出生体重児の母親5名に半構成的面接調査を初回受診後と4か月健診後に行った。質的記述的研究法を用いて分析した結果、NICU退院後から初回外来受診時までは6カテゴリー、13サブカテゴリー、初回外来受診後から4か月健診までは6カテゴリー、12サブカテゴリーが抽出された。低出生体重児の母親は、退院直後の育児において低出生体重児に合わせた対処方法に困難や不安を抱き過ごしていた。4か月健診では、子どもの成長・発達に伴い育児状況が変化していた。母親は、小児外来受診時においてNICU時との対応の違いを感じており、小児外来における育児支援に看護職がかかわる必要性が示唆された。

  • 徳島 佐由美
    2019 年 28 巻 p. 214-219
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/31
    ジャーナル フリー

     本研究は、二分脊椎症児の清潔間欠的導尿 (以下、CIC) に関する研究の動向、および今後の研究の課題について、国内17件の文献から検討を行った。その結果、個別性に応じた清潔間欠的自己導尿 (以下、CISC) 指導について、CICに対する家族の認識について、学童期における二分脊椎症児のCICに対する認識についての研究があることが明らかになった。文献検討の多くは、二分脊椎症児の個々の障がいに応じたCISC指導に関するものであり、また調査対象者は二分脊椎症の家族か本人であった。家族は我が子が就学する時期に支援体制について不安を抱き、二分脊椎症児本人は学童期にはCISCを確立させることができるが、親子関係がその後のCISC継続に影響を及ぼしていることが示唆された。今後は二分脊椎症児の発達段階と親子関係に着目した具体的なCISC指導方法についての調査研究が必要である。

  • ―看護職に焦点を当てて―
    松﨑 奈々子, 金泉 志保美, 阿久澤 智恵子, 青栁 千春, 佐光 恵子
    2019 年 28 巻 p. 220-227
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/31
    ジャーナル フリー

     目的 : 障害児通所支援を利用する子どもと家族への支援に関する研究動向と課題を文献検討により明らかにし、看護職に求められる役割について検討することである。

     方法 : 医学中央雑誌Web版 (ver. 5) を用いて、「障害児」、「通所」、「デイサービス」、「児童発達支援」、「放課後等デイサービス」、「保育所等訪問支援」 とし、26件を分析対象とした。文献の年次推移、研究の種類、研究デザイン、対象者、記述内容から研究の動向を分析し、記述内容は①研究テーマ、②看護職による支援に関する記述について質的記述的に分析した。

     結果・考察 : 文献は増加傾向にあるが、看護職による支援について記述のある文献は6件のみであった。看護職には個別性に応じた質の高い看護力が求められることが示唆されたが、通所支援にかかわる看護職の配置や具体的な活動内容などは研究として明らかにされておらず、詳細を明らかにする必要がある。

  • 丸山 始美, 山下 早苗
    2019 年 28 巻 p. 228-234
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/31
    ジャーナル フリー

     小児医療現場における意思決定と看護介入について国内の現状を先行文献より明らかにすることを目的に、Web版医学中央雑誌 (Ver. 5) を用いて1995年~2016年の文献を対象に検索を行い、得られた28件の分析を行った。入院・治療・検査、復学・転校に関する意思決定の主体者は 「子どもと家族」 である場合が多く、ターミナル期、在宅移行・在宅での医療的ケアに関する意思決定の主体者は 「家族」 が多いという結果であった。子どもの状態に対する家族の受容状況が、子どもとともに意思決定する困難さに影響していると考えられ、家族が不安定な状況であっても、揺れ動く家族の思いに寄り添い、子どもを意思決定の参加者としてとらえ、子どもの最善の利益に向けた調整を図ることの重要性が示唆された。

  • 植木 慎悟, 藤田 優一, 北尾 美香, 藤原 千惠子
    2019 年 28 巻 p. 235-239
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/31
    ジャーナル フリー

     生後10日目の児が胆道閉鎖症疑いにより入院したが、入院後その疾患は否定され、児の健康上の問題も解決して退院となった。しかし母親は不安なままであった。本研究では、児が胆道閉鎖症を疑われてから病院を退院するまでの期間において、その疾患を否定されたにもかかわらず母親の不安が継続した体験を明らかにすることを目的とした。母親のインタビューデータを、Emdenのナラティブ分析を用いて分析した結果、三つのテーマが抽出された。入院前、母親は病気に関する情報を収集する中で、 「児の病気の重大性」 を知り、病院を受診した際にガスの貯留や体重減少を指摘されたことから 「ほかの症状の見落とし」 に気付き、さらに、入院中に看護師から受けた説明を 「母親が行ってきたことの否定」 ととらえてしまったことで母親としての自信を失い、不安が継続していた。医療従事者は母親の信念に耳を傾け、母親の自信を損なわないよう慎重な支援や説明が必要である。

  • 山口 未久, 鈴木 真知子
    2019 年 28 巻 p. 318-324
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/30
    ジャーナル フリー

     重度障害を有する子どもの地域生活や社会参加への支援は、小児看護分野における近年の課題である。とりわけ社会生活を送る上で不可欠なコミュニケーションへの支援ニーズは高い。本研究では、コミュニケーション支援として重度障害児への介入を行う研究論文を対象としたシステマティックレビューを行い、レビュー対象として21文献が選定された。その結果、コミュニケーション支援への介入として最も有効である可能性が高いのは、意思表出を目的としたマイクロスイッチと視線入力の装置の導入であった。音楽や感覚統合などによる刺激による介入や集団での交流は有効性の判断が難しいことが明らかとなった。現状としては重度障害児の意思表出への介入に目を向けることが必要な対策と考えられる。

  • ―認定こども園などに通う子どもの保護者を対象に―
    甲斐 鈴恵
    2019 年 28 巻 p. 325-332
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/30
    ジャーナル フリー

     <目的>子どもの電子メディア接触に関する保護者の意識を明らかにし、今後の啓発活動における示唆を得ることを目的に本研究に取り組んだ。<対象>A県認定こども園に通っている子どもの保護者。<方法>無記名式郵送調査。<結果>20園、1,652世帯 (有効回答率76.6%) を分析対象とした。子どもの電子メディア使用場面は、アニメ・特撮、幼児教育、娯楽視聴の順であった。1,057世帯が 「ルールを設けている」 と回答し、内容は、【利用時間に関するもの】【使用環境に関するもの】ほか。良い影響は、【知識・教養が豊かになる】【共通の話題が見つかる】ほか。悪い影響は、【視力の低下・悪化】【依存性が高まる不安】ほか。保護者は両方の特性を意識しており、心身への悪影響について記述数が多い現状が明らかとなった。保護者の思いを支持しつつ、さらに、子どもの成長発達や親子の触れ合いを推奨する具体的な支援の取り組みが重要である。

  • 田中 育美, 泊 祐子
    2019 年 28 巻 p. 333-340
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/30
    ジャーナル フリー

     先天性食道閉鎖症児の母親がかかえていた食事に関する困難と対処を明らかにし、今後の課題と支援を検討するため、2人の母親を対象に半構成面接を行った。食道閉鎖症特有の食道の蠕動障害による食物の詰まりに対して母親は困難をかかえており [食物が詰まることが何よりも難しい] [常に食事のことを考えるしんどさ] [食事の時間が苦痛] [相談できる人がいない] 困難をかかえていた。困難に対し《食べなくても家族と食べる時間の共有》《無理に経口摂取を進めず、児のペースに委ねる》《詰まりやすい食材は調理で工夫》など食環境や食形態を工夫し対処をしていた。十分に咀嚼ができないと詰まりにつながるため、咀嚼機能獲得時期を逃さないよう咀嚼の練習ができる支援と咀嚼機能獲得時期を逃した児への指導内容の検討が必要である。また食道閉鎖症は長期的に食物の詰まりに対して注意が必要であるため、退院後も継続して食事に関する支援が必要である。

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