日本小児看護学会誌
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20 巻, 2 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
  • 松森 直美, 蝦名 美智子, 今野 美紀, 杉本 陽子, 楢木野 裕美, 佐藤 洋子, 岡田 洋子, 高橋 清子, 橋本 ゆかり
    原稿種別: 本文
    2011 年 20 巻 2 号 p. 1-9
    発行日: 2011年
    公開日: 2017/03/27
    ジャーナル フリー
    日本では、1994年の子どもの権利条約への批准をきっかけに、プレパレーションが小児看護の領域に普及してきた。そこで、近年のプレパレーションの実施状況と課題を明らかにするために、手術を受けた子どもの親への意識調査を実施し現状と課題を検討した。倫理的配慮として、事前に調査の承諾を得た施設または患者会の代表者経由で無記名による自記式質問紙を配布し、自由参加を保障した上で調査を行った。対象は、子どもが手術目的で入院し付き添ったことのある親208名(回収率43.7%)であった。結果は、子どもへの年齢にふさわしい説明が必要だと考えている親が8割であったが、実際に年齢にふさわしい説明を受けたとの回答は4割弱であった。説明の時期は6割が「手術が決定した時」を希望し、視覚的な道具を用いた方法や、医療者が「術後に子どもを褒める対応をした方がよい」と要望していた。また、記述回答では細かい説明よりも医療者との関係性を重視する回答があった。
  • 増尾 美帆, 竹内 幸江
    原稿種別: 本文
    2011 年 20 巻 2 号 p. 10-17
    発行日: 2011年
    公開日: 2017/03/27
    ジャーナル フリー
    慢性疾患の子どもの看護をしていく上で、成育看護の理解や、小児看護の能力の一つとして「将来を見通す力」が必要といわれている。しかし、子どもの将来を考えるようになったきっかけや、その将来をどこまで見通して考え関わっているのかについての研究はあまりされていない。そこで、看護師が慢性疾患をもつ子どもの将来というのを考え始めたきっかけや、どこまで見据えて関わって看護を実践しているのかを明らかにするために、看護師8名に半構造化面接を実施した。その結果、きっかけの状況として、【他者が将来のことを話しているのを聞いたこと】【同じ疾患の子どもたちと関わったこと】【子どもと関わる中で気になることがあったこと】【経験した事例を振り返り検討したこと】【将来を考えるのは自然なこと】であった。子どもの将来の範囲としては、「次の発達段階まで」「生殖期まで」「一生」であり、また、子どもの将来として子どもの近い将来を考えながら、さらにその先の将来を考えていた。これらから、きっかけの状況には、看護師のおかれている環境と経験が関わっており、将来を考える範囲については、発達段階やライフサイクルの概念と慢性疾患の特徴が影響していることがわかった。
  • 伊藤 久美, 大内 暁子, 深谷 基裕, 江本 リナ, 草柳 浩子, 川名 るり, 筒井 真優美, 平山 恵子, 山内 朋子, 松本 紗織
    原稿種別: 本文
    2011 年 20 巻 2 号 p. 18-24
    発行日: 2011年
    公開日: 2017/03/27
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は、看護師がペルテス病の子どもに見通しのつく説明をするという行為が、医療者にどのような変化を及ぼすのかを明らかにすることである。アクションリサーチメンバーは、看護師6名・主治医1名である。その他に、情報を提供してくれたペルテス病で入院した学童期の子ども3名である。研究方法は、アクションリサーチを用いた。「見通しのつく説明」をするためのアクションの方向性を検討するため、チーム内の分析を行い問題の明確化をした。そして、主体となる看護師を中心にチーム会を通してアクションを開始した。結果、子どもに「見通しのつく説明」をするというアクションは、子どもの反応や変化に気付き、医療者一人一人が子どもへの関わりを変化させていた。その関わりの変化を実感すると医療者自身の「気付く力」や「成長した」という手ごたえに繋がっていた。また、看護師の起こしたアクションは、医療者の言動を変化させるとともに、チーム医療の重要性に気付くという効果をもたらした。
  • 岩崎 美和, 草柳 浩子, 西田 志穗, 平山 恵子, 岩尾 弓子, 江本 リナ, 川名 るり, 筒井 真優美, 山内 朋子, 松本 紗織
    原稿種別: 本文
    2011 年 20 巻 2 号 p. 25-32
    発行日: 2011年
    公開日: 2017/03/27
    ジャーナル フリー
    子どもの「泣き」に対する看護師の関心を深めると共に、泣きに対するケアを改善する目的で小児専門の病棟で働く看護師を対象として、疾患を持つ乳幼児の「泣き」について共に考え、学ぶ機会を創り出すというアクションリサーチを行った。具体的なアクションとして「子どもの泣きについての勉強会」を企画し、参加者の希望や意向に応じた勉強会を進めながら、乳幼児の「泣き」について共に考えるというプロセスを繰り返した。その結果、参加者は勉強会の場で乳幼児の「泣き」のケアを共有、言語化し、「泣き」に対するケアの基準を作成していった。実践の場でも「泣き」のケアを共有、言語化し、基準をもとにケアを実践するという変化を起こした。乳幼児の「泣き」に伴う参加者の負の感情がケアの共有を阻んでいたこと、「泣き」に対するケアが共有できるという気付きが、参加者の「泣き」に対する意識やケアを変化させるきっかけになっていたことが考察された。
  • 岡崎 裕子, 楢木野 裕美, 高橋 清子, 鈴木 敦子
    原稿種別: 本文
    2011 年 20 巻 2 号 p. 33-40
    発行日: 2011年
    公開日: 2017/03/27
    ジャーナル フリー
    本研究は、採血・点滴を受ける幼児のプレパレーションにおける親の参画に対する親の認識を明らかにすることを目的とする。542名の保育園児の親を対象に自記式質問紙を配布し郵送にて222名から回収、有効回答数は194名であった。子どもに採血・点滴を受けることを説明するのは「母親」が適切と回答したのが80%以上で、91.3%が「子どもが怖がっても事実を伝える」と回答した。採血・点滴中、94.3%の親が「子どもの傍にいたい」と希望し、74.9%の親が「子どもを励ます」関わりを望んでいた。採血・点滴終了後に、処置中の様子を振り返って子どもと「話しをする」親は87.6%であり、最も多かった理由は、「子どもが頑張ったことを実感できるようにする」46.5%だった。親はプレパレーションに主体的に参画し、親としての役割を遂行し、子どもの反応を受け止めながら子どもを支援したいと考えているという認識が明らかになった。
  • 田中 菜美子, 奈良間 美保
    原稿種別: 本文
    2011 年 20 巻 2 号 p. 41-48
    発行日: 2011年
    公開日: 2017/03/27
    ジャーナル フリー
    本研究は、新生児が亡くなる過程における母親の反応を、母性の特徴に注目し看護者の認識を通して明らかにすることを目的とし、生後30日以内に死亡した新生児または新生児を亡くした母親を2年以内に受け持ったことがある看護者6名に半構成面接を行った。分析の結果、以下の9カテゴリーが抽出された。児の生前は【我が子との愛着を育てる】【困難な状況の中で母親役割をとることで自分を保つ】【児とかかわることでケアを自らするようになる】【児と家族になろうとする】【医療従事者に頼らざるを得なくなる】【死が迫っていることにショックを受けながらそれでもできることをする】反応を示し、児の死の直後から、【児との結びつきを振り返りつながりを求める】【児を想起することから距離をとる】【来た道も行き先も分からないまま今をなんとかすごす】反応が見られたことから、看護者は母親が児の親でいられるかかわりをする必要があることが示唆された。
  • 尾高 大輔, 川名 るり, 山内 朋子, 江本 リナ, 平山 恵子, 草柳 浩子, 松本 紗織, 筒井 真優美
    原稿種別: 本文
    2011 年 20 巻 2 号 p. 49-56
    発行日: 2011年
    公開日: 2017/03/27
    ジャーナル フリー
    本研究は、入院中の子どもや家族の言動による看護師の傷つき体験に対し、体験を語りあえる場を研究者が提供することを通して、看護師がどのような体験をしていたのか、対話を通して看護師にどのような変化が起こるのかを明らかにすることを目的としたアクションリサーチである。同意が得られた5名の看護師に対し、茶話会の開催とインタビューを実施した。標茶話会では、最初は感情を表出することに躊躇していた参加者同士が、徐々に感情豊かに自分の体験や思いを語り合い、時間の経過とともに対話が深まっていくような変化が見られた。また、看護師は陰性感情を語れずにいると、ケアに一歩踏みこめないでいたが、語る場を見つけたことによってやる気を取り戻していくように変化していった。看護師という職業に抱くイメージに対する認識や陰性感情を語る場の重要性が示唆された。今後は、実践の場における語る場の持ち方の工夫などの取り組みが必要と思われる。
  • 小島 明日美, 泊 祐子
    原稿種別: 本文
    2011 年 20 巻 2 号 p. 57-64
    発行日: 2011年
    公開日: 2017/03/27
    ジャーナル フリー
    本研究では、処置時に子どもの権利を尊重するための説明ツールやガイドラインを用いる取り組みを行ない、取り組み後の看護師の意識の変化を明らかにする。研究対象は研究参加への同意の得られた看護師27名である。まず、権利という視点からみた話し合いを行なった。次に取り組みに必要なツールと各ガイドラインをスタッフと共に作成し、同時に子どもの権利を尊重した看護を実践し、評価した。その結果、取り組み前の話し合いでは、23の看護の具体的問題を抽出した。説明ツールは、発達段階別に処置毎(採血、点滴の挿入、術前処置)に作成し、ガイドラインは、処置時の看護ケアを経過毎にまとめて作成した。看護ケアの実践事例は43事例あった。取り組み後の看護の具体的問題は17に減少し、子どもの権利に対する看護師の意識が向上した。本研究の取り組みでは、看護師の子どもの権利意識の向上と、ツールの存在が看護ケアの実践を促し、看護師が看護ケアの効果を実感できたことで、看護ケアを行う喜びや意欲向上にもつながったと考えられる。
  • 新井 麻美子, 山田 咲樹子
    原稿種別: 本文
    2011 年 20 巻 2 号 p. 65-71
    発行日: 2011年
    公開日: 2017/03/27
    ジャーナル フリー
    複雑な状況を抱えた子どもに対し、看護師が子どものアドボケイトとなり、「子どもの最善の利益とは何か?」を考え、葛藤しながら看護を提供した。その実践を振り返り、子どもの最善の利益を考える看護師の倫理的葛藤について考察し、臨床における医療者の倫理的葛藤を乗り越えるための一助となることを目的とした。事例は、複雑な家庭環境にある0歳8ヶ月の児で、自宅への退院は困難と考えられた。医療者は子どもの最善の利益を考え、度重なる医療チームでの話し合いの末、施設への入所を決定した。臨床経験2年目のプライマリーナースは、この決定と患者・家族への看護に困惑と葛藤を重ねながらも、話し合いの中で葛藤を解消し、「子どもの最善の利益とはなにか?」について考えることができた。この実践から、倫理的葛藤の解決には話し合いの過程が大切であり、話し合いを重ねることで看護師は揺れ動きながらも解決方法を見出していくことを学んだ。
  • 平賀 紀子, 古谷 佳由理
    原稿種別: 本文
    2011 年 20 巻 2 号 p. 72-78
    発行日: 2011年
    公開日: 2017/03/27
    ジャーナル フリー
    小児がん患児の復学支援の研究動向を明らかにし、復学に関連した問題と支援の実態を分析することを目的に、小児がんの復学支援に関する文献検討を行った。医学中央雑誌にて検索語を「小児がん」「復学」「復学支援」「学校」として検索し、目的に沿った31文献を検討した。その結果、小児がん患児の復学の研究は1999年から増加しており、親や教員だけでなく本人やクラスメイトを対象としたものがあった。復学に関する問題は【入院中】、【退院前後】、【復学後】の時期によって特徴が見られた。支援は、患児への直接的な支援と環境を整える間接的な支援があり、「もとの学校とのつながりの維持」「転校に関する支援」「入院中の教育支援」「復学前の合同会議」「病院と学校との連携」「患児への支援」「学校の環境を整える」に分類できた。
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